2002-07-21[n年前へ]
■あの頃流れた電波の行方
夜空にきらめく「あの頃の番組」
梅雨も明けて、本格的に夏が始まった。曇りがちだった夜空も、星空が見えるようになってくる。夜空を見上げれば、雲に遮られずに織姫星(こと座ベガ)、牽牛星(わし座アルタイル)などが形作る夏の大三角形が見えるようになる。
そういえば、何日か前に、"hirax.net"の検索エンジン「ぐるぐる」宛に
人類が作った最初の電波は、今、ドコを飛んでいますか?「欽ちゃんのドンといってみよう」の放送は、今、ドコ辺りを飛んでいますか?星の彼方のドコを飛んでいますか?という検索依頼がSさんから送られてきた。アンテナ(例えば東京タワー)から発せられた電波は秒速30万kmで遙か彼方へと飛び続けるわけだけれど、「ずっと昔に東京タワーから旅だった電波は、今ドコにいるの?」「そんな昔聴いたり、観たりしたラジオやテレビの電波は、今ドコを旅しているの?」「あの頃観た世界は、夜空に見えるどの星の辺りに今いるの?」という検索依頼なのである。「昔の見た電波を探して下さい」なんてとても面白い検索依頼である。というわけで、「ぐるぐる」は夏の夜空を見上げて、目を皿のようにして、「あの頃に流れてた電波の行方」を探してみることにした。
東京タワーからテレビやラジオの放送の電波が発射されると、その電波達はアンテナから一直線に離れていく。もちろんきっと指向性などもあるだろうけれど、そんなことはとりあえず無視して考えてみよう。東京タワーから旅立って数十μ秒後(ホントに一瞬だ)には、その電波達はもう「東京23区が見渡せるくらいの場所」にいるハズだ。そして、東京タワーから旅立った数十m秒後にはもう「日本も中国も区別の付かないくらいの地球が見える場所」にいる。そして、テレビ・ラジオが放送された10時間後には、それらの電波は冥王星の軌道を過ぎようとしているところだ。
23区が見渡せる | 中国の片隅に日本がいる | 太陽系が見渡せる |
すると、 地球から4.3光年離れた恒星アルファケンタウリの辺りを飛んでいる電波は、4年と少し前に東京タワーから放送された電波だ。ということは、ちょうどワールドカップ'98が間もなく始まる、という頃だろうか?初めてのワールドカップ出場にアルファケンタウリは今頃燃えているに違いない。今の東京はワールドカップ'02が終わって惚けている頃だが、アルファケンタウリはまだまだワールドカップ'98を前にして、燃えているハズなのである。
同様にして、日本でテレビ放送が開始されてから放送された番組が、今頃どの辺りの星を通過しているかを"nearspace"と「ザ・20世紀テレビ番組史」を参考にして少し調べてみた。
東京タワーからの 距離 (光年) | 恒星 | その辺りを 通過している電波は いつ頃の放送? (年) | その頃のテレビ番組 |
4.3 | アルファケンタウリ | 1998 | ワールドカップ'98 |
6 | へびつかいバーナード | 1996 | ふたりっ子 |
8.7 | シリウス | 1993 | ひとつ屋根の下 |
10.8 | エリダヌス座イプシロン | 1991 | 101回目のプロポーズ |
11.1 | 白鳥座61番星 | 1991 | 東京ラブストーリー |
11.8 | くじら座タウ | 1990 | 渡る世間は鬼ばかり |
16 | アルタイル | 1986 | あぶない刑事 |
25 | ベガ | 1977 | アメリカ横断 ウルトラクイズ |
30 | アークトゥルス | 1972 | 太陽にほえろ |
35 | ポルックス | 1967 | チャコねぇちゃん |
40 | カペラ | 1962 | てなもんや三度笠 |
50 | カストル | 1952 | テレビ番組開始 |
例えば、ひときわ明るく輝くシリウスの近くを通過しようとしている電波(番組)は、江口洋介が熱演する「ひとつ屋根の下」である。だから、今頃シリウスはきっと「そこに愛はあるのかい?」と呟いているハズであるし、エリダヌス座イプシロンは今頃武田鉄也と共に「ぼくは死にましぇ~ん」と叫んでいるはずなのである。
そしてまた、七夕のカップルの彼氏、彦星(アルタイル)は「あぶない刑事」が今まさに放送されている頃だ。きっとアルタイルではタカ(舘ひろし)とユージ(柴田恭兵)モドキが溢れているハズに違いない。そして、アルタイルより九才年上(さらに東京タワーから九光年遠い)の彼女、織り姫(ベガ)はもう少し昔の番組を今頃眺めている。そう、始まったばかりの「アメリカ横断ウルトラクイズ」にはまっているのかもしれないし、あるいは「欽ドン、良い子、悪い子、普通の子」辺りを観ているかもしれない。
ポルックスは「チャコねぇちゃん」を見始めた頃だ。その番組の弟役が主人公として「ケンちゃんシリーズ」が長く長く続き、ついには「洗濯やケンちゃん」なんてトンデモないものが登場することを、彼はまだ知らないのである。
こんな風にして夜空を眺めてみれば、日本でテレビ放送が開始(1952年)されてから放送された電波を眺めてみることができる。例えば、カストル(ふたご座アルファ星)の辺りを眺めれば、日本で最初に放送された番組が飛んでいる様子が心に浮かぶことだろう。だから、考えてみれば、夜空のに輝く星はかつて聴いたり、観たりした番組がつまった「タイムカプセル」みたいなものかもしれない。
というわけで、富士の麓で夏の夜空を見上げてきた「ぐるぐる」からSさんへの検索結果です。
夏の夜空を見上げてみて下さい。三つの星が大きな三角形を夜空に描いているのが見えるでしょうか?その中で一番明るい星がこと座のベガ、七夕に逢い引きをする「織姫」です。
かつて70年代に東京タワーから旅立っていた「欽ドン」の電波はあの星の辺りを走り続けているはずです。今頃、織姫がラジオやテレビのスイッチを入れれば、欽ちゃんの声が飛び込んでくるはずです。
織姫が気に入っているのはラジオの「欽ドン」なのでしょうか?それとも、テレビの「欽ドン良い子、悪い子、普通の子」なのでしょうか?さてさて、一体どちらなのでしょうね?そして、夏の夜空と言えば、射手座も見えますよね?その中の一番明るい射手座のイプシロンが地球からちょうど120光年の彼方に位置しています。
約120年前にヘルツの地球から発した最初の電波は間もなくあの射手座に辿り着きます。人類が放った最初の電波は、もしかしたら間もなく射手座のハートを貫こうとしている、のかもしれません。夏の夜空を見上げれば、あの頃流れてた電波の行方が、かつて眺めた番組が見えてくるような気がします。
「ぐるぐる」
2004-08-08[n年前へ]
■水星は土星よりも遠い
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■Discovery CHANNEL STORE
色んな科学オモチャがあってとても楽しめそうなDiscovery CHANNEL STORE. 遠心分離機や染色剤まで揃っているというDNA Explorerキットや立体太陽系モデルなどの面白そうなものが揃っている。 from Do you think for the future?
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■「太陽系の惑星テクスチャ」と「太陽系シミュレータ」
太陽系の惑星の模様(テクスチャ)が揃っているTHE PLANETARY MAP HUB。太陽系シミュレータ(Solar System Simulator)も面白いかも。
2013-01-04[n年前へ]
■2013年「”残り少ない”明けの明星」を目に焼き付けろ!?
金星は水星の次に太陽の近くを回る惑星です。 だから、地球から見ると、いつも太陽の近くに見えることになります。 太陽が地平線より高く昇っている昼間には、星を見ることはできませんから、私たちが金星を見ることができるのは、「金星の後を追いかけるように太陽が昇ってくる夜明け前の東空」か「太陽が地平線に隠れた後、まだ少し地平線より上に金星がいる夕暮れを過ぎた頃の西空」になります。 前者が「明けの明星」で、後者が「宵の明星」と呼ばれます。
昨年、2012年は、前半が「金星が宵の明星として見える時期」で、後半は「金星が明けの明星として見える時期」でした。 下の図は、2012年の「日の出・日の入りの時間」と金星が見える時間帯(緑色で塗りつぶした部分)を描いたものです。 前半(下半分)は夕暮れを過ぎた頃が緑色になっていて、つまり金星=宵の明星が見える状態で、後半(上半分)は日の出前の時間帯が緑色(金星=明けの明星)が見えることがわかると思います。春が終わり・夏が始まる頃、宵の明星は姿を消して、明けの明星が見えるようになったのです。
今年、2013年はどうかというと、今月中は(昨年後半に引き続き)明けの明星が見えるけれど、それ以降はほぼ宵の明星しか見ることができなくなります。 次に明けの明星をみることができるのは、ほぼ1年後、2014年が始まる頃、です。
今月過ぎから、日の出時刻が次第に早くなっていきます。 そんな朝の時間に東の空に光る金星を、2013年には”もう残り少ない”明けの明星を眺めてみるのはいかがでしょうか。