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2011-05-13[n年前へ]

海を越えると値段が2倍以上になる「Mathematica 8ホームエディション」 

 Mathematica 8ホームエディション日本語版が発売されました。Mathematicaホームエディションは,個人の非商業的な目的のためなら、プロフェッショナル版の Mathematica製品の全機能を使うことができる、というものです。米国などでは以前から発売されていて、295ドルという価格が実に魅力的な製品です。

 このエディションのリリースにより,今回初めて破挌のお値段でMathematica 8の機能をご体験いただけるようになりました.

 喜び勇んでウルフラムのサイトに行き、Mathematicaホームエディションのページを眺めると、…私の目が悪いせいか(日本版を眺めた場合)「特別価格¥67,000」などと書いてあるように見えます。「295ドル」という値段や「破挌のお値段」という言葉を思い浮かべなければ良いのかもしれませんが、思わず目をゴシゴシとこすりたくなる「お値段」です。

 ウルフラムが提供する知識検索エンジン”WOLFRAM ALPHA”に尋ねると、295ドルは2万5千円弱で、円で言うともっと安くなりそうとも教えてくれます(下に貼り付けた図は、最近十年間の"295ドル"の円換算推移です)。…そうだよね?と思いつつ、再度ウルフラムサイトに戻ると「295ドル=67000円」という奇々怪々な式がラクガキしてあります。

 Mathematica Home Edittionというパッケージが素晴らしいだけに、実に残念な価格設定です。「ビジネスでなく、個人の科学への要求」を広げるためにも、もっとリーズナブルな値段設定をして欲しいところです。

米ドル推移






2011-08-07[n年前へ]

「ゲーデル数化」と「お金が無い人のためのMathematica」 

 数式処理・演算アプリケーションであるMathematicaでは、作成した「ノートブック(数式・命令コマンド群)」を、誰もが使ってみることができるようなファイル形式に変換することができます。それはつまり、Mathematicaというプログラミング言語でアプリケーションを作成したら、(Mathematicaアプリケーションがなくとも)そのアプリケーションを再生することができるような配布形式に変換をすることができる、ということです。

 Mathematica 7までは、誰もが「動かすことができる」できるファイル形式に変換するには、専用サイトで作成したノートブックをアップロードしなければなりませんでしたが、Mathematica 8からはアプリケーション単体で「再生用ファイル形式」に変換することができるようになりました。Wolfram,CDF (Computable Document Format,計算可能ドキュメント形式)というのが、その形式です。

 つまるところ、それは名前を変えた"Mathematica Player"に過ぎません。「作成した数式・プログラム」を実行し、そのプログラムにありと数式数値を入力することはできるけれど、数式やプログラム(命令)コマンドを入力し・処理させることができない、という再生環境(機能制限されたMathematica アプリケーション)です。

 しかし、ありとあらゆる数式やプログラムは「自然数」に変換することができます(たとえば、ゲーデル数化)(プログラムをビルドするということの入力と出力などに例えて想像してみると、そんなことも至極当然の当前のことと思えてくるかもしれません)。ということは、「自然数」へと姿を変えられた(変換された)「数式やプログラム」を元の姿(数式やプログラム)へと変換し(対応させ)、その数式やプログラムを実行する処理をさせてやれば、「数値しか入力することができない”再生環境”でも、ありとあらゆる機能を実行させることができる」わけです。

 そんな、シンプルかつ美しいアイデアを実装してしまったのが"Universal Mathematica Manipulator—Poor Man’s Mathematica"です。任意のコマンド(数値)群を自然数に変換し・その自然数を逆変換させた上で(Wolfram CDF 実行環境に)動かさせるというUniversal Mathematica Manipulator—Poor Man's Mathematica です。(とりあえずの使用方法としては)左上の領域(ペイン)に数式(Mathematicaコマンド群)を入力し、右上の領域に生成・出力された(シリアライズされた)自然数値をコピーして(ブラウザのクリップボード動作〜何桁までペーストするかといった〜の仕様にもよるようです。少なくとも、ChromeやFirefox on Mac OSXでは動きました)、下のペインに(”+”ボタンを押した上で)貼り付ければ、あなたが入力した任意の数式が評価・出力される…という具合です。

 Mathematicaがパターンマッチングを延々と行うアプリケーションであることをかんがえれば、こうした「解」が登場するのは至極当前のことのようにも思われます。

 Mathematicaは結局のところ、パターンマッチングを延々と行うプログラムである。データベースに登録されているパターン・規則にもどづいて、与えられた数式を置換していくことにより、Mathematicaは解(や所望の結果)を得る。
 しかし、シンプルなアイデアを素早く実装する華麗さ、というのは眺めると本当に心地良いものですね。

「ゲーデル数化」と「お金が無い人のためのMathematica」






2011-08-09[n年前へ]

「WOLFRAM CDF(Computable Document Format,計算可能ドキュメント形式)」と「既存の".nbp"ファイル」の違い 

 WOLFRAM Researchから「CDF(Computable Document Format,計算可能ドキュメント形式)」が発表されました。「計算のための新しいインタラクティブなドキュメント形式」…というわけで、何だかとてもワクワクします。それは、21世紀のTeXもしくはLaTeX形式なのだろうか?…などと期待しながら、発表資料を眺めています。しかし、発表されて間もなく・情報が少ないために、CDF形式と(これまで使われていた)"Wolfram Mathematica Player"用の再生専用ファイルである ".nbp"ファイルとの違いがまだよくわかりません。

 "Wolfram Mathematica Player"用の再生専用ファイル( nbpファイル)というのは、基本的にはWolfram Mathematicaのノートブック(".nb" ファイル)と同じものです。Wolfram Mathematicaでしか編集することができない".nb" ファイルと、"Wolfram Mathematica Player"でもインタラクティブに再生することができる".nbp"ファイルが「一番大きく」異なるのは、".nbp"ファイルには「このファイルは”WOLFRAM WEBサイト"経由で出力したものですよ」という「暗号化された署名」がファイル末尾に付け加えられていること、です。その署名がなければ、Mathematica Playerはそのコンテンツを再生しない、という「仕組み」になっています。

 今回発表されたWOLFRAM Computable Document Format(計算可能ドキュメント形式)というのは、”WOLFRAM WEBサイト"から出力するものではありません。その代わりに、WOLFRAM Mathematicaアプリケーションが単独で出力することができ、その出力と同時に「暗号化された署名」を行うというファイルフォーマットです。その”正しい”署名が添えられたファイルのみをWOLFRAM Mathematica ”CDF” Playerがインタラクティブに再生することができるよう制限されています。…つまり、WOLFRAM Computable Document Format(計算可能ドキュメント形式)というものは、Mathematicaアプリケーションでしか作成することができない(という制限を掛けた)、というフォーマットです。「”CDF”フォーマットのファイルに対してのみ使うことができる」という(Mathematica ”CDF” Playerの)制限は、「そのファイルはMathematicaアプリケーションで作ったファイルのみ開くことができる」という制限と”イコール”であり、それは"Wolfram Mathematica Player"が再生可能な”.nbp”ファイルの作成元を制限していたのと同じ仕組みです。

 実際のところ、"Wolfram Mathematica Player"とWOLFRAM Mathematica ”CDF” Playerというのは、ほぼ同じものであるように見えます。たとえば、どちらのカーネル(計算・解析処理を行う中心部)へは、たとえば、.NETインターフェースから自由にアクセス・制御することができます。そして、どちらも、WOLFRAMの署名がされたファイル以外を扱うことは拒否します。

 ビジネスの面から眺めれば、当然の選択にも思えます。…が、ワクワクすることがない選択であり・ワクワクしない宣伝文句にも感じられてしまいます。

 Mathematica を売る会社 Wolfram Research の設立にあたって Wolfram はリチャードファインマンに相談している。これに対してファインマンは反対している。君にとっては回りのすべての人が馬鹿に見えるだろう。だがそのような人達を使わなければならなし、翻弄されることこの上なく君から科学的成果が出なくなってしまうようになるだろう。だから、やめたほうがよいというような内容。Wolfram は、未だ CEO として健全な経営をしている。しかし、確かに Wolfram の新規の科学的成果は聞かなくなったような気がするのは気のせいだろうか。

ファインマンの手紙

2012-01-12[n年前へ]

Wolfram Mathematica とCDF Playerの違いを図解してみた 

 Mathematica研究会で、Wolfram CDF Playerでローカルデータを読み込むというネタを聴きました。 Wolfram CDF Player というのは、数式処理ソフトウェアであるWolfram Mathematicaで作られたファイルを「閲覧・再生」するためのソフトウェアです。 しかし、実際のところ、Wolfram CDF Player は制限が付けられたWolfram Mathematicaというようなものなのです。 そのため、前述のような「Wolfram CDF Playerでできることの限界を試そう」という技術的な試みがされたりします。 そこで、Wolfram CDF Playerの制限について、(現時点での)頭の整理がてらラクガキしてみました。

 CDF Player(以前の名前であるMathematica Playerもほぼ同様)は、Mathematicaで作成されたCDFファイルしか開けず(ファイル内容と作成元Mathematicaのライセンス番号から定まる”だろう”チェックサム確認を行います)、ユーザ入力が「数値のみ」・ローカルファイルパスからのImportができない、といった制限がかけられています。

 そこで、Wolfram CDF Player( 計算コアであるMathKernel)を使い切るために、図中に青数字で描いたような経路を使い、色々な「汎用化」がされています。つまり、

  1. Mathlink経由でMathKernelを直接叩く(「無料配布のMathematicaカーネルをIronRubyから自由自在に使ってみよう」など)
  2. 任意のコード・データを数値エンコードして、Imputフォーム経由で突っ込む(「Universal Mathematica Manipulator—Poor Man’s Mathematica」)
  3. ローカルファイルパスでなく、ネットパス経由のImportを行い、コード・データを突っ込む(「Wolfram CDF PlayerをMathematicaとして使う方法」)
  4. J/Link(MathLink経由Javaインターフェース)でコード・データを突っ込む(「Wolfram CDF Player を汎用する」など)
といった「道・やり方」が(技術興味から)踏破されてきた、という具合です。

 2番目の手法は「コードもデータも区別する必要なんかないね!」という思想が見え隠れしますし、3番目の手法は「ネット経由でのデータアクセスはできるだろうし、そうならば(やろうと思えばDNS偽装でも何でも)後はいくらでもやりようがある」という技術的な読みが感じられて、それぞれの技術的な趣きがあり、なかなか面白いものです。

 Mathlinkからの接続がCDF Playerのカーネルでも有効になっているのは(Mathematica本来の動作構造と直結しているため)単純に機能を止めてしまう・壁を作ってしまうわけにはいかないという辺りだろうか、と想像しています。 また、ネットパス経由のImport機能が有効なのは、データ・アクセスのために必要で、その機能を止めるわけにはいかない(機能を止めてしまうと魅力的なデモが大幅にできなくなってしまう)、という辺りの理由を疑っています。 …というわけで、今日は、自分用のメモ・ラクガキをしてみました。

2012-02-04[n年前へ]

多面体の展開図から作る「新しいミカンのむき方」 

 ミカンの皮を工夫して剥(む)くと、さまざまな形にすることができるという解説本、「あたらしいみかんのむきかた 」があります。

 ミカンを食べる正月や冬には、こうした「みかんの皮剥きアート」を自分で考え・作り出したくなる人も多いと思います。そこで、今日は、(形状的にミカンに近い=球に近い)多面体を展開した図面をWolfram Mathematicaのサンプルを用いて描いてみました。

 これらの展開図を眺めれば、「この展開図は、何だか○×の形に似ているな」と思えるもの・感じるものがあると思います。そんな「○×に似ている展開図」を見つけたら、あとはその展開図を少し変形させることで、自分だけの「○×に見えるミカンの剥(む)き方」に挑戦してみるのはいかがでしょうか?

多面体の展開図から作る「新しいミカンのむき方」








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