hirax.net::inside out::2011年08月09日

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2011-08-09[n年前へ]

「WOLFRAM CDF(Computable Document Format,計算可能ドキュメント形式)」と「既存の".nbp"ファイル」の違い 

 WOLFRAM Researchから「CDF(Computable Document Format,計算可能ドキュメント形式)」が発表されました。「計算のための新しいインタラクティブなドキュメント形式」…というわけで、何だかとてもワクワクします。それは、21世紀のTeXもしくはLaTeX形式なのだろうか?…などと期待しながら、発表資料を眺めています。しかし、発表されて間もなく・情報が少ないために、CDF形式と(これまで使われていた)"Wolfram Mathematica Player"用の再生専用ファイルである ".nbp"ファイルとの違いがまだよくわかりません。

 "Wolfram Mathematica Player"用の再生専用ファイル( nbpファイル)というのは、基本的にはWolfram Mathematicaのノートブック(".nb" ファイル)と同じものです。Wolfram Mathematicaでしか編集することができない".nb" ファイルと、"Wolfram Mathematica Player"でもインタラクティブに再生することができる".nbp"ファイルが「一番大きく」異なるのは、".nbp"ファイルには「このファイルは”WOLFRAM WEBサイト"経由で出力したものですよ」という「暗号化された署名」がファイル末尾に付け加えられていること、です。その署名がなければ、Mathematica Playerはそのコンテンツを再生しない、という「仕組み」になっています。

 今回発表されたWOLFRAM Computable Document Format(計算可能ドキュメント形式)というのは、”WOLFRAM WEBサイト"から出力するものではありません。その代わりに、WOLFRAM Mathematicaアプリケーションが単独で出力することができ、その出力と同時に「暗号化された署名」を行うというファイルフォーマットです。その”正しい”署名が添えられたファイルのみをWOLFRAM Mathematica ”CDF” Playerがインタラクティブに再生することができるよう制限されています。…つまり、WOLFRAM Computable Document Format(計算可能ドキュメント形式)というものは、Mathematicaアプリケーションでしか作成することができない(という制限を掛けた)、というフォーマットです。「”CDF”フォーマットのファイルに対してのみ使うことができる」という(Mathematica ”CDF” Playerの)制限は、「そのファイルはMathematicaアプリケーションで作ったファイルのみ開くことができる」という制限と”イコール”であり、それは"Wolfram Mathematica Player"が再生可能な”.nbp”ファイルの作成元を制限していたのと同じ仕組みです。

 実際のところ、"Wolfram Mathematica Player"とWOLFRAM Mathematica ”CDF” Playerというのは、ほぼ同じものであるように見えます。たとえば、どちらのカーネル(計算・解析処理を行う中心部)へは、たとえば、.NETインターフェースから自由にアクセス・制御することができます。そして、どちらも、WOLFRAMの署名がされたファイル以外を扱うことは拒否します。

 ビジネスの面から眺めれば、当然の選択にも思えます。…が、ワクワクすることがない選択であり・ワクワクしない宣伝文句にも感じられてしまいます。

 Mathematica を売る会社 Wolfram Research の設立にあたって Wolfram はリチャードファインマンに相談している。これに対してファインマンは反対している。君にとっては回りのすべての人が馬鹿に見えるだろう。だがそのような人達を使わなければならなし、翻弄されることこの上なく君から科学的成果が出なくなってしまうようになるだろう。だから、やめたほうがよいというような内容。Wolfram は、未だ CEO として健全な経営をしている。しかし、確かに Wolfram の新規の科学的成果は聞かなくなったような気がするのは気のせいだろうか。

ファインマンの手紙