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2000-07-18[n年前へ]

モザイクの向こう 

隠しているから良いのです



 「できるかな?」への質問?で、同じような内容のメールを頂くことがよくある。その内の一つは、

感温液晶の入手先を教えて下さい。
というものである。何か不思議な気がするのだが、けっこう感温液晶を欲しいと思う人がいるらしい。しかも、そのような人はインテリア関係を扱う人が多い。「人のぬくもり」を感じさせるものを作りたい、というわけのである。これを逆に言えば、「人のぬくもり」を感じさせないものが世の中には溢れているということなのだろう。液晶という実に物理的なものを通して「人のぬくもり」を感じることができる、ということが実に不思議で同時に爽快でもある。

 さて、私自身は新宿の東急ハンズで感温液晶を購入したのだが、その人達のメールによれば、最近はどうも置いていないらしい。仕方がないので、

  • 日本書籍 後藤富治 村上 聡 著 おもしろ科学モノ情報 200選 2000年版
に載っていた情報を元に
 感温液晶シートですが、実験材料でなくて遊ぶのに
使うのでしたら、
光洋 03-3212-1571
日比谷パークビル9F
平日8:30-5:30
JR有楽町駅近く
にあるようです。
という返事を最近は出すことにしている。
 
    日本書籍 後藤富治 村上 聡 著 
    おもしろ科学モノ情報 200選 2000年版

 そういうわけで、こちらの感温液晶の入手方法に関するメールの方は良いのだが、もうひとつのよく頂くメールの内容がある。こちらの方はメールを頂いても、返事ができるわけでもなく、いつもそのままになっていた。その内容はと言えば、

画像処理と言えば、まずはAVのモザイクの消し方を研究して下さい。
というものである。AVのモザイクというと、あの映してはマズイ部分を隠すアノ画像処理のことだろう。本来のモザイクという言葉のモノだけではなくて、アノマズイ部分を隠す画像処理一般について、それをどうにかして欲しい、と言っているのだろうと思う。

 しかし、そう言われても困ってしまう。もちろん、私は「見えないもの」を「見える」ようにするのは大好きであるし、趣味でも仕事でも、「見える?見えない?」の境界線に興味を惹かれ、日夜考え続けている。だから、AVのモザイク〜マズイ部分を隠すアノ画像処理〜のようにわざわざ「見えない」ように細工をされてしまうと、それを何とか「見える」ようにしたいという気持ちが無い、と言ってしまうと嘘になるだろう。

 しかし、残念ながら、このAVのモザイクの件に関しては「見えない」方が良いと思っているのである。それは、私の好みの根幹に関わる部分なのであるが、ダラダラと言い訳を書いても仕方がない、やはりここはFAQに対しての答えを用意しておくべきだと考えて、ここに簡単な説明を書いておくことにした次第である。

 まずは、代表的なマズイ部分を隠すアノ画像処理の種類を示してみたい。次に示す画像は左から、

  1. オリジナル
  2. オリジナルに「モザイク」をかけたもの
  3. オリジナルに「ぼかし」をかけたもの
  4. オリジナルに「塗りつぶし」をかけたもの
である。呼び名は私が今適当に決めてみた。
 
代表的なマズイ部分を隠すアノ画像処理
オリジナル
狭義のモザイク
ぼかし
塗りつぶし

 この3つのマズイ部分を隠すアノ画像処理のなかから、今回は

  1. オリジナルに「モザイク」をかけたもの
  2. オリジナルに「ぼかし」をかけたもの
についてのみ、簡単にその内側を覗く努力をしてみたいと思う。「塗りつぶし」に関しては、今時のAVでは使われていそうにないし、ネット上に落ちている画像でもそんなに使われていないんじゃないかと想像(あくまで、想像で実体験ではない)されるので、今回は触れないことにした。いや、もちろん復元作業が面倒だということが一番の理由である。それでも、「塗りつぶし」の下に隠された部分をやっぱり見たいという人がいらっしゃれば、「欠損画像からの画像復元」というようなキーワードで論文を探してみると良いと思う。また、もし手に入らないという方がいらっしゃるならば、あなたが持っている「面白そうなビデオ」と私が持っている「論文」の物々交換をしてあげても良い、と思っている。
 

 さて、まずは「モザイク」に挑戦してみたい。試しに、ミロのヴィーナスのヌード画像に対して、「モザイク」をかけてみよう。次に示すのが、とあるヌード画像に対して「モザイク」をかけたものである。
 

とあるヌード画像に対して「モザイク」をかけたもの
オリジナル画像(GIF画像)
19kB
モザイク画像
1kB

 GIF画像ということで圧縮もかけてあるため、一概に比較はできないが、オリジナル画像が19kBであるのに対して、右の「モザイク」画像は1kBしかない。つまり、情報量がおよそ1/20であるわけだ。それもそのはず、上の「モザイク」画像は実はオリジナル画像を単に縮小したものを拡大表示してみたものである。情報量が少なくなるのも当然だろう。
 

「モザイク」画像は実はオリジナル画像を単に縮小したものと同じ
オリジナル画像(GIF画像)
19kB
左の画像を
縮小したもの(GIF画像)
1kB
左の画像を
単に拡大表示したもの
1kB

 それでは、画像の情報量が減ってしまっている場合に、元の画像を復元することはできないのだろうか?いや、ハッキリと言えばヌード画像に対して「モザイク」がかけられてしまったとしたら、その「モザイク」の向こうのヌード画像を拝むことはできないのだろうか?

 それが実はできるのである。その証拠に巷には「AVモザイク消し器」というものが溢れている。また、そんな大層な機械でなくても、巷には「モザイク」の向こうを見通すノウハウという秘伝が伝えられている。例えば、私がリサーチした限りでは、

  1. TVの前に半透明のシートを張る
  2. 目を薄開きにして、TV画面を見る
というような秘伝がある。実は、「AVモザイク消し器」もそれらの秘伝も同じとある簡単を用いているのである。その簡単な原理により、「モザイク」の向こうのヌード画像を拝むことができるのである。

 その原理とは「オリジナルの画像の性質を考える」ことである。先のオリジナルのヌード画像をじっくり見ればわかると思うが、ヌード画像というものは割合滑らかである。マッチョなヌード画像ならばいざしらず、少なくとも女性のヌード画像は普通滑らかな画像であるわけだ。当然である。だとしたら、その性質をフル活用してやれば、「モザイク」の向こうのヌード画像を拝むことができるのである。

 もう少しわかりやすく言うと、こんな感じだ。まずは、滑らかなグレイスケールの画像に「モザイク」をかけてみよう。
 

オリジナルの画像に、
「モザイク」をかけた画像
オリジナル
上の画像に「モザイク」をかけたもの

 すると、元のオリジナル画像は極めて滑らかな画像であるのに、下の「モザイク」をかけた画像は「モザイク」のせいで滑らかでなくなってしまっている。だとすれば、「モザイク」画像を滑らかにしてやれば、元のオリジナル画像っぽくなるのではないだろうか?周囲の画像を考えながら、滑らかな画像にすれば良いのではないだろうか?具体的に言えば、注目画素の周囲で平均値などを計算してやればよいのだろう。つまり、「ボカシ」をかけてやれば良いのである。「ボカシ」をかけると画像はソフトで滑らかになる。「モザイク」をかけた画像が滑らかでなくなってしまっているのを、「ボカシ」をかけることで滑らかにして、元の画像っぽくしてやれば良いのだ。

 先の秘伝

  1. TVの前に半透明のシートを張る
  2. 目を薄開きにして、TV画面を見る
や「AVモザイク消し器」もどれもこの原理を使ったものである(多分)。TVの前に半透明のシートを張れば、当然TVの画面はボケるし、目を薄開きにしてTVを見れば、やはり「まつ毛」などでTV画像に「ぼかし」がかかる。近眼の人であれば、目を薄開きにするとむしろハッキリとTVが見えてしまうかもしれないが、そうでなければ普通は「ぼかし」がかかるだろう。

 例えば、上の「モザイク」画像にぼかしをかけたものを次に示してみよう。「モザイク」画像にぼかしをかけることで、元のオリジナル画像に極めて近い画像になっていることがわかると思う。
 

オリジナルの画像に、
モザイクをかけた画像、
そしてモザイク画像にぼかしをかけたもの
オリジナル
上の画像にモザイクをかけたもの
モザイク画像にぼかしをかけたもの

 これが、いわゆるひとつの「モザイク」の向こうのヌード画像を拝む秘訣なのである。試しに、先のとあるヌード画像に対して「モザイク」をかけた画像を「ぼかす」ことで「モザイク」の向こうのヌード画像を拝んでみたのが次の画像である。「モザイク」画像よりはオリジナル画像っぽいことがわかると思う。
 

とあるヌード画像に対して「モザイク」をかけた画像を「ぼかす」と...
オリジナルオリジナル画像に
モザイクをかけたもの
モザイク画像に
ぼかしをかけたもの

 さて、それでは逆にオリジナルに「ぼかし」をかけることでマズイ部分を隠すアノ画像処理をした場合はどうだろうか?この場合は「モザイク」の向こうのヌード画像を拝むことはできるだろうか?

 といっても、こちらは以前

で扱っているので、ここでは詳しく書かない。ぼけた画像は例えば、
  • ウィーナ・フィルタ
  • ハイパス・フィルタ
などのフィルタ演算を行うことで、何とか画像復元できる。WindowsでもMacでもフリーソフトでウィーナ・フィルタがかけられるものもあるようなので、試して頂ければ良いと思う。

 と書くだけでも何なので、試しに、Photoshopのカスタムフィルタで簡単な「ボカシ復元用フィルタ」を作成してみたものをここにおいておく。Photoshopユーザは試してみると面白いかもしれない。

このカスタムフィルタの内容はごく簡単なオペレータ演算で、次の図に示すようなオペレータ演算子を用いたフィルタである。
 
カスタムフィルタを使った簡単な「ボカシ復元用フィルタ」

 試しにこのカスタムフィルタを用いて、とあるヌード画像に対してかけられた「ぼかし」画像の向こうのヌード画像を拝んでみたのが次の例である。ちなみにここでの「ぼかし」はPhotoshopでガウス「ぼかし」の半径4ピクセルの設定でフィルタをかけてみたものだ。
 

とあるヌード画像に対してかけられた
「ぼかし」画像の向こうのヌード画像を拝んでみた
オリジナルオリジナル画像に
ぼかしをかけたもの
ぼかし画像に
先のカスタムフィルタをかけたもの

 こんな簡単なカスタムフィルタでもとあるヌード画像の「ボカシ画像」を鮮鋭化できて、その「ぼかし」の向こうのヌード画像を拝むことができることが判ると思う。

 実際に、私がネット上で膨大な数のエロ画像、いや違った「ボカシ」画像だ、を収集し試した結果ではかなりの割合の画像に対して、驚くべき効果を挙げることができた。本WEBに訪れるような方のほとんどには当然の知識だとは思うが、もしもこういった処理をかけたことのない方がいらっしゃれば、是非一回挑戦しみてもらいたい。特に素人ヌードの「ぼかし」画像がお薦めである(あくまで復元効果の大きさに関してだけど)。

 さて、ここまで書いてから言うのはどうかと思うのだが、以前

でも書いたように、私は「素晴らしい芸術は完全な自由の中では生まれない」と思っている。それと同じで、制限の中で表現する方が実は素晴らしいものができると思っているのである。それは、私服の女子高生には心ときめかないが、制服の女子高生には思わず目を惹かれるのと同じである。完全に何でもありの私服だと実はそう簡単に輝かないのだが、制限のかかっている制服だと何故かとても輝いてしまうのと同じだ。私などは、通っていた高校が制服がなかったため、思わず同級生に「セーラー服を着て来てくれぇ」とリクエストをしてしまったくらいである。あれ、何の話だっけ...

 そう、つまりわざわざ隠してある部分を眺めてみることは良いとは思わないのである。隠してあるものは、隠しておいたままにしておいた方が良いのではないか、と思うのである。

 そう言えば、先ほど「ミロのヴィーナス」の画像用に表紙を使わせて頂いた細野不二彦のギャラリーフェイクの中では、主人公藤田が、

「ミロのヴィーナスは腕が隠されているからこそ、人々の心を捉えたんじゃないですかね」
というようなことを言う。私も本当にそう思う。
 
    細野不二彦 ギャラリーフェイク
    林檎を持つ女神 より

 「ミロのヴィーナス」の存在しない腕を想像することで、現実には作りえない理想の姿を、その像を見る人々は感じることができるのだろう。隠してあるからこそ、良いのである。

 あまりに緻密に描写した弟子に「言い仰せて何がある」と言ったのは松尾芭蕉だったはずだ。想像する余地を残して、現実よりもさらに大きいものを表現した方が良い、ということである。私も本当にその通りだと思う。ある一部分だけを切り取ってその部分だけを見てみて、後は想像力におまかせというのが、私も表現としては一番良いと思うのである。もちろん、全ての人の想像力を越えるものを表現する力があるというならばともかく、そんなことができないのならばわざと一部分だけを表現するのが一番良いと思うのである。

 いや、だからって別に私が変な想像をしまくりってわけじゃないとは思うけど。かといって、私が想像力とか好奇心が少ない方かと言われると...うーん...
 

2006-10-01[n年前へ]

ミロのヴィーナスは「小胸さん」だった…!? 

平林 純@「hirax.net」の科学と技術と男と女/Tech総研:ミロのヴィーナスは「小胸さん」だった…!? Tech総研ブログ平林 純@「hirax.net」の科学と技術と男と女に「ミロのヴィーナスは「小胸さん」だった…!? 〜 "Bカップ"ヴィーナスとプロポーションを比べよう 〜 」を書きました。「究極の美」を体現しているミロのヴィーナスを相手に、プロポーション勝負できる表がもれなく付いてきます。

ブラジャーがある現在、ミロのヴィーナスを作り直したら、どんなプロポーションになるのでしょうか…?

2008-07-05[n年前へ]

日本人が感じる「理想の体型」は7.7頭身!? 

 イラストレーション・ソフトを作ったりする時のために、デッサンの勉強をしている。輪郭線に影響を与える人体骨格を改めて眺め直したり、あるいは、その骨格を包み込み繋いでいる筋肉の形などを見て、その構造に沿って人体を描こうとしてみる。そんなことをしていると、どのように頭部と胴体を分けた処理をすれば良いか、どのように輪郭線抽出の際の手抜きをすれば良いか、が見えてくるような気がする。

 人体の骨格や筋肉を眺めなおしていると、知らなかったことばかりで面白い。たとえば、男性の尾骨より女性の尾骨の方が後ろに丸く広がっていたり、骨盤の形・前後左右への広がり方が全然逆だったり…と当たり前のようにも思えるけれど、それらの骨格・筋肉図を頁の上で眺めなおすと、それはとても新鮮だ。

 そしてまた、「日本人が理想とするプロポーションは8頭身ではなくて、7.7頭身だ」といった言葉も、比較用の図を眺めながら読むと、実に自然に納得させられる。ギリシャ時代から理想のプロポーションは8頭身だとされてきたが、日本の女性誌人気モデルはおよそ7.7頭身ほどだという。理想プロポーションとされている8頭身のミロのヴィーナスを見ると、確かに、妙に頭が小さくて逆にやたらに胴体が大きく感じてしまい、「理想のプロポーション」には感じられない。ボッティチェリの9頭身のヴィーナス(の誕生)に至っては、大きな胴体に頭部がおまけのようについているように見えてしまう。

 日本人のプロポーションは平均6~7頭身だという。実際に比較用の画像を眺めてみると、なるほど、6.5頭身の女性像が一番魅力的に思える。それが、6.8頭身にもなると、ちょっと顔が小さく・胴体が大きく見えて、感じる「親しみ」が少し減じてしまうように見えてくる。5%の違いがそんな印象・感性的な大きな違いを生むというのが、何だか不思議で面白い。

 下の動画は、イラストレーション化したレッシグ教授の動画だ。全身像を見ると意外に顔が小さいのだけれど、この動画のように、胸から上だけを写した「頭身」を感じさせない画像からは、「親しみ」を強く感じるように思う。そういった感じ方への個人差・地域差・地域差といったものは、どういう具合になっているのだろうか。






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