2011-04-26[n年前へ]
■無意識に行う「過去と現在と未来の重ね会わせ」
加藤陽子の『それでも、日本人は「戦争」を選んだ 』あとがき から。
歴史をつかさどる女神クリオは、女神のうちで最も内気で控えめで、めったに人にその顔を見せなかったといいます。…歴史とは、内気で控えめでちょうど良いのではないでしょうか。
私たちは日々の時間を生きながら、自分の身のまわりで起きていることについてその時々の評価や判断を無意識ながら下しているものです。また、現在の社会状況に対する評価や判断を下す際、これまた無意識に過去の事例からの類推を行い、さらに未来を予測するにあたっては、これまた無意識に過去と現在の事例との対比を行っています。
このようなときに、類推され想起され対比される歴史的な事例が、若い人々の頭や心にどれだけ豊かに蓄積されファイリングされているかどうかが決定的に大事なことなのだと私は思います。
多くの事例を想起しながら、過去・現在・未来を縦横無尽に対比し類推しているときの人の顔は、きっと内気で控えめで穏やかなものであるはずです。
2013-01-03[n年前へ]
■「センス(自然の感覚)」と「ミューズ(美の女神)」
安野光雅「絵のある人生ー見る楽しみ、描く喜び」から、(安野光雅の他著作で)何度か読んだことがある数節。
群像を描く場合、赤い服の向こうにまた赤い服が着て重なると上手くない。また、…右に赤い服を着た人を描くと、なぜか左の方にも赤い服を着た人を配して画面の色彩的なバランスをとりたくなったりします。このバランス感覚は、…頼るのは自分のセンスです。それは…、瞬時に頭をよぎる感覚です。
鴎外はそんな不思議な感覚(直感)について「自分の中にもう1人の自分がいて、その人が自分を操作している、自分は舞台で踊らされている人形に過ぎないと思うことがある」という意味のことを書いています。
以前、アメリカのクヌースという数学者と…話したことがあります。そのとき「頭の中の指揮者」について話したところ「それがミューズ*だよ」と言いました。「(クヌースがこの直前に書いた論文に対して)論文も、ひとたび書きはじめると後は、こころの中にいるらしい、指揮者の命令のままに書いていたような気がする」という意味のことを言っておられました。そういえば数学者の遠山啓も「数学教育の目的は直感を育てることにある」と言っておられました。
ミューズ(Muse)は芸術や学問などをつかさどるギリシャ神話の女神たちです。音楽(Music)に耳を傾けるとき、美術館・博物館(Musiam)を歩き・何かを眺める時、人を楽しませ・楽しむとき(muse)、体の中にはきっとミューズが入ってきて、それと同じように、何かを作っている時ミューズが自分の中に訪れてくれたなら…と願います。
2013-03-08[n年前へ]
■「ミューズという仮名」と「継続するための力」
「観測がひらく不思議な宇宙 」から。
電波天文衛星(はるか)の仮の名前は「Muses-B」でした。Musesという衛星名は、宇宙科学研究所の先進的な工学実験を目指したシリーズにつけられるコード名で、「ミューロケットを使った工学実験衛星シリーズ」を表すMu-Series-Engineering-Satelliteから作られた名前です。
打ち上げまではこのコード名で呼ばれ、打ち上げ成功後に本名が付けられるというのが宇宙科学研究所のやり方でした。
先輩格のMuses-Aは月・地球間スイングバイを実験した「飛天」です。Muses-Cは、2003年に打ち上げ、小惑星イトカワまで行き・サンプルを採取し、2010年に帰ってきた名機「はやぶさ」です。Muse(ミューズ)は学芸を司る9人の女神を指します。
困難を切り抜けて生きているから、次の経験をすることができました。人生もそう、努力して生き続けていないと、次の人生のステップを経験することができません。
研究と運用と実験で結ばれていた衛星ミッションチームは終了とともに霧散していきます。よきチームの存続意義と力は実経験があることでのみ存続できます。小惑星のサンプル採取する次の衛星ミッションは「はやぶさ2」と称されていますが、Musesシリーズでなく、結果を目的とするものとなります。
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