2006-08-09[n年前へ]
■エンジニアという職業選択は合理的ですか?
「エンジニアのための経済学」に「エンジニアという職業選択は合理的ですか?」が掲載されました。小島寛之・帝京大学経済学部助教授に、「経済学の視点から見た、理系エンジニアを職業として選ぶ理由」「“不況”や“失業者”を巡る二大経済学派の対立」「“理系の”小島助教授が経済学にハマった理由」といったことを聞いてみたのです。
想定読者の範囲はかなり狭まるだろうし読者の数も減るだろうなと思いつつ、狙った人にきちんと届くことを一番に考えた原稿です。
僕がマクロ経済学に飛びついたとき、現実の世界は不況で不安定になっていたわけです。そんなとき、「公共事業をやったり、お札をいっぱい印刷したりすれば安定な世界に戻るんだ」というケインズ理論はとても魅力的で、僕の「こうあってほしい世界観」に近くて、憧れとか高揚感に近い楽しさを感じたんですね。 ところが、その魅力的な世界を…
2009-02-02[n年前へ]
■不況時代の「PCの冷却部品の原価の変化」
おそらく、これから長い間不況は続く。そういった時代背景の中では、エンジニアと名乗る人であれば、当然、コストエンジニアリングを意識して材料費の動向に気をつけているに違いない。しかし、プロとは言えなくとも、テクノロジー好きな技術オタクだって、少しはそんなことを意識することがある。
それはたとえば、こんな瞬間だ。PCを自宅サーバ用や実作業用クライアント用として組み立てようとする。そんな時には、部品選びをする。当然、冷却部品を選ぶ。その時どんな部品を選ぶかは、その時の経済状態を意識しながら・・・ということになる。
もちろん、逆のシチュエーション、古いサーバー(もしくはクライアント用)マシンを捨てようとする時に、冷却部品に豪勢に「銅=Copper」が使われているのを見る。・・・そして、「この同は今は一体いくらだろう?」「一体、この冷却部品を単なる金属として売ったならばいくらになるのだろうか?」などと考える、こともあるに違いない。
ここ数日は、銅は300円/kgくらいで推移している。1~2年くらい前のプチバブルの時代には、1000円/kgほどであったが、今はそれ以前と同じ程度の価格水準(300円/kgほど)に戻っている。
道具箱をあさっていると、古いCPUファンを見つけた。銅で作られた、赤銅色に輝き、手に持ちつとズッシリ重いその(CPUファンの)冷却フィン部分の重さだけを(体重計で)量ってみると、ちょうど1kgである。つまり、材料費として300円ナリという計算になる。少し前の、高価格ノートや高価格PCなどでは、銅などが豪勢に使われている。
ゴミとしてPCを捨てるときには、少しバラして貴金属をだけ集めてみたりするのも、そして、kgあたり単価を眺めてみたりするのも、技術オタクのエルドラド探しみたいで面白いかもしれない。
2009-02-15[n年前へ]
■バブルと不況とフィードバック
一頃前は、本屋には株式の本が平積みされていた。そして、株で莫大な利益を出した人たちの本や、それに右へ倣(なら)えしたようなが並んでいた。
そんな書店の話をしながら、「今、バブルですよね」「このバブル感・高景気感は異常だと思いませんか?」というようなことを、新橋で飲みながらよく話した。
景気が良くなり、その高揚感がさらに消費や株への投資を増やしていく……そんな「バブル」な風景が、本屋に並んでいる書籍から見えていた。
こういった現象、たとえば「景気が良くなると、消費が増えて、さらにもっと景気が良くなる」といった現象は、ポジティブ・フィードバックと呼ばれる。「ある方向に何かが動いたとき、さらにそれを強める方向に力が働く」ことをポジティブ・フィードバックというのである。
ポジティブ・フィードバックと反対に、「ある方向に動いたとき、それと逆方向に力が働くこと」をネガティブ・フィードバックと呼ぶ。下に描いたように、谷底のボール(あるいは登山者)にはネガティブ・フィードバックが働くわけである。
ポジティブ・フィードバックからは安定な状態は生まれない。上がり続けるか、下がり続けるかで、結局は「発散」してしまうことになる。
次に平積みされる本が、もしも「節約ライフ」的な本だとしたら、景気にはまさにポジティブ・フィードバックが働いていることになる。それらの書籍は、不況への後押しをするポジティブ・フィードバックである。「ポジティブ」という名前が付けられた、しかし、それは同時に不況への案内図なのかもしれない。
2009-03-14[n年前へ]
■人の心理は悲観の誤謬を起こす
人間の心理として、不況のときなど、現実の打撃以上に悲観してしまう。悲観の誤謬(エラー・オブ・ペシミズム)が起こる。
J.M.ケインズ
2009-05-27[n年前へ]
■現代思想2009年5月号 特集=ケインズ 不確実性の経済学
地下の居酒屋で飲みながら、「現代思想2009年5月号 特集=ケインズ 不確実性の経済学 」を借りてパラパラとページをめくり読んだ。充実した執筆者たちが、それぞれの見方でケインズを論じていた。
数年前、ケインズは過去の化石標本であるがように経済学の話を聞き、同じように、そういった雰囲気の本が本屋に並んでいた。けれど、今、本屋に行くと、ケインズという文字が溢れていて、地域振興券や高速代金割引がバラまかれ、まさに「ケインズ的政策」が日本中を席巻している。
「100年に一度の不況」という言葉がしきりに使われている。100年に一度、不況が訪れるという。100年に一度、ケインズは蘇るのだろうか。歴史は何度も繰り返す、というのは本当なのだろうか。