hirax.net::Keywords::「匂い」のブログ



2008-01-21[n年前へ]

「ちりとてちん」と「臭豆腐」 

「ちりとてちん」に出てくる人物はみな小さい、せこい、しょうもない人間だ。落語に出てくる人間は皆そうだ。おかしな人間が一生懸命生きている。

  徒然亭草々 「ちりとてちん」

 少女マンガ風に話が流れるNHK朝の連続テレビ小説「ちりとてちん」が、なかなか面白い。この「ちりとてちん」というタイトルは、暑い盛りに「腐った豆腐を情けない男に食べさせる落語」からとられている。この「ちりとてちん」に瓜二つな料理に「臭豆腐」というものがある。臭豆腐は、発酵汁に豆腐を漬け込んだものである。臭豆腐は、腐った豆腐ではないのだけれど、表面に薄緑色のカビが生えた豆腐状のものが強烈に「臭い」を放つ、というとんでもない食べ物である。以前、「料理の科学」を考えるために(通信販売で手に入れた臭豆腐を)食べたことがある。食べようとする瞬間に臭いだけでなく、食べたあともその匂いが意図せず鼻の奥に蘇る…という思わずポロリ涙がこぼれてくる「リアクション芸人養成ギブス」のような匂いだった。

情けなくてもええねん
苦い涙もええねん
ポロリこぼれてええねん
ちょっと休めばええねん
フッと笑えばええねん
意味が無くてもええねん
それでええねん
それだけでええねん

 トータス松本 「ええねん」

2008-03-23[n年前へ]

「カラオケの(迷った時の)あの頃検索」と「とりあえずビール」 

 私たちが乗った魔法の「ライブ・トレイン」の「ライブR35」が行われるきっかけになった音楽アルバム「R35」を聴くと、1990年前半の音楽が流れていた頃の匂い・空気を、なぜか新鮮に思い出します。そして、その頃のカラオケボックスの景色が蘇ってきます。

 通信カラオケが出始めた頃で、「通信カラオケ」という最先端の言葉が(性能はともかく)客寄せに使われていて、まだLaserDiskを使ったカラオケも現役で、ガチャコン・ガチャコンと小さな小さな家内制手工業のようにメカニカルな音を出していたような気がします。そんな時代がクルクルとブーメランのように、浮かび上がってきます。ちなみに、カラオケボックスの匂いは、昔も今も、相も変わらずタバコの匂いのような気がします。

 そういえば、カラオケ・ボックスに行くと、リモコンのメニューには「あの頃検索」といったものが表示されているのが普通になりました。しかも、そんな「あの頃検索」の前には、「迷った時の」なんていうキャッチフレーズまで付いています。それは、何だか「とりあえずビール」の「とりあえず」と同じような優柔不断と迷いの感があります。

 そんな「迷った時の」あの頃検索を使い、カラオケ・ボックスというタイム・マシーンで時の流れの中を行き来していると、いつの間にか、安くもない・けれど高くもない、多いのが少ないのかわからない程度のお金が消えていきます。それは、「とりあえずビール」でビールを飲んでいるうちに、高くもない・けれど安くもないお金が飛んでいくのに似ている…なんて、ふと妄想したりします。

 と徒然なるままに書きながら、「カラオケの(迷った時の)あの頃検索」と「とりあえずビール」は結構いいな、と感じます。だって、だって人間だもの(by 相田みつを)。

あの頃検索1990年頃






2009-10-11[n年前へ]

「金星」や「木星」と「金木犀」 

 天体計算プログラムを書くと、たとえば、その中で「金星」とか「木星」という言葉を打っていると、なぜか自然に「金木犀」という似て非なる言葉が頭の中に浮かんでくる。

 今頃の季節、街中を歩いているとどこからかトイレの芳香剤のような匂いがしてくる。そのトイレの芳香剤のごとき匂いが、実は「金木犀の花の香り」だと知ったのは、いつの頃だったろうか。教えてもらったのは、いつだったろうか。

 金木犀の匂いは(多分)わかるようになったのだけれど、今でも金木犀の花はよくわからない。「丈夫そうな緑の葉っぱのあの樹」ではないか、その樹に咲いているのが金木犀の花ではないか、と想像してみるのだけれど、いつも、今一つ確信が持てないまま金木犀らしき樹を飾っている花を金木犀だと勝手に思い眺めている。

 金木犀は桂花とも言われるという。金木犀をお湯で煎じて、桂花茶ならぬ、金木犀を今度飲んでみることにしよう。金木星の強い香りを、その香りに似合うカップにでも注いで、鼻と喉で味わってみることにでもしようか。

2009-11-29[n年前へ]

NEWS今昔物語「現在・過去・未来」編 (初出2004年06月00日) 

5年前のNEWS(未来)を振り返ってみて思うこと

 かつて、「その時期のニュースを集める」ということをすると決めた時、なるべく「相反するもの」を一緒に出そうと思いました。「未来の夢」のNEWSがあるなら「過去への郷愁」と一緒に出そう、「新技術の光」を見るなら「新技術の影」も見たい、と思いました。だから、この時は「過去と現在と未来」をまとめたのだろう、と思います。

 キーワードを登録しておくと、将来そのキーワードにあてはまるニュースがあった時に知らせてくれるサービス、ライブドアの「未来検索」が今どうなっているのかはわかりません。けれど、この後Googleが始めた同様のサービス「Googleアラート」は愛用しています。

 ただ、こういうキーワードでの「検索」、あるいは、もっと広い意味での「検索」であっても、「探しているものを見つける」ことができても、思考回路が「狭い範囲」に狭められていく可能性(それが危険性なのかどうかは、私にはよくわかりません)があると思っています。

 「探したい情報」とは「異なる情報」も、そっと添えて差し出す検索サービスがあっても良いのかもしれない、そんな少し奇妙な選択性を持つアンテナがあっても良いのかもしれない、5年前のNEWSを振り返りながら思いました。

 技術の進歩が生み出すものは「新しい何か」だけではないのかもしれない。少なくとも、最新技術を使えばロウ管レコードが美しく響く。

「最新技術でロウ管レコードが美しく響く」

最新技術でロウ管レコードが美しく響く

 最近は、三次元形状計測装置をお手軽に高精度に使うことができるようになった。そんな計測器を用いて古いロウ管レコード音源の形状計測を行い、その形状を辿る針の動きを予測することで再生音を計算したという報告が5月25日に米国の学会で報告された。

 これまでにも、例えば一般に使われている光学フラッドヘッドスキャナを用いて、アナログレコードをスキャンし、画像処理を駆使し「記録されている音」を復元しよう、という遊びの試みもあった。しかし、針で再生した場合の音に比べ、その復元音は…音楽とは言えないようなものだった。しかし、今回は実際に針で再生した音と比べてみても、三次元計測と計算予測により再生された音の方が美しい。技術の進歩が生み出すものは「新しい何か」だけではないのかもしれない。少なくとも、最新技術を使えばロウ管レコードが美しく響く。

「匂い」と「景色」を繋ぐ脳内リンク

 知っている匂いを嗅ぐと、その匂いを嗅いだ時に見た光景・感情を鮮やかに思い出す、ということはよく経験することだと思う。理由はまだ明らかではないけれど、「匂い」と「眺めた景色」は何故か密接に繋がっている。

 そんな風に、私たちの脳の中で「匂い」と「眺めた景色」が密接に繋がっているようすをロンドン大学のGottfriedらがMRI(磁気共鳴画像法)により確認し、5月27日に発表した。論文をめくると、「一度見た景色」を見せると、脳の中の「匂い」を処理する領域で刺激が生じるようすを眺めることができる。もしも、懐かしい匂いを嗅いだ時や懐かしい景色を思い出したときには、自分の脳の何処かでピコピコっと刺激が生じているようすを思い浮かべてみるのも、少し面白いかもしれない。

ビル・アトキンソンの講演

 ビル・アトキンソンと言えば、Macintoshの表示周りをつかさどるQuickDrawを作ったり、テキストやマルチメディアのハイパーリンクを実現をパソコンで実現させたHyperCardを生み出したことで有名である。そのビル・アトキンソンが5月12,14日に東京・大阪で講演を行った

 コンピュータがちょっとでも好きな人であれば、その講演内容の報告を眺めると面白いと思う。「ダイアログの選択肢は当初"Cancel""Do It"だったが、"Do It"では"Dolt"(ドルト=まぬけ)と間違われて、ユーザが怒ってしまうので"OK"になった」なんていう面白いトリビアだって知ることができる。"Whatever I do, I will continue to design and share tools to enpower creative people" - 私が何をしていようとも、これからも創造的な人々に力を与える道具を作り出し続け、そして分かち合い続ける -という彼の言葉も必見だ。

未来アンテナ

 「はてなアンテナ」を代表とするような「アンテナ」と呼ばれるサービスがある。 「WEBページが更新された」という情報をアンテナがキャッチし表示する。 そして、その更新情報の中から、私たちが興味のあることを選んで読む。 つまり、それは「現在の更新情報をキャッチするアンテナ」である。その未来版ともいえる「未来検索livedoor」というサービスが先日開始された。

 「未来検索」では、「知りたいキーワード」を入力・検索しておくと、そのキーワードに関連したことが(いつかの未来に)書かれたという更新情報をアンテナがキャッチした瞬間に、メールでその更新情報を知らせてくれる。つまり、「未来の更新情報をキャッチするアンテナ」である。「知りたいキーワード」で検索をかけておけば、いつかの未来に検索結果が返ってくるのだから、これは名前通りの「未来検索」でもある。通常の検索サイトは「過去に書かれた情報をキャッチするアンテナ」であり「過去検索」である。「過去・現在・未来」に向いた色んなアンテナを広く使いこなしたい。

過去の一瞬を舞い戻す匂い 

 渡辺淳一「男と女のいる風景 」から

 ある歌や曲で、ある人の思い出が蘇(よみがえ)るように、ある季節の匂いで過去の一瞬が舞い戻ってくることがある。

公園通りの午後 (集英社文庫)



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