2015-02-07[n年前へ]
■ギネスビールの泡特徴は、二酸化炭素でなく窒素封入だからこそ(あと粘度の高さ)という話
普通の高圧下でビールに二酸化炭素を溶け込ませるけれど、ギネスビールは窒素を封入する。で、二酸化炭素を溶はビールにたくさん溶け込むけれど、窒素はあんまり溶け込まない。
その結果、二酸化炭素の泡が生まれる普通のビールでは、泡が上昇するに従いビール中に多量に含まれている二酸化炭素が(ビールから)泡中に溶け出して、泡粒径は大きく・泡上昇速度は速くなる。
その一方、窒素が溶け込んだギネスビールでは、泡は上昇中にさほど大きくなることもなく、上昇速度もほぼ一定になる。ビール自体の粘度も高いため、この傾向はさらに顕著になる。
そんなこんなのことを(ビール大好きな)知人がOpenFOAMで計算したシミュレーション結果が、下の動画です。左下が普通のドラフトビールで(違ったかも)、右下がギネスビール(泡がグラスの周辺部で下降するギネスカスケードが生じている)。
2015-03-06[n年前へ]
■流体シミュレーションを活用した「ビールの注ぎ方と泡の立ち方」シミュレーション
流体シミュレーションを活用して「ビールの注ぎ方と泡の立ち方(と美味しいビールの特徴)」の関係を明らかにしよう!という、ビール好きの・ビール好きによる・ビール好きためのOpenFOAMによる、ビールが注がれた瞬間のようすを計算した結果。
これは、軸対象モデルで、中央上部からビールが注がれています。
中心にそっとビールを注いだときの液面と泡の動きを計算してみました。専門的に言うと、自由表面と粒子の連成解析ソルバーをOpenFOAMで開発して、ビールを注ぐ様子をシミュレーション。表示はグラス断面、泡は右断面を表示、液面の色は速度の大きさを示しています。後半は右断面の拡大。中心からビールが流れ込むので、右断面だと反時計回りに泡が大きく回転しています。( masami kadoemon)
2016-04-27[n年前へ]
■「(泡が下へ沈んでいく)ギネスカスケード」を近赤外線で撮影してみよう!?
もう3年近く、知人のシミュレーション屋さんが「ギネスカスケード」シミュレーションを続けている。「ギネスカスケード」というのは、グラスに注いだギネスビールの泡が、下へ下へと静かに沈んでいく現象だ(参考:続 「ギネスビールの下に沈む泡」をOpenFOAMで計算してみよう!?)。この現象を、偏微分方程式ソルバのOpenFOAMで計算するだけでなく、(計算の信頼性を上げるべく)実験を比較している。
ただ、ほんのかすかに少しだけ残念なことに、実験撮影動画の方は、グラスの外部から見た・その表面から見える泡のようすしかわからない。なぜなら、濃い黒茶色のギネスビールでは、グラスの内部で何が起きているかはわからない。シミュレーション動画では、ギネスビールが注がれたグラスの内部挙動がわかる一方で(そういうことができるのがシミュレーションの良さでもある)、実験動画の方ではほんとうに外部表面のさましかわからないのが少し残念だ。
…というわけで、近赤外線カメラで「グラスにギネスビールを注いだようす」を撮影してみた。つまり、近赤外線の目で眺めれば、ギネスビールはほぼ完全に透明なので、グラス内部でどんな流体と窒素の泡の相互作用が起きているかを(シミュレーション動画と同様に)眺めることができる…というわけだ。下に貼り付けた動画は、透明なグラスに透明なサイダーのような炭酸飲料を注いでいるように見えるが、実際には透明なグラスに、(可視光では不透明で濃黒茶色の)ギネスビールを注いでいるようすである。
2016-04-30[n年前へ]
■続「(泡が下へ沈んでいく)ギネスカスケード」を近赤外線で撮影してみよう!?
「(泡が下へ沈んでいく)ギネスカスケード」を近赤外線で撮影してみよう!?で、グラスに注いだギネスビールの泡が下へ下へと静かに沈んでいく「ギネスカスケード」を、近赤外線で撮影することで「可視光では見えないギネスビールの内側の泡の動き」を可視化してみました。今日は、撮影を再度行った上で、撮影した動画にParticle Image Velocimetry(PIV)を掛けて、速度場を出してみることにしました。
まず、今回再撮影した動画は、近赤外線カメラのピント位置をグラス中央にして、グラス中央断面の泡が(他の場所の泡に対して)写りやすいようにします。本来は、投光する近赤外線光もグラス中央断面にのみに平面状で当てることで、さらにグラス中央断面に沿った泡のみが写るようにしたいところですが、今回はカメラのピント位置調整だけを行いました。その状態で撮影したのが、下に貼り付けた動画です。ちなみに、撮影した場所は、右に貼り付けた画像のように、グラスの真ん中あたりの領域です。
Youtubeにアップロードした動画では、画像圧縮のために泡が見えづらいですが、それでもグラス中央で立ち上る泡や、グラス端部に近い領域では沈降していく泡のようすが動画から見てとれます。泡の動きを描いた矢印の色は上下方向の速度を示していて、赤い色で描かれた矢印は上昇速度が速い泡が多い状態です。グラス中央では、上向きの赤い矢印が多い…つまり、グラス中央部では泡が上昇していることがわかります。
そこで、PIVにより描き出したギネスカスケード中の速度場のようすが、下に貼り付けた図です。(動画では視認される)グラス外周の泡沈降のようす抽出できていませんが、グラス中央で生じている泡が上昇しているさまは見えています。ギネスビールが可視光では黒茶色で不透明なために、不思議に見えるギネスカスケードですが、近赤外線で撮影した上で泡の動きの速度場を眺めてみると、自然で当然の現象であることがわかります。
2016-05-29[n年前へ]
■続々「(泡が下へ沈んでいく)ギネスカスケード」を近赤外線で撮影してみよう!?
続「(泡が下へ沈んでいく)ギネスカスケード」を近赤外線で撮影してみよう!?で撮影した、グラスに注いだギネスビールの泡が下へ下へと静かに沈んでいく「ギネスカスケード」の近赤外線による撮影を、今朝は朝日が地平線に昇る時間からリトライしてみました。…どういうことかというと、真横から指す「赤外線をタップリ含んだ(平面状の)太陽光で照らされたギネスビールのグラス断面を赤外線で撮影」し、グラスの中で生じている泡の動きを高精細に撮影してみよう!という試みをしてみたのです。
下に貼り付けたGIF動画が、(朝日を浴びつつ)試行錯誤の末に撮影した結果です。グラス中央で上昇すると泡(やビール液体)と、グラスの端部分では下方へと押し下げられていくギネスビールと泡が見て取れます。…ちなみに、ギネスビールの泡の粒径は小さいために、流体と泡はほとんど同じような動きをします。
ギネスビールのグラス内側で、「光る包丁」のような朝日につれられて上昇と下降をし続ける泡実験をしていると、そして告ぐ度にギネスビールを飲んでいると…「早朝からのギネスビールはイマイチ」ということに気付かされます。