2009-06-28[n年前へ]
■マイケル・ジャクソンの「コンサート」を実現するための特許
[CG]マイケル・ジャクソンのステージで使われた不思議な仕掛け
マイケル・ジャクソンのステージのすばらしさは誰でも知っている。しかし中には、舞台裏にすごい仕掛けがあったのを知っているだろうか。特許をとっておかなければならないほどすごい仕掛けだ。
「Smooth Criminal」のビデオを見ると、ある時点でダンサーのみんなが45度の角度まで身体を傾ける。(中略)次のビデオの3分53秒のあたりを見てほしい。
2010-02-03[n年前へ]
■「磁気力」「フレミング左手の法則」で究極コンドーム (初出:2006年10月03日)
いつの時代も、「チタンネックレス」「ゲルマニウムネックレス」「マイナスイオンドライヤー」「酸素水」など、健康グッズが世の中には溢れています。色々なグッズがあると言っても、やはり「健康グッズ」の老舗中の老舗と言えば「磁気力」でしょう。
そんな「健康グッズのキング・オブ・キングとも言える磁気力」を使った「コンドーム」が特許出願されているのを見つけて(リンク先は特許電子図書館)、思わず笑ってしまいました。何しろ、要約文を読むと、「従来のコンドーム、ペッサリーなどの避妊具と違い、磁性を持たせることにより、磁気が性器組織の血行を促進し、性交行為をより円滑にしたり、避妊具の認識を改めるさせる要素を持つ発明」と書いてあるのです。
「磁気力が血行促進により肩コリをなくす」といった謳い文句はよく見かけますが、「性器組織の血行促進(によるアレのパワーアップ)」を謳っているというのには、やはり驚かされてしまいます。しかも、この特許がさらにスゴイのは「コンドーム、ペッサリーなど避妊具に磁性を持たせることにより、スチール製のモノに付着する、例えば冷蔵庫のドアに付着させて置いたりという、避妊具のイメージを改善しうる」という保管方法をも特許請求しているところです。
「冷蔵庫のドアにコンドームを貼り付けておく」…これはまさに意識改革・文化大革命です。男女の文化が大きく変わること間違いありません。
世の中にはスゴイ特許申請もあるものだなぁと感心しつつ関連特許申請を調べてみると、やっぱりあの人の特許申請もありました…。あの人と言えば、それはもちろんドクター中松です。発明の名称はズバリ「感度が向上するコンドーム(特許公開平7-136207)」、特許の請求範囲は「磁気又は電導性を一部又は全部に有する事を特徴とするコンドーム」です。こちらの特許がスゴイのは、動作機構が詳細に説明されているところです。
何と、「男性の抽送(ピストン)運動によりマグネットも抽送運動され、フレミング左手の法則により、女性性器内血管が発電し、その電流は女性のみならず導電性コンドームにより男性側にも流れ脳神経に達し、ベータードパーミンを脳内に発生させ、男女共に性感度が著しく増大する」と記述されているのです。まさか、高校生の頃に習った(磁界と電流と力の向きを示す)フレミングの左手の法則が、「男性のピストン運動(の起電力)」や「女性内部の血管での発電」に繋がっているとは思いもしませんでした。…ドクター中松の妄想発想力には本当に驚かされます。しかも、それが導電性コンドームにより男性の脳神経に達するメカニズムまでも解明しようとするところが、恐るべし…ドクター中松です。
今回の2件の特許申請、「効果を信じる・信じない」はさておいて、その発想力・行動力は見習いたいものだ…とふと思います。繰り返しになりますが、「効果を信じる・信じない」はさておいて。
2010-02-23[n年前へ]
■特許抵触検証のために(CPUの)X線透視や内部コード解析をしてみよう!?
「コピー品」から。
某自動車メーカのT社は某電機メーカのT社にECU用のCPUを作らせた。表向きはオリジナルCPUで、8ビット、同期バスでROMを内蔵していた。私はある自動車メーカの依頼でそのECUを解析する事になった。まずはCPUを調べる。X線で透視してI/O端子の当たりを付け、外部ROMモードがある事をつかむ。
何故解析をするのかというと、一つは特許の問題だ。制御アルゴリズムなどの特許は、実際のコードを見ないとハッキリ解らない場合がある。ギリギリ特許に抵触しないように設計するためには相手のECUの中身を見る必要があるという事だ。
現在でも同様の解析がコスト的に可能かどうかはわからないが、(検証性を問われがちな)制御アルゴリズムの特許を書こうとする人には、とても興味深く・楽しめる話かもしれない。
■「学術論文」と「特許」の間に流れる深くて暗い河 (初出:2006年04月30日)
「 神戸大教授、実験データを捏造 特許出願取り下げ 」「 実験データ捏造、過去の論文も調査へ 神戸大が記者会見 」という朝日新聞の記事を読みました。「特許の出願書類に、実際は実験していないデータを記載していた」ということが記事になっているものです。
関連ニュースを読みながら、「深くて暗い河」を感じました。特許に長く関わったことがある人たちと、そうでない人たちとの間に流れる「深くて暗い河」です。
前者の「特許に長く関わっている人たち」としては、たとえば、企業の中で特許を書いたりする技術者たちや知的財産関連業務の方々、あるいは、特許事務所の弁理士の方々、はたまた、特許庁の方々などです。そして、後者の人たちは、「学術論文」と「特許」を同列に扱っているような記事を書いた新聞記者の方などです。
日本特許取得企業ランキングや米国特許取得企業ランキングを見ると、多くの企業がそれぞれ多くの特許を取得しています。ここに挙げられているのは「登録された特許」なので*1、この影にはさらに膨大な「登録されていない出願特許」があるわけです。登録されていない出願特許は「特許庁に認められなかった」というものもありますが、企業(出願者)側が「特許庁に特許をチェックしてくださいね、という依頼(=審査請求)をしていない、というものもあります。つまり、(現時点では)特許を出願して一般に公開しただけ、というものもあります。これら膨大な特許申請はおそらく特許書きノルマのせいでしょう。
実際、特許庁の方の報告会中で、会社ごとの社員数を横軸にとり、縦軸に(各会社の1年あたり)特許申請数をとった散布図を眺めたことがあります。その散布図グラフは、見事なほどに一本の直線状に乗っていたのです。そして、その傾きはほぼ3程度でした。
つまり、その関係を式にするとこういう具合です。
特許申請数=3×社員数この比例定数「3」は、あくまで「予想」ですが、間違いなく、1年辺りの「特許書きノルマ件数」(より実際にはきっと少し小さな値)に違いありません。それが、とても単純に現象を説明できる「自然な考え方」だと思います。
こうした膨大な特許申請が、きちんと検証された後に書かれたものだと信じている人はおそらくいないと思います。少なくとも、特許を毎年量産し続ける人たちなら、「特許中のデータがすべて検証されている」なんていうことを信じているような人はほとんどいない」と言って良いと思います。
「学術論文」と「特許」は少なくとも現状は全く違う、のです。
今回の一連の記事・対応からは、そういった「特許と学術論文は少なくとも現状は全く違う質のものとなっている」という背景がまったく見えてきません。
そろそろ、そうした「特許という世界の背景」や「特許と学術論文の違い」といったことについて、きちんと解説した記事が出てきても良い頃ではないでしょうか。*1 ちなみに、特許が仮に登録されたとしても、その特許が「万能の剣」になるわけでもありません。その登録特許に文句がある人や企業が、「おいおい、この特許は○×の理由でダメじゃないの?」と特許をツブす無効審判をかけてくることだって普通によくあることです。特許は申請すればそのまま有効になるわけでもなければ、登録されれば絶対的なものになるわけでもない、ということも「知っている人には当たり前」の話ですが、知らない人だと意外に感じることもあるかもしれません。
2012-05-10[n年前へ]
■日経BP『iPhone/iPadには”見えないデザイン”が込められてる』記事がホントかどうか検証してみた(エミュレータ編)
特許文献を根拠として書かれている『iPhone/iPadに込められた「見えないデザイン」』(日経BPネット)という記事を読みました。こうした「特許を根拠に書かれた」記事の真偽はとても怪しい(間違っていることの方が多い)と思っています。
まず、特許(出願)書面に書かれたことは「そこに書いてあることが正しい」とは限りません。 たとえば、わかりやすいあたりで、特許公開平7-136207「感度が向上するコンドーム」を眺めてみることにしましょう。 発明者はドクター中松、発明の名称は「感度が向上するコンドーム」です。
「男性の抽送(ピストン)運動によりマグネットも抽送運動され、フレミング左手の法則により、女性性器内血管が発電し、その電流は女性のみならず導電性コンドームにより男性側にも流れ脳神経に達し、ベータードパーミンを脳内に発生させ、男女共に性感度が著しく増大する」フレミングもファラデーもビックリなこの超技術、特許出願書面に書かれているけれど「内容は(何だか)正しくなさそうだ」と思わざるを得ないのではないでしょうか。…もちろんドクター中松の例は「極端な例」ですが、特許(出願)書面に書かれていることは、別に正しいこととは限らないのです。
さらに、その特許に書かれた技術が、実際に使われている・使われるとは限りません。 特許出願はしても「特許に記載された内容を製品には使っていない」ということの方が、実はずっと多いのです。
つまり、何か「ひとつの特許」を引っ張り出してきても、それは「こんな技術が使われている!」とか「こんな技術が近日登場する!」といった根拠にはならないのです。
さて、『iPhone/iPadに込められた「見えないデザイン」』は、米国特許7844914を根拠に「iPhoneやiPadのタッチパネル上の文字入力では、キー検知領域は六角形になっている(ようだ)」と主張します。
この場合、アップルは画面上に表示される「見せかけ」のキーボードとは別に、実際の入力のための別のキーボードを用意しているようだ。上記特許の場合、図Cが画面上の「見せかけ」のボタンは四角いが、実際のタッチセンサー上に配列されているボタンの配列や境界線は図Dのような6角形になっている。これならば指で触れるポイントが実際に狙っている位置から下ぶれしても、ある程度のミスを防げるというわけだ。しかし、実際にスタイラスを使いiPhoneのソフトキーボードを使ってみた感覚では、キーを判別するための領域分割は日経BPの記事のようにはなっていないように思われました。 (この”感覚”というものが、実にあてにならない、先入観や勘違いが入りやすいものなんですけど、ね)
「いずれ、XYステージにスタイラスをとりつけて、実際にiPhone(もしくはiPad)のキー領域分割を調べてみることにしよう」と考えつつ、今日は「Apple 謹製 iOS Emuator 上で、iOSのUIKitが提供するソフトキーボードのキー領域分割状況を調べてみる」ことにしました。 Apple純正とはいえ、実機とシミュレータは完全に同じ動作をするわけではありませんが、「iOS emulator上ですら入力領域の分割が6角形になっていたとしたら、”特許に記載された内容が実際に使われている”と判断して(日経BP記事を信用しても)良いだろう」と考えたのです。
確認手順はとっても簡単、iOS emulator 上で画面をしらみつぶしにクリックさせ、iOS上で入力されたキーをXY座標上に配置するPostScriptコードを吐かせ、そして(ソフトキーボードを表示している)iPhone画面上に重ねてみた、というだけです。(作成した小物ツールはgituhubに置いてあります)
その結果、つまりiOS Emulator上でのキー領域分割状況、が下に貼り付けた画像です。 少なくとも、iOSエミュレータ上では、いたって普通の「矩形」分割がなされていました。
さて、実機で検証したら、UIKitの「キー領域分割状況」は一体どのようになっているのでしょう?・・・果たして、日経BP(日経デザイン)が書く『iPhone/iPadに込められている「見えないデザイン」』は実在するものなのでしょうか。それとも、記事中に登場する「見えないデザイン」は、「見えないもの」を(こうあって欲しいという)”思い込みパワー”が勝手に作り出した幻想なのでしょうか?