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2009-04-12[n年前へ]

読む人が真似をしたくなる江國香織の「作文術」 

 江國香織の文章は、本当に的確で、読んでいるととても気持ちが良くなる。文字をそのまま追っていくだけで、書いてあることが「すぅっと」頭の中に収まってくるし、それでいて何度読み直しても新鮮だ。

 江國香織が22人のインタビューイに「子供のころの話」を聞き、それを文章にした「十五歳の残像 」を読むと、そんな感覚をどの頁・どの行からも感じることができる。たとえば、 「すとん、と伝えるひと――――安西水丸さん」ならこうだ。

 理屈では説明できないこと、というのがある。とても簡単なことなのに――――とても簡単なことだから、と言うべきかもしれないが――――、説明はできない。
 たとえば。
 わかります、と、私は思わず声を大きくしてしまう。一体何がわかったのか、どうわかったのか、はよくわからないままに。
 なんの理屈も説明もなく、ただすとんと胸におちてくる。
 江國香織の文章には、とてもわかりやすく納得させられてしまう。そして、不思議に心地よい。

 江國香織の文章の恐ろしいところは、彼女の書いたものをよむと、その江国香織の「文の調子」「文体」を無意識のうちに真似しようとしてしまうことだと思う。もちろん、そんなことは誰にもできない、のだけれど。

十五の頃、いちばん恥ずかしいと思っていたこと 

 江國香織 「十五歳の残像 」から。

 十五の頃、いちばん恥ずかしいと思っていたことは何ですか、と訊いてみた。安西さんのこたえは「人をおしのけたり自己主張したりすること」
 じゃあいまいちばん恥ずかしいことは、と訊くと…

「すとん、と伝えるひと――――安西水丸さん」

2009-04-13[n年前へ]

「表現」と「矛盾」 

 江國香織 「十五歳の残像 」から。

 そりゃあどんどん矛盾していくよね、と、甲斐さんは言った。…
 でも、と言って、甲斐さんは私の顔を見た。「でも、表現するということはそういうことでしょう?イメージをある程度限りある形で強く打ち出していく、というのが表現ななんだから」
 あまりにも正しかったので、私はちょっと黙ってしまう。

「アンビヴァレンスのひと――――甲斐よしひろさん」

2009-04-14[n年前へ]

「時に、無神経でいられること」 

 江國香織 「十五歳の残像 」から。

 十五のころといまとで、いちばん変わったことはなんですか、と、最後に訊いた。宮本さんは少しだけ考えて、
 「無神経でいようと思ったら、いられるようになったことかな」
 とこたえた。丁寧な口調で。

「やわらかく強靭なひと――――宮本文昭さん」

2009-04-16[n年前へ]

十五の頃と今と、なにが変わったと思いますか。 

 江國香織 「十五歳の残像 」から。

 十五の頃といまと、なにが変わったと思いますか、と訊いた。
「大人になったんじゃない?自分をごまかす、とか、許す、とか、そういうことは長けてきたと思います。
 「私はもどりたいもの。いまの心境でよ。いま会ってる人、いま好きな人の、若いころに会ってみたい」
と、ちょっと色っぽい声音で言うのだった。

「色とりどりに、話すひと――――おすぎさん」



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