2002-06-03[n年前へ]
■カードサイズの「画像探偵セット」!?
お手軽線数メーターを作るのだ
「どんなものでも、自分の目で眺めてみた〜い」と、ワタシはいつでも思う。世の中スベテのものを、自分の目で眺めてみた〜いと思う。しょんべん小僧が空中に描き出す放物線、巨乳ギャルにロックオンするオッパイ星人の目の動き、ビデオにかかるモザイクの向こう、はたまた田代まさしが恋い焦がれるミニスカートの結界の秘密、とにかく世の中のものスベテを何でもかんでも眺めてみたい、覗いてみたい、とワタシはいつも思っているのである。(とはいえ、誤解されると困るので念のために書いておくが、もちろんミニスカートの中を覗いたりはしないのだ)
そんなわけで、ワタシのケータイのストラップには「ちっちゃなちっちゃな虫メガネ」がついている。この虫メガネを武器にして、ワタシは色んなモノを覗くのがクセになっている。スーツ姿で出張している時だって、おもむろにこの虫眼鏡を取り出して、色んなものを覗いてみたりしているのである。
だから、毎朝届けられる新聞に折り込まれているチラシやカタログを眺めるときだって、そんなカタログに「ちっちゃなちっちゃな虫メガネ」を向けてみて、その「虫メガネ」を通して、カタログがどんな風に印刷されているかをよく眺めてみる。下の左のようなカラーの綺麗なカタログだって、「虫メガネ」を通して眺めてみると、右の拡大写真みたいに、四色(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)が規則正しく並んでいるようすが見えてくるのである。離れてみればキレイな写真が「虫メガネ」を通して眺めてみるだけで、こんな風に様子が変わるなんてとても不思議な気分になったりするのである。まるで、女性の化粧のように不思議で、こんな四色の手品はとても面白いのである。
(左上と右上部分はマゼンダとシアンだけを見やすくしてみた) |
で、こんなカタログの拡大図を眺めていると、四色に分けられた色がどんな風に並べられ形作られているかを、知りたくてたまらなくなったりする。つまり、「どんな間隔でこの色は配置されているのだろう?」とか「一体、どんな角度でこの色は並べられているのだろう?」とか思うわけである。もちろん、この画像に二次元フーリエ変換などをかけさえすれば(周波数解析をすれば)、「どんな角度で・どんな間隔で色が並べられているか」ということは知ることができるけれど、まさかワタシの頭の中でそんな作業ができるわけはない。かといって、このカタログを読み込むための「画像読みとり装置」や「解析をするためのコンピューター」を毎日持ち歩くなんてこともできるわけもない。
そこで、「どんな間隔でこの色は配置されているのだろう?」とか「一体、どんな角度でこの色は並べられているのだろう?」とかいう疑問の答えがすぐ判るように、先日こんなカード、ぴったりクレジットカードサイズの透明シートに規則的なパターンを印刷したカード、を作ってみた。名付けて、Peco-Chartなのである。
これはもちろん、判る人には判るだろうが、ハンディ「線数メーター」というモノである。一言で言えば、画像の周波数解析をとっても簡単にすることができる手品の小道具のようなカードなのだ。
例えば、さっきのカタログの上にこのPeco-Chartを重ねて置いてみると、アラ不思議、何やらヘンな模様、不思議なモアレ模様が浮かび上がってくる。下の左の写真、あるいは右の拡大写真を眺めてみればマゼンダとシアンの同心円がハッキリと浮かび上がっているのが見えるだろう。例えば、シアン色の場合は75°の角度で175線(175線/inch)位の位置、そしてマゼンダ色の場合は45°の角度で同じく175線位の位置を中心として、同心円状のモアレ模様が浮かび上がっている。
つまり、「このカタログはシアンは75°の角度方向に1インチ辺り175個のドットが並べられていて、マゼンダのドットは45°の角度方向に並べられている」、ということを、このPeco-Chartを重ねて置いてみさえすればたちどころに知ることができるのである。
こんなペラペラのカードで周波数解析ができるなんてとても不思議に思えたりもするけれど、ちょっと考えてみればこれはごく当たり前の話である。
でも似たようなことをしたように、モアレというものは「二種類以上の何らかの模様(パターン)が干渉して発生する」ものである。つまり、ある意味「二つのパターンの相関をとる」ということである。そしてまた、少し考えてみれば「画像の周波数解析」というものは「対象となる画像」と「基準関数(三角関数etc.)」の間で相関を調べることと同じである。だから、「基準となるパターン」を「対象となる画像」の上に重ねてみた時に見えるモアレのパターンは「対象となる画像」の周波数解析結果を実は示していると考えてみても良いのである。だから、このPeco-Chartはクレジットカードサイズのペラペラなちっぽけなヤツではあるのだけれど、実は色んな画像の周波数解析をしてくれるスゴイヤツだったのである。そして、こんなポケットに入るほど小さい線数メーターははなかなか無いので、、カード入れからコイツを華麗に取り出してみせたりすると、うらやましがる人もとても多く(仕事柄、画像出力に関わる人達が多いから)、なかなかに気持ちが良いのである。 とはいえ、自慢してばかりでは何なので、さらに大量に配布すべく新たなPeco-Chart二号機をデザインしてみた。それが、下の名付けてPecochartproである。
このPecochartproの謳い文句はその名の通り「プロ仕様」というわけで、画像出力に関わっている何人ものベータテスター達(自分も含めて)の感想をもとにして、
- 70線から350線までの線数とスクリーン角度の測定ができる「線数・角度メーター」(分解能を2線単位から1線単位へと二倍向上、スクリーン角度のガイドは2.5度刻み)
- 90線から410線までの線数を高精度(0.25線刻み)に計測することができる「線数メーター」(新機能)
- 線・文字の太さを計測できる「線幅スケール」(新機能)
- 〜30級、〜30ポイントまでの文字サイズ(級数、ポイント)測定ができる「文字スケール」(Peco-Chartと同じ)
- 「8cm定規」(Peco-Chartと同じものを使い勝手はそのままにコンパクト化)
- そして、便利な「画像に関する換算表」(内容を従来比75%増量)
それにしても、何か自分に役に立つツールを作るというのは本当に楽しい作業だった。手作りツールぎゃらりい脇色彩研究所ではないけれど、こんな「hirax.netオリジナルグッズ」をいっぱい作って「探偵セット」ならぬ「できるかな?セット」として、面白メールをくれた方にプレゼントとかしてみたら楽しいんだろうなぁ、と思うのである。というわけで、そんなツールをせっせと作るのだぁ、なんてことを実は計画中なのでした、ハイ。
2007-12-31[n年前へ]
■続 読みづらいSPA!のヒミツは「アナログ工程」か「老眼」か?
先日の『読みづらいSPA!のヒミツは「アナログ工程」か「老眼」か?』にSPA!の記事が読みにくいのは、製版工程でなくて刷版工程のせいではないか、具体的には、SPA!の表紙と中折以外の部分が、オフセット印刷でなくグラビア印刷になっているせいだろう、と教えて頂きました(印刷屋は「広義の製版」を論理工程と物理工程に分け、論理工程を「製版」として、物理工程を「刷版」と区別するそうです)。グラビア印刷はほとんどの場合ヘリオクリショグラフなどの機械彫刻により刷版されるので、350DPI程度でしかドットを生成できず前回のような文字出力になる、ということでした。
「オフセット印刷はCTP(レーザでダイレクト刷版)が一般的なので画線が綺麗だけれど、色再現を重視する女性ファッション雑誌や用紙を薄くしたいカタログ誌などではグラビアが多く使われる」ということなので、あまり色が綺麗とは思えないSPA!の場合には薄い用紙を使うためにグラビア印刷が使われているのでしょうか?