2011-03-28[n年前へ]
■「まだチェルノブイリより何桁も下とか思ってるのかな」
「牧野の公開用日誌」
福島原発 の放射能を理解するを見ると、今でもチェルノブイリのようになってしまうと思っている人も多いです。とか皆さん、これを参考にして自分の周り(家族、近所、学校など)で国民の不安を少しでも取り除くための「街角紙芝居」に出て頂けませんでしょうか。とか書いてあるのね。まだチェルノブイリより何桁も下とか思ってるのかなあ?
2011-04-17[n年前へ]
■「放射性物質がある場所が見える目」と「放射性物質を見ないスクリーニング検査」
「放射線は目に見えないから怖い」という言葉を聞きます。けれど、目に見えないように思えることも、実は意外に「見る」ことができるものです。
被災地に住む知人が、身の回りにあるたくさんのものに線量計を向け、放射線量を計っています。たとえば、一番強く放射線を発していたのは、ビル屋上の「水溜まりが乾いた跡」で、およそ20〜50μSv/h程度で放射線を発している、ということでした。公式に発表されている放射線量よりも、自分たちが使う線量計で計った結果はおよそ2倍近く大きいことが多い、ということでしたので、ここで書くμSv/h値は、その程度の違いは持つかもしれない値です。ちなみに、バックグランドレベルの計測値は0.2μSv/h程度だったそうです。
たくさんの場所・ものを計り続けた結果、強く放射線を発しているのは、アスファルトやコンクリートの上に残る水たまりの跡や、公園に生える木の幹表面や、あるいは、(静電気で粉塵を集める性質のある)塩ビのパイプといったもので、降雨とともに地面に落ちたものが集まるような箇所とか、粉塵を集めるようなものは放射線を強く発していた、と言います。だから、たとえば、ダスキンモップのようなもので、家の中を拭くとモップに付いた粉塵から放射線が発せられていた、というわけです。つまり、「たとえば花粉のような粉塵が集まる」場所は、もれなく放射線を強く発する場所です。
そういった「大気に漂うもの」が(何かに吸着したりして)地面に降り積もりやすそうな場所を、心の目で眺めて見つけ出してみれば、確かにそういう箇所は他の場所に比べて強い放射線を発している…というわけで、放射性物質がある場所は「見える」のです。
事故が起こってから、雨が降った跡に地面に残る(水溜まりの跡に残る)黄色い花粉跡を眺め、「放射性物質でないか?」と心配した人が多かったといいます。そして、「それは、ただの花粉ですから心配ないですよ」という説明がされていたのも記憶に新しいところです。けれど、関東地方はともかく、風向きと降雨の組み合わせが悪かった地域では、あの花粉が集まった黄色い跡は、放射性物質が濃い場所と実は”イコール”でもあったわけです。そうした地域では、「その黄色い跡は、別に放射線を発するわけではありませんよ」という説明は、「正しくない」ということになってしまいます。
…そういった説明を生み出す駆動力を眺めれば、それは今回の事故を生む土壌と同じではないかという気もします。
長い休み明けの校舎にたまったホコリを、雑巾を持ったこどもたちが拭き掃除する学校もあれば、(こどもたちが登校する前に)ダスキンモップを持った大人たちが掃除する学校もあるかもしれません。…放射性物質がある場所が見える目で眺めれば、そのふたつの学校は ずいぶんと違う(こどもたちに対して違う対応をする)校舎に見えることでしょう。
線量計を強く反応させる粉塵を集めた知人は、ケースに入れた(ケース越しに20μSv/hを発する)粉塵をズボンのポケットに入れ、「被ばくの有無」を確認するスクリーニング検査に向かいました。ちなみに、「除染が必要かどうか」のしきい値は、3月20日付けで原子力安全委員会が10,000cpmから100,000cpmに変更していて、この値は TGS-136 型 GM サーベイメータ(5cm 口径)を用いた場合の1μSv/h(10cm 離れた場所での線量率)に相当します。けれど、少なくとも知人の(ズボンのポケットに入った)20μSv/hを発する粉塵を検知することはありませんでした。腰に20μSv/hの粉塵を入れた知人は「何の問題もなし」ということで、スクリーニング検査を通過してしまったのです。
「放射性物質がある場所」は、意外に思えるかもしれませんが、目で見ることができたりします。けれど、その一方で、「放射性物質を見ないスクリーニング検査」もあったりするのです。
2011-04-28[n年前へ]
■「進む」私たちが「できる」こと
小学校の教室に避難している人の後ろに、こどもたちが習字で書いた「進め」という紙がたくさん貼ってありました。教室にこどもたちがいた頃にすでに貼られていたはずの、こどもたちが墨汁で描いたはずの「進め」という言葉を眺めました。
原発が事故を起こしてから、いわき市内の学校内で「水溜まりが乾いた跡などで20μSv/h以上の出力を線量計が出している」という実計測結果を聞いていました。そんな数字を知った上で、その後にどんな選択をしていくかという選択には、「答え」などないのだろうと思います。こどもたちに背負わせたくない「リスク」という名の厄難と、彼らにプレゼントしたい可能性と、それら「いずれも確実なものでないもの」を天秤にかけ・そのいずれかを選ぶということは、容易にはできないことに思えます。
教室の後ろの壁に貼られていた習字のように、「進む」ことしかできない私たちは、適当なヒューリスティックス(曖昧な経験則)にもとづいて、行き当たりばったりの判断を(過去そうであったように)未来永劫し続けなければいけないのだろうと考えます。
けれど、「進む」ことしかできない私たちでも、「簡単にできる・ささやかだけれど役に立つこと」があるのではないかとも考えます。根拠もあやふやなリスク見積もりでなく、より大きな要因を勘定に入れない精度が確かな計算でもない、「何か」がたくさんあるようにも思えます。
たとえば、長い休み明けの校舎にたまった(放射能を帯びた)ホコリを、こどもたちが登校する前に、ダスキンモップを持った年老いた大人たちが掃除するなんていうことは、(たとえば、休み明けに雑巾を持ったこどもたちが溜まった埃を拭き掃除するということに比べれば)たいしたリスクを伴わずにこどもたちへの大きなリスクを避けることができる、伊東家の食卓的な役立つ「知恵」に思えます。
「イソジンガーグルをそのまま飲むとお腹がもたれるから、ビタミンCを適量トッピングして中和させたものをこどもには飲ませた(笑)」と小名浜近くの人が軽く話すのを眺めながら、あぁこういう言葉こそが「知恵」というものなのだろうかと思わせれました。
「進む」ことしかできない私たちが(選択に悩むことなく)「できること」とは何だろうか、そのために必要な「知恵」というものは、一体どのようにすれば手に入るものなのだろうか?と考えます。その「答え」は、他の誰か(何か)が教えてくれるものではないということを、この春知ったような気がします。
2011-05-04[n年前へ]
■鉄分100%「鉄っちゃん」のための「放射線講座」
私たちの身の回りにの世界はすべて元素が作っている…と書けば、「もしかして 放射性元素」とGoogleが推測してしまうような今日この頃です。けれど、身の回りにいる人たちの中に一番満ちあふれている元素がフェライト、つまり「鉄分」です。もっと端的に言えば、過剰に「鉄道が好き」という奇妙な衝動を抱える人たちの、血液の中に流れている「鉄」という名の元素です。
「未来の科学者との対話—第1回神奈川大学全国高校生理科・科学論文大賞受賞作品集 」の中に収録されている、二松学舎大学附属高等学校 理数科研究部の「身近な放射線計測ー種々の乗物内での放射線−」という論文を読みました。これは、(財)放射線計測協会が貸し出している簡易型放射線計測器「はかるくん」を使い、さまざまな状況下での放射線量を計測した結果を、高校生たちが報告する論文です。
私達は毎日、自然の放射線を浴びながら生活している。それら自然放射線による被曝量は、1時間あたり合計で約0.27μSvである。…今回は主に飛行機内、新幹線電車内および船内における放射線量を計測した。さらに、本校の研究紀要第一集ですでに報告した東京近郊の地上電車内、バス車内および地下鉄電車内での計測結果を含めて、いろいろな乗物内における放射線量を比較した。
下のグラフは、彼らが修学旅行や一泊の京都旅行をする中で「はかるくん」を使い、東海道新幹線「東京駅から京都駅まで」の区間で測った放射線量です。
明らかなトレンド(傾向)もあれば、局所的に放射線量が強い場所もあります。その放射線量の強い場所を生み出す原因は、…ひとたび「どの辺りで放射線量が強くなった」ということを眺めれば、「鉄分の高い人」ならすぐに見極めることができるはずです。
たとえば、箱根を過ぎる辺りから(つまり静岡県に入ったあたりから)何回か放射線量が強い辺りがある…というデータを眺めれば、血液に(鉄道大好きの)鉄分が流れている人ならばきっとわかるはずです。
東海道新幹線に乗ると、名古屋から大垣を過ぎ関ヶ原に入る辺りから放射線量が増えます。そして、その放射線量とは独立に、(場所路見れば鉄っちゃんならわかるはずの)長いトンネルがある辺りではさらに強い放射線が乗客に向かって降り注ぎます。
京都周辺の放射線量は東京周辺の2倍であった。…一般に花崗岩中のカリウム40・ウラン238・トリウム232の含有量は、他の岩石に比べてかなり多いことが知られている。関西地方では関東地方にくらべて花崗岩質が多いため、その土壌や岩石からの放射線が強いものと考えられる。また、トンネル内では岩石で囲まれた状態であるため、岩石中の放射性物質からの放射線の影響を強く受けるものと考えられる。
私たちが暮らす世界には、色んな元素があふれています。その中には、もちろん放射性元素もあるわけです。高校生たちが計測器を手にして調べた「乗り物放射線比較」…血液にフェライトが流れている人であれば、必ず面白く楽しむことができると思います。
そして、世界を形作るものが「元素」なら、この本に登場する学生たちは、みな明日を作る原石です。未来を切り開いていく鉄分100%「鉄っちゃん」たちが計った放射線量を眺めた時、あなたはどんなことを考えますか?
*今回の話は「「加速度センサ」で「人に迷惑な電車男」::(2005.07.19)」と一緒に眺めるのが、鉄っちゃん的に良いかと思います。
2011-05-05[n年前へ]
■「30秒間で眺める東京・京都間の車窓」と「放射線量グラフ」
東京と京都間を新幹線で移動する際の「放射線量」を、二松学舎大学附属高等学校 理数科研究部が簡易型放射線計測器「はかるくん」を使って計測した結果を鉄分100%「鉄っちゃん」のための「放射線講座」で紹介しました。
京都周辺の放射線量は東京周辺の2倍であった。…一般に花崗岩中のカリウム40・ウラン238・トリウム232の含有量は、他の岩石に比べてかなり多いことが知られている。関西地方では関東地方にくらべて花崗岩質が多いため、その土壌や岩石からの放射線が強いものと考えられる。また、トンネル内では岩石で囲まれた状態であるため、岩石中の放射性物質からの放射線の影響を強く受けるものと考えられる。
血液中に鉄分溢れる…つまりは鉄道大好きな「鉄っちゃん」ならば、「新幹線電車内での放射線量の変化(東京-京都)」というグラフを一目眺めれば、グラフの各箇所がどの辺りであるかがわかるだろうと思います。たとえば、東京駅側(グラフの左側)から行くと、最初の放射線量の多い辺りが小田原から三島までの長いトンネルが続く辺りだとか、その次の放射線量ピークが蒲原から由比…とトンネルが続く辺りだろう…とか、そして京都駅前の最後の放射線量ピークは、琵琶湖横からトンネルに入り山科から東山に抜ける最後のトンネル辺りだろう…と車窓を思い出しつつ考えるのではないでしょうか。
しかし、奇妙なことに、血液中の鉄分が足りない人も世の中にはいます。フェライトが足りず、東海道新幹線の車窓を思い浮かべたりはしない、という人も不思議なことにいるのです。
そこで、下に東海道新幹線の車窓を微速度撮影した動画を貼り付けてみました。これは東海道新幹線の「上り」の車窓を撮影したものです。14秒辺りが京都駅になります。それから東京駅までの車窓を「30秒ほど」で眺めることができます。この東海道新幹線からの車窓を眺めれば、高校生たちが計測した「新幹線電車内での放射線量の変化(東京-京都)」をより実感できるのではないか、と思います(たとえば、動画で37秒あたりが小田原と三島の間のトンネル群ですね)。
ところで、彼らの論文は第一回神奈川大学 全国高校生理科・科学論文大賞で 努力賞をとった論文群の一部です。校舎内や通学路で放射線量を計ったり、「甲子園までの道」や「ありとあらゆる旅先」で計測をし続けたり、あるいはJCO周辺で計ったり…ということをずっとし続けていたようです。
1999年9月30日、東海村で臨界事故が起こり、地域への放射能汚染の映像が生々しく報道された。そのとき私は中学3年生で… 在学しての3年間、修学旅行の新幹線内を含め至るところで放射線測定をした。…
石原利臣さんの「受賞のコメント」から。
「はかるくん」を手にする高校生たちは、きっと今でも色々なものを計っているのだろう、と思います。新緑を目にするこの季節、高校生たちは、どんな場所でどんなものに「はかるくん」を向けているのだろう?と考えます。
*今回の話は「「加速度センサ」で「人に迷惑な電車男」::(2005.07.19)」と一緒に眺めるのが、鉄っちゃん的に良いかと思います。