hirax.net::inside out::2011年05月04日

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2011-05-04[n年前へ]

鉄分100%「鉄っちゃん」のための「放射線講座」 

 私たちの身の回りにの世界はすべて元素が作っている…と書けば、「もしかして 放射性元素」とGoogleが推測してしまうような今日この頃です。けれど、身の回りにいる人たちの中に一番満ちあふれている元素がフェライト、つまり「鉄分」です。もっと端的に言えば、過剰に「鉄道が好き」という奇妙な衝動を抱える人たちの、血液の中に流れている「鉄」という名の元素です。

 「未来の科学者との対話—第1回神奈川大学全国高校生理科・科学論文大賞受賞作品集 」の中に収録されている、二松学舎大学附属高等学校 理数科研究部の「身近な放射線計測ー種々の乗物内での放射線−」という論文を読みました。これは、(財)放射線計測協会が貸し出している簡易型放射線計測器「はかるくん」を使い、さまざまな状況下での放射線量を計測した結果を、高校生たちが報告する論文です。

 私達は毎日、自然の放射線を浴びながら生活している。それら自然放射線による被曝量は、1時間あたり合計で約0.27μSvである。…今回は主に飛行機内、新幹線電車内および船内における放射線量を計測した。さらに、本校の研究紀要第一集ですでに報告した東京近郊の地上電車内、バス車内および地下鉄電車内での計測結果を含めて、いろいろな乗物内における放射線量を比較した。

 下のグラフは、彼らが修学旅行や一泊の京都旅行をする中で「はかるくん」を使い、東海道新幹線「東京駅から京都駅まで」の区間で測った放射線量です。

 明らかなトレンド(傾向)もあれば、局所的に放射線量が強い場所もあります。その放射線量の強い場所を生み出す原因は、…ひとたび「どの辺りで放射線量が強くなった」ということを眺めれば、「鉄分の高い人」ならすぐに見極めることができるはずです。

 たとえば、箱根を過ぎる辺りから(つまり静岡県に入ったあたりから)何回か放射線量が強い辺りがある…というデータを眺めれば、血液に(鉄道大好きの)鉄分が流れている人ならばきっとわかるはずです。

 東海道新幹線に乗ると、名古屋から大垣を過ぎ関ヶ原に入る辺りから放射線量が増えます。そして、その放射線量とは独立に、(場所路見れば鉄っちゃんならわかるはずの)長いトンネルがある辺りではさらに強い放射線が乗客に向かって降り注ぎます。

 京都周辺の放射線量は東京周辺の2倍であった。…一般に花崗岩中のカリウム40・ウラン238・トリウム232の含有量は、他の岩石に比べてかなり多いことが知られている。関西地方では関東地方にくらべて花崗岩質が多いため、その土壌や岩石からの放射線が強いものと考えられる。また、トンネル内では岩石で囲まれた状態であるため、岩石中の放射性物質からの放射線の影響を強く受けるものと考えられる。

 私たちが暮らす世界には、色んな元素があふれています。その中には、もちろん放射性元素もあるわけです。高校生たちが計測器を手にして調べた「乗り物放射線比較」…血液にフェライトが流れている人であれば、必ず面白く楽しむことができると思います。

 そして、世界を形作るものが「元素」なら、この本に登場する学生たちは、みな明日を作る原石です。未来を切り開いていく鉄分100%「鉄っちゃん」たちが計った放射線量を眺めた時、あなたはどんなことを考えますか?

*今回の話は「「加速度センサ」で「人に迷惑な電車男」::(2005.07.19)」と一緒に眺めるのが、鉄っちゃん的に良いかと思います。

鉄分100%「鉄っちゃん」のための「放射線講座」