2009-12-23[n年前へ]
■NEWS今昔物語「小便から下水道まで」編 (初出2005年04月21日)
5年前のNEWS(未来)を振り返ってみて思うこと
水を飲んで、水を出して、その水が街の下を走り、海に出て、蒸発した後に雲になり、雨となって地中に潜り、そしてその湧水をまた私たちは飲み干します。そんな輪廻をピックアップしようとしたはずが、なんともはや・・・なセレクション、ですね。
(記事を書いた時の)ひとこと
小便をする放水器の先から、都市の下に隠れているkれど重要な下水道の先までの道のりを考えながら、いくつかのニュースに注目してみました。
極小ペニスを左腕に移植手術してデカく育てる
「子作りに支障があるくらいに小さかった28歳男性のペニスを、モスクワの整形外科医が切断し「左腕の肉と合体」させ、さらに「延長シャフト」を付けて左腕の中で11時間の伸長手術を行った後に股間に戻したというニュースが、4月10日に紹介された。アレを切断されると思っただけで気を失いそうになるが、そんなことをしたくなるくらいアレを増強したいという願望は根強くあるようだ。
手術の結果は…というと、何でも「戦闘態勢時」でもほんの2インチ(≒5cm)だった極小ペニスが7インチ(≒18cm)もの長さになった」という。18センチと言われると、それはそれで支障が無いものなのかとか、13cmも長くしたのかと、何だか新鮮に驚く。
トイレットペーパーの「星の100億年」は「トイレ一回分」
「天文学トイレットペーパー(Astronomical Toilet Paper = ATP)」というものが最近メディアで取り上げられ人気になっている。では、一体ATPとは一体何か?というと、なんと星の100億年の一生というトイレットペーパーなのだ…。
トイレットペーパーといえば、日本人はトイレ一回あたり70cmくらい使うという話もある。100億年という途方もなく長い時間が一瞬でトイレから下水道へと流されて行くのは…それはそれで風流な話である。
都市を地面の下で支える下水道を眺めよう
先日、小田原市で水道送水管破損事故のため断水が続いた。水道は、現代の都市にとって欠かすことのできないライフラインの一つとなっている。もちろん、今回破損した上水道だけでなく、下水道だって重要だ。上下水道が揃わなければ、水洗トイレだって使うことができなくなってしまう。
そんな「都市を支える下水道」の詳細な地図が下水道台帳ホームページとして東京都下水道局により4月1日から公開されている。都市の地下を、まるで静脈のように走る下水道のトンネル地図を眺めてみれば、東京という都市がまるで生き物のように思えてくるに違いない。
2011-05-04[n年前へ]
■鉄分100%「鉄っちゃん」のための「放射線講座」
私たちの身の回りにの世界はすべて元素が作っている…と書けば、「もしかして 放射性元素」とGoogleが推測してしまうような今日この頃です。けれど、身の回りにいる人たちの中に一番満ちあふれている元素がフェライト、つまり「鉄分」です。もっと端的に言えば、過剰に「鉄道が好き」という奇妙な衝動を抱える人たちの、血液の中に流れている「鉄」という名の元素です。
「未来の科学者との対話—第1回神奈川大学全国高校生理科・科学論文大賞受賞作品集 」の中に収録されている、二松学舎大学附属高等学校 理数科研究部の「身近な放射線計測ー種々の乗物内での放射線−」という論文を読みました。これは、(財)放射線計測協会が貸し出している簡易型放射線計測器「はかるくん」を使い、さまざまな状況下での放射線量を計測した結果を、高校生たちが報告する論文です。
私達は毎日、自然の放射線を浴びながら生活している。それら自然放射線による被曝量は、1時間あたり合計で約0.27μSvである。…今回は主に飛行機内、新幹線電車内および船内における放射線量を計測した。さらに、本校の研究紀要第一集ですでに報告した東京近郊の地上電車内、バス車内および地下鉄電車内での計測結果を含めて、いろいろな乗物内における放射線量を比較した。
下のグラフは、彼らが修学旅行や一泊の京都旅行をする中で「はかるくん」を使い、東海道新幹線「東京駅から京都駅まで」の区間で測った放射線量です。
明らかなトレンド(傾向)もあれば、局所的に放射線量が強い場所もあります。その放射線量の強い場所を生み出す原因は、…ひとたび「どの辺りで放射線量が強くなった」ということを眺めれば、「鉄分の高い人」ならすぐに見極めることができるはずです。
たとえば、箱根を過ぎる辺りから(つまり静岡県に入ったあたりから)何回か放射線量が強い辺りがある…というデータを眺めれば、血液に(鉄道大好きの)鉄分が流れている人ならばきっとわかるはずです。
東海道新幹線に乗ると、名古屋から大垣を過ぎ関ヶ原に入る辺りから放射線量が増えます。そして、その放射線量とは独立に、(場所路見れば鉄っちゃんならわかるはずの)長いトンネルがある辺りではさらに強い放射線が乗客に向かって降り注ぎます。
京都周辺の放射線量は東京周辺の2倍であった。…一般に花崗岩中のカリウム40・ウラン238・トリウム232の含有量は、他の岩石に比べてかなり多いことが知られている。関西地方では関東地方にくらべて花崗岩質が多いため、その土壌や岩石からの放射線が強いものと考えられる。また、トンネル内では岩石で囲まれた状態であるため、岩石中の放射性物質からの放射線の影響を強く受けるものと考えられる。
私たちが暮らす世界には、色んな元素があふれています。その中には、もちろん放射性元素もあるわけです。高校生たちが計測器を手にして調べた「乗り物放射線比較」…血液にフェライトが流れている人であれば、必ず面白く楽しむことができると思います。
そして、世界を形作るものが「元素」なら、この本に登場する学生たちは、みな明日を作る原石です。未来を切り開いていく鉄分100%「鉄っちゃん」たちが計った放射線量を眺めた時、あなたはどんなことを考えますか?
*今回の話は「「加速度センサ」で「人に迷惑な電車男」::(2005.07.19)」と一緒に眺めるのが、鉄っちゃん的に良いかと思います。
2011-05-05[n年前へ]
■「30秒間で眺める東京・京都間の車窓」と「放射線量グラフ」
東京と京都間を新幹線で移動する際の「放射線量」を、二松学舎大学附属高等学校 理数科研究部が簡易型放射線計測器「はかるくん」を使って計測した結果を鉄分100%「鉄っちゃん」のための「放射線講座」で紹介しました。
京都周辺の放射線量は東京周辺の2倍であった。…一般に花崗岩中のカリウム40・ウラン238・トリウム232の含有量は、他の岩石に比べてかなり多いことが知られている。関西地方では関東地方にくらべて花崗岩質が多いため、その土壌や岩石からの放射線が強いものと考えられる。また、トンネル内では岩石で囲まれた状態であるため、岩石中の放射性物質からの放射線の影響を強く受けるものと考えられる。
血液中に鉄分溢れる…つまりは鉄道大好きな「鉄っちゃん」ならば、「新幹線電車内での放射線量の変化(東京-京都)」というグラフを一目眺めれば、グラフの各箇所がどの辺りであるかがわかるだろうと思います。たとえば、東京駅側(グラフの左側)から行くと、最初の放射線量の多い辺りが小田原から三島までの長いトンネルが続く辺りだとか、その次の放射線量ピークが蒲原から由比…とトンネルが続く辺りだろう…とか、そして京都駅前の最後の放射線量ピークは、琵琶湖横からトンネルに入り山科から東山に抜ける最後のトンネル辺りだろう…と車窓を思い出しつつ考えるのではないでしょうか。
しかし、奇妙なことに、血液中の鉄分が足りない人も世の中にはいます。フェライトが足りず、東海道新幹線の車窓を思い浮かべたりはしない、という人も不思議なことにいるのです。
そこで、下に東海道新幹線の車窓を微速度撮影した動画を貼り付けてみました。これは東海道新幹線の「上り」の車窓を撮影したものです。14秒辺りが京都駅になります。それから東京駅までの車窓を「30秒ほど」で眺めることができます。この東海道新幹線からの車窓を眺めれば、高校生たちが計測した「新幹線電車内での放射線量の変化(東京-京都)」をより実感できるのではないか、と思います(たとえば、動画で37秒あたりが小田原と三島の間のトンネル群ですね)。
ところで、彼らの論文は第一回神奈川大学 全国高校生理科・科学論文大賞で 努力賞をとった論文群の一部です。校舎内や通学路で放射線量を計ったり、「甲子園までの道」や「ありとあらゆる旅先」で計測をし続けたり、あるいはJCO周辺で計ったり…ということをずっとし続けていたようです。
1999年9月30日、東海村で臨界事故が起こり、地域への放射能汚染の映像が生々しく報道された。そのとき私は中学3年生で… 在学しての3年間、修学旅行の新幹線内を含め至るところで放射線測定をした。…
石原利臣さんの「受賞のコメント」から。
「はかるくん」を手にする高校生たちは、きっと今でも色々なものを計っているのだろう、と思います。新緑を目にするこの季節、高校生たちは、どんな場所でどんなものに「はかるくん」を向けているのだろう?と考えます。
*今回の話は「「加速度センサ」で「人に迷惑な電車男」::(2005.07.19)」と一緒に眺めるのが、鉄っちゃん的に良いかと思います。
2011-07-07[n年前へ]
■海底の下を真っ直ぐ走る「川崎港海底トンネル(人道部)」
東京や横浜…つまり京浜地区には、「真っ直ぐ走る道」がほとんどありません。けれど、人知れず「都心近くの街をただひたすらに直線的に伸びる道があります(参考:東京に走る「長い長い直線道」を走り抜けてみよう!)。
東京にも「真っ直ぐな道」があります。それは「比較的最近作られた、地図上に線をひくことで人工的に作られた”新しめの”街道」です。それらの道は、東京という場所を念頭におけば、知らない人が驚くに違いないくらいの距離を、ひたすらまっすぐ走ります。今日走り抜けてきたのは、1km強の距離をただひたすらに真っ直ぐ伸びる道です。
1kmなんて、いくらなんでも短くない?という人も多いことでしょう。けれど、それが海底のさらに下を走る海底トンネルだとしたら、どうでしょう。しかも、その海底トンネルが人と自転車しか通過させず、そして、その海底トンネルの入り口が「人影のない寂れた公園の片隅」にひっそりたたずむ廃墟の地下から密かに東京湾の人工島まで伸びている…となれば、その1kmの海底トンネルはとても魅力的に思われるのではないでしょうか。そして、その東京湾・川崎沖に浮かぶ人工島には浜辺もあって(お台場ではありません)、海の向こうには工場のシルエットが浮かんでいる…としたら、どうでしょう?
フランス、パリの地下に走る下水道を歩くとき中世の歴史に思いを馳せることができるように、東京帝都の地下を垣間見るときタイムスリップができるように、羽田空港のすぐ横、多摩川河口のすぐ近くの海底を直線的に1kmばかり走る「川崎港海底トンネル(人道部)」の中に入ると、なかなか味わうことができない時空間の旅をすることができるような心地になります。
下に貼り付けた動画は、川崎駅から東京湾方向に進んだ(周囲数百メートルには人はいなく、ただ野生の凄みを感じさせる野良猫たちしかいない)「ちどり公園」の中にひっそり隠れる「川崎港海底トンネル(人道部)」の(100%廃屋にしか見えない塔の下に)入り口から、東京湾に浮かぶ東扇島まで、東京湾の海底の下を1km強の距離を走り抜けた5分の間に眺めた景色です。
足音や機械音や警報だけがこだまする、不気味さを感じさせるこの通路の上には、海があります。そして、その海の上を(羽田空港から離着陸する)飛行機が飛び交っています。近くを走っているだろう東京湾アクアラインから見ることができる景色とは、全く別の長い・長い地下道を、今日、走り抜けてみました。
海底の下を真っ直ぐ走る「川崎港海底トンネル(人道部)」は、二十一世紀の京浜地区に現存する有数の「オーパーツ」です。ひとり鍾乳洞を歩いてみたい…ひとり地下水湖を眺めてみたい…そんな好奇心を感じたことがある人には(そういう我らが冒険・実験野郎な人たちだけには)、とてもお勧めしたい直線コース…それが海底の下を真っ直ぐ走る「川崎港海底トンネル(人道部)」です。
野宿は必ずしも安全ではありません。本誌はおもいっきり野宿をすすめようとしていますが、その影響力は雨粒ほどです。しかしもしかして、これを読んで野宿に行ってくれる奇特でスバラシイ人がいて、運悪く危険な目にあったとしても本誌に責任はありません。自己責任という言葉は嫌いです。そんな時はなんでもかんでも太陽のせいにしましょう。
かとうちあき「野宿野郎」