2000-08-13[n年前へ]
■WEBの時間、サイトの寿命
ゆっくり長く続けましょうか?
以前、
でロゲルギストが- 第五物理の散歩道 ロゲルギスト著 岩波新書 「通信を考える」
- その系の情報処理の単位時間
- その系の信号の伝わる速度
- その系の空間スケール
- 空間スケール < 情報処理の単位時間 × 信号の伝わる速度
- 大人数から構成される企業のスピードは、少人数から構成される企業のそれには遙かに及ばない
ところで、ロゲルギスト達はある系の「単位時間・信号伝達速度・大きさ」の間の関係について、
- 「単位時間・信号伝達速度」を入力値として、「大きさ」を考える
- 「大きさ・信号伝達速度」を入力値として、「単位時間」を考える
さて、寺田寅彦が「単位時間・信号伝達速度・大きさ」について、さらにどのようなことを展開していたかというと、それはある系の「大きさ・寿命」についての関係である。寺田寅彦は
- 空想日録 三 身長と寿命 (寺田寅彦随筆集 第四巻 岩波文庫 小宮豊隆編)
- 人体感覚について振動感覚の限界を調べた実験データ、 - 人は自らの体の固有振動周波数の振動に対してもっとも過敏である- 、というものをきっかけとして、
- 生物の時間の長さの単位は相対的なものである
- ある系の「時間の長さの感覚 = 相対的な単位」はその系の固有周期と密接な関係がある(振り子時計なんてわかりやすいだろう)
- ある系の「寿命」を測る単位は、その系の「時間の相対的な単位」、すなわち、その系の固有周期だと想像してみよう。
- その場合、ある系の固有周期はその系の大きさに比例するから、大きい動物ほどその系の「時間の相対的な単位」は長いものとなり、見かけ上の「寿命」はその動物の「大きさ」に比例するだろう。
なるほど、サイズが小さい動物(すなわち固有振動の波長の短い動物)にとっては、ほんの小さな変化も大きな変化である。ということは、その動物の感じる「時間単位」は短くなければ、生き残れないだろう。逆に、サイズの大きな動物は俊敏な動きはできないわけで、その動物の「時間単位」は長くならざるをえないだろう。
ゾウのような大きい動物は「時間単位」が長く、一見「寿命」が長いように見え、ノミのような小さな動物は「時間単位」が短く、一見「寿命」が短く見えるというわけだ。実は、ゾウもノミもその動物自身の「時間単位」を基準にすると、同じ寿命を生き抜いているということになる。
本川達雄の中公新書「ゾウの時間 ネズミの時間」では- 体重の4分の1乗に比例して「その動物の時間単位=生理的時間」が長くなる-と述べられているが、昭和八年に既に寺田寅彦は体重は身長の3乗に比例する、逆に言えば体重は身長の3分の1乗に比例するから、「体重の3分の1乗に比例して時間が長くなるだろう」と想像を巡らせているのである。素晴らしい、想像力である。
さて、寺田寅彦はロゲルギストと違って、「単位時間・大きさ」については言及しているが「信号伝達速度」については触れていない(その替わり、さらに「寿命」にまで触れているわけであるが)。もっとも、私があえて書き加えてみるならば、ある系の固有振動にはその系の中での弾性が密接に関係するし、弾性はその中での弾性波の速度も密接に関係する。つまり、ある系の固有振動の周期というものには「その系中での波の伝達速度」が暗に隠されていて、寺田寅彦は単にそれを一定とおいていたわけで、寺田寅彦が述べた内容は実はロゲルギスト達の述べた内容を包括している、と私は思うのである。
このような「単位時間・大きさ・信号伝達速度・寿命」に関する話は動物に限るものではない。
- ロゲルギストが「信号伝達速度=光速度」として、「処理速度を確保する」ための人類の行動範囲について論じたり、
- 私(いきなり自分を例に出すのも何だが)が「信号伝達速度の変化」と「大きさ(人口)の変化」から人類の処理速度の変化について論じたり
さて、前振りが長くなった。前回、
では、単に「信号伝達速度の変化」と「大きさ(人口)の変化」を並べて「処理速度」の変化について考えてみただけだった。今回は寺田寅彦が考えたのと同じく、「信号伝達速度」と「大きさ(人口)」から「寿命」が決まると考えることにより、「人類」の「寿命」の変化について考えてみることにしたいと思う まずは、前回使った「人類の大きさ=人口」の変化が次のグラフである。ただし、この人口は全然正確ではないし、むしろかなり不正確なものであることは先に断っておく。ここでは、細かな値を使うのが目的ではないので別に構わないだろう。
そして、「人類」の中での「情報伝達速度」の変化を示したものが次のグラフである。この速度が「人類」という集合体の中での波の進行速度を決めるのである。
それでは、「人類」という集合体の固有振動はどうやって扱うかというと、この
- 「人類の大きさ=人口」
- 「情報伝達速度」
- 人口 / 情報伝達の速度
その、人口 / 情報伝達の速度 = 「人類の固有時間」を計算してみたものを次に示してみよう。
こうしてみると、人類というヒトの集合体においては、どんどん時間の流れは速くなり、それに応じて見かけの「寿命」は短くなっている、ということがわかる。人類はまさに生き急いでいるのである。もし、この流れを止めようと思ったら、どうしたら良いだろうか?それには、今回の計算から言えば情報転送速度を遅くするか、人類の大きさを大きくするしかない。情報転送速度を遅くするのはなんとも後ろ向き(byわきめも)だし、人口を減らすというのもなんとも後ろ向きだ。だとしたら、宇宙へでも人類が進出して、人類の空間的なスケールを大きくしていくしかないのだろうか?これもまた難しい話である。
さて、最近、大好きなWEBサイトが閉鎖してしまったり、更新速度が遅くなっていたりしていて少しさみしい。だけど、もしかしたら各WEBサイトにも、「更新速度が速いと、WEBサイトの寿命が短い」なんて法則が実はあるのかもしれない。更新速度が速いということは、そのWEBサイトの固有時間が速く流れているということで、限られた寿命をどんどん使い果たしているのかもしれない。
だとしたら、更新速度が遅いということはそのWEBサイトの寿命が長くなるということだから、それはそれで良いのかなぁ、などと思ってみたりする。「太くて短い寿命」も「細くて長い寿命」も実は本人からすればどちらも同じ長さなのかもしれないけれど、外から見ている私は「細くても良いから長く続いて欲しいなぁ」なんて思ってもみたりするのである。
2008-08-04[n年前へ]
■「1秒間に2回の運動は”エンディング”近く」の法則
どんな業界でも「その業界のプロには”見れば”わかる」ということがある。
AV業界の監督さんが「HカップかJカップかは"一目見れば"わかる」と言っていた。計測器も真っ青の「プロの目」だなぁ、と感心させられた。そして、AV業界と言えば、編集者が書いていたこんな言葉にも驚かされた。
ちなみに、一秒間に2回の運動は結構激しいですから、そういう動きを横目で見るだけで「あぁ、エンディングが近いんだ」とわかります。ビデオ画像を一目見ただけで、そのビデオのコンテキスト(文脈)解析をして、「今目に入った場面が」全体のどこに位置しているかを一目瞭然に判断しているわけである。まさに「プロの目」である。
以前「アダルトビデオの動画解析」をしたことがある。この時は15秒間の動画からオプティカルフロー(動き)を解析したのだが、全編に渡って動画の動きを解析し、ビデオのコンテキスト(文脈)解析をしてみるのも面白いかもしれない。もしかしたら、すでに「オプティカルフロー計算→コンテキスト解析解析→スクリーンショット作成」といったフローがアダルトビデオサイトのバックエンドでは動いていたりするのかもしれない。
今度、「1秒間に2回の運動は”エンディング”近く」の法則を使った”スクリーンショット作成”WEB APIを試しに作ってみることにしようか。