2007-09-20[n年前へ]
■油と時間
電車の中で、ゴッホの油絵の断面がどうなっているかを想像する。
カムチャツカの若者がきりんの夢をみているとき
広重「名所江戸百景 大はし阿たけの夕立」から、三十年の時を経て、ゴッホが"Bridge in the Rain (after Hiroshige)"を 描く。その二枚の絵を同時に眺めることができる動画を作ってみた。
シミュレーション計算を作ったり、使ったりするには、確信犯的でなければダメだ。
実は色は“その色”の中に“別の色”を持っていて“他の色”と組み合わされて“また別の色”を見せているのだと思います。
三十年の時間の違いも、江戸とパリの遠い距離も、アニメーションGIFではほんの一秒ほどになる。
メキシコの娘は朝もやの中でバスを待っている
2007-09-22[n年前へ]
■選択肢と幸せ
「選択肢が多いほど、人は幸せになる」という言葉を聞きました。それは、「選択肢の多さは人を幸せにしない」という友野教授の言葉 とは正反対の言葉に聞こえます。
問題は、その不幸な出来事を、ちゃんと距離を持って突き放せるかどうか、だけです。
新明解国語辞典で「座右の銘」という言葉の意味を調べてみると、こんな風に書いてありました。常に自分を高めようと心がける人が、折に触れて思い出し、自分のはげまし・戒めとする言葉
相反する選択肢が増えたとしても、選ぶことができる選択肢は一つです。選択肢が増えるということは、「選べない選択肢」が増えてしまうということに思えます。
不幸との距離は、書いていくことで生まれることが多いです。それは、日記と似ています。眠れない夜、日記を書くことで、かろうじて今日起こった出来事を整理できるのです。
2007-11-12[n年前へ]
■使いこなしにくい「不揃い」は美味しい。
ハインツのトマトケチャップが人気があるという。 そのハインツの美味しさの秘密は、ケチャップに含まれるトマト果肉の粒径が大きく不揃いなことにある(かもしれない)、という話を聞いたことがある。 多分、上田隆宣氏によるレオロジー講義中で聞いた話だったと思う。 カゴメトマトケチャップの平均果肉粒径が5μmほどであるのに対し、ハインツは15μm程度だったというデータとともに、「だから美味しい。もっとも、その特性がために瓶からケチャップが出にくくて苦労する」というようなことを聞いた。その後、ハインツのトマトケチャップとカゴメトマトケチャップを比べてみたら、ハインツの方がむしろシャバシャバとしていて、粘性が低く「あれっ?」と思ったのだが、「美味しさには不均一が大切だ」という言葉はとても自然に納得できた。
同じようなことを、「おいしさ科学館」の館長氏も言っていた。「甘辛い」や「濃厚だけれどしつこくない」といった、相反するものや不均一なものを両方含んでいるものが美味しい。たとえば、ラーメンにせよスパゲッティでも「堅くて柔らかい」という不均一で単調でないことに美味しさを感じる。アイスクリームも大量生産品は空気やアイスクリームの混合状態が極めて均一だが、名人が作る手作りアイスクリームはそれが不均一だ。けれど、だからこそ美味しいのではないか、という話だった。
さらに「不均一な状態は美味しい」が、「不均一な状態」では保存などがしにくいので、大量生産・大量流通はさせづらい、という話も聞いた。たとえば、賞味期限などを考えた場合、一番劣化しやすい箇所からダメになってしまう。分散状態が不均一だと(そのバラツキがゆえに)「容易に劣してしまう箇所」がある。そのため、大量生産・長期保存などを考えると、どうしても均一な状態として製造せざるをえない。その結果、「美味しさを生む不均一・不揃い」と「均一にすることで大量生産・遠距離運送を可能とする使いこなし」は両立しがたい相反する項目、ということになる。
この「使いこなしにくい不揃いは美味しい」という話は汎用性の高い話で面白い、と思う。
2008-02-13[n年前へ]
■若狭 小浜の海 に行く
米大統領選の民主党候補選で知名度を上げたオバマ上院議員と似てる名前、NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」の舞台、そんなこんなで「小浜」の名前をよく聞く。
学生時代、よく小浜へ行った。京都市は太平洋からも日本海からも、そのどちらにも同じくらいの距離に位置している。南の海も北の海も同じくらいの距離にあるけれど、太平洋を見に大阪湾を眺めに行くよりも、日本海をの波を見に若狭湾へ行く方がいい。だから、京都から海を見に若狭湾へ行く人は多かった、と思う。
京都から比叡山の麓、大原を抜け、若狭街道を車で3時間も走れば、小浜に着く。京都の北部の山中を走る若狭街道を、ただ走るだけで小浜に着く。 この小浜と京都を結ぶ若狭街道は、「鯖街道」とも呼ばれる。かつて若狭湾から京都へと鯖を運んだ道を鯖街道と呼び、若狭街道はそんな鯖街道の一つだ。 だから、京都から小浜へ行くまでの間には、時折、昔ながらの町並みが姿を現す。
若狭小浜は、海沿いに道があって、その道沿いに家が並んでいて、それが繋がり集まり小さな町になっている、そんな海に面した小さな町だ。曲がりくねった道の隣にはいつも海が見え、その海の先にはいつも走る道の先が見える。そんなよくある日本の海沿いの町だ。
冬から春先にかけての若狭湾の海は、とても澄んでいて綺麗な青碧色をしている。暖かい夏になるともう少し濁った色になる。いつかまた小浜の町に行ってみよう。
2008-02-14[n年前へ]
■波が日本列島をノックする
「京都市は太平洋からも日本海からも、そのどちらにも同じくらいの距離に位置している」ことを知ったのは、学生時代に、地球物理関連のデータ計測に関する話を聞いている時だった。京都地殻の地面の奥底に設置された計測器のデータ解析をしようとするとき、太平洋と日本海の波によるノイズがそのデータ中に重なってくる、というような話を聞いた。
一年を通じて15℃ほどで湿度が高い坑道の中で、紙に印字された測定データを眺めていても、遠く離れた太平洋と日本海の波が日本列島を叩き続けているようすは想像できなかった。けれど、きっと測定データには「海の波が日本列島をノックし続ける」ようすが映し出されていたのだろう。