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2005-01-15[n年前へ]

「上京ものがたり」 

「上京ものがたり」  西原理恵子の「上京ものがたり」の編集者は「ぼくんち」と同じ八巻氏。「ぼくんち」とほぼ同じような1話1ページで連なっていく、イラストレータ・マンガ家の小さなタマゴの話。ホントのようで全て大ウソのようで、どこかにかすかにホントのことも隠れてそうな絵本のようなマンガ。最後に何回か繰り返される「ちょっと」に色々思いを馳せてみるのも、味わい深いかもしれない。


つかれているひと。かなしい ひと。くやしい ひと。そして それをぜんぶ ずっとがまんしているひと。なにをかいたらしんどいひとはわらってくれるかなあ。ちょっとだけ みてちょっとわらってもらえたらすごくうれしいです。ちょっとだけ今 そんな仕事をやれてうれしいなあ 私。ちょっと。
 その「上京ものがたり」の(紀田伊輔による)書評を週刊新潮で読む。
読者の心をちょっとでも癒せたなら嬉しいという意味のことを「私」が語っていて…(中略)…が、彼女の作品を愛好する者ならば「でも頑張るのはあんた自身だよ」という言外のメッセージを読み取るはずだ。 紀田伊輔 希望と挫折の「やさぐれたメルヘン」週刊新潮 '05.1.20

2005-11-04[n年前へ]

「うつくしいのはら」 

 西原理恵子の「営業ものがたり」を買う。「ぼくんち」のこういちくんのお姉さんの話。そして、12ページの「うつくしいのはら」 読んでしばらくしてから、「どんなことを、どんなために、誰に教えるの?」ということを、ふと考えてしまうのかも。

青い空に 空豆がきれい私は今日も字をならいに行くのでも遠くの煙はだんだん近づいてきて
でも次に うまれて 人になるために一つでも多くの 言葉を おぼえましょう     「 うつくしいのはら 」
あれはやま。 これはうみ。私はあなたに いろいろなものの 名前を教えるよ。あなたは人だから。私は、人だから。     「朝日のあたる家」

2006-05-04[n年前へ]

「顔文字」や「勝ち・負け」や「地球転がし」 

 今日の「n年前へ」は「勝ちとか負けという言葉」「Thinkpadで地球転がしアプリ」「顔文字 ぼくんち 2」「あなたの心に残った言葉を教えてください」などです。

彼女の作品世界には、英雄がいない。現れるのは「北斗の拳なんかで、主人公に一撃で倒されるためだけに出てくる雑魚キャラに虐げられる人々」のような人間である。
船からはミカンの花みたいにちいさい手がぴらぴらするのが見えて、みんな自分の一番好きな人と間違えているだろうと思う。 (^_^)/~~ (^-^)/~~~ (/_;)/

2008-12-26[n年前へ]

「田舎の湾」と「西原理恵子」と「寺田寅彦」 

 山に囲まれた場所に住んでいると、その山の高さや存在感を強く感じる。空を囲む山々が見せる色の変化で、季節や日々の時間を感じる。そして、海辺に住んでいると、海の色や空の色、あるいは、海の向こうに霞んで見える山の色から、そんな移ろいを感じる。

 西原理恵子のマンガには、よく高知の浦戸で見ただろう海の景色が描かれる。時には言葉で、時には淡いけれど鮮やかな色の絵で、浦戸の景色が描かれる。

おねえちゃん、今日の船、
誰か知ってる人のってんの?
ねえちゃんとボクは手をふった。

西原理恵子 「ぼくんち

 そんな浦戸の海の景色を、寺田寅彦も同じような言葉を綴る。寺田寅彦と若くして結婚し、浦戸湾口の種崎海岸で療養していた夏子を思い浮かべながら、同じようなことを書いている。船の上からの視点で、こんな言葉を書く。

種崎の方の岸に見ておるらしき女夏に似たり

寺田寅彦 日記 明治34年11月25日
浜を見たけれど、約束の人見えず

寺田寅彦 日記 明治35年1月19日
 寅彦自身が療養していた須崎と高知の実家を、寅彦が船で行き来する時には、浦戸湾先の海岸にいる夏子に手紙を書いて知らせ、手を振り合ったという。



 海と山に囲まれている町に住んだりすると、寅彦が書く文章や西原理恵子が描く景色が、写真以上に写実的に見えてくる。そんな浦戸の海辺の景色をいつか見に行ってみたいと思う。太平洋に面した広い海原と、穏やかな湾の水面を眺め、海と空と岬の色を眺めてみたい、と思う。

船からは
みかんの花みたいにちいさい手が
ぴらぴらするのがみえて、

みんな自分の一番好きな人と
まちがえてるんだろうと思う。

西原理恵子 「ぼくんち
  



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