hirax.net::Keywords::「元気」のブログ



2001-09-25[n年前へ]

純愛で世界を描ききれ 

Study of the Regular Division of the Plane with Innocent Love

 先日、出張先で話をしようとした途端、いきなりこんなコトを言われた。

「最近、更新頻度が下がってますねぇ、あとアッチ系のネタが多いですねぇ。」
また別の人には、
たかが風圧がオッパイに思えるものでしょうか?自分には、そこがなんとも不思議で納得できないのであります。」
「一体、指の何処でその感触を感じると思われますか?」
「それに、モンローウォークの動画はまるで全裸みたいに見えて、思わず自分はウィンドーを閉じてしまったのであります。」
などと言われた。本来、私は真面目な話をしに行ったハズなのであるが、思わず弁解したくなって、
「いや、掌の広げ方次第で、空気が指に与える圧力が動的に変化するのだが、その指の動きに応じて動的に弾力が変化するさまがアノ感触に近いという想像は如何なものだろうか?たかが風圧、されど風圧、と謙虚に考えるべきではないだろうか?」
とか
「空気流が指の側面を押す力が主たる個所だろう、それすなわち、指の周りからこぼれるおちるアレが指に与える感覚なのである。」
とか、
「実はOLスーツ編の動画も作成したのだが、そっちの方が私的にはイヤラシク倫理的にNGだったのだ。」
とか色々言ってしまったのである。しかし、実はその話をしている仕事場には他にも人が何人もいて、しかもその人達には私は面識は無い。ということは、私は他人の仕事場にイキナリ来たと思ったら、「アノ感触」とか「OLスーツ」とかそんなことを話し出すトンデモない奴にしか見えないのである。これはちょっといけない。いや、かなりマズイ。

 そこで、そんなことを言われないために、今回は「できるかな?」のスタート地点である「画像」の話題を考えてみたい。しかも、ただ考えるだけではつまらないので、「できるかな?」風に「愛」を込めて「画像」について考えてみたい、と思う。というわけで、今回は題して「純愛で世界を描ききれ」である。
 

 八月に台風が関東地方を直撃した日、私は東京タワーのすぐ横で「高画質化のための画像処理技術」という研究会を聴講していた。会場に辿り付くまでの間ひどい雨と風に襲われて、最初のうちは「こ・これは、風速25m/s位はあるな。ってことは25mx 3600 s /1000mで時速90kmか…ってことは、計算によればE〜Fカップが今まさに体中にぶつかってきているのかぁ!」なんて(自分を元気づけるために)考えていたのだけれど、風だけでなくて雨もひどかったので、ついには濡れねずみになってしまい、ただ「………」と何も考えずとぼとぼ歩くだけのゾンビ状態になってしまった。

 何はともあれ、そんな感じでやっとのこと会場に辿り付いて、いくつかの話を聞いていたのだけれど、その中でもとても面白かったのが、大日本印刷の阿部淑人氏の「シミュレーテッド・アニーリングによるディザマトリックスの最適化」という話だった。色々な項目を適当に重み付けしながら、ハーフトーンパターンを自動で生成して、理想のハーフトーンパターンを作成しよう、というものである。その話の後半では、工芸的なスクリーンの話も俎上に上がり、M.C.Escherの"Sky& Water I"をグラデーションの例に挙げてみたり(残念ながら実際にそんなハーフトーニングをしたわけではないが)、菩薩像を般若心経でハーフトン処理してみせたり、となかなか「できるかな?」心をくすぐるものだった。そこで、私も似たようなことにチャレンジしてみて、さらにはM.C.Escherの版画を使ったハーフトーニングを行ってみたいと思うのである。
 

M.C.Escher Sky & Water I 1938

 そもそも、ハーフトーニングとは多値階調を持つ画像などをニ値出力の(もしくは少ない階調しか持たない)機器で出力するために、多値の階調をニ値(もしくは少ない階調)の面積比率で置き換えることにより出力する方法のことである。例えば、下の例はグレイスケールのグラデーションパターンを円スクリーンによりハーフトーニングしたものである。
 

グラデーションパターンを円スクリーンによりハーフトーニングしたもの
グレイスケールのグラデーションパターン

上を円スクリーンによりハーフトーニングしたもの

 Photoshopを使っている場合には、簡単に任意形状のハーフトーニングを行うことができる。例えば、こんなパターンをカスタムパターンとして登録すると、そのパターンとの明暗比較を行うことにより、
 

という風にニ値化ハーフトーニングを行うことができる。ところが、じゃぁこれと同じようにEscherの版画を使ってハーフトーニングしようと思っても、そう簡単にできるわけではない。なぜなら、このハーフトーニングが明暗比較によって行う以上、ハーフトーニングに使うパターンは多値の画像でなければならないのである。

 Escherの版画も版画という(例えば白か黒かといった)ニ値の出力機器を用いているため、やはりニ値の画像に過ぎない。例えば、下の版画はEscherの”Studyof the Regular Division of the Plane with Horsemen”である。
 

Study of the Regular Division of the Plane with Horsemen 1946

 上の版画の一部を(ちょっとだけ細工をしつつ)抜き出してみたのが下の画像だが、白黒半分づつのニ値画像であることがわかるだろう。また、きれいな繰り返しパターンになっていて、平面にこのパターンできれいに埋め尽くすことができるのがわかるだろう。
 

上の画像の一区画(黒:白の比率は厳密に1:1)

 この画像をPhotoshopのカスタムパターンを用いて、グレイスケールをニ値化ハーフトーニングすると、この画像がニ値画像であるため、下のように階調をきれいに出力することができず、結局のところ「黒か白か」といった階調飛びの画像になってしまうのである。
 

ニ値画像を使って単純にハーフトーニングしようとすると…
グレイスケール
単純にパターンニ値化すると…

 そこで、まずはニ値の画像を元に多値のハーフトーン用パターンを作成するプログラムを作成してみた。作成するやり方としては、初期値を元にして暗い方。明るい方それぞれの方向にローパスフィルターで演算をしつつ、256階調分のハーフトーンを作成し、さらにそれをPhotoshopで処理できるように多値画像として出力することができるようにしてみた。先の発表のやり方で言えば、「高周波を減らす」という項目に重みをおいて、ハーフトーンパターンを自動生成するアプリケーションを作成してみたわけだ(バグ満載状態で)。説明は一切無し、しかもボタンを押す順番を間違えると上手く動かないという状態ではあるが、一応ここにおいておく。名前はhiraxtone.exeでバージョンは0.0…01という感じである。(白黒ニ値だけど24bitモードの)Bitmapファイルを読み込んで、多値のスクリーンを生成するようにしてある。

 それでは、このhiraxtoneを用いて、ニ値画像を元に作成した多値階調ハーフトーンパターンの一例を次に示してみる。これは、先の"Studyof the Regular Division of the Plane with Horsemen"の一部分を縮小したニ値画像をもとにして処理してみたものである。
 
右:オリジナルのニ値画像
左:ニ値画像を元に作成した多値階調ハーフトーンパターン

 でもって、上で作成した多値階調ハーフトーンパターンを用いて、グラデーションパターンをハーフトーニングしてみた例が下の画像である。「単純にパターンニ値化した場合」と違って、「hiraxtone1で作成したパターンを使用した場合」はグラデーションが保持されているのがわかると思う。また、階調が保持されているというだけではなくて、まるでEscherのオリジナルの"Studyof the Regular Division of the Plane with Horsemen"のようなパターンにできあがっていることも判ると思う。
 

hiraxtoneで作成したパターンを使用してグラデーションパターンをハーフトーニングすると…
グレイスケール
単純にパターンニ値化した場合
hiraxtone1で作成したパターンを使用した場合

 さて、ニ値画像パターンを利用してハーフトーニングすることができる、となると他にも色々と遊ぶことができる。例えば、自分だけのハーフトーンパターンを作ってみたくなることだろう。そして、さらにはその素晴らしいスクリーンに自分の名前を付けて広めてやりたい、と思うのは至極当然の話である。古くはBayerなどがそうしたように、自分が作ったスクリーンに自分の名前をつけてみるわけだ。

 とはいえ、私が仮にスクリーンを作成してみたところで、そのスクリーンを私の名前で呼んでくれる保証はどこにもないのである。そこで、卑怯な手ではあるが、自分の名前を元画像にしてスクリーンを作成してみることにした。こうすれば、否でも応でもこのスクリーン形状を呼ぶために人は私の名前を使うことになるわけだ。

 というわけで、私の名前「純」という漢字を元データにして、ハーフトーンスクリーン「純」を作成してみた。また、「純」とくれば当然もうひとつ「愛スクリーン」もさらに作ってみた。いや、別に「純愛」を目指そう、と気負っているわけではなくて、単にうちの兄弟は長男が「純」で長女が「愛」なのである。いや、少し気恥ずかしいけど、ホントの話そうなのだからしょうがない。

 さて、作成した「純・愛スクリーン」さえあれば、「純愛」で世界を描ききることができるわけで、早速描いてみたのが、下の仲間由紀恵である。オマエの世界イコール仲間由紀恵か?とか、ソレってホントに「純愛」か?とか、つまらないツッコミを入れられそうな気もするが、そんなことはどうでも良いのだ。私はTRICK以来仲間由紀恵のファンになってしまったのだから、しょうがないのである。そしてまた、「純愛」を馬鹿にしてはイケナイ、と私は少しばかり思うわけなのである。(私の名前だから)
 

「純愛スクリーン」でハーフトーニングした仲間由紀恵
「純」スクリーンで描く仲間由紀恵
「愛」スクリーンで描く仲間由紀恵

 上の二枚をじっくり眺めてみると、結構キレイに仲間由紀恵が描かれていることが判ると思う。しかも、他でもないこの二枚の画像において、私は「純愛」で仲間由紀恵を描ききっているのである。これより、「純」で「愛」な仲間由紀恵はそうそういないハズなのだ。きっと、本物の仲間由紀恵が見たら「何てピュア〜でラブリーな私かしら。きっと、これを描いた人は心のキレイな人なのね!」と感激すること間違いなし、なのだ。

 ちなみに、「純愛スクリーン」でハーフトーニングした仲間由紀恵の左眼の部分を拡大してみたのが下の二枚の画像である。瞳の奥にも、「純」と「愛」が溢れていることが判るハズである。それは言い換えれば、この仲間由紀恵の瞳は「純」イコール「私」で満ち溢れ、さらにはその瞳は「愛」で満ち溢れているのである。
 

仲間由紀恵の目の部分の拡大図
「純」スクリーンの仲間由紀恵
(目の部分の拡大図)
「愛」スクリーンの仲間由紀恵
(目の部分の拡大図)

 う〜ん、正直ちょっとムナシイけれど、だけどちょっと気持ちが良いのもまた事実なのである。やはり、「純・愛スクリーン」で描かれる世界はとても素晴らしい世界なのである。そうなのである。

 さて、今回作成したhiraxtoneは、実際のところ自分でも言うのもなんだが、本当のところ今ひとつキレイな出力ができないし、大体思ったように動いてくれないのである。低周波優先として重み付けをしたハズなのに、どうもそんな風に動いていないし、計算にも時間がかかりすぎる。全てはビールを飲みながら行き当たりばったりにプログラミングするところがいけないのかもしれないが、どうも今ひとつなのである。また、本来であればもう少し元データの形状を残すことを優先(それは高周波優先にならざるをえないだろう)にするようなオプションもつけてみたいのである。

 が、とはいえ今回はいい加減思いページになってきたこともあるし、ちょっと疲れてきたこともあるし、とりあえず「純愛」で世界を描ききったところまでで今回は終りにして、続きは次回以降に遊んでみたいのである。

2001-09-28[n年前へ]

昼休み(+α…) 

 昼休みに銀杏を拾いに行く。来年、定年を迎えるOさんが銀杏を拾える秘密の場所を私に伝えておきたいというわけで、昼休み(の三十分前…)に呼び出され、そのまま会社の敷地を横切りトコトコと林の中へ歩いて行った。
 こんな昼も良いかもね、たまには、と歩きながら思った。
 と、思ったら一時間後、「来週は栗拾いだぁ」と言われた…。何が定年だか…、私よりずっと元気だぞ、と。

2002-08-11[n年前へ]

ひまわり 

 元気があるよなないよな、オレンジ色のひまわり。(リンク

2002-08-30[n年前へ]

木陰の向こう 

 を子供達がかけていく。ちょっと暑いのに元気だなぁ。(リンク

2002-09-08[n年前へ]

君の歌は僕の歌 

竹内まりやの「平方根」

 半年ほど前、TBSのテレビ番組「USO」で放映されていた「竹内まりやの歌の音程を下げると山下達郎の歌に聞こえる」という話を観た。なんでも、その話は「ネット上をにぎわしている情報」ということだったのだけれども、ワタシには全然知らない話題だった。だから、その放映されていた「音程を下げた竹内まりやの歌」を聴いて、とてもびっくりした。確かに「山下達郎の歌」に聞こえるのである。そして、それにビックリすると同時にとても新鮮に面白く感じたのだった。

 山下達郎はワタシも好きだったりするし、しかも山下達郎は決して多作というわけではないので、「山下達郎が他人の曲をカバーをする新たな音源」をワタシが勝手に増やせるというのはとても魅力的である。そこで、ワタシは再生スピードを変えずに音程だけを変えることができるWinAmp + Pacemakerを使って、竹内まりやの「元気を出して」の音程を下げて、ワタシも山下達郎版「元気を出して」を作ってみることにした。それが下の二つのファイル、「元気を出して」の最後の部分の「オリジナル」と「音程を下げたもの」である。

これを聴くと、確かに山下達郎が竹内まりやの「元気を出して」を歌っているかのように聞こえるから不思議だ。単にそう耳に聞こえるだけではなくて、山下達郎が歌っている様子、そして山下達郎が竹内まりやに「君の歌は僕の歌」だよ、という気持ちを込めて歌っている様子すらワタシの頭の中に浮かぶのである。
 

 そこで、次に調子に乗って今度は鬼束ちひろの「流星群」の音程を下げてみた。今度は山下達郎が歌う「流星群」が手に入れよう、と思ったわけだ。ワタシの手持ちの音源全曲に対して山下達郎化計画を発動しようとしたのである。科学、いや単に"WinAmp+ Pacemaker"の力で山下達郎多作化計画を発動しようとしたわけだ。
  ところが、である。なんと「流星群」を歌っている歌手は今回は山下達郎には聞こえなかったのである。、そこには「流星群」をしみじみと歌いあげている平井堅がいたのだった。切々と「流星群」を歌い上げる平井堅の実に濃い顔がワタシの頭の中に確かに浮かんでしまうのだった。

何故、竹内まりやの歌の音程を下げると山下達郎になって、鬼束ちひろの歌の音程を下げると平井堅になるのだろう?竹内まりやと山下達郎が夫婦だからだろうか。…いやいや、そんな説明はあまりに精神論的すぎる。そんな説明をしたら、絶対バカにされるに決まってる。それになにより、鬼束ちひろと平井堅は夫婦ではない。きっと、何か他の確かな理由がきっとどこかに隠れているハズである。
 

 そこで、「竹内まりや、山下達郎、鬼束ちひろ、山下達郎」の歌を周波数を時系列的に眺めるスペクトログラムで比較・分析してみることにした。といっても、竹内まりやと山下達郎が「同じ言葉で歌っていて、なおかつ(本人の声以外の)バックミュージックが無いような音源」を手に入れるのが少し面倒だったので、今回は「声質」などを考察することはあきらめ、とりあえずはそれぞれの歌手の「歌い方」に注目してみることにした。
 

 まずは、竹内まりやの「元気を出して」と山下達郎の"So Much In Love"をスペクトログラムで眺めてみる。縦軸が周波数軸で、上に行くほど高い周波数の声である。当然、下に行くほど低い声である。そして、横軸は時間軸で、左の方が時間的に先で、右の方が時間的に後になっている。結局、このスペクトログラムの中にはさまざまな倍音が白い線となって描かれているのである。
 

「竹内まりや」と「山下達郎」の歌い方のスペクトログラムでの比較
竹内まりや 「元気を出して」
 山下達郎 "So Much In Love"

 まず、このスペクトログラムを眺めていると、竹内まりやも山下達郎も「ほんの少しだけ不規則なビブラート」がとても多いことがわかる。歌のかなりの部分にビブラートがかかっていて、竹内まりやの歌のやわらかさを支えている(少なくともワタシにはそう聞こえる)。そして、それは山下達郎とも共通している特徴である。

 また、それぞれのスペクトログラムの音の出し始め部をよく眺めてみるとちょうど「√」の形をした部分が数多く見られることに気づく。上に示した、竹内まりやの「元気を出して」のスペクトログラム中で青い矩形で囲った部分を見れば、そんな「√」形の部分があることが判るだろう。この「√(ルート)」形状は、「音の高さが連続的に変化している(一種のポルタメントのように)」ことを示しているわけだけれど、そんな√形状が竹内まりやと山下達郎の局の中に多いことが特に判りやすい部分を示したのが下のスペクトログラムだ。二人の歌の中にとてもよく似た√(root)マークがある(そして実はそれがとても数多くある)ことが判ると思う。
 

竹内まりやと山下達郎に共通する√ (root)
竹内まりや 「元気を出して」
 山下達郎 「君の瞳に恋してる」

 こうしてスペクトログラムを眺めてみると、竹内まりやと山下達郎の二人ともに、「ある音程の音を出すために、

  1. まず目的の音程よりも低いところから声を出し始め、
  2. しかも最初の一瞬は逆にほんのちょっとだけ下げて、
  3. と思ったら目的の音まで一直線に音程を上げて、
  4. そして、一定の音程をキープする
という歌い方」が共通していることが判ると思う。竹内まりやの歌にあふれるルーツ(√)は山下達郎の歌の中にあるルーツ(√)に繋がっていたのである。文字通り、竹内まりやのルーツは山下達郎のルーツだったのである。その歌の源は二人ともに同じものだったわけなのである。と、書いてる内に、とても非科学的になってしまったような気がしてきたので、ここで超強引に科学的に書いてしまえば、ここに
という方程式が実は成り立っていて、この「竹内まりや・山下達郎」方程式を解くことで、当然のごとく
竹内まりや=山下達郎
という答えが得られるわけなのである。つまり、竹内まりやの歌の音程を下げると山下達郎になると、この方程式から証明されるわけなのである。実に科学的な説明ではないだろうか……。
 
 
 

 …それはさておき、鬼束ちひろと平井堅の場合は一体どうなのだろうか。歌の中で声にかけられるビブラートは「竹内まりやと山下達郎」とどう違うのだろうか、そしてまた声(ある音程の声)の出し始めの様子はどのようになっているだろうか?というわけで、次に鬼束ちひろの「流星群」と平井堅の「大きな古時計」のスペクトログラムを眺めてみる。
 

「鬼束ちひろ」と「平井堅」の歌い方のスペクトログラムでの比較
鬼束ちひろ 「流星群」
平井堅 「大きな古時計」

 
 こうしてみると、もちろん鬼束ちひろや平井堅だって歌にビブラートをかけてはいる。しかし、先ほどの竹内まりやと山下達郎の場合と比べると、まるで人工的と言っても良いほどに規則正しいビブラートがかかっていることが判ると思う。また、ビブラートをかけていない部分では、実に一定な音程をキープしていることが判る。しかも、それぞれの音程で声を出し始める最初の部分では、その音程にいきなり「すっと入っている」のである。竹内まりやと山下達郎が「√」形状の声の出し方であるならば、鬼束ちひろと平井堅の場合は「電気回路の抵抗記号」のような声の出し方をするのである。そんな共通点がこの二人の間にはあったのである。鬼束ちひろの歌い方と平井堅の歌い方は実によく似ていたのである。だから、鬼束ちひろの歌の音程を下げると平井堅に聞こえたのかもしれない。誰でもカラオケに行って色んな歌手の歌を歌う機会があるだろうけれど、こんな風にスペクトログラム上のそれぞれの歌手の歌い方の特徴を意識しながら歌えば、もしかしたら面白いことだろう。誰もが平井堅や竹内まりやになりきれるかもしれない。
 

 ところで、最近のカラオケはとっても賢いリモコンがついていて、「**年に流れていた曲」というような検索ができる。すると、同年代の人とカラオケに行くとその年代に共通する「あの頃の曲」をかけまくって、歌いまくることになる。自分たちだけに判る懐メロ、だけどそこにいる人達にとっては「懐メロ」ではなくて今でも生き生きとしている曲、が次々とかけられることになる。中学時代、高校時代、ずっと昔のあの頃に流れていたヒットソング、そこにいる人に共通するルーツの曲のオンパレードになる。そんな時には、誰かが入れた歌全てがいつの間にか全員の合唱に変わっていたりする。

 同年代の人とカラオケは(特にそんなリモコンを使うときには)、まさに「他の人が歌う歌全てが自分の歌」、つまりは「君の歌は僕の歌」になる。、「元気を出して(オリジナル)」の最後の部分、竹内まりやの声を中央に、右から山下達郎の声が、左から薬師丸ひろ子の声が流れ溶け合っているのを聴きながら、そんな景色をを思い浮かべてみるのもきっと面白いんじゃないかと思う。



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