2008-04-30[n年前へ]
■「強いパンチを打つ方法」(物理編)
ジャッキー・チェンのカンフー映画の中だったか、格闘技の解説書の中だったか、あるいは、力学の教科書か何かの中だったかは忘れたけれど、こんな「強いパンチを打つ方法」を聞いた(見た)記憶がある。
(たとえばパンチのような)強い打撃を与えようとする時には、”打撃を加える瞬間に体を伸び上がるようにするべし”あるいは"一瞬体を伸び上がり体を浮かし、着地する瞬間に足元を蹴りながら、打つべし"
特に、自分よりも体格の良い(体重がある)相手に対するときには、この技巧を忘れてはいけない。
この言葉がいわんとしているのは、多分こんなことだったと思う。
自分より体重のある相手に打撃を加えても、相手は動かず自分自身が後ろに下がってしまう。それは、重い荷車を押そうとしても、足元が滑ってしまい、荷車を前に押し進めることができないようなものである。
あなたの足元が動かないようにする力、言い換えれば、自分の足と地面との「摩擦力」は、摩擦係数とあなたが地面を押す抗力に比例する。ということは、足元が動かないように、足元が滑らないようにするためには、「あなたが地面を押す抗力」を増加させれば良いのだ。
かといって、その瞬間だけ急に体重を増やすわけにはいかないから、”打撃を加える瞬間に体を伸び上がるようにしたり”"高いところから着地する瞬間に足元を蹴る"ことで、自らの足が地面を押す力を高めるようにすれば「強いパンチを打つことができる」ようになるということを、先の言葉は伝えようとしているわけだ。
しかし、この「きわめて物理的な強いパンチを打つ方法」には、重大な弱点がある。それは、「パンチを打つ前後には体が浮いてしまっている。そのため、そのパンチを打つ前後の瞬間に攻撃されたら、ひとたまりもなく倒されてしまう(踏ん張ることができない)」ということである。
よく、「必殺技を繰り出す前後に無防備な瞬間がある」というような設定のマンガを見かけるような気がするけれども、そんなことを今更ながらに思い出す「強いパンチを打つ方法」(物理編)なのだった。
2008-05-15[n年前へ]
■PSoC制御の「加熱ホッケーブレード」や「堅さ可変シューズ」
PSoCはCypress社のマイコン・チップで、各種デジタル・アナログ回路が搭載されていて、その組み合わせをユーザがプログラミング(設計)できる、というものだ。FPGAほど高性能ではないけれど、PICより少し賢く便利なアナログ回路が色々詰めあわされている(だから周辺回路を大幅に減らすことができる)、という感じだろうか。アナログ制御・入出力をしたい場合には、とても便利そうなチップである。
このPSoCが使われている商品で面白いなぁ、と思うのが「Therma Blade」と「adidas_1, intelligence level 1.1.」だ。
Therma Bladeの方は、アイス・ホッケー・シューズのブレード(氷と接触する金属板部)の氷との摩擦係数を低くし、スピードを高めるために、PSoCでヒーター制御し、ホッケー・シューズ・ブレードの温度を適正に調整したり、ON/OFFしたりするものである。スケートが滑るのは、ブレードと氷の間で氷が解け水になることで、摩擦係数が下がるだ。それならば、「ブレードの温度を上手く制御してやれば、摩擦係数が下がりスピード速く滑ることができる」という狙いの技術である。
一方、adidas_1, intelligence level 1.1.の方は、PSoCで制御したモータで踵部分にあるエアクッション部を押すことで、エアクッション内圧力=靴の堅さ(衝撃吸収率)を適正に変える、というものだ。電子制御されている車のサスペンション機構(タイヤと車ボディの間で、路面の凹凸・カーブなどがあるときの衝撃を吸収する機構)も多いけれど、それと同じような技術が搭載されたシューズである。
こういったシューズで高機能・高付加価値の流れはどれだけ進んでいくのだろうか。いつか、「トランジスタ技術4月号」で、「フレッシャーズのためのアイスホッケーシューズ制御のABC」といった特集記事が当たり前のように書かれる日が来るのだろうか。
2008-06-21[n年前へ]
■オムニホイールで理想の「パック」を作ることができるか!?
「"オムニホイール"で理想の"ホッケー・パック"を作ることができるのだろうか!?」と、ふと考えた。氷の上でも、専用リンクの上でもなく、普通のアスファルトの上で滑らかに自然に動くホッケー・パック"を、"オムニホイール"を使えば作ることができたら良いな、と考えた。
オムニホイールというのは、(omini=全方向)ホイール=車輪、つまり方向性を持たないというか全方向に進むことができる車輪である。オムニホイールを使った台車の動き(動画)などを眺めていると、極小オムニホイールを使い、さらに姿勢検知・駆動制御を極限まで駆使したならば、「まるで氷の上を滑って行くかのような自然な動きを(アスファルトの上で)するパック」を作ることができたりはしないだろうか、と考えたわけである。
逆に言えば、そんなメカ搭載のパックが欲しくなるくらい、自然なパック操作をすることができなくて、悩んでいるということである。アスファルトの上でパックを打ってみても、進ませようとする方向にパックが上手く動いてくれることはほぼなくて、いつも思ってもいない方向に(ヘロヘロと)飛んで行ったりする。それどころか、飛ぶこともなく、コロコロと転がっていってしまうことも多い。
理系心は気温とゴムとアスファルトの変形と…とかのせいにしたくなる。もちろん実際には単に下手だから、である。しかし、やはり、理系心はそんな物性変化のせいにしたくなったりするわけである。
そこで、これなら、思った方向に飛ぶようなパックを作った方が早いのではないか、と思ったわけである。ざっと計算してみると、一個百万近くになりそうだけれども、そんな「(どんな状況でも)自由自在に特性を変えることができるパック」を作ってみたい今日この頃だ。
2008-06-22[n年前へ]
■ホッケー・パックの飛び方のナゾ
(チューインガムで作った)ラトルバックではないけれど、実際に再現させることは簡単にできるのだけれども、その動きの仕組みを説明しようとすると結構難しいことということが多い。いや、多いどころか、上手く説明できないことばかりが世の中には満ちているように思う。単純に言ってしまえば、「実際に起こる現象を理解・説明する力」というのが不足気味なわけだ。
そんな、「実際に再現させることはできても、その動きの仕組みを説明しようとすると結構難しい」ことの一つが、「ホッケー・パック」の飛び方だと思う。平面の上に置かれた扁平円板を叩くと、それが上に飛んでいく仕組みをきちんと説明しようとすると、これが結構難しい。ゴルフボールのように、ピンや芝生の上に浮いている状態の物体を打つのではなくて、あくまで摩擦抵抗の低い平面の上にある扁平円板を叩くのに、パックが浮かんで飛んでいく減少を定量的に話すのは、なかなかに難しいように思う。
パックがホッケー・スティックのブレードの先で回転することで(決して小さくない)回転モーメントを持ち、その回転モーメントがあることが前提で、スティック・ブレードの下部がホッケー・パック下部を押し、ブレード面を転がり浮かぶようにして、クルクル横に回転しつつ、パックが斜め上に飛んでいく…というような説明はできても、それを数式を書きながら、単純な形で説明してみろと言われたら、言葉に詰まってしまうに違いない。(参考動画)
ヘロヘロと縦回転をしながら情けなくパックが飛んでいってしまうことが多いように、頭の中で計算をしようとしてみても、どうしても「ヘロヘロと縦回転をしながら情けなくパックが飛んでいってしまったりする」のである。現実にも、あるいは、頭の中のシミュレーションでも、鋭くゴール上方隅に決まるようなシュートが打てたら良いのだけれども。
2009-05-04[n年前へ]
■道路上に記録された「靴裏との摩擦帯電跡」
警察の鑑識課の人たちが捜査をしているようすを放送するテレビ番組を見た。その番組中で興味を惹かれたのが、ビル荒らし事件か何かの犯人の足跡をアスファルト道路上で捜す捜査員たちの作業過程だった。
一体どのような作業をしていたかというと、
- アスファルト上に黒いシートを広げ、その上に白い微粒子粉末を振りかけ
- さらに透明な大きなテープを貼り付け
- 最後にテープをはがしている
つまり、アスファルトと靴裏がこすれた部分がプラス(あるいはマイナス)に摩擦帯電し、アスファルト上の帯電分布を帯電した粒子で可視化する、というのである。摩擦帯電した微粒子によって可視化された靴あとを透明テープに写し取ることで、アスファルト上に電荷分布として残された犯人の足跡を記録・解析することができるようになる、というわけだ。
摩擦帯電をなるべく防ぐような、たとえば、カーボンなどをたソールに混入することで、摩擦帯電しにくいように電気抵抗を下げ(同時に磨耗性・形状なども上手く作られた)靴というのは、工場作業用などでよく見かける。もしかしたら、”足跡を残さない”ということでは天下一品のビル荒らし御用達の靴があったりするかもしれない。
とはいえ、もしもそんな摩擦帯電防止靴があったとしたら、たとえば靴のソールゴム中にカーボンを入れたとしたならば、黒い靴裏が必須になる。すると、「黒い靴裏」を見た警察官は「この人は、ビル荒らしかもしれない」と思うかもしれない。
そういえば、私はよく職務質問に会う。それが私が履いている靴がことごとく黒い靴裏のせいだと思うことができたなら、つまり、「黒い靴裏の人たちは職務質問に遭いやすい」ということがその背景にあるのなら、納得できるのだが…。