2008-05-09[n年前へ]
■「新幹線」という名前の場所
「新幹線」という場所がある。静岡県函南町にあるその場所は、東海道新幹線が開業するずっと昔、第二次大戦中から「新幹線」という名前で呼ばれていた。
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昭和十年代、「新幹線(弾丸列車)計画」が進められていた。その際、新丹那トンネル工事を行うために工事宿舎が建てられていた地区が、いつしか「新幹線」と呼ばれるようになり、昭和29年には正式に字(あざ)名となった。
「新幹線(弾丸列車)計画」の流れを汲む東海道新幹線が起工されたのが昭和34年、開業したのが東京オリンピックが開催された昭和39年だ。新幹線という名前の場所は、その場所近くを通る「新幹線」を、20年ほども待ち続けていたことになる。
最初の「新幹線」を新幹線という場所が20年ほど待ち続けていたように、それぞれの地名はそれぞれの歴史を持っている。不思議な地名を目にすると、歴史ミステリの表紙を開く心地になる。
2008-11-30[n年前へ]
■「夢の超特急」ラストラン 0系、営業運転から引退へ
1964年にデビューし「夢の超特急」と呼ばれた初代新幹線「0系」が30日午後、営業運転から引退する。
0系は12月に3日間、臨時の「ひかり」として「さよなら運転」し、正式に引退する。
2009-03-12[n年前へ]
■新幹線のアクティブ制御の設計解析手法
以前「鉄道車両の設計と制御におけるシミュレーション技術」という川崎重工の技術紹介を聞いたことがある。これが、実に様々な点で面白かった。
新幹線の振動/揺れが気になることが多かったので、たとえばこういった記事をはじめとして、新幹線の振動抑制制御について、とても気になっていた。特に血液中の鉄分が多い方、いいかえれば、鉄っちゃん(鉄道おたく)ではないと思うのだが、新幹線の制御をどのような考え方で、どのようなやり方で設計/開発を行っているのか に興味があった。
新幹線の振動抑制に関しては、
- 台車の左右加速度を計測する
- 加速度をフーリエ変換しパワースペクトル密度にする
- 人間の振動に対する各周波数に対する感度をかけ、さらに積分することで「乗り心地」指数(レベル)を算出する
ちなみに、このような「乗り心地」評価値を用いながら、客車を支える空気バネの電磁弁を開閉することでセミアクティブ制御したり、客車下中央に位置する動揺防止制御用アクチュエータでアクティブ制御を行っている、という。
ちなみに、加速度センサからのFB制御だけでなく、ATCの地点情報を用いてFF制御を行っている、というあたりも面白い。…鉄道もなかなか面白い。鉄っちゃんの気持ちが、少しわかるような気がしてきた。
この講演の面白さ/興味深さは「(シミュレーション)ソフトウェア開発/管理における課題」「異種技術分野のソルバ/ツール連携」に関する現状の問題を、講演者が整理した上で、聴衆になげかけた部分にもあった。実に勉強になった。
2010-11-23[n年前へ]
■電車の「起動加速度」を知って、プチ鉄っちゃんになってみる!?
京浜東北線と山手線は田端から品川までの間、隣り合いつつ同じ駅を走り抜けていきます。同じホームの両側から、京浜東北線と山手線は発着するので、ほとんど同じタイミングで(京浜東北線と山手線に)列車が来ているときには、そのどちらに乗ろうか悩んでしまいます。昼間だと、京浜東北線は、各駅停車ではなく(駅を飛ばしす)快速運転をしていたりするので、山手線に乗るか京浜東北線に乗るか悩まずに済むのですが、両方とも同じ各駅停車の場合には、…右往左往してみたりするのです。
そんなとき、鉄っちゃんに、「山手線ナントカナントカ(列車の名称だが、鉄分が足りない私の耳には、ナントカナントカとしか聞き取れなかった)の起動加速度は3.0km/h/sで、京浜東北線のナントカナントカが2.5km/h/sだから、そんな時は京浜東北線に乗った方がいい!」とアドバイスされました。起動加速度とは、停止状態からの加速能力を表していて、それが3.0km/h/sなら、1秒間に時速3kmづつ速度が速くなっていく加速度を示すのだといい、山手線のナントカは、京浜東北線のナントカに対し、1.2倍のスタート時加速能力がある(らしい)というわけです。
その話に興味を惹かれたので、電車の起動加速度をつらつら眺めてみると、
- 阪神5001形 4.5km/h/s
- 京成AE100形電車 3.5km/h/s
- 新幹線N700系電車 2.6km/h/s
2011-05-04[n年前へ]
■鉄分100%「鉄っちゃん」のための「放射線講座」
私たちの身の回りにの世界はすべて元素が作っている…と書けば、「もしかして 放射性元素」とGoogleが推測してしまうような今日この頃です。けれど、身の回りにいる人たちの中に一番満ちあふれている元素がフェライト、つまり「鉄分」です。もっと端的に言えば、過剰に「鉄道が好き」という奇妙な衝動を抱える人たちの、血液の中に流れている「鉄」という名の元素です。
「未来の科学者との対話—第1回神奈川大学全国高校生理科・科学論文大賞受賞作品集 」の中に収録されている、二松学舎大学附属高等学校 理数科研究部の「身近な放射線計測ー種々の乗物内での放射線−」という論文を読みました。これは、(財)放射線計測協会が貸し出している簡易型放射線計測器「はかるくん」を使い、さまざまな状況下での放射線量を計測した結果を、高校生たちが報告する論文です。
私達は毎日、自然の放射線を浴びながら生活している。それら自然放射線による被曝量は、1時間あたり合計で約0.27μSvである。…今回は主に飛行機内、新幹線電車内および船内における放射線量を計測した。さらに、本校の研究紀要第一集ですでに報告した東京近郊の地上電車内、バス車内および地下鉄電車内での計測結果を含めて、いろいろな乗物内における放射線量を比較した。
下のグラフは、彼らが修学旅行や一泊の京都旅行をする中で「はかるくん」を使い、東海道新幹線「東京駅から京都駅まで」の区間で測った放射線量です。
明らかなトレンド(傾向)もあれば、局所的に放射線量が強い場所もあります。その放射線量の強い場所を生み出す原因は、…ひとたび「どの辺りで放射線量が強くなった」ということを眺めれば、「鉄分の高い人」ならすぐに見極めることができるはずです。
たとえば、箱根を過ぎる辺りから(つまり静岡県に入ったあたりから)何回か放射線量が強い辺りがある…というデータを眺めれば、血液に(鉄道大好きの)鉄分が流れている人ならばきっとわかるはずです。
東海道新幹線に乗ると、名古屋から大垣を過ぎ関ヶ原に入る辺りから放射線量が増えます。そして、その放射線量とは独立に、(場所路見れば鉄っちゃんならわかるはずの)長いトンネルがある辺りではさらに強い放射線が乗客に向かって降り注ぎます。
京都周辺の放射線量は東京周辺の2倍であった。…一般に花崗岩中のカリウム40・ウラン238・トリウム232の含有量は、他の岩石に比べてかなり多いことが知られている。関西地方では関東地方にくらべて花崗岩質が多いため、その土壌や岩石からの放射線が強いものと考えられる。また、トンネル内では岩石で囲まれた状態であるため、岩石中の放射性物質からの放射線の影響を強く受けるものと考えられる。
私たちが暮らす世界には、色んな元素があふれています。その中には、もちろん放射性元素もあるわけです。高校生たちが計測器を手にして調べた「乗り物放射線比較」…血液にフェライトが流れている人であれば、必ず面白く楽しむことができると思います。
そして、世界を形作るものが「元素」なら、この本に登場する学生たちは、みな明日を作る原石です。未来を切り開いていく鉄分100%「鉄っちゃん」たちが計った放射線量を眺めた時、あなたはどんなことを考えますか?
*今回の話は「「加速度センサ」で「人に迷惑な電車男」::(2005.07.19)」と一緒に眺めるのが、鉄っちゃん的に良いかと思います。