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2009-06-04[n年前へ]

星新一の「願望」と「冷めた眼差し」 

 最相 葉月の「あのころの未来―星新一の預言 (新潮文庫) 」から。

最相 葉月:生活が便利になる、いわゆる”明るい未来”は割と肯定的に描いていらっしゃいますね。
星 香代子(星新一夫人):それは、あの人の願望でしたから(笑)。・・・星は、頭の中で材料を組み替えながら、自分の願望と冷めた眼差しで人と社会の行く末を見つめていたような気がします。
(p.326)

2009-07-02[n年前へ]

寺田寅彦 妻たちの歳月 

 寺田寅彦 妻たちの歳月

 寺田寅彦といえば、戯歌「好きなもの いちご コーヒー 花 美人 懐手して宇宙見物」で知られるように、科学と文学の間を軽やかに往来したスーパー物理学者である。私もまた、耳の中の音や金平糖の話など日常に潜む不思議を題材にした科学エッセーを愛読してきたひとりだ。

 だが本書を読み、寅彦にもっとも似合うのはそのいずれでもなく、晩年の随筆「曙町より」にある「風呂の中の女の髪は運命よりも恐ろしい」という一節だったと知った。

最相葉月 「寺田寅彦 妻たちの歳月 」への書評

2009-08-26[n年前へ]

最相葉月氏のアプローチ 

 最相葉月「あのころの未来―星新一の預言 (新潮文庫) 」の福岡伸一による解説から。

 最相葉月氏のアプローチはどこまでも帰納的なところにその特徴がある。事実とデータをひとつひとつ積み重ねていく。しかし、決してそれらを総括して早急な結論を導かない。安易な図式化に対して徹底して禁欲的である。

2009-12-06[n年前へ]

NEWS今昔物語「禁断の未来・作り出す未来」編 (2004年07月00日) 

5年前のNEWS(未来)を振り返ってみて思うこと

 少し前、(5年前に記事を書いた)「青いバラ」が、ついに販売された、というニュースを知りました。そこで、今回は、この記事を書いてみました。

 この記事を書いたとき、青いバラ開発のニュースになぜ最相葉月の「青いバラ (新潮文庫) 」へのリンクを張ったかを書いた覚えがあります。

 それは、「未来」というものを、「良いと思う面」「悪いと思う面」という両面から書きたかったから、というような内容だったと思います。できる限り、相反することの両方を並べ書きたい、というようなことを感じていたから、だったような気がします。

 この時書いた、「青いバラ」という未来は実現され、「現在」になり、そして「過去」になろうとしています。

(記事を書いた時の)ひとこと

 今回は、「未来」について書きました。自然を変え、新しいものを作り、色々な人たちが日々、色々な未来を作り出していきます。

「叶わぬ望み」の青の薔薇を作り出す

 「叶わぬ望み」「不可能なこと」を意味する青いバラ"the blue rose"をサントリーが遺伝子組み換え技術を用いて開発した。もちろん、これまでにもさまざまな青いバラが作り出されてきたが、今回の「青いバラ」はバイオテクノロジーの力により本来バラが全く持たない青の色素デルフィニジンを多量に含んでいるのが特徴だ。

 「叶わぬ望み」「青いバラ (新潮文庫) 」が遺伝子組み換え技術で実現される。良いか悪いかはさておき、それが二十一世紀なのだろう。

チタン製の埋め込むブラジャー

 二十世紀の偉大な発明の一つがブラジャーである。米国人の女性マリー・ジャコブが発明し、1913年に特許をとった。ブラジャーは、コルセットから女性を解放し、社会進出の手助けをしたともいう。そして、最近ではブラジャーの高機能化がますます進んでいる(らしい)。

 しかし、そんな偉大なブラジャーを不要にしてしまうチタン製埋め込みブラジャーをデュッセルドルフ在住のZiya SAYLAN医師が生み出した。このチタンのメッシュ状のカップを胸に埋め込むというこのブラジャーを装着すれば、未来永劫ブラジャーは必要ない。…しかし、いいのかそれで本当に?

携帯電話を腰に付けると精子の数が30%減る?

 先日、ハンガリーの科学者が「携帯電話をズボンのポケットや腰のホルスターに着けて持ち歩くと男性の精子の数が30%減少する」という研究結果を発表した。どうやって数えたのか、その方法は…あまり知りたくはないが、とにかく30%オフというのは驚くべき数字である。

 今回の結果はまだ確実なものではない、という意見もあるようなので、これから行われるだろう正確な追試等を待ちたいところだ。それにしても、女性に比べて携帯電話を(鞄に入れずに)身につけることが多い男性にとって、これは実に気がかりなニュースかも。

初の民間宇宙船をM&Msチョコレートで祝う

 100kmというと、ちょうど東京駅から静岡県の熱海くらいまでの距離だ。JRの切符を買えば1,890円ほどでたどり着くことができる。しかし、それが地表から高度100kmだとそう簡単にはいかない。なにしろ、そこは地球を飛び出した宇宙空間である

 6月21日、そんな地表100kmの宇宙の世界へ民間企業Scaled Compositesが有人飛行に初めて成功した。その宇宙船SpaceShipOneから撮影されたビデオを見るとそこは確かに地球を見渡せる宇宙の世界だ。そして、無重力の世界でお祝いに色とりどりのM&Msチョコレートをパイロットがばらまき、それらがコクピットの中を舞う様子は、…ただ素晴らしく美しいとしか言いようがない。

未踏の世界をスーパークリエイター達が作り出す

 次世代のIT市場創出を担う優れた研究者(スーパークリエイター)を支援しようという未踏ソフトウェア創造事業2004年度 第1回の公募結果が発表された。IT市場や次世代ソフトウェアなんてよくわからない…と思う人でもきっと眺めてみると興味を惹かれるものがあるハズだ。

 動き出す実物大グラビアアイドルどこからともなくブートするOS異文化コミュニケーションのための知識共有システム世界規模ソースコード検索エンジン…、なんだか面白そうなものがたくさんある。自分好みのプロジェクトを応援してみると面白いかもしれない。

2010-04-21[n年前へ]

「星新一 一〇〇一話をつくった人」の350頁から次の頁にある言葉 

 最相葉月の「星新一〈上〉―一〇〇一話をつくった人 (新潮文庫) 」を読んで、坪内祐三が書いた書評のラストがこの文章である。

 先に私は、誰もが星新一を読んだことがあるはずだ、と書いた。逆にいえば、みな、星新一を卒業してしまう。
 それから星新一の苦悩がはじまる。それがこの評伝の一番の読み所とも言えるラストスパートだ。

「文庫本を狙え!」 616 週刊文春 「文春図書館」
 下巻の三百五十頁から三百五十一頁にかけてを私は何度も読み返している。
 こう書かれると、その頁に一体どんな言葉が綴られているか、知りたくてたまらなくなる。

 この文庫本は、三年前に出た単行本「星新一 一〇〇一話をつくった人 」を文庫として出版したものだ。文庫版は、先日出たばかりの本だから、「私は何度も読み返している」というのは、ひと桁程度の「何度か」なのかもしれないし、あるいは、単行本を読んでの「何度も」なのかもしれない。

 「星新一 一〇〇一話をつくった人」は単行本で読んだ。単行本を読みながら、最相葉月が書く星新一の物語は、愛が感じられていい、と思いつつ読んだ記憶がある。この単行本の一体何ページ目が「文庫本の下巻の三百五十頁から三百五十一頁」にあたるのだろう。坪内祐三が何度も読み返している、と書く文章は、一体、単行本ではどの頁にあるのだろう。



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