hirax.net::Keywords::「村上春樹」のブログ



2009-04-04[n年前へ]

ひとつの疑問をべつのかたちの疑問に有効に移し替える作業 

 村上春樹 「村上春樹全作品 1990~2000 第3巻 短編集II 」の「蜂蜜パイ」 解題から。

 僕は小説というものは、ひとつの疑問をべつのかたちの疑問に有効に移し替える作業であると、基本的には考えている。

村上春樹 

2009-04-29[n年前へ]

癒しとしての「村上春樹の魅力的な謎」 

 清水良典 「村上春樹はくせになる (朝日新書) 」より。

 現代を生きる私たちは多かれ少なかれ、誰もが生きにくさや不安を抱えている。なかなか外へは出せないそういう心の素の部分に、彼の小説の謎めいた言葉やエピソードはとても深いところまでストレートに届くのである。私たちの心の奥じたいが、謎めいた迷宮だからだ。謎の答えは、より魅力的な謎でしか答えられないものではないかと思う。たとえば禅問答にもそういうところがある。

p.210 「アフターダーク」

2009-06-08[n年前へ]

それぞれの「物語」が必要とされる「現代の難しさ」 

 河合隼雄と村上春樹の「村上春樹、河合隼雄に会いにいく (新潮文庫) 」の、河合隼雄による「後書き」から。

 病を癒すものとして「物語」というのは、実に大切なことだと思っている。現代はそのような物語を一般に通じるものとして提示できないところに難しさがあるように思う。各人はそれぞれの責任において、自分の物語を創り出していかねばならない。

2009-08-27[n年前へ]

課題解決の結果生じた次課題を解決することが小説を書くということ 

 児玉清が25人の作家にインタビューした児玉清の「あの作家に会いたい」 から角田光代の言葉。

 Aという小説で私なりにあることができたと思った時に、(その結果)Bという課題が生まれたとします。すると、次にBの課題を入れ込んだ小説を書くというふうに、「読み手に向けて」よりは、「自分の中にある課題を片付けていく」というのが近いですね。

 この言葉は、「ひとつの疑問をべつのかたちの疑問に有効に移し替える作業」に書いた、村上春樹の言葉と合わせて読むと興味深い。

2009-11-04[n年前へ]

きみが見つける物語 

 「京都市鴨川源流」を廻る「理系風デート」で紹介した何人かの作家による小話を集めた短編集である「きみが見つける物語 十代のための新名作 休日編 (角川文庫 あ 100-103) 」はシリーズになっていて何冊か出ています。、5人の作家、この「休日編」では、角田光代・恒川光太郎・万城目学・森絵都・米澤穂信という人たちが書いています。どの作家が描く世界も、切なさ・やるせなさ・楽しさ・・・あるいはたくさんの感情を与えてくれる素晴らしいものばかりです。

 シリーズの一冊、「きみが見つける物語 十代のための新名作 スクール編 (角川文庫) 」では、あさのあつこ・恩田陸・加納朋子・北村薫・豊島ミホ・はやみねかおる・村上春樹というこれまた魅力的な作家たちの作品がまとめられています。先の「休日編」と同様に 藤田香織氏による紹介・解説と・各作家の作品が収められています。

 「スクール」を舞台にした作品はどれも、自由さとよく自由の狭間で、はっきりとは見えない可能性の中を生きていく(生きてきた)主人公たちが描かれています。豊島ミホの「タンポポのわたげみたいだね」で始まり、村上春樹の「沈黙」を最後に置かれることで、全く別々の作家の別の作品なのに、まるで、一つのテーマを扱った短編集のようになっています。

 「まだ時間は早いけれど、ビールでも飲みませんか」と少しあとで彼は言った。飲みましょう、と僕は言った。たしかにビールが飲みたいような気分だった。

村上春樹 「沈黙」

 「休日編」「スクール編」ともに文庫本ですが、小さい割に、とても密度の高い本です。カバンに入れておくには、とても良い本だと思います。



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