2002-01-04[n年前へ]
■菊姫
年初から上野駅で飲んで、さらに東京駅美少年で飲む。いつものように、とりあえず飲んで銘柄を当てる利き酒セットを頼み、初めて当たった。偶然か、これまでの投資のおかげか?今回は「美少年」「銀盤」「???」で、謎のお酒「???」は「真澄」で大当たり〜。当たった景品?として「菊姫」をもらう。で、気づくと、テーブルの上には升酒・コップ酒がたくさん…。(リンク)
2002-04-06[n年前へ]
■文字が飛び出すステレオグラム
愛の言葉とハートマーク
いつだったか、アスキーアート関連を調べてみるときに、下のような3Dアートを見つけた。単に無意味なの文字の羅列に見えるかもしれないが、ぼんやりと遠くを見る要領でこの英文字の羅列を眺めていれば、いつしかピラミッド状の形状が浮かび上がってくるハズである。
]KMQ\\SP]UMY]KMQ\\SP]UMY]KMQ\\SPUMY]KMQ\\SPUMY]KMQ\\SPUMY]KMQ\\SPUMMY]KMQ\\Sp ER_J]KUMS\QPER_J]KUMS\QPER_J]KUM\QPER_J]KUM\QPER_J]KUM\QPER_J]KUM\QQPER_J]KUM CQE_PSVJ^COJCQE_PSVJ^COJCQE_PSVJCOJCE_PSVJCOJCE_PSVJCOJCE_PSVJJCOJCCE_PSVJJCO HTXZQDDUTZUXHTXZQDDUTZUXHTXZQDDUZUXHXZQDDUZUXHXZQDDUZUXHXZQDDUUZUXHHXZQDDUUZU EYZIHVFQ[K`CEYZIHVFQ[K`CEYZIHVFQK`CEZIHVFQK`CEZIHVFQK`CEZIHVFQQK`CEEZIHVFQQK` EEDHYNWSMFZCEEDHYNWSMFZCEEDHYNWSFZCEDHYNWFZCEDHYNWFZCEDHHYNWFZZCEDHHHYNWFZZCE ZNFDRGB`JKZVZNFDRGB`JKZVZNFDRGB`KZVZFDRGBKZVZFDRGBKZVZFDDRGBKZZVZFDDDRGBKZZVZ NQAQLHPZQ\X`NQAQLHPZQ\X`NQAQLHPZ\X`NAQLHP\X`NAQLHP\X`NAQQLHP\XX`NAQQQLHP\XX`N VRMT^C]XN_TPVRMT^C]XN_TPVRMT^C]X_TPVMT^C]_TPVMT^C]_TPVMTT^C]_TTPVMTTT^C]_TTPV CNH^N\HYWVQMCNH^N\HYWVQMCNH^N\HYVQMCH^N\HVQMCH^N\HVQMCH^^N\HVQQMCH^^^N\HVQQMC KJ\A[RN\]WNKKJ\A[RN\]WNKKJ\A[RN\WNKK\A[RNWNKK\A[RNWNKK\AA[RNWNNKK\AAA[RNWNNKK `YCILI^CE[QU`YCILI^CE[QU`YCILI^C[QU`CILI^[QU`CILI^[QU`CIILI^[QQU`CIIILI^[QQU` UBIKIDP^E[ZMUBIKIDP^E[ZMUBIKIDP^[ZMUIKIDP^[ZMUIKIDP^[ZMUIKIDP^^[ZMUUIKIDP^^[Z E^\CLHAQBGEDE^\CLHAQBGEDE^\CLHAQGEDE\CLHAQGEDE\CLHAQGEDE\CLHAQQGEDEE\CLHAQQGE JYB_V_B`LP_RJYB_V_B`LP_RJYB_V_B`P_RJB_V_B`P_RJB_V_B`P_RJB_V_B``P_RJJB_V_B``P_ NCLD`^KRCE[]NCLD`^KRCE[]NCLD`^KRE[]NCLD`^KRE[]NCLD`^KRE[]NCLD`^KRE[[]NCLD`^KR ]L[\[Z`EFM[[]L[\[Z`EFM[[]L[\[Z`EM[[]L[\[Z`EM[[]L[\[Z`EM[[]L[\[Z`EM[[[]L[\[Z`E HTHE\JXLNQLGHTHE\JXLNQLGHTHE\JXLNQLGHTHE\JXLNQLGHTHE\JXLNQLGHTHE\JXLNQLGHTHE\ |
これはAA-projectのAA3D- ASCII art stereogram generatorを用いて作成された"ASCII art stereogram"だ。一世を風靡したランダムドットステレオグラムのアスキー文字版である。
言うまでもなく、ランダムドットステレオグラムは潜在意識でのパターン自動認識を利用して両眼視差を生じさせることにより立体感を得るものであるが、この"ASCIIart stereogram"では「パターン」として、ランダムドットでなくて「アスキー文字」を使ってやるものであって、考え方としてとても面白いアートだと思う。ランダムドットよりも、「謎の暗号っぽい」ところがちょっと楽しい感じになる。
人間はこんなランダムドットやこのアスキー文字のようなパターンを眺めるときに、目にするその全ての領域に対して「あぁココとココは同じパターンだなぁ」と無意識の内に判断できるわけで、何ともスゴイとしか言いようがない。オリンピックなどを眺めていてもよく思うことだが、人間の能力はとてもスゴイのである。
が、とはいえ太陽が西から昇ってもワタシがオリンピック選手にはなれないのと同じく、やはりスゴイ能力にもピンからキリまであるわけで、ワタシなどは実はこういう英語のASCIIart stereogramを眺めていても、一瞬で立体に感じたりはしないのである。なぜだか、左右の目が位置対応が一瞬では判らないのだ…。どうもワタシはアルファベットのパターン認識に時間のかかるニブイヤツであるらしい。もしかしたら、いやもしかしなくても、日本語ネイティブで英語が苦手なワタシはアルファベットに対するパターン認識能力が今ひとつ低いに違いないのだ。だから、この手の「英語」を使ったstereogramだと、左右で眺める映像間のパターン相関認識に時間がかかって、なかなか立体感を得ることができないのだろう(根拠はないけど)。ワタシのように異文化コミュニケーション能力が低いとステレオアートの観賞すらろくにできないに違いないのだ。
じゃぁ、ワタシのような異文化コミュニケーションに欠ける人々は「このステレオアートを日本語で作って眺めてみれば良いじゃないか」と思うわけだけれど、このAA3Dは「アスキー文字」にしか実は対応していないのである。名前からして、ASCIIArt Projectという位だから当たり前と言えば当たり前でしょうがないのではあるけれど、異文化コミュニケーション的には「日本語にだって対応して欲しい〜」と思ってしまうのである。火星人だって大阪弁をしゃべる今日この頃なのだから、AA3Dにも日本語を喋って欲しいところなのであるが、そんなことを言ってもしょうがないわけで、日本語を使ってステレオグラムを作るプログラムを早速自分で作ってみることにした。
とはいえ、2バイト文字と1バイト文字、全角と半角の混在文章に対応するのはメンドくさかったので、結局2バイト全角文字のみに対応ということにしてしまった。つまり、日本語と英語の混在文章などには対応していないわけで、これでは「日本語に使えないAA3D」と全く同じく、「他の言語のことなんか考えていない」という異文化コミュニケーション能力に欠けた、「作った親の顔が見たい」と言われそうなソフトが生まれただけだったのである。が、何はともあれ、これがそのできあがったNihogo3Dである。
- nihogo3d.lzh (284kB) function部 bc++b source
- 左上の画面に日本語を入力するか、LoadTextボタンで日本語を読み込む
- Load Heightボタンで立体マップ(Bitmapファイル)を読み込む(それは0〜255の高さマップに自動変換される)
- Make 3D Textボタンを押して、ステレオグラムを作成
例えば、上の動作画面は左上のテキストウィンドーにラブレターに使うようなちょっと恥ずかしい文字をただ無意味に入力して、そして右上の立体マップ(Bitmapファイル)にハートマークを読み込んで、ステレオグラムを作成しているところである。そして、その出力結果が下のテキストだ。一見意味不明の「読むだけで恥ずかしくなるような文字」がただ並んでるか、あるいはキョーフのデンパ系メールか、と思いきや、実はその言葉を背景にして「ハートマーク」が自分の方に浮かび上がってくる、という趣向なのだ。「愛の言葉を背景に相手の心にハートマークを浮かべさせる」という超マニアックでハイブロウなラブレター(イヤがられる可能性も超高し)なのだ。
愛しい。ちゅっ。ちぇ愛しい。ちゅっ。ちぇ愛しい。ちゅっ。ちぇ愛しい。ちゅっ。ちぇ愛しい。ちゅっ。 っ。スキ。大好き。愛っ。スキ。大好き。愛っ。スキ。大好き愛っっ。スキ。大好き愛っっ。スキ。大好き しい。ちゅっ。ちぇっしい。ちゅっ。ぇっしい。。ちゅ。ぇっしい。。。ちゅ。ぇっしい。。。ちゅ。ぇっ 。スキ。大好き。愛し。スキ。大好。愛し。スキ。大好。愛し。スキ。。大好。愛し。スキ。。大好。愛し い。ちゅっ。ちぇっ。い。ちゅっちぇっ。い。ちゅっちぇっ。い。ちゅゅっちぇっ。い。ちゅゅっちぇっ。 スキ。大好き。愛しいスキ。大好。愛しいスキ。大好。愛しいスキ。大大好。愛しいスキ。大大好。愛しい 。ちゅっ。ちぇっ。ス。ちゅっ。ぇっ。ス。ちゅっ。ぇっ。ス。ちゅっっ。ぇっ。ス。ちゅっっ。ぇっ。ス キ。大好き。愛しい。キ。大好き愛しい。キ。大好き愛しい。キ。大好好き愛しい。キ。大好好き愛しい。 ちゅっ。ちぇっ。スキちゅっ。ちぇ。スキちゅっ。ちぇ。スキちゅっ。。ちぇ。スキちゅっ。。ちぇ。スキ 。大好き。愛しい。ち。大好き。愛い。ち。大好き。愛い。ち。大好好き。愛い。ち。大好好き。愛い。ち ゅっ。ちぇっ。スキ。ゅっ。ちぇっ。キ。ゅっ。ちぇっ。キ。ゅっっ。ちぇっ。キ。ゅっっ。ちぇっ。キ。 大好き。愛しい。ちゅ大好き。愛しい。ゅ大好き。愛しい。ゅ大好好き。愛しい。ゅ大好好き。愛しい。ゅ っ。ちぇっ。スキ。大っ。ちぇっ。スキ。っ。ちぇっ。スキ。っっ。ちぇっ。スキ。っっ。ちぇっ。スキ。 好き。愛しい。ちゅっ好き。愛しい。ちゅっ好。愛しい。ちちゅっ好。愛しい。ちちゅっ好。愛しい。ちち 。ちぇっ。スキ。大好。ちぇっ。スキ。大好。ちっ。スキキ。大好。ちっ。スキキ。大好。ちっ。スキキ。 き。愛しい。ちゅっ。き。愛しい。ちゅっ。き。愛い。。ちゅっ。き。愛い。。ちゅっ。き。愛い。。ちゅ ちぇっ。スキ。大好きちぇっ。スキ。大好きちぇっ。スキ。大好きちぇっ。スキ。大好きちぇっ。スキ。大 |
同じステレオグラムでもランダムドットの方はあくまでも画像なので、メールに貼り付けようとするとどうしても添付ファイルになってしまって嫌がられることも多い。しかし、この「文字ステレオグラム」であれば、こちらは完全に「文字」なのであるから、いくらでもメールに貼り付けることができる。というわけで、e-mail時代の昨今にはとても使いやすいハズなのである。もしかしたら、今年の年末には「2002年度のラブレターe-mailの半分はこのNihongo3Dを用いて作成されました」という驚愕の事実が判明しても不思議でないくらいなのである。
また、「言葉を紡いで-何か-を描く」のが小説であるが、このNihongo3Dを使えばまさに「言葉を並べて-何か-を浮かび上がらせる」ことができる。例えば漱石の草枕の冒頭の文章で「角張った人の世」を描いてみたものが下の文章である。この文章をぼんやりと眺めてみれば、
人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。という文章を背景にして、「角張った人の世」が何と浮かび上がってくるのが判るハズだ。
さお)させば流されるさお)させば流されるさお)させば流されるさお)させば流されるさお)させば流さ みにくさが高(こう)みにくさが高(こう)みにくさが高(こう)みにくさが高(こう)みにくさが高(こ 、詩が生れて、画(え、詩が生れて、画(え、詩が生れて、画(え、詩が生れて、画(え、詩が生れて、画 ない。やはり向う三軒ない。やはり向う三軒ない。やはり向う三軒ない。やはり向う三軒ない。やはり向う 「人の世」に傍点]が「人の世」に傍点]が「人の世」に傍点]が「人の世」に傍点]が「人の世」に傍点 の国へ行くばかりだ。の国へ行くばかりだ。の国へ行くばかりだ。の国へ行くばかりだ。の国へ行くばかり 住みにくかろう。 越住みにくかろう。 越住みにくかろう。 越住みにくかろう。 越住みにくかろう。 、束(つか)の間(ま、束(つか)間(ま、束(つか)間(ま、束((つか)間(ま、束((つか)間(ま に画家という使命が降に画家という命が降に画家という命が降に画家家という命が降に画家家という命が降 が故(ゆえ)に尊(たが故(ゆえ)尊(たが故(ゆえ)尊(たが故((ゆえ)尊(たが故((ゆえ)尊(た かど)が立つ。情(じかど)が立つ情(じかど)が立つ情(じかど))が立つ情(じかど))が立つ情(じ とかくに人の世は住みとかくに人のは住みとかくに人のは住みとかくくに人のは住みとかくくに人のは住み ても住みにくいと悟(ても住みにくと悟(ても住みにくと悟(ても住住みにくと悟(ても住住みにくと悟( 作ったものは神でもな作ったものはでもな作ったものはでもな作ったたものはでもな作ったたものはでもな ある。ただの人が作っある。ただのが作っある。ただのが作っある。。ただのが作っある。。ただのが作っ 人でなし[#「人でな人でなし[#人でな人でなし[#人でな人でななし[#人でな人でななし[#人でな [#「人の世」に傍点[#「人の世に傍点[#「人の世に傍点[#「「人の世に傍点[#「「人の世に傍点 をどれほどか、寛容(をどれほどか寛容(をどれほどか寛容(をどれれほどか寛容(をどれれほどか寛容( こに詩人という天職がこに詩人とい天職がこに詩人とい天職がこに詩詩人とい天職がこに詩詩人とい天職が のどか)にし、人の心のどか)にし人の心のどか)にし人の心のどかか)にし人の心のどかか)にし人の心 う考えた。 智(ち)う考えた。 智(ち)う考えた。 智(ち)う考えた。 智(ち)う考えた。 智( とお)せば窮屈(きゅとお)せば窮屈(きゅとお)せば窮屈(きゅとお)せば窮屈(きゅとお)せば窮屈( 所へ引き越したくなる所へ引き越したくなる所へ引き越したくなる所へ引き越したくなる所へ引き越したく 人の世[#「人の世 人の世[#「人の世 人の世[#「人の世 人の世[#「人の世 人の世[#「人 どな)りにちらちらすどな)りにちらちらすどな)りにちらちらすどな)りにちらちらすどな)りにちらち らとて、越す国はあるらとて、越す国はあるらとて、越す国はあるらとて、越す国はあるらとて、越す国は 「人でなし」に傍点]「人でなし」に傍点]「人でなし」に傍点]「人でなし」に傍点]「人でなし」に傍 世が住みにくければ、世が住みにくければ、世が住みにくければ、世が住みにくければ、世が住みにくけれ の間でも住みよくせねの間でも住みよくせねの間でも住みよくせねの間でも住みよくせねの間でも住みよく あらゆる芸術の士は人あらゆる芸術の士は人あらゆる芸術の士は人あらゆる芸術の士は人あらゆる芸術の士 |
疲れたときにCRT画面の遙か遠くを眺めるようにして、漱石の言葉をボンヤリと眺めてみれば、その言葉が見る見る立体的に立ち上がって、角張った世界が起きあがってくるのである。疲れたとき、ボンヤリした時には、ぜひこの「草枕2002by 漱石フューチャーリングhirax.netを眺めて、そして楽しんでみてもらいたい。もしかしたら、バラバラに並べられたこんな文字が心の中で不思議に立ち上がってくるのかもしれない、と思うのである。
飛び出せぬ「この世が」住みにくければ、少しはそれを住みよくせねばならぬ。だから詩人という天職と、画家という使命ができる。あらゆる芸術は「この世」をのどかにし、人の心を豊かにするがゆえに尊とい。
2002-06-02[n年前へ]
■職場のスフィンクスの名台詞
止まったエスカレーターに何故上手く乗れないのか?
ある朝、いつものように出社すると、いつもと違うことがあった。職場へ行くために通らなければならないエスカレーターが動いていない。エスカレーター横のガラスが割れているため、それを直すまではエスカレーターを止めたままにしているらしい。かなり、不便ではあるが、壊れたモノはしょうがないのである。しょうがなく、建物の端にある階段をエッチラ、オッチラ上って職場の居室へ行ったのである。きっとスカレーターはすぐに直るだろうと思っていたのだが、残念ながらエスカレーターは直る気配が全く無いまま数日過ぎた。いつまでたっても、いぜんとしてエスカレーターは停止したままなのである。しかし、私たちの職場にはそのエスカレーターを使わないと辿り着けないので、その職場の人達はその止まったままのエスカレーターをいつしか階段代わりに登り降りするようになっていた。止まったエスカレーターは「楽ちんなエスカレーター」ではないけれど、ただの階段としては十分使える、というわけだ。
ところが、である。ただの階段と違って、何故か止まった「エスカレーター」は歩きづらいのである。特に、エスカレータに乗る最初の一歩がなんとも上手くいかないのだ。よく、エスカレーターに乗る最初の一歩や、エスカレーターから降りる最初の一歩が上手く出せない人がいるが、ちょうどあんな感じになってしまうのである。普段、動いているエスカレーターを使う分には、私は「上手く乗れない」なんてことは全然無いのだけれど、何故か止まったエスカレーターに足を踏み出そうとすると、体のバランスが崩れてしまうのだった。もちろん、エスカレーターが止まっていることも、微妙に段差が違うことも判っているのだけれど、だけれども何故かバランスを崩してしまうのである。
というわけで、私も含めてあらゆる人達がスカッスカッと何故かバランスを崩しながら、止まったエスカレーターに恐る恐る足を踏み出していたのである。
そんなある日、止まったエスカレータの横にシミュレーションプログラム作成を生業とするN氏がいつまでも立っていることに気づいた。そして、止まったままのエスカレーターを登り降りしようとする人達を次から次へとつかまえては、N氏は何事かを喋りかけているのである。何故だか、N氏は通る人通る人に何かの言葉を発しているのであった。それはまるで、ピラミッドの前に佇み、そこを通る旅人達に謎かけをするというスフィンクスであるかのようだった。
もちろん何処へ行くにもその止まったままのエスカレーターを使わなければならないので、私もすぐにN氏改めスフィンクスに捕まってしまうこととなった。そして、N氏はこう言ったのである。
「止まったエスカレーターに足を踏み入れるとき、何故だか体のバランスが崩れるような気がしないか?オマエは?」もちろん、それは私も不思議に思っていたわけで、
「そー、そー、そうなんですよねー。ただの止まったエスカレーターなんだから、普通の階段みたいなものなのに、不思議ですよねー。」と私が答えると、
「喝〜!不思議ですよねー、じゃぁないだろー。何故?どうして?を追求するのがオマエの仕事じゃないのかー!」と怒るのである。そ・それは私の仕事ではないのじゃないだろうか…、百歩譲ってそれが趣味なら確かにそうかもしれないが…、ワタシは別に子供電話相談室ではないんだけどなー…、と私が心の中で考えていると、
「ちゃんと、物事にはすべて原因があるハズだぁー。止まったエスカレーターに足を踏み入れるとき、何故体のバランスが崩れるのか、その理由を考えてみろー。」と怒りまくるのである。ここまでくると、ピラミッドの前で謎かけをするスフィンクスそのものである。いや、むしろそれよりタチが悪いかもしれない。何しろ、このスフィンクスはシミュレーション・プログラムを作るのを仕事にしているのだから、物理と論理に長けているのである。だから、きっと結構素朴であろう元祖スフィンクスよりなおさらタチが悪いのだ。
う〜む、これはそう簡単にこのスフィンクスからは解放されそうにないな〜、と思いながらも、私が
「う〜ん、エスカレーターが止まっている、って判っていても、無意識のうちに体がエスカレーターが動いていると思いこんじゃうんですかね〜。それで、何かバランスを崩してしまうんですかね〜」とあいまいに答えると、
「違〜う。答えはちゃんとすぐ目の前にあるのに、それにオマエは何故か気づいていないだけなのだ〜」と、スフィンクス、じゃなかったN氏はものすごく嬉しそうに叫ぶのだった。そして、そのスフィンクスは驚くべき解説を始めたのである。
「オレ達はエスカレーターが止まっている、という大きなことに気をとられて目の前、いや足下と言った方が良いか、の大事なことが見えていないんだよ。ホラ、エスカレーターの動く階段部分の直前がどうなっているか、良く見てみろよ。そこだけ傾いて斜面になっているだろう?」「あー、確かにそーですねぇ〜」「確かにそーですねぇ〜、じゃねぇよ。エスカレーターに乗ろうとするときに、俺たちの体を支えている足はそのちょうど斜面の上に乗っかっているわけだよ」「…」
「だから、エスカレーターに足を踏み出そうとする瞬間、実はオレ達の体はエスカレーターの方に傾いてしまっているわけだ。だけど、オレ達は- エスカレーターが止まっている - ということに気をとられて、斜面の上でオレ達の体がすでに傾いてしまっていることに気づかないわけさ」このN氏改めスフィンクスが語る話を聞いたときに、ワタシは目からウロコが落ちるような気がした。そして、ワタシの頭の中で加納朋子「ななつのこ」冒頭の台詞の文章「オレ達が止まったエスカレーターに足を踏み入れるとき体のバランスが崩れるのは、踏み出したオレたちの足に原因があるわけじゃなくて、もう一方の足下が傾いているということに気づかないことが原因なわけだ」
「答えはすぐ目の前に書いてあるのに、オレ達はただそれに気づかないだけなんだよー」
いつだって、どこでだって、謎はすぐ近くにあったのです。何もスフィンクスの深遠な謎などではなくても、例えばどうしてリンゴは落ちるのか、どうしてカラスは鳴くのか、そんなささやかで、だけど本当は大切な謎はいくらでも日常にあふれていて、そして誰かが答えてくれるのを待っていたのです....。が流れ出したのである。何もスフィンクスの深遠な謎などではなくて、職場の壊れたエスカレーターの前でも謎(大切かどうかはともかく)はいくらでも日常にあふれていて、そして時には誰かがスフィンクスに変身して、その謎に答えを出してくれるのであった。なるほど、なのである。
そして、「動く階段部分の直前にある斜面」を意識するようになった途端、止まったエスカレーターでも何の問題もなく乗れるようになり、むしろ、どうしてあんなにスカッスカッとバランスを崩していたのか不思議に思えるほどになったのだった。
で、その後スフィンクス改めN氏と「動く階段部分の直前にある斜面」のその他の効果、止まったエスカレーターに足を踏み入れるとき体のバランスを崩してしまうということ以外の効果、についてしばらく話をした。で、数日後成田で「動く歩道」の上を歩きながら、その効果を確認したので、その内容を書いてみる。
上の写真は平らな「動く歩道」だが、この場合にも先の場合と同じように、「動く歩道部分」直前は斜面になっている。そして、私たちは「動く歩道」に片足を踏み出すとき、もう一方の足は必ずその斜面部分に立っている。それは、ちょうど跳び箱を飛ぶ前に必ず私たちが踏切板を踏み込む瞬間のようなのである。すると、斜めになった面に片足で立った私達は、それに気づかないまま無意識のうちに体が前に倒れ、加速するのである。もちろん、斜面を片足で後ろに踏み出す効果もあって加速するのである。
私達が普通に歩いている状態に比べて、「動く歩道」の上を歩く状態というのは、私達の体の速度は速いのである。だから、普通に歩く状態から「動く歩道」の上を歩く状態にスムースに移行するためには、私達はその瞬間に「動く歩道」の速度に応じた若干の加速をしてやらなければならない。ところが、「動く歩道部分」直前の斜面のために、無意識のうちに私達はその加速を行ってしまうのである。だから、比較的スムースに「動く歩道」の上に移動して、しかもその瞬間の不連続な速度変化を感じずに済むわけだ。
そして、「動く歩道」を降りるときには、これとは逆のことが生じる。つまり、通常の歩道部分に踏み出した片足が、斜面部分に着地し、その斜面が私達の方に傾いているため上り坂を上るような状態になって、自然と私達の体は減速するのだ。だから、「動く歩道」から普通の歩道部分への移行がスムースになる、というわけなのである。
このような効果が誰にでも起きるのかどうかは判らないし、仮にそれが一般的に起きる現象だとしても、それが制作者達の意図したものであるかどうかは判らない。しかし、止まったエスカレーターを前に当惑したことのある人や、あるいはいつもエスカレーターや「動く歩道」に上手く乗れない人は、ぜひ「動く部分直前の斜面」に気をつけながら、足を踏み出してみてもらいたい、と思うのだ。
それにしても、「答えは目の前に書いてあるのに、オレ達はただそれに気づかないだけ」とは、ミステリー小説の中の気持ちの名探偵の台詞のようである。色んなところで色んなことで、私達はよろめいたり、つまづいたりするけれど、そんな時目の前の景色や、足下の景色をじっと眺めてみれば、目の前にその答えが大きく書いてあったり、あるいは転がっていたり、そして時にはその答えを踏みつけていたりするものなのかもしれないな、とふと思ったりするのである。だけど、やっぱり私達はそんな答えには気づかないまま、無意識に体が傾いてバランスを崩してしまうのかもしれないな、と思ったりもするのである。
2002-10-14[n年前へ]
■金正日(キムジョンイル) ナゾの9%
ベールの内側を垣間見るのだ
新幹線の中で週刊文春のページをパラパラとめくっていると、数々のスクープ写真で知られる不肖・宮嶋茂樹らの「面白い金正日のグラビア特集」が載っていた。新聞によく載っているような「一見真面目だけど、当たり障りのない記事」ではなく、一風変わった視点から(も)金正日を眺めたグラビア写真集だった。それは、例えば金正日の「頭頂部の増毛の日々」を追いかけてみたり、例えば金正日ご自慢の「シークレットブーツ」も俎上に上げてみたり、というような記事だったのである。つまりは、金正日の頭のてっぺんから足先までその秘密をある意味深~く覗いた記事だったのである。
その頃、日本にも同じように「シークレットブーツ疑惑」に襲われていた似たような「家元」世襲二代目のお坊ちゃまがいたが、金正日のそれはそれとは比べものにならないほどにワタシの興味を惹いたのだった。そして、ついにはその興味に惹かれるままにこの「シークレットブーツ疑惑」をワタシも研究してみることにしたのである。
そもそも、不肖・宮嶋茂樹らの記事は「金正日のズボンの謎の折り目、ありゃ一体なんなんだ?」という指摘だった。確かに、その指摘通りに金正日のズボンの裾にはいつも謎の折り目がついているのである。いつも同じような服とズボンであるのだけれど、それに加えて金正日のズボンの裾には確かにいつも同じ「不可解な」折り目がついているのであった。ズボンの裾の10cmくらい上に見るからにヘ~ンな折り目がついているのである。
先入観なしにその写真を眺めてみても、その折り目はどーにも「この高さまで妙にハイカットのブーツがありますよー、つまりはここまでがシークレットブーツの高さなんざんすよー」と主張しているようにしか見えないのである。そして、先の記事中ではその折り目の高さ辺りにホントの踵が隠されていて、その位置をズボンの裾の角度を頼りに計算してみると金正日のウソッコ身長、つまりはシークレットブーツの高さはおよそ15cmナリと算出しているのであった。
しかし、もしかしたら、もしかしたら、その折り目は単なるズボンの作りがためについてしまっているだけかもしれない。あるいは、金正日の脚があまりに短くて、そのズボンが15cmほどズボンの内側に裾上げされているのかもしれない。その裾上げの縫い目かなにかで、いつも謎の折り目がついてしまっているのかもしれない。はたまた、金正日の王国では「裾上15cmの折り目」がカコイイとされているのかもしれないし、普通のブーツではなくてハイカットのブーツを履くべし、とされているのかもしれない。だから、ズボンのベールの外側に見える「ナゾの折り目」だけを頼りに、金正日はシークレットブーツ着用マニアだー、と騒ぎ立ててみても、万が一に間違っている可能性だって無いとはいえないのである。
そこで、あえて「ズボンに残るナゾの折り目」は無視して、素直に「金正日の足の長さ」を計ってみることにした。とりあえずは、Googleのイメージ検索で集めた金正日の写真から、身長に対する股下長を計ってみることにしたのである。また、歩いているときの画像など明らかに膝の位置が分かるものについては、股下長を「膝上・膝下」に分けて画像計測してみた。
膝下長 / 股下長 = 70% | 膝下長 / 股下長 = 68% |
上の三枚の画像で計測してみた結果では、金正日の股下長はおおよそ身長の42%弱という結果が得られる。三枚の画像から得られた結果がとても良く一致するところから、この値はまぁ信頼できると考えて良いと思う。ところで、実は短足胴長で世間にその名を知られる日本人の平均股下長でさえ44%強なのである(「日本人の人体計測データ」)。すると、金正日の股下42%弱という値よりよっぽど日本人の平均値の方が高いということになるのである。つまりは、胴長短足の日本人よりも金正日はさらに胴長短足なのである。もちろん、とてつもなく短足というわけではないが、とても金正日がシークレットブーツを履いているとはとても思えない脚の短さなのである。
ということは、裾下15cm上でその存在を主張する「ズボンの奇妙キテレツなシワ」は金正日の脚の短さ故にズボン内部に大幅に折りたたまれている裾上げのせいなのだろうか?「シークレットブーツ疑惑」は冤罪であって、それは単に哀しき短足の証拠なのだろうか?どんなズボンも全てが全て長すぎて必ず裾上げが必要で、その裾上げの証拠が必ずズボンに現れてしまっているのだろうか?金正日の「シークレットブーツ疑惑」は事実無根であったのだろうか?
いいや、違うのである。上の左二枚の写真をじっくり眺めるまでもなく、股下長の割に膝下長がやたらめったら長いのである。異常と言っても良いほどに膝下が長いのだ。日本人の場合、(膝下長/ 股下長)の平均は約60%である。金正日は別に日本人ではないが、この金正日の約69%という値はあまりに異常なのである。もし、日本人の場合と同じように(膝下長/ 股下長)が60%であるとしたら、ホントの膝下長を x ( % ) とすれば
x / ( x+ 13) == 0.6であるから、金正日の膝下長は約29%ではなく約20%でなければならないのである。じゃぁ、その29%から20%に減った9%は一体何だろうか?あまりに不可解な「股下にあるけど膝下じゃない、靴の上にあるけど人体じゃない、それは何かと問われてしまう」ナゾの9%の高さが一体何かというと、それはもちろんシークレットブーツの高さに決まっているのである。金正日の身長を仮に165cm位とすれば、人間形状の平均値をもとに言えば、そのおおよそ9%= 15cmがシークレットブーツの高さである、ということになるのだ。
x = 19.5
そう、何と不肖・宮嶋茂樹らが「ズボンの裾の角度を頼りに計算されたシークレットブーツの高さ= 15cm」という結果とピッタリ一致するのである。方や、ズボンの裾に浮かび上がる「ズボンの奇妙キテレツなシワ」から推定したシークレットブーツの高さと、胴長短足の日本人の平均値から推定された「股下にあるけど膝下じゃない、靴の上にあるけど人体じゃない」ナゾの9%の高さが見事なまでに一致するのである。金正日のシークレットブーツの高さは15cm程度であると、複数の別の手法から確認されてしまったわけなのである。
というわけで、今回の研究から「金正日はムチャクチャ短足で、15cmもの高さのシークレットブーツを履いてみても、なおまだ胴長短足の平均的日本人よりもまだまだ股下長が短いのだ…」という哀しい真実が、金正日のズボンの裾のベールの内側から浮かび上がってくるのである。
ところで、上の写真は「あまりにアブナイ15cm高のシークレットブーツを履いた状態での金正日の階段降りのシーン」である。まるで、金正日には膝と踵の間にもう一つ関節があるような不自然で奇妙な脚の形に見えてしまうのだ。そして、後ろに控える人たちの「心配そうな視線」が金正日の足下に集中しているような気がしてしまうのである。
こんな奇妙な歩き方を眺めていると、ベールの内側の不自然でウソッコな足下に気をつけて欲しいな、と強く強く思うのである。
2003-01-02[n年前へ]
■知らずに歌っていた童謡の謎〜全国ナゾ解き探訪の旅〜
テレビ東京。このまえ書いた「赤い靴」の話や、「ゆうやけこやけ」の背景ー関東大震災の後に広まった。その背景を、一番と二番の視点の違いを被災者の心情から眺めて解説ー等の話。