2007-07-16[n年前へ]
■前へ「逃げる」
from n年前へ.
チャンス"だけ"は誰にも必ず来る
小島寛之
逃げる
近藤淳也
小島寛之さんの言葉の近くに、はてな近藤社長の「逃げる」という言葉が書いてあります。その言葉を最初に眺めたとき、力強い文字とその言葉がどうも似合わないように思えて、ふと首をかしげたのでした。ずいぶん消極的な言葉にみえて、意外に感じたのです。
その違和感が消えたのは、しばらくしてスポーツ解説のテレビを眺めてた時でした。「自転車競技では、先頭を走り空気抵抗を一手に引き受ける"逃げ"はとても苦しく、アタックとも呼ばれる」というような解説者の説明を聞き、自転車競技を愛するはてな近藤社長の言葉がようやく理解できたのです。
つまり、「逃げる」という言葉は、私が思ったような消極的な言葉ではなく、「苦しくても、力一杯アタックし続ける」という覚悟の言葉だったんだなぁ、と思い至ったのです。
ふりむくな ふりむくな、うしろには夢がない
寺山修司 さらばハイセイコー
実際のところ、その「心の痛み」と「科学的な薬」は本来補完し合うものだと思うのです。それが、何故か相反するもののようになりがちなのは、両方の側にその原因があるのではないか、と思っていたりします。
2008-05-23[n年前へ]
■『理系サラリーマン 専門家11人に「経済学」を聞く! 』
「個性溢れる11人の経済学者の方々に話を聞く」という趣旨の本、『理系サラリーマン 専門家11人に「経済学」を聞く! 』が発売されました。大竹文雄・玄田有史・友野典男・松原隆一郎・小島寛之・奥村宏・西村和雄・森永卓郎・中島隆信・栗田啓子・中村達也という、11人の経済に関わる方々が、ものわかりの悪い生徒に実に丁寧に教えてくれたこと、その内容が本になりました。
本書には、一般の方々や経済学者の方々のアンケートから、「経済学者」「一般のひと」がそっくりだけれど、ほんの少しだけ違う姿が浮かび上がり、「豊かになるために必要なもの」をクラスタ分析した結果から、「希望とか自由とか愛」といった見えないものの繋がりを眺めたりすることができるオマケもついています。また、産業・科学や芸術・宗教といった歴史背景と、経済学の世界地図の上に時系列で並べた「歴史年表」もついています。
豊かになるために、小島先生はたくさんのものを選び、(「若い頃は時間があるけれど金がなかった。今は時間だけが必要…つまりは年をとったということです」といった言葉とともに)大竹先生と友野先生は時間だけを必要とし、森永先生は「愛」だけを選びました……
一般の方々や経済学者の方々へのアンケート結果、そこに記された言葉を眺めていると、不思議なほど私たち自身(そして私たちの分身のような経済学者の方々)の姿が見えてきます。そんな私たち自身の姿・私たち自身が望むことを眺めつつ、経済学者の先生方が話すこと読むのも、一興かと思います。
2008-05-24[n年前へ]
■続・『理系サラリーマン 専門家11人に「経済学」を聞く! 』
クールビズ・ウォームビズの効果に関するシミュレーション記事の「原稿料の分け方」を飲み屋で話したことをきっかけとして、『理系サラリーマン 専門家11人に「経済学」を聞く! 』は生まれました。
私が授業を受けた11人の経済学者の先生たちには、2つの特徴があったように思います。1つは、ものごとを色々な方向から眺め一種冷めた考え方もする、ということでした。そして、もう1つは、多くの人と同じように、先生方の仕事への熱意は「素朴で単純な」暖かな気持から生まれているのかもしれない、と感じたことです。つまり、クールな頭とウォームな心が混じりあっていた、ということです。
「はじめに」
単行本にするにあたり、コラム(今気づきましたが、p.217のフローチャート中の「上がる」「下がる」が逆になっていました)や読んで欲しいと感じた本の「ブックガイド」を書き足しました。インタビューから少し時間を経てから書いたものですが、その分、少し漬かっていて味が深まっていると良いな、と願っています。
何より大変で、なおかつ、何より一番新鮮だったのが「経済学者の先生方に行ったアンケートの集計作業」でした。「好きな経済学者とその理由」「分数もできないみんなの判断でも”正しい”ことが多いと思うか?」「豊かになるために必要なものは何ですか?」という3つの拙い設問に対して書かれた言葉は、本当にどれも新鮮に感じたのです。記事中で先生方が語った言葉をアンケートに書かれた言葉とともに読み直したい。改めてその言葉を聞き返したいと強く感じさせられました。
「経済学の目的はみんなを幸せに豊かにすること」だといいます。それならば、「幸せ・豊かさ」とは一体何なのでしょうか。そんな「豊かさ」というものは、人が自分自身で見つけ出すしかないのかもしれません。そんな「豊かさ」は少し「孤独」と似ています。
最終ページ 中村達也著「豊かさの孤独」に対する紹介文
2008-05-28[n年前へ]
■『専門家11人に「経済学」を聞く! 』と『11人いる!』
私個人の感覚としては、『理系サラリーマン専門家11人に「経済学」を聞く!』の「11人に聞く!」というタイトルは、萩尾望都のSF漫画「11人いる!」の暗黙的なパロディです。
小島寛之先生に、「10人の経済学者がいれば、11個の経済学説がある」という話を聞きました。その時、ふと「11人いる!」を思い出しました。あの話は「ロケットに乗ったのは10人のはずなのに、なぜか11人いる!」という話でした。「11人いる!」の結末は、「宇宙では思ってもいないことが起きる。必ず想定外のことが起きる。そんな時にどうするかが宇宙では重要だ」という感じだったように思います。
宇宙大学への入学のための試験会場の宇宙船へ着いてみると、10人のハズが1人増えていた!
そんなことを、玄田有史先生に話を聞いた時にも、感じました。上の言葉の「宇宙」を「人生」に置き直したら、玄田先生が語る言葉に近いように感じたのです。あえて書いてしまえば、それは、「人生では思ってもいないことが起きる。必ず想定外のことが人生では起きる。 そんな時にどうするかを知ることが、本来の人生教育だ」というような具合です。
というわけで、経済学者が「11人いる!」と気づいた時に、何だかちょっと面白く・そして何故か当然のようにも感じたのです。
宇宙はつねに変化に満ちている概念が通用しない場合もある常に異端の11人目が存在するようなものだ。
2009-11-05[n年前へ]
■経済成長率下のゼロサムゲーム
小島寛之「数学で考える 」から。
どんなに個人が有望そうな投資戦略を取ったとしても、経済成長率がゼロなら、国民全員の投資収益を集計するとゼロになる。つまり、国民全員で見た場合、投資とは単なるギャンブルによって現資産の再分配をしているにすぎないことになる。
以下は、「数学で考える 」の中で引用されている村上春樹の「パン屋再襲撃」から。
つまり世の中には正しい結果をもたらす正しくない選択もあるし、正しくない結果をもたらす正しい選択もあるということだ。