hirax.net::Keywords::「個性」のブログ



2009-09-21[n年前へ]

「個性」という安易な幻想 

 関川夏央「おじさんはなぜ時代小説が好きか (ことばのために) 」の「無知に個性はない」から。

 近年は、個性とかオリジナリティとかの言葉が、魔法のように人を束縛しているのではないでしょうか。自己表現、自己実現も同じです。
 また、次の言葉は  堀井憲一郎「落語論 (講談社現代新書) 」から。
 いま、(中略)人は一人一人が個性を持った素晴らしい存在である、と教えられる。おとなになって木陰で休んでいる気分で振り返ると「嘘も休み休み言ってもらいたい」とおもえる。

2009-12-01[n年前へ]

 ― 結局は、自分の持ち球を投げるしかない、ということです。 

 北村薫「北村薫の創作表現講義―あなたを読む、わたしを書く (新潮選書) 」から。

 ― 結局は、自分の持ち球を投げるしかない、ということです。
 ― 結局のところ、表現とは、≪どのような自分であるか≫を見せることです。

 特に何か書きたいこと(ここで言うのは長文の話である)がない、という人も多いかもしれない。しかし、こんな言葉を北村薫の語り口で書かれると、あぁそうか、という心持にさせられる。

 しかし、長く生きていると、書きたいことというのは、否応無しに出て来るものですよ。

2010-03-25[n年前へ]

「個性の差異」や「感情や思考」と「行動」と 

 十二の星座、それぞれの男女、全部で二十四人を主人公にした二十四の物語 角田光代・鏡リュウジの「12星座の恋物語 」から。

 すべての人が星座によって十二パターンの性格に分類できる、とは私も信じていません。(中略)私が書きたかったのはむしろ、人の差異でした。十二人集めたら十二通りの個性があり、二十四人集めたら二十四人分の個性がある。自分の思考回路や行動原理がいつも正しいわけはなく、まったく異なる人もいる。また、頭では正しいことがわかっているのに、いつもいつも正しいことばかりできるはずもない。という、そのことを、この短い小説で書けたらいいなあと思っていました。

 男性、女性、それぞれの星座の色々な人たち、そんな二十四人の物語を、読みたい星座の読みたい性別から適当に読み進めていくと、「あぁ、これが物語というものなんだ」と実感させられます。

2010-03-27[n年前へ]

「減点法」と「加点法」の「見方」 

 十二の星座、それぞれの男女、全部で二十四人を主人公にした二十四の物語 角田光代・鏡リュウジの「12星座の恋物語 」から。自分の星座や性別や、あるいは、誰かの星座や性別から始まる、角田光代が綴る「物語」を読んでみれば、その言葉に、少し惹かれるかもしれません。

 私をふった恋人は減点法で人を見て、店長はその反対、どんどん点数をプラスしていくつきあい方をするんだろう。
 私は善人ではないし、たぶん女性としての魅力もそんなにないんだろうと思う。けれど、私をふった彼氏が知らなかったことを店長は知っている。彼氏が見てくれなかったところを見てくれる。自分がすばらしい人間とはゆめゆめ思わないけれど、でも、そんなに捨てたもんでもないはずだと、ようやく私は思うことができる。
 おばあちゃんになったっていいや。私のだめなところも、弱いところも、全部受け入れてくれる夏の陽射しみたいな人と出会えるならば。時間の経過とともに、そういうの全部、ひとつひとつプラスに換算してくれる人といっしょにいられるならば。

2010-08-29[n年前へ]

「初心」忘るべからず 

 少し前、部屋の掃除をしていると、10年ほど前に出た「おもしろ実験サイトオールガイド―素朴な疑問を体当たりで検証 」という本が出てきた。そして、その本のために池袋に行った時のことを思い出した。

 凄いと言えば、何年も前に工学社の「おもしろ実験サイトオールガイド」という本のための座談会に出た時も凄かった。座談会の場所は、懐かしき談話室「滝沢」で、待ち合わせ場所は「西武池袋駅前で集合」というもので、「-西武池袋駅前-だなんてそんな大雑把な待ち合わせ方法で本当に落ち合えるのだろうか?」と思っていたのだが、その疑問は大間違いだったことがその場に行ってすぐわかった。

 「あぁ、今日のメンツはこの人達だろうな。いや、絶対この人たちに違いないよなぁ」と断言できる面々がそこに佇んでいたからだ。そして、「私もこの中の一員なんだなぁ…なじんでないよなぁ、いやそれとも自然になじんでいるのかなぁ…うーん、一体どちらが良いのかなぁ…?」と考え込んだりしたのだった。

 その本を手に取り読んでいると、「おっぱいの(ありとあらゆる)経済効果」をマクロ的に見積もり(性と愛研究所)、およそ年間6兆円を(おっぱいが)生み出していることを明らかにしたり、「勝負パンツの価格相場」を調べてみたり、「トルマリンパワーの効果を実証」したり(ただいま実験中、など)、「おっぱいの科学統一理論」にいそしんでいたり(hirax.net)・・・と、なんとも頭を抱えたくなる題材ばかりが並んでいる。そして、実にくだらないことに力を注いでいる人たちを眺めると、まるでドン・キホーテの喜劇を見るようで、思わず笑いたくなってくる。

 初心忘るべからずだな、と思う。そういうくだらないことこそが楽しいんじゃないか、と妄想する。

幅広い心を、下らないアイデアを、
軽く笑えるユーモアを、上手くやり抜く賢さを、
大げさに言うのならば、きっとそういうことなんだろう。
誇らし気に言うのならば、きっとそういう感じだろう。



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