2008-12-05[n年前へ]
■西岡常一 「木のいのち木のこころ 天」
「木のいのち木のこころ―天・地・人 (新潮文庫)」(あるいは「木のいのち木のこころ〈天〉」)は本当に貴重な必読書だと思う。斑鳩大工の西岡常一が語った言葉を塩野米松が書いたこの本には、本当に色々な形の、それでいて重い言葉が詰まっている。
時代は科学第一になって、すべてが数字や学問で置き換えられました。教育もそれにしたがって、内容が変わりました。「個性」を大事にする時代になったといいますな。
しかし、私たち職人から見ましたら、みんな規格にはまった同じものの中で暮らしているようにしか見えませんのや。
近くの図書館の蔵書にこの本が入っていたならば、迷わず借りて読んでみるといいと思う。とても高い密度の真理が、きっとこの本には詰まっている、と思う。そして、折に触れてこの本に書かれている「たくさんのこと」を何度も何度も読み返したい、と思ったなら自分のものとして買ってみると良いと思う。
木そのものが精密やないんですから精密機械は無駄ですな。そのとき精密に削っても次の日には狂っていますやろ。
少なくとも、技術者になりたいと思っている人は、けれどこれまで読んだことがなかったというような人は、読んでみるといいと思う。絶対に、そう思う。
2009-02-10[n年前へ]
■「技術者」と「もしも」
「もし」と「もしも」の違いについて話題にしていると、ある(私が尊敬する)先輩技術者のひとりがこんなことをいった。
技術者は「もし」という言葉は使わないかもしれないなぁ。「もしも」という言葉は、リスクを考える状況において使うかもしれないけれど。なるほど、確かにそうかもしれない。「もし、○×な場合には~」というような言葉であれば、それは、「○×な場合には~」でも構わないわけである。「そのような場合」は当然考えている状況なのだから、わざわざ「もし」をつける必要がない、ということになる。
ただし、やはり「もしも」というような状況、かなりの想定外の状況での対応は迫らざるをえないことも多い。だから、そんな時には、「もしも、○×のようなことが生じたら~」というフレーズは、技術者が使うことがある、というのだ。
文章を書く道具は、書かれる文章の内容を変えるという。それとは逆に、何かを語る時には、その語る相手・状況といったもの次第で、その言葉を語る口癖が生まれてくるのかもしれない。
2009-04-30[n年前へ]
■「プライドの使い方」と太宰治
荒井玲子「ソフトウェア開発 で伸びる人、伸びない人 」の「あとがき」から。
人は、必ず変わることができる。
私はいつもそう信じています。そして、変わるならば、良い方向に、幸せな方向に向かってほしい、と願っています。
…プライドは、外に向けるのではなく、自分自身に向けることです。
…実は、私自身もかつては誤った高いプライドを持ち、肩に力が入った日々を送っていました。…(それが)変わったきっかけは…ある本を読んだことです。もしも、あなたが「どうしたら伸びる人になれるのだろう?」と思って、この本を手にとって下さったなら、この文章を読んで楽になって下さい。
「まじめに努力していくだけだ。これからは、単純に、正直に行動しよう。知らない事は知らないと言おう。出来ない事は出来ないと言おう。思わせ振りを捨てたならば、人生は意外にも平坦なところらしい。磐の上に、小さな家を築こう。」
太宰治 「正義と微笑 」
2009-10-20[n年前へ]
■「キュリー夫人の運命の一夜」
思わず内容をメモしたくなる内容を「技術」という分野に分けるか「人文」という言葉で表現するのか、=悩むことがある。けれど、そんな風に悩むことは少ない。
けれど、山田大隆「心にしみる天才の逸話20―天才科学者の人柄、生活、発想のエピソード (ブルーバックス) 」を読んだときには、そんな悩みを感じた。なぜ、この人は「技術を確かに見る視点」と「人を冷徹に眺める視点」を共に兼ね備えているのだろう・・・と感じ、そこに書かれている内容を「技術」に分類するのか、「人を表す言葉」に分類するのか悩んだ。この山田大隆氏の行う授業を聞いてみたい、と悩んでしまった。つまり、このサイトでいえば、Tech-logsに分類するのか、Logosに悩んだ、というわけである。
今日書き写すメモは、「人を表す言葉」に分類しておこうと思う。その対象は、山田大隆「心にしみる天才の逸話20―天才科学者の人柄、生活、発想のエピソード (ブルーバックス) 」の中のキュリー夫人に関する部分だ。節で言うと、「キュリー夫人の運命の一夜」である。
人は単純ではない。さまざまな本を読んで感じるキュリー夫人も、一言ではいえない綺麗な色も・濁った色も、それらをすべて兼ね備えた複雑なものを見せる。それでも、私の好きな人のひとりだ。
しかし、「一度、遊びに来ないか」といわれて相手の実家までついて行けばどういう状況になるか、はたまた、誘いを受けること自体どういうことか、いくら勉強一筋で世間知らずとはいえ、マリーに考えがおよばなかったはずはない。この文章だけでなく、そのあとに繋がる文章、そしてさらにその他に描かれている人物に関する文章も含めて、この本の一番感銘する部分は「人」と「技術」の両面を「深く」考察している点にあると思う。
マリーは、故郷ポーランドで一介のさえない物理教師で終わるより、天下のパリで研究者として自分の能力をためす道を選んだ、と考えたほうがよい。
2010-02-11[n年前へ]
■組み込み技術者の熱い頭脳戦
今年も組み込み技術者の熱い頭脳戦が全国各地で繰り広げられる。
ETロボコン――正式名称「ETソフトウェアデザインロボットコンテスト」はその名のとおり、組み込みソフトウェアの設計技術を競う競技だ。同一のロボット(走行体)をベースにして、UML(Unified Modeling Language)などで分析・設計したソフトウェアの技術を競い合い、「ロボット走行システムのソフトウェア設計モデル評価」と「ロボット走行性能(タイムレース)」の2つの側面で審査が行われる。
使用される走行体(ロボット)は、(中略)2輪倒立振子ライントレースロボット「LEGO Mindstorms NXT(以下、NXT)」が登場。2010年ではいよいよ(RCXがなくなり)NXTベースのみとなる。