hirax.net::Keywords::「音程」のブログ



1998-12-19[n年前へ]

音階を勉強する 

単音シンセサイザーをつくる

 今回は、音階そのものについて勉強をしてみる。世の中には色々な音階がある。いわゆる12音階の中でも、純正調、平均率などいろいろある。12音階でないものもある。どのような音階があって、それぞれどのような音程になっているのか調べてみたい。といっても、まずは7音音階、すなわち、ダイアトニックスケールだけを考える。
 参考文献は手元にあった、「音楽の不思議」 別宮貞雄 著 音楽之友社である。なお、江尻氏の音律周波数表、音律について、音律実験(http://www.tg.rim.or.jp/~ejiri/)では色々な音階についての情報を知ることができる。5音階、すなわち、ペンタトニックスケールについての情報もある。同様なWEBサイトととしては「調律法ききくらべのページ」(http://www.top.or.jp/~murashin/index.htm)がある。ARATA氏の「MIDIで古典調律を」(http://www.nifty.ne.jp/forum/fmidicla/htmls/kotenj.html)にもかなりの情報がある。

 ここでは、簡単にピタゴラス音階、ツァルリーノ音階(純正調音階)、12平均率だけを考える。

 まずは、ピタゴラス音階を作る。Aという基準音を作る。その音に対して振動数が3/2倍の音をEとする。更に、Eに対して振動数が3/2倍の音をBとする。また、Aの振動数に対して、3/2倍の音をDとし、Dの4/3倍の音をGとする。そして、CGの3/2倍の音をCとする。最後に、Cの4/3倍の音をFとする。
 各音の倍、あるいは1/2の音のオクターブ違いの音を考えると、結果としてC,D,E,F,G,A,Bのダイアトニックの7音音階ができあがる。このピタゴラス音階は旋律が良く響くという性質がある。よく響くという言い方は誤解を生じるかもしれない。「うまく旋律がおさまる」といった方がいいかもしれない。

各音の間の振動数の比
D/CE/DF/EG/FA/GB/AC/B
ピタゴラス音階9/89/8256/2439/89/89/8256/243
ツァルリーノ音階(純正調音階)9/810/916/159/810/99/816/15
12平均率2^(2/12)2^(2/12)2^(1/12)2^(2/12)2^(2/12)2^(2/12)2^(1/12)

 次に、ツァルリーノ音階(純正調音階)は、各音の間の振動数の比を見てもわかるように、和音はよく響く。しかし、旋律として聞いた場合には、必ずしも良いわけではない。しかも、転調はできない。現在、一番使われている12平均率は振動数比をみてもわかるように必ずしも、和音の響きが良いわけではない。しかし、周波数を見てもわかるようにピタゴラス音階とツァルリーノ音階(純正調音階)の中ほどであり、和音の響き、旋律どちらも悪いわけではない。
 ただし、1曲の中で厳密に音階が同じというわけでもないらしい。プロの弦楽四重奏などでの演奏では、必ずしも12平均率でなく、曲の中でも意識して音程を変えるという話だ。
 また、ツァルリーノ音階(純正調音階)用に曲を作って聞いてみても、それほど良くなるとは思えない。確かにきれいに響くのだが、(私の感じでは)それだけなのである。

 セントで表したものも示す。セントは基準音の振動数Nに対して、振動数Mである音を、1200x log_2(M/N) と表す単位である。 セントで表せば、12平均率は当然きりのいい数字になる。

セントで表した各音の振動数
CDEFGABC
ピタゴラス音階020440849870290611101200
ツァルリーノ音階(純正調音階)020438649870288410881200
12平均率020040050070090010001200

音階についてあまり長々と考えてもきりがないので、ひとまずここまでにしておく。なにしろ、奥が深すぎる。最後に各音階の周波数表を示す。なお、Cの音はいずれも440Hzにしてある。ここでいうCは音名ではない、階名である。つまり、絶対的な音の高さを示すもの(音名)でなくて、相対的な音の高さを示すもの(階名)である。むしろ、よく使われるドと言ったほうが良いかもしれない。「Aをドにして歌ってみよう」という時の「ド」である。ところで、ドレミファソラシドの語源はどこにあるのだろう?SoundOfMusicがdoeの歌のイメージから"do a dear ..."と鼻歌を歌うことはあるが、語源は一体?次の宿題にしたいと思う。
 さて、使用した周波数は全て江尻氏の音律周波数表、音律について、音律実験 (http://www.tg.rim.or.jp/~ejiri/)に記載されていたセントから最初の音を440Hzとし、周波数に変換してある。

HzCDEFGAHC
平均率 12Equal440494554587659740831880
純正律 Pure(5-3)440495550587660733825880
純正律 Pure(5-3)'440495550594660743825880
純正律 PureQ-39(3-5)440489550587652733815880
純正律 PureT-71(5-3b)440495570594660760855880
メルセンヌ純正律440495550587660733825880
ピタゴラス律440495557587660743835880
中全音律440492550588658736822880
キルンベルガー 第2440495550587660738825880
キルンベルガー 第3440492550587658736825880
キルン-ヴェルク440492552587658736828880
ヴェルク 第1技法第3番440492551587658735827880
ヴェルクマイスター 第3'440495553589660740830880
ラモー440492550588658736822880
ヴァロッティ-ヤング440493552588659737826880
ヤング 第2440493552587659737826880
43平均律440493551588658737825880
53平均律440495550587660733824880
 それでは、このような音階を奏でることの出来るシンセサイザーを作ることにする。
National InstrumentsのLabViewのExample例の中でWindows環境でSoundを入出力するViがあったのでこれを利用する。また、その使用例としてプッシュホンの発信音を出力するものがあった。これを適当にいじって作ってみる。今回は簡単のために単音のみの出力である。いずれ、もうすこしちゃんとしたものを作ってみたい。

 作成したアプリケーションをここにおいておく。
Onkai.lzh 1,176kB(配布終了です。)
LabViewのライセンス上、ダウンロード数が50近くになったら削除する。(配布終了です。)

onkai.exeの動作画面
 まずは、赤丸部分のボタンを押して実行モードにする。
 実行中の画面はこのようになる。
音階の選択画面
 このように色々な音階を
選ぶことが出来る。
 鍵盤をマウスで押しても音が出る。また、ファンクションキーのF1からF8でも音を出すことができる。ちなみに「ホンキートンク」は適当につくったでたらめの音階である。それぞれの音階を単音で聞いても違いが分かるだろうか。

2002-05-15[n年前へ]

「遙か」 

 こだまの中でのBGMはノートPCで(Pacemaker使って)0.22オクターブ下げた松任谷由実「君なき世界」と、0.25オクターブ上げたスピッツ「遙か」。前者は小田和正に聞こえて、後者は森進一の息子の声になる。
 森進一の息子の「遙か」は結構いい感じ。むしろ、こんな青臭い歌にはこれくらいの子供の声の方がきっと似合うと思う。
 ちなみに鬼束ちひろの音程を0.25オクターブくらい下げると平井堅になります。というわけで、この前カラオケで挑戦してみた、と。

2002-09-08[n年前へ]

君の歌は僕の歌 

竹内まりやの「平方根」

 半年ほど前、TBSのテレビ番組「USO」で放映されていた「竹内まりやの歌の音程を下げると山下達郎の歌に聞こえる」という話を観た。なんでも、その話は「ネット上をにぎわしている情報」ということだったのだけれども、ワタシには全然知らない話題だった。だから、その放映されていた「音程を下げた竹内まりやの歌」を聴いて、とてもびっくりした。確かに「山下達郎の歌」に聞こえるのである。そして、それにビックリすると同時にとても新鮮に面白く感じたのだった。

 山下達郎はワタシも好きだったりするし、しかも山下達郎は決して多作というわけではないので、「山下達郎が他人の曲をカバーをする新たな音源」をワタシが勝手に増やせるというのはとても魅力的である。そこで、ワタシは再生スピードを変えずに音程だけを変えることができるWinAmp + Pacemakerを使って、竹内まりやの「元気を出して」の音程を下げて、ワタシも山下達郎版「元気を出して」を作ってみることにした。それが下の二つのファイル、「元気を出して」の最後の部分の「オリジナル」と「音程を下げたもの」である。

これを聴くと、確かに山下達郎が竹内まりやの「元気を出して」を歌っているかのように聞こえるから不思議だ。単にそう耳に聞こえるだけではなくて、山下達郎が歌っている様子、そして山下達郎が竹内まりやに「君の歌は僕の歌」だよ、という気持ちを込めて歌っている様子すらワタシの頭の中に浮かぶのである。
 

 そこで、次に調子に乗って今度は鬼束ちひろの「流星群」の音程を下げてみた。今度は山下達郎が歌う「流星群」が手に入れよう、と思ったわけだ。ワタシの手持ちの音源全曲に対して山下達郎化計画を発動しようとしたのである。科学、いや単に"WinAmp+ Pacemaker"の力で山下達郎多作化計画を発動しようとしたわけだ。
  ところが、である。なんと「流星群」を歌っている歌手は今回は山下達郎には聞こえなかったのである。、そこには「流星群」をしみじみと歌いあげている平井堅がいたのだった。切々と「流星群」を歌い上げる平井堅の実に濃い顔がワタシの頭の中に確かに浮かんでしまうのだった。

何故、竹内まりやの歌の音程を下げると山下達郎になって、鬼束ちひろの歌の音程を下げると平井堅になるのだろう?竹内まりやと山下達郎が夫婦だからだろうか。…いやいや、そんな説明はあまりに精神論的すぎる。そんな説明をしたら、絶対バカにされるに決まってる。それになにより、鬼束ちひろと平井堅は夫婦ではない。きっと、何か他の確かな理由がきっとどこかに隠れているハズである。
 

 そこで、「竹内まりや、山下達郎、鬼束ちひろ、山下達郎」の歌を周波数を時系列的に眺めるスペクトログラムで比較・分析してみることにした。といっても、竹内まりやと山下達郎が「同じ言葉で歌っていて、なおかつ(本人の声以外の)バックミュージックが無いような音源」を手に入れるのが少し面倒だったので、今回は「声質」などを考察することはあきらめ、とりあえずはそれぞれの歌手の「歌い方」に注目してみることにした。
 

 まずは、竹内まりやの「元気を出して」と山下達郎の"So Much In Love"をスペクトログラムで眺めてみる。縦軸が周波数軸で、上に行くほど高い周波数の声である。当然、下に行くほど低い声である。そして、横軸は時間軸で、左の方が時間的に先で、右の方が時間的に後になっている。結局、このスペクトログラムの中にはさまざまな倍音が白い線となって描かれているのである。
 

「竹内まりや」と「山下達郎」の歌い方のスペクトログラムでの比較
竹内まりや 「元気を出して」
 山下達郎 "So Much In Love"

 まず、このスペクトログラムを眺めていると、竹内まりやも山下達郎も「ほんの少しだけ不規則なビブラート」がとても多いことがわかる。歌のかなりの部分にビブラートがかかっていて、竹内まりやの歌のやわらかさを支えている(少なくともワタシにはそう聞こえる)。そして、それは山下達郎とも共通している特徴である。

 また、それぞれのスペクトログラムの音の出し始め部をよく眺めてみるとちょうど「√」の形をした部分が数多く見られることに気づく。上に示した、竹内まりやの「元気を出して」のスペクトログラム中で青い矩形で囲った部分を見れば、そんな「√」形の部分があることが判るだろう。この「√(ルート)」形状は、「音の高さが連続的に変化している(一種のポルタメントのように)」ことを示しているわけだけれど、そんな√形状が竹内まりやと山下達郎の局の中に多いことが特に判りやすい部分を示したのが下のスペクトログラムだ。二人の歌の中にとてもよく似た√(root)マークがある(そして実はそれがとても数多くある)ことが判ると思う。
 

竹内まりやと山下達郎に共通する√ (root)
竹内まりや 「元気を出して」
 山下達郎 「君の瞳に恋してる」

 こうしてスペクトログラムを眺めてみると、竹内まりやと山下達郎の二人ともに、「ある音程の音を出すために、

  1. まず目的の音程よりも低いところから声を出し始め、
  2. しかも最初の一瞬は逆にほんのちょっとだけ下げて、
  3. と思ったら目的の音まで一直線に音程を上げて、
  4. そして、一定の音程をキープする
という歌い方」が共通していることが判ると思う。竹内まりやの歌にあふれるルーツ(√)は山下達郎の歌の中にあるルーツ(√)に繋がっていたのである。文字通り、竹内まりやのルーツは山下達郎のルーツだったのである。その歌の源は二人ともに同じものだったわけなのである。と、書いてる内に、とても非科学的になってしまったような気がしてきたので、ここで超強引に科学的に書いてしまえば、ここに
という方程式が実は成り立っていて、この「竹内まりや・山下達郎」方程式を解くことで、当然のごとく
竹内まりや=山下達郎
という答えが得られるわけなのである。つまり、竹内まりやの歌の音程を下げると山下達郎になると、この方程式から証明されるわけなのである。実に科学的な説明ではないだろうか……。
 
 
 

 …それはさておき、鬼束ちひろと平井堅の場合は一体どうなのだろうか。歌の中で声にかけられるビブラートは「竹内まりやと山下達郎」とどう違うのだろうか、そしてまた声(ある音程の声)の出し始めの様子はどのようになっているだろうか?というわけで、次に鬼束ちひろの「流星群」と平井堅の「大きな古時計」のスペクトログラムを眺めてみる。
 

「鬼束ちひろ」と「平井堅」の歌い方のスペクトログラムでの比較
鬼束ちひろ 「流星群」
平井堅 「大きな古時計」

 
 こうしてみると、もちろん鬼束ちひろや平井堅だって歌にビブラートをかけてはいる。しかし、先ほどの竹内まりやと山下達郎の場合と比べると、まるで人工的と言っても良いほどに規則正しいビブラートがかかっていることが判ると思う。また、ビブラートをかけていない部分では、実に一定な音程をキープしていることが判る。しかも、それぞれの音程で声を出し始める最初の部分では、その音程にいきなり「すっと入っている」のである。竹内まりやと山下達郎が「√」形状の声の出し方であるならば、鬼束ちひろと平井堅の場合は「電気回路の抵抗記号」のような声の出し方をするのである。そんな共通点がこの二人の間にはあったのである。鬼束ちひろの歌い方と平井堅の歌い方は実によく似ていたのである。だから、鬼束ちひろの歌の音程を下げると平井堅に聞こえたのかもしれない。誰でもカラオケに行って色んな歌手の歌を歌う機会があるだろうけれど、こんな風にスペクトログラム上のそれぞれの歌手の歌い方の特徴を意識しながら歌えば、もしかしたら面白いことだろう。誰もが平井堅や竹内まりやになりきれるかもしれない。
 

 ところで、最近のカラオケはとっても賢いリモコンがついていて、「**年に流れていた曲」というような検索ができる。すると、同年代の人とカラオケに行くとその年代に共通する「あの頃の曲」をかけまくって、歌いまくることになる。自分たちだけに判る懐メロ、だけどそこにいる人達にとっては「懐メロ」ではなくて今でも生き生きとしている曲、が次々とかけられることになる。中学時代、高校時代、ずっと昔のあの頃に流れていたヒットソング、そこにいる人に共通するルーツの曲のオンパレードになる。そんな時には、誰かが入れた歌全てがいつの間にか全員の合唱に変わっていたりする。

 同年代の人とカラオケは(特にそんなリモコンを使うときには)、まさに「他の人が歌う歌全てが自分の歌」、つまりは「君の歌は僕の歌」になる。、「元気を出して(オリジナル)」の最後の部分、竹内まりやの声を中央に、右から山下達郎の声が、左から薬師丸ひろ子の声が流れ溶け合っているのを聴きながら、そんな景色をを思い浮かべてみるのもきっと面白いんじゃないかと思う。

2003-03-17[n年前へ]

次のヒット曲を「予見」するソフト 

 「Hit Song Science」(HSS)は楽曲をヒットチャート1位に導く特徴——メロディー、和音、拍子の変化、テンポ、リズム、音程など——を特定できる。 アイリッシュロックグループのU2とベートーベンの楽曲からは、似たような数値が得られた。ビートルズとエルビス・プレスリーの楽曲にも、一致する特徴が見られた、というzdnetの記事
 なかなか面白そうなソフト。動作画面を見てみたい。そんなソフトを作ってみたい。で、このソフトが役に立つかどうかは…自分の耳と感覚に頼った方が…というのは正直な感想。

2003-07-07[n年前へ]

音程を維持したまま再生速度を変更することもできるメディアプレイヤー「MeRu」 

 音声・動画ファイルの再生速度を変えずに音程を変更したり、音程を維持したまま再生速度を変更できるメディアプレイヤー「MeRu」の記事



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