1999-10-31[n年前へ]
■ビックエッグの力学
ドームを支える空気圧の謎
この回は(トンデモ話)であり、中途半端であるのだが、反省を込めてこのままにしておく。直すのが、面倒くさいわけではないので、念の為。
日本シリーズ'99をやっている(いた)。私は野球は特に好きでも嫌いでもないが、野球場でビールを飲むのは大好きだ。そういえば、今年はドーム決戦である(だった)。ドームといえば元祖「東京ドーム」だろう。「東京ドーム」のWEB
- 株式会社東京ドーム (http://www.tokyo-dome.co.jp/about/index.htm )
東京ドームは、空気膜構造によるエアドーム。つまり内部気圧を外気より0.3%高くして、400トンもの超特大楕円形の屋根を膨らませるのがドーム建築のポイントなんだ。 ところで、この気圧差0.3%は、ビルの1Fと9Fぐらいの違いがある。とはいえ中と外の違いを体感することはほとんどない。 |
たった、0.3%の空気圧の差で400トンを支えるとは、ものスゴイ。すぐには納得できない数字である。別に疑い深い私でなくても不思議に思うことだろう。
そこで、確かめてみることにした。まずは、東京ドームの面積をx(m) * x(m)としてみる。すると、持ち上げることのできる重さ(トン)は、
- 0.3 / 100(%から比へ) * 100(hPaからN/m^2へ) * x * x / 1000(kgからトンへ)* 9.8(Nから重力へ)
と計算できる(この式には実は間違いがある。詳細は後で...)。その結果を示してみる。
先の、Webから東京ドームのサイズを見てみると、x = 180mである。すると、持ち上げられる天井の重さは100トン程度であるということになる。おやおや、先の「400トンの天井を持ち上げる」というのとはずいぶん違う。これでは、天井を支えきれない。
そこで、高さによる大気圧の差を導入し、天井近くの高い場所では「外部の気圧が低い」という条件を導入してみる。0.3%というのは地上での比で、天井のある上空ではさらに差があるとしてみるのだ。うーん、強引である。
さて、ここから後は(実は前も)トンデモ話になっているので眉に唾をつけて読んで欲しい。それを指摘して下さった、読者からの手紙への返事(とほぼ同じ内容)を下に示しておく。
青木さんへの手紙> 高さによる圧力の差は、高さの異なる二点間に存在する空気> の重さに見合ったものです。したがって、ドームの内部でも> 高いところほど圧力は低くなっている筈です。 その通りだと思います。WEB中で「うーん、強引である。」と書いたのはまさにその理由です。 それにも関わらず、強引な論法を続けたのは、文章の最後に「謎は解けないのに、東京ドームは存在している。 少し、くやしい。 」と書いた理由と同じです。まるで、「宇宙人が水道橋の駅前駐車場にUFOを停めて、サラ金に入って行くのを目の当たりにしている」ような、気持ちなのです。くやしいと強引になるのです。あぁ、何て人間らしいのでしょうか... また、計算をしていた時に少し勘違いをしていました>もし、ドームの内外の温度が等しければ、地上でも天井でも内外の差圧は>同じになるはずです。と仰るとおり、差圧は等しいわけですが、それを0mにおける大気圧に対するパーセンテージに直すと、高度が高くなればなるほど、そこの気圧に対してはパーセンテージは高くなります。計算をしていた時にその「パーセンテージが高くなる」ことを「差圧が高くなる」ことと同じに扱うという間違いを犯してしまいました。もちろん、基準の気圧が小さくなっているので、パーセンテージが高くなっても本当は差圧は変わらないわけです。「考えることを手抜きしていた」と言ってもよいかもしれません。要反省です。>ドーム内の温度が高ければ空気の密度> が減少し、天井の位置での差圧はより大きくなり、天井を支> えるのに有利に働きます。これは、浮力によって天井が持ち> 上げられていると考えても同じ事です。> という訳で、ドーム内外の温度差が逆転する夏と冬とでは天> 井を支えるのに必要な圧力を変えなければならないと思うの> ですが本当はどうなんでしょうか。 これは面白そうですね。そういえば、学生時代に地殻物理学を専攻していたのですが、夏と冬の大気圧の違いから、地殻歪の大きさに関係づけて、地震の予言をするなら、「冬に発生する」といった方が良い、話(もちろんかなり冗談で)をしていた先生がいました。その先生に「今回のトンデモ話」がばれたら、大目玉をくらうこと間違いなしです。 ビックエッグの謎は深まるばかりです。それでは、また。------------------------------------------------------------------ch3coohさんへの手紙> > >12/(100*100)*1000= 1.2g/cm2となります。> > >> > >地上での大気圧は約1Kg/cm2なので、上の値は> > >1.2%程度となり、 ここが疑問だったのですが、これは1.2%でなくて、0.12%ですね。なるほど、0.3%よりも小さいですね。実に納得です。 さて、他の方からの指摘もあり、私の計算には> >0.3 / 100(%から比へ) * 100(hPaからN/m^2へ) * x * x > / 1000(kgからトンへ) * 9.8(Nから重力へ)> に1013(標準気圧 hPa)がかかっていないことが気になりました。 という間違いがあることがわかりました。全てはここが原因だったようです。 全ての疑問が解決しました。いやぁ、お恥ずかしい。また、他にも色々と面白い情報ありがとうございます。
ひとつわかったことは、間違いをすると読者からの手紙が沢山来るといううれしくもつらい事実であった。ここから、あとは封印したい思いで一杯なのだが、自戒を込めてこのままにしておく。しつこいようだが、直すのが面倒なのではない。
それでは、高さによる大気圧の差を計算してみる。理科年表から15℃の「標準大気の場合の高さと気圧の表」を見てみる。 ちなみに、東京ドームの温度は、「ガス熱源による冷暖房システムにより、夏期は28℃の冷房、冬期には18℃程度の暖房が行われている」とある。今回の計算は外気の温度が15℃で、内部は冬期には18℃程度の温度に調整されているものとしておこう。
標準気圧は海抜0mで1013mbであり、200mでは989.5mbである。理科年表が古いのでPascal値でなく、mb表示になっている。
これから、1m当たりのmb変化を計算すると、0.12mb/mとなる。比率に直すと、0.012%/mということになる。例えば、「ビルの1Fと9Fぐらい」の高さの差は30m位であろうから、それを大気圧の比に直すと、99.6%位となり、先の記述と大体合う。
以下に、高度に対する大気圧の差(の比 %)を示してみる。
このグラフで30mの場所を見てみると、99.6%位というわけだ。これが、先のWEB上の「この気圧差0.3%は、ビルの1Fと9Fぐらいの違いがある。」という説明と合うわけである。
次に必要なのはドーム外部と内部の大気圧の比から、力に直してみる。基準面からの高さ0mにおける気圧を1hPaとして、1hPa = 10^2 N/m^2 = 10^2 m^-1 kg s^-2という単位換算を使うと、持ち上げることのできる重さは、
- (100-大気圧の差(の比 % )) / 100(%から単なる比へ) *9.8(重力に換算) / 1000(kgからトンへ)* 100(hPaからN/m^2へ) * x^2(ドームの面積)
東京ドームの高さは「グラウンド面から 61.69m」とあるので大雑把に100mとしてみる。
この計算結果によれば、東京ドームのサイズを180mとした時には、「持ち上げることのできる力」は400トン位になっている。ということは、先のWEBの記事と大体一致するわけである。
しかし、この計算では致命的な欠陥がある。天井の高度が低いときには、400トンを持ち上げるためにはもっと高い「ドーム内部の圧力を必要とする」ことだ。
例えば、0.3%空気圧の差の条件で、「天井の高度」に対する「持ち上げることのできる力」を計算してみると、次のようになる。
これでは、天井の高さが下がるとますます天井の重さを支えきれなくなってしまう。それに、そもそも天井をどうやって持ち上げたのだ?屋根を持ち上げるインフレートという作業はどうやって行ったのだろう?
今回の計算は謎が増えただけかもしれない。謎は解けないのに、東京ドームは存在している。
少し、くやしい。
2000-11-13[n年前へ]
■WEBサイトでMONOPOLY
これも一つのリンクページ
先日、ZDNet Japanを眺めていると面白い記事があった。ボードゲームの「モノポリー」にドットコム版ができたというのである。
- 「モノポリー」にドットコム版( http://www.zdnet.co.jp/news/0011/06/monopoly.html )
- Monopoly ( http://www.monopoly.com/dotcom/dotcom.html)
ところで、「モノポリー」というのは実に酷なゲームである。お金を奪い合い、お金が無くなったプレイヤーは容赦なく破産させられるのである。金が乏しくなってきて、もう他人に払うお金の持ち合わせなんか全然無くて「オレは別にここでこのままじっとしていたいんだぁ。」と言っても、そんなことは許されず強制的にサイコロを振らされるのである。そして、勝手に旅をさせられてわけのわからない場所に移動させられたかと思うと、「あっ、そこオレの場所。ホテルがあるから300ドル払ってね。」となるのだ。オレはただこの道ばたでじっとしていたいだけなのに、何でサイコロを振らされて、しかもオマエのホテルに泊まらアカンねん!と泣き叫びたくなるのである。オレは金なんか持ってないから、そんなグルグル高そうな場所を旅する余裕なんかないの!と言っても他人はただ笑うのみなのだ。
ヒドイ話である。ほとんど、「金なんか別にいらないよ。」と言っているのに勝手に金を貸して、しかもバブルが崩壊したら強引に金を取り立てはじめるどこぞの国の銀行のノリである。
「7並べ」くらいでも泣く子供(それは昔の私。親戚が集まるとよくこの話になり、今でも泣きたくなる。)もいるというのに、「モノポリー」なんかやった日にはもう子供が人間不信になることは間違いない。ハッキリ言って、「モノポリー」で涙をこぼして写真を撮られた大学生を私は何人も知っている。イナかっぺ大将の「風大左エ門」のように両目からボヨ〜んと涙をこぼす大学生の写真だって私の手元にはあるくらいだ。
そう言う感じで「モノポリー」はあまりにも子供達には酷なゲームなので、純粋で(少なくとも勝負には)可哀想な子供達と「モノポリー」をやるときには、銀行係になった私はいつも救済のためのお金をばらまいてしまう。つまり、お金が無くなりそうな子供が出そうになると、「日本銀行から、ボウナスが出たぞぉ!」と言いながら、みんなにお金をバラまいてしまうのである。確かに、泣きそうな子供はいなくなるではあるが、何故かそのあとオソロシイほどのインフレが襲ってくるのである。先ほど、どこぞの国の銀行に皮肉を書いてしまったが、少なくとも、私にはツブれそうな会社にお金をバラまくどこぞの国の大蔵省を怒る資格は無さそうである。子供達と「モノポリー」をやるときには、私も全く同じコトをしているのである。
ところで、「モノポリー = MONOPOLY」はといえば市場(ゲーム上では場所だけど)独占をして、お金をもうけるゲームである。WEBサイトの世界でも同じように「独占」という状況はあって、
で書いたように、「インターネットのほとんどのアクセスというものは、ごく少数の特定のサイトへのもの」なのである。ごく少数の大手サイトによってほとんどのアクセス数は独占されているのである。まだ普通の商売であれば独占禁止法( Antitrust [Antimonopoly] Law)があるのだが、WEBサイトへのアクセスではそんな独占禁止法なんかあるわけがない。なので、WEBサイトを冠するドットコム企業の独占を狙う「モノポリー」ドットコム版というのはとても当たり前で自然なのである。
というわけで、「モノポリー」ドットコム版を私はとても面白く感じたので、そのHIRAX.NETEditionを作ってみることにした。つまりは、ただの私のリンクページなのであるがまぁちょっとデザイン的に変わっていて面白いのと思うのは私だけだろうか?
それでは、振り出しからこれらのサイト達の紹介をしていきたいと思う。まずは、WEBでショッピングをしよう。というわけで、ぷらっとホームと秋月電子通商である。ここで電子部品や面白グッズ・ソフトを揃えたら、お次は私の巡回コースの基本である技術系サイトである。今日の必ずトクする一言・Fast& First・突撃実験室と廻ってみよう。
さて、牢獄を眺めながら次は情報サイトを廻ってみよう。というわけで、お笑いパソコン日誌・MAQ?MAK?MAC!・ZDNetNEWSだ。最後のヤツだけ個人サイトではないが、今回の情報源でもあるし一応入れてみた。
そして、お次は続・技術系(LabVIEW・電子工作編)というわけで、LabVIEWinfo sharing・えるむ・CyberWorkShopである。最初のは同業ライバル社の方というところに親近感を持っていたりするのだ。CyberWorkShopはもう永久に更新が無さそうなところがとても残念である。
そして、パーキングを経由して「読み物サイト」へ行こう。寂しいことに更新が停止したままのちゃろん日記(仮)・もう本気で感情移入せざるを得ない我妻との闘争・そしてこの我妻サイトの弟子サイトでもある乳から息子に宛てた手紙である。
そして、次は「理系文系ごっちゃまぜ読み物」である。まずは、本来こんなところに登場する資格はないのだが、本人のサイトということで強引に登場させた「できるかな?」・「僕が作る僕の可能性」という言葉も私は大好きなボクテレビ・そして、トンデモ系の推理を作るのは大変だろうなぁとつくづく思わざるをえないHMRだ。
そして、最後のコーナーを曲がって次は時事エッセイ日記だ。まずは、ワイドショーの奴隷・麗美のぷらぷら日記である。理系風ワイドショーという感じが面白いところである。そして、何故か場所の関係でここに配置されたデザインの一つの理想たるげんれい工房・言霊参上(ことだまさんじょう)だ。
そして、最後の二つ、つまりゲームの「モノポリー」で言えばここに止まったら大変だぁ、という場所はもちろんWEB噂の真相と2ちゃんねるである。ここで自分と関係する情報などを見かけてしまうと、実際の所結構ビックリするものである。
もちろん、私の巡回サイトといいうのはここに挙げたものだけでなくて、こっそり覗いているサイトは多々あるわけだ。しかし、そういうところはとりあえず、秘密である。
さて、本当の「モノポリー」ならともかく、今回のWEBサイト達はいくら泊まろうがお金を取られたりはしない。もちろん、一部のサイトでは広告くらいは表示されるかもしれないが、間違っても「あっ、ここオレのサイト。ドメイン維持のために300ドル払ってね。」ということはないハズである。だけど、時間だけはタップリ奪われてしまうかもしれないから、そのつもりで。
2009-11-17[n年前へ]
■「朝三暮四」と「不確実な将来」
(中国、宋の狙公(そこう)が、飼っている猿にトチの実を与えるのに、朝に三つ、暮れに四つやると言うと猿が少ないと怒ったため、朝に四つ、暮れに三つやると言うと、たいそう喜んだという「荘子」斉物論などに見える故事から)とある。ある時期から、この故事を思い出すたびに、妙にここで書かれている内容が気になるようになった。
1.目先の違いに気をとられて、実際は同じであるのに気がつかないこと。また、うまい言葉や方法で人をだますこと。朝四暮三。
2.生計。くらし。
トチの実を「お金」というものに例え直して考え始めると、特にその内容に対する好奇心が強まってきたのである。なぜなら、「朝に三つ、暮れに四つやる」と「朝に四つ、暮れに三つやる」では、将来がどう変わるか次第で、全然内容が違うのではないだろうか。
もしかしたら、夕暮れ時には朝とはトチの実の価値が全然違うかもしれない。朝の時点ではトチの実に価値があったとしても、その数時間の後には、(宿題ひきうけ株式会社のそろばん技術やカイコと同じように)トチの実のデフレーションが激しく進み、夕暮れ時にもらうトチの実には何の価値もないかもしれない。
もちろん、その逆のパターンもあるだろう。夕暮れ時のトチの実の価値が非常に高まっている、という場合である。…けれど、私たちは将来のことはわからない。楽観的に将来を眺めることができる人もいれば、そうでない人もいる。将来を悲観的に考えて、トチの実4つをもらうなら、その価値がわかっている朝に先に欲しい、と思うことは自然な感じ方のようにも思われる。単純に「非合理的」と断言できるたとえ話ではないようにも、思われる。
朝三暮四、生計・くらしを営んでいく中で、私たちは、どういう選択をするものなのだろう。猿である私たちは、一体どういう選択をすべきなのだろうか。そういうことが、よくわからないまま、毎日は続く。