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1999-08-09[n年前へ]

色を伝える時に、考え忘れていたこと(色弱と色空間 その1) 

We can work it out!

 オプトニューズ (1999) No.4の光の話題に三楽病院の岡島修氏が「レーザポインタと色覚異常」という小文を書いている。色弱の人の感じ方とプレゼンテーション(特にレーザポインタの色)に関する提言である。それを読んであることを思い出した。何年か前、Labofinder(Macintoshを科学分野で使うユーザーグループ)でプレゼンテーションについて特集していた発表会だったと思う。どなたかが発表を行った後に、次のような質問があった。

 「私は色弱なのですが、プレゼンテーションを行う際に使う色などについて、そのような人を意識して作成されているでしょうか?」

 恥ずかしいことに、私はあまり考えたことがなかった。そして、本WEBを作るに際してもそういった点はおろそかになっていると思う。そういう自分自身への反省を込めて、色弱と色空間について考えてみたいと思う。

 まずは、色弱に関する情報を調べよう。

といった辺りから簡単な知識を得る。

 それでは、私なりの理解と考察を始めてみたい。
目に映る明るさって何ですか? - 君は天然色- (1999.07.05)
の回で触れたが、人間が光を感じる網膜内の光受容器には錐体と桿体がある。この内、色(すなわち光の波長方向に関する感じ方)を感じるのは、錐体の働きによるものである。錐体には3種類有り、

  • L錐体 -> 赤
  • M錐 -> 緑
  • S錐体 -> 青
という波長感度を持っている(それぞれの波長感度については
目に映る明るさって何ですか? - 君は天然色- (1999.07.05)
を参照のこと)。それらの錐体に異常がある時に、色弱もしくは色盲が発生する。
色覚異常の種類
L錐体 (赤)M錐体S錐体先天性色覚異常の分類
OOO正常
XXX桿体1色覚 (全色盲)
OXX錐体1色覚 (赤)
XOX錐体1色覚 (緑)
XXO錐体1色覚 (青)
XOO第1色盲 (赤色盲)
OXO第2色盲 (緑色盲)
OOX第3色盲 (青色盲)
OXOO第1色弱 (赤色弱)
OOXO第2色弱 (緑色弱)
OOOX第3色弱 (青色弱)

 この図中でOは正常、Xは欠損、OXは機能低下である。

 M,L錐体に関する異常はX染色体劣勢遺伝をする。また、錐体1色覚、および、S錐体に異常がある第3色盲・第3色弱は比較的少ないという。

 それでは、これらの錐体に異常があるとどのような色を識別できなくなるのだろうか? 私は先に挙げたようなWEBを読んだくらいの知識がないので、数学的な考察をおこなってみる。現実をよく知らないため、実際の症例とはかなりの違いがあるかもしれない、ということは先に断っておく。

 現実の症例の参考としては、岡島修氏の「レーザポインタと色覚異常」中に挙げられているCIEXYZ表色系における強度色覚異常者(第1異常、および、第2異常)の混同色を用いる。その図を加工し、XY色度図を重ねたものを以下に示す。それぞれの図において、白い直線上の色を混同してしまうのである。

CIE XYZ表色系における強度色覚異常者(第1異常、および、第2異常)の混同色
第1異常
第2異常

 今回は、通常の(Red,Green,Blue)データを基本として考える。PCなどで表示を行う際に一番よく使うからである。任意のRGBデータをCIEXYZ表色系に直すためには、
WEBページは会社の顔色 -WEBページの色空間を考える2- (1999.04.26)
で用いたハイビジョンTVの色空間を例に用いて、

  • X= 0.412391R + 0.357584G + 0.180481B
  • Y= 0.212639R + 0.715169G + 0.072192B
  • Z= 0.019331R + 0.119195G + 0.950532B
というRGBから3刺激値への変形を行い、その後に
  • x=X/(X+Y+Z)
  • y=Y/(X+Y+Z)
という式を用いて、xy色度座標への変換を行う。なお、x,y色度座標では座標が一つ減っていることでわかるかと思うが、xy色度座標だけでは明るさが違う色が同じ点に存在することになる。そこで、今回は一番明るい条件の色を用いている。

 それでは、通常、第1色盲(赤色盲)、第2色盲(緑色盲)の3種類についてxy色度図の計算例を示してみる。ある錐体に異常が存在する場合に、どのような色空間が再現されるかの計算を行ってみる。通常のxy色度の位置において、ある錐体の刺激を無くした場合に色がどう変化するかを示したものである。であるから、第1色盲(赤色盲)、第2色盲(緑色盲)においては通常使われるxy色度図とは異なるものになる。また、ここで示した色が色弱の人が見ている色という意味でもない。

 単純に、ある錐体が得るであろう情報を無くしたときに、情報の識別がどのように困難になるかを確認した、と言った方がいいかもしれない。

 また、本来3錐体の波長感度特性はRed,Green,Blueの単波長というわけでもない。しかし、今回は簡単のために、3錐体の波長感度特性はRed,Green,Blueの単波長であるという仮定の元に計算を行っている。そのため、かなり現実とは違う結果になっている。近々、きちんとした計算をするつもりである。

xy色度図の計算例
通常
第1色盲(赤色盲)
第2色盲(緑色盲)

 ここでは、Z方向(明るさ方向)に対して無視を行っているので、かなりの誤差が存在すると思う。また、計算の中で一つの錐体に異常があるときの、RGBデータの再配分を計算する部分に極めて大雑把な近似をおこなっているので、その部分でも誤差が大きいと思う。

また、Red,Green,Blueの三色により色空間を形成しているため、各点を頂点とする三角形内に色空間は収まることになる。

計算ノート(Mathematica)はこんな感じである。

この計算結果を眺めながら、岡島修氏の「レーザポインタと色覚異常」中に記述されている色弱における混同しやすい色の例、

  • 第1色盲
    • 赤と黒
    • ピンクと青
  • 第2色盲
    • 赤と緑
    • オレンジと黄緑
    • 緑と茶
    • 青と紫
    • ピンクと白
    • 緑と灰色
というものを比較すると、割に納得できるのではないだろうか?

例えば、通常の色空間において赤(すなわち右上)の場所を第1色盲の色空間の中で見て欲しい。黒との識別が困難なのは一目瞭然だろう。また、下の図に示すように、通常の色空間でピンク(1)と青(2)が第1色盲の色空間の中でどうなっているかを見れば、

通常と第1異常の色空間におけるピンク(1)と青(2)
通常の色空間
第1異常の色空間

これも1と2の識別が困難であることが容易に想像がつく。第2色盲でも同じように見てみて確認して欲しい。

なお、上の図中で中心部が暗くなっているが、それはグリッド線のためであり、本来の色はもっと白っぽい色である。また、今回は岡島修氏の「レーザポインタと色覚異常」中の図と比較するために、CIExy色度図を用いたが、もともとxy色度図は人間の感じ方とは結びつけにくい。いずれ、均等色空間における解析を行うつもりである。また、先に記述したようにきちんと錐体の波長感度特性を考慮に入れた計算をするつもりである。今回はあくまでごく簡単な実験である。

 というわけで、今回は色弱の方がどのような色空間を感じているかを考察してみた。今回の話中には色々間違いもあると思う。なにか訂正すべき情報を見つけてくださったら、教えて欲しい。

画像出力に携わる方でこのWEBをご覧になっている人もいるはずだ。色を正しく伝えることを日夜考えている人もいるだろう。しかし、色を正しく伝えることを考えるときに、考え忘れていることはないだろうか? 「正しい伝え方」は、誰にとって「正しい」のだろうか?私達が当然のように感じている色についても、異なる感じ方をする人のことを考え忘れてはいないだろうか?
 そういった人は少数だと言われる方もいるかもしれない。しかし、あなたが当然の権利のように享受しているものは果たして全ての人が得ているものだろうか? もしかしたら、その権利を享受している人の方が少数派であるものもあるのではないだろうか?

 やることは至極簡単なことだ。技術的に言うならば、人の知覚も「デバイスの一部」として考えた際に、「人の知覚」が数種類あるものとして、異なるデバイス間のカラーマッチングを考えれば良いだけのことだ。もちろん、一筋縄ではいかないだろうが、得られるものの大きさからしたら、やってみる価値はあるだろう。

 プレゼンテーションソフト、あるいは数多くのソフトウェアにそういったことをきちんと考えたテンプレートが現れ、WEBサイトの色、画像機器のカラーマネジメントにそういった「全ての人(健常者と呼ばれる人のモデルだけでない)の感じ方まで含めたカラーマッチング」が適用されていく日も必ず来るはずだ。もしかしたら、このWEBサイトに来ている人の中には、今すぐにでもそういうことを始めることが出来る人もいるかと思う。果たして、そんなことが「できるかな?」と思われる人もいるかもしれないが、きっとできる筈だ。

 こういったことは色覚に限る話ではないと思う。考え忘れていることは数多くある。できることも数多くある、と私は思う。

2000-12-24[n年前へ]

A型vB型・大戦争 

血液型分布を眺めてみよう

 今年も私の職場には新入社員が入ってきた。その新入社員の中の一人は「血液型+ 動物占い」の信者だった。何しろ、ことあるごとに「血液型 + 動物占いの結果が同じ人はとってもよく似ているんですよ!もうビックリするくらい当てはまるんですよ!もちろん、たま〜に例外の人もありますけど。」といつも私たちに言うのである。もちろん、私も含めてその周囲の人は「その自信と根拠は一体どこからくるんだぁ!」とツッコミを入れるわけであるが、少なくとも本人は気持ち良いくらい自信満々なのである。とはいえ、私も占いというものは「根拠無しにテキト〜に何かを決めつけることができるという素晴らしいもの」だとも思うので、まぁそれはそれで楽しいわけだ。

 そんな血液型大好きな新入社員なら可愛いものであるが、それがもう少しエラ〜イ人になるとちょっとばかり大変である。私のとなりの部署の部長なども実はそんな血液型信仰者なのであるが、その部の配属には血液型が参考にされるというオソロしくも確かな真実がある(ホントにホント)。そこの某部長曰く「B型は実験が杜撰だから嫌い。」という実に誠実な理由に基づき、その部はA型人間大集合なのである。というよりも、その部からB型は外されているのだ。恐るべき純血追求型人事手法である。ヒットラーもビックリである。

 そんなA型人間大集合の部がある一方で、私が所属している部屋(課)は何故かB型が多い。10人強の中で半数程がB型なのである。どこで読んだのか忘れたが、日本人の血液型はA型35%,B型 25%,AB型 10%,O型 30%位であるらしいから、私の課のB型比率はかなり高い。しかし、もちろんそれは単なる偶然だろう。隣の部がB型を排除しているから私の部屋がB型で溢れているのじゃないか、という恐ろしい想像ができないこともないが、そういうわけでもないだろうと私は信じたい。

 しかし、「信じたい」という気持ちだけで物事を決めつけるのは危険この上ない。それは「セーラー服の女子高生はみんな可愛くて純真だと信じたい」という危険さと同じくらいデンジャラスである。何事も、先入観で判断してはイケナイのである。確認することが重要なのだ。そこで、今回は「10人強の中で半数程がB型なんていうのはよくある偶然」だということを血液型分布・配置シミュレーション(超手抜き)でも行って確認してみたいと思うのである。そして、私が所属している部屋(課)にB型が多いのがただの偶然であること、つまりある特定の血液型の人間が集まることが不自然ではないことを確認してみたいのである。
 

 さて、今回の血液型分布・配置シミュレーションのやり方は次の通りだ。

  1. まずは256人の人間を用意する。
  2. その256人に対して、A型 35%,B型 25%,AB型 10%,O型 30%位になるようにAB型の抗原(AA,AO,BB,BO,AB,OO型)を配置する。
  3. その後、遺伝子を移動して血液型を再配置する。
  4. 近所の人間と子供を作る(遠距離恋愛は考えない)。
  5. 血液型分布・配置を調べる。


 この説明の中で、一言で「遺伝子を移動して、近所の人間と子供を作る」と書いたが、もちろんその現象の中には

  • 人が引っ越したり・移動したりしていったり、
  • 愛が芽生えて子供がデキたり、愛が芽生えないけどデキちゃったりして子供が出来たり、
という人生の喜怒哀楽が詰まっているのである。ドラマが詰まっているのだ。しかも、それだけではない。この血液型分布・配置シミュレーション(超手抜き)の超手抜きたる所以は総人数を一定にするために、子供が一人出現すると親が一人消えてしまうのである。常に村人達は256人なのだ。スティーブン・キングも真っ青のオソロシイほどの手抜きである。

 まぁ、しかしカマキリのようにエッチのあとにメスがオスを食べちゃう動物もいたりするのだし(実際のところは知らないけど)、この恐怖の「子供が一人出現すると親が一人消えてしまう」システムもそんなに不自然ではないのである、ということにしておこう。というわけで、いつもながらの強引な展開だ。

 そんなわけで、行ってみた血液型分布・配置シミュレーションの結果が下の動画である。一マス一マスが一人の人間である。時間毎にどんどん血液型分布・配置が変化していく様子が判ると思う。ちなみに、
赤 = A型、緑 = B型、水色 = AB型、紫 = O型である。
 

血液型分布・配置シミュレーションの結果の一例

ファイルサイズがデカイのは直すつもり…
A型
B型
AB型
O型

 この結果はカラフルにただチカチカするだけの計算結果ではないのである。このチカチカこそが人生の喜怒哀楽なのだ。そこを是非とも心して眺めてもらいたい、と切望する次第である。
 

 じゃぁ、時間を追ってA型、緑 = B型、青色 = O型、紫 = AB型(色が一部さっきと逆転していることに注意)がどう変化していったかというと下の図のような感じだ。それほど一定ではないことがわかるだろう。それぞれの血液型の比率が逆転したりする下克上な瞬間だってままあるのである。
 

血液型分布の変化

A型、緑 = B型、青色 = O型、紫 = AB型

 もちろん、これは256人という少ない人数だからこんなに大きく比率が変動するわけである。しかし、今回は「つまりある特定の血液型の人間が集まる」かどうかを調べたいのである。つまり、ある少人数の人間達を考えたときに特定の血液型の比率が多くなることがあるかを調べたいのだから、考える人数は少人数で構わないわけだ。

 256人という比較的多い人数を考えた場合ですら、人生のドラマが続く中でそれぞれの血液型比率は結構変化して、それぞれの血液型の比率が逆転したりすることもあるわけだが、じゃぁもっと狭い領域に注目したらどうなるだろうか?例えば、下の瞬間の血液型分布・配置を眺めてみよう。
 

ある瞬間の血液型分布・配置

A型
B型
AB型
O型

 おやおや、結構

  • A型 = 赤が連続していたり
  • B型 = 緑が集まっていたり
  • O型 = 紫が多いくせに固まっていたり
  • AB型 = 水色が少ないながらも集まっていたり
するではないか。何故か同じ血液型が大集合している人達がイッパイいるではないか。そう、実は血液型の分布というのは「偏って集まっているようにみえる」のが自然なのである。以前、でも考えたが、ムラなく血液型分布が配置されているほうが実は不自然なのである。こういう分布は比較的少ない人数をとりだすと、どうしたってムラがあるのが自然なのだ。そして、そのムラは結構大きなものなのである。これが意外なほどムラはあるものなのだ。

 試しに、先程のシミュレーションである16人(つまり私の部屋(課)の人数位だ)を抽出して調べたときに、A型が一番多かった場合と、一番少なかった場合で、A型の割合だどんなだったかを調べてみたのが次に示すグラフである。ここで、

  • 赤 = その瞬間にA型が一番多かったグループにおけるA型の比率
  • 青 = その瞬間にA型が一番少なかったグループにおけるA型の比率
である。つまり、16人を抽出して調べたときに、A型の比率がどの程度偏っているのかを見てみるのだ。
 
16人を抽出して調べたときに、A型の比率がどの程度偏っているか?

赤 = A型が一番多かったグループにおけるA型の比率
青 = A型が一番少なかったグループにおけるA型の比率

 なるほど、A型が一番多かったグループではA型の比率が60%を越える時もある。逆にA型が少ないグループでは16人のなかにA型がいない、という状況すらあるのだ。

 ということは、私の部屋のB型がほぼ半数という状態だって別に不自然ではなく、それはごく自然なわけだ。もちろん、A型とB型の比率が違うことを考慮しても、全然不自然ではないだろう。ということは、血液型信仰者の某部長による隣の部のB型キライの恐るべき純血追求型人事手法の余波をうけて、私たちの部屋がB型だらけということはなくて、それは単なる偶然だろう、ということがわかるわけだ。

 ところで、ここまで書いて「血液型信仰者の某部長」が「ヘンな人」というイメージを持たれてしまうと非常に困る。何故なら、もっと変でなおかつエライ人がイッパイいるのである。(ここでいう「エライ」は関東弁&関西弁のニュアンスだ。つまり、「偉いけど大変な」というニュアンスだ。)血液型信仰者なんてカワイイもんじゃないの、と思えるくらいのスゴサである。だって、ダウジングが超大好きで、奇跡の水が超〜大好きな人だっているのだ。もしかしたら、ダウンジングなんて言葉を知らない人がいるかもしれない。しかし、知らなくて当たり前である。ダウンジングとは下の絵のような棒を持って水脈などの場所捜しをする迷信の中の迷信である。キング・オブ・迷信と言っても良いくらいのアイテムである。
 

参考資料: これがダウンジングだぁ… 笑える。

 しかも、なんとダウジング&奇跡の水大好き人間が実は某新規材料開発部署の責任者だったりするので、そこらへんは考えると実はかなりコワイものがあるのだが、それはそれ、結構笑える事実(ホントにホント)ので良しということにしておきたい。
 

2002-02-03[n年前へ]

映画のフィルムを並べたスクラップ 

映画大好きの「元」少年少女達へ

 先日、「お笑いパソコン日誌」で3次元画像ブラウザ「みょう絵」というものを知った。画像ファイルを日付や色の特徴などで三次元空間に並べてみる、というソフトだ。下の図がその「みょう絵」の動作画面だけれど、こんな風に三次元空間に配置された画像が散らばる中を「みゅぃーん」と動く感覚が結構気持ち良い。
 

「みょう絵」

 で、その「みょう絵」をいじって

 欲を言えば画像だけでなくて、色んな文章や音楽や気持ちとか、世の中のありとあらゆるものをこんな風にして眺めてみたいなぁ、と思った。あのころ撮影した写真や、眺めた景色や、読んだWEBサイトや…、とにかくありとあらゆるものを。
と思った。すると、「お笑いパソコン日誌」のChic氏が
 余談ですが、Windows XP はムービーファイルをサムネイル化してくれるんですが、あらゆるファイルをそうしてくれればいいのにと思ったり。
と書いていた。それを読んで、「みょう絵」で一本の映画の中を覗いてみたいなぁ、と思ったのである。

 映画が展開していくそのストーリーの時系列と、その中の色々な各舞台を三次元的に眺めてみたいと思ったのだ。そして、さらにはその映画の世界の中を三次元的に散策してみたいと思ったのである。

 もちろん、それは映画の動画ファイルを静止画に展開して、それを「みょう絵」で開けばよいだけの話である。以前、動画ファイルを静止画に展開するアプリケーションを作ったこともある。

 とはいえ、それを使って映画をキャプチャーしたファイルをそのまま静止画に展開するわけにはいかない。そんなことをしたら、ものスゴイ数の静止画ができてしまうからだ。1秒あたり約30枚もの静止画を含む動画をそのまま静止画に全部落としたら、一体どれだけのファイルができるだろうか?たった2分位の映画の予告編だって、展開したら何と3600枚である…。これだけの画像を読みこませたら、少なくとも私の遅いPCでは「みょう絵」がストライキを起こすことは確実だ。

 そこで、映画の動画ファイルの中から、場面が変わるごとに一枚づつ静止画を抽出してみることにした。そうすれば、映画の中の色々な場面をそれぞれ一枚づつの画像として眺めることができる。そして、その画像を集めれば、その映画の色々な場面を一枚のノートにして見ることができるわけである。

 というわけで、作ってみたのがこのAVI2Stillsである。いつものように、テキトーに仕立て上げただけだ。下の図がAVI2Stillsの動作画面である。ちなみに、この画面中で、TrigerLebelは場面変化を検出する感度を示すパラメータで、多分60位が適当だと思う。そして、SkipFrameは動画ファイルの中を何フレーム毎に調べていくかを示すパラメータである。展開スピードが気にならなければ1でも構わない。

AVI2Stillsの動作画面

 このソフトができたところで、試しに - ロケット制作に憧れる少年達を描いた「遠い空の向こうに」"OctoberSky"( = 原作 "Rocket Boys"のアナグラム) - の中の各場面を抽出してみたのが下のスクラップである。予告編の中の各シーンが絵コンテのように抽出され、並べられていることが判ると思う。
 

October Sky ( 遠い空の向こうに )

 こんな風に自分の好きな映画の場面を全部テキトーに抽出して、あとは「みょう絵」で眺めてみれば、その映画の世界を三次元的に散歩できるのである。というわけで、北村薫原作の映画「ターン」の予告編の世界を「みょう絵」で眺めてみたのが下の図である。
 

「みょう絵」で眺める「ターン」の世界

 静止画では判りにくいけれど、立体的に配置された「映画空間」の中を散策してみるのは、やはりちょっと面白い。これで、欲を言えば各場面に近づくとその場面で流れていた音楽やセリフが聞こえてきたら、面白いと思う。それは、ムソルグスキーの「展覧会の絵」のようで気持ちが良いはずだ。そして、そうすれば気持ちが良いだけではなくて、今の「みょう絵」に足りない「画像だけではない何かをも眺めること」ができるわけだ。
 

 またせっかくだから、「みょう絵」で眺めて終わりにするのも少しもったいないので、以前作った写真アルバム風のスクリーンセーバー"FilmStrip99"(手元のWindows2000では手直しが必要みたいだが…)で、白黒写真のコンタクトフィルム風のスクリーンセーバーを動かしてみた。それが下の画像である。映画のフィルムでなくて、写真のフィルム風だというところはご愛敬で許して欲しい。ちなみに、下の一連の画像は"SomeoneLike You"「恋する遺伝子」の予告編から変換したものである。

 こんな風に自分の好きな映画の予告編などを使って自分用のスクリーンセーバーを作ってみるのも面白いと思う。今なら、たくさんの映画の予告編にオンラインでアクセスできるし、その予告編の動画ファイルがもしmov形式ならmov2aviを使って、それがもしrealvideo形式ならTinraを使えば、AVIファイルに変換できる。そして、今回のAVI2Stillsを使えば良いだけなのである。
 

Someone Like You ( 恋する遺伝子 )

 ところで、こんな切り取った映画のフィルムを繋いだ一連のシーンといえば、ニューシネマパラダイスのラストシーンを思い出す。アルフレードの遺品、「主人公が覗き見ていた一連の場面」を繋いだシーンのフィルム、に主人公が涙したように、かつて少年少女だった映画大好きの人達がそれぞれ自分用のそんなスクラップフィルムを作ってみるのも面白いかも、と思う。そして、ふと思うことがあった時に眺めてみるのも、趣があるかも。

2002-08-17[n年前へ]

遺伝的アルゴリズムによる個性と変動を伴った手書き風文字の生成 

 但馬ら。

2003-08-28[n年前へ]

CDとインクジェット・プリンターで手軽に遺伝子検査 

 「CD表面に付着した分子がレーザー光線をさえぎって起こす全エラーを検知し、定量化する」というとても面白いアイデア



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