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2002-08-17[n年前へ]

遺伝的アルゴリズムによる個性と変動を伴った手書き風文字の生成 

 但馬ら。

2002-09-26[n年前へ]

オッパイ星人の力学 「胸の谷間」編 

新兵器「巨乳ビジョンLight」

 一見平和に見える島国でも色々な敵が潜入してくる。時には高速艇で日本海へ、そしてまた時には飛行機に乗ってディズニーランドへ、そして時には未確認飛行物体UFOに乗って色んな異星人達が日本へ潜入してくる。ワタシは、そんな異星人達の一派、オッパイ星人達と日夜戦っているのである。「オッパイ星人に狙われそうな可哀相な子羊(巨乳)」達をワタシはいち早く見つけだし、オッパイ星人達から可愛そうな子羊達を守るために、ワタシは日夜巨乳(あるいは微乳の)子羊達を見守っている。「オッパイ星人に狙われそうな巨乳はいないか~、揺れる胸はいないか~」と東北地方に住むナマハゲのように、人知れずパトロールを続けているのだ。

 そんな毎日の戦いの中で、かつてワタシは「見るバスト全ての形を明らかにしてしまう恐るべき最終兵器- 巨乳ビジョン -」を開発したのだった。しかし、左右のステレオビジョンでターゲットにロックインして激写し、撮影された複数画像からステレオマッチング法でバストの形状を明らかにする巨乳ビジョンには大きな問題があったのである。二つのレンズが左右に並ぶ「巨乳ビジョン」の勇姿はどうみても異様なのであった。巨乳ビジョンを装着しfoたワタシの姿は明らかにヘンでアブナイやつなのである。恐るべき異星人-オッパイ星人-と日夜戦い続け、地球を守る正義の味方には決して見えないのであった。どうしたって「スケベな盗撮野郎」に間違えられてしまうのである。

 世間で平和に暮らす愛すべき日本の人々がオッパイ星人の地球への襲来をちゃんと知っていて、日本全土に「オッパイ星人襲来」非常事態宣言でも流されていたとしたなら別なのであるけれど、一見平和に見える(実はそうでないのだが)この日本では「双眼レンズの異様なカメラ-巨乳ビジョン -」はなかなか使うことができないのであった。日夜地球を守る、人知れず人々の平和な生活を守るためには、つまりは人知れず「オッパイ星人に狙われそうな可哀相な子羊(巨乳)」達を見つけだすためには、異様な姿ではない巨乳ビジョンの新開発が欠かせなかったのである。決してヘンでアブナイやつ、ましてや「スケベな盗撮野郎」になんか間違えられたりしない「一見、普通のカメラ風の巨乳ビジョン」が必要なのであった。

 そこで、ワタシが開発した「巨乳ビジョンの簡易バージョン、一見普通のデジタルカメラ風の巨乳ビジョン」が今回の話の主人公- 巨乳ビジョンLight - だ。画像処理ソフトPhotoshopに簡易バージョンPhotoshopLEがあるように、そしてモーニング娘。にプッチモニがあるように、最終兵器「巨乳ビジョン」の簡易バージョンが「巨乳ビジョンLight」なのである。双眼の異様な姿では決してなく、単なる普通のデジカメを使うことができる画像処理システム、それが「巨乳ビジョンLight」なのだ。
 

 そもそも、初代「巨乳ビジョン」は左右の両眼視差を利用してバストの立体計測を行うメカニズムになっていた。「人間は両目で見ている画像の差を利用して、奥行き情報を知るわけであるが…」と前回の巨乳ビジョンの開発記で書いたように、角度を変えて配置した二つのカメラで撮影した二つの画像から、ステレオマッチング法を用いて奥行き情報(つまりはオッパイの高さ)を再構成していたのである。そのために「巨乳ビジョン」は双眼の異様な姿になってしまっていたのである。

 しかし、考えてみれば人間が立体感を得る手がかりは両眼視差だけではないのである。立体感を得るためには、他にもいくつもの手がかりがある。そのいくつもある手がかりの一つが「陰影」である。女性の化粧が(男性の化粧においても)多くの場合鼻を高く見せたりするために、鼻周りの「陰影」を強調したりするように、「陰影」は立体情報を得るための大きな手段なのである。例えば、下の二つの図形、「陰影」がある場合と「陰影」がない場合を比べてみれば、どちらがハッキリと立体感を得られるかは明らかだろう。そう、左側の「陰影」がある場合は見事なまでの半円状のたわわな巨乳形状を感じとることができるのに対し、右側の「陰影」が無い場合ではそんな官能的な形状を感じ取ることはできず、むしろ真っ平らに見えるに違いないのである。実は全く同じ形状であるにもかかわらず、陰影の有り無しの違いだけで「巨乳」と「クレーター」の差になってしまうのである。
 

どちらが「立体」に見える?
「陰影」がある場合
「陰影」が無い場合

 こんな風に、「陰影」がある場合のたわわな巨乳形状を見れば一目瞭然なように、「陰影」による立体感が「オッパイの形状認識」に及ぼす影響はとても大きいのである。その代表的な例が「胸の陰影が描き出す胸の谷間」である。試しに「胸の谷間」でGoogle検索(おこちゃまは禁止)をして入手した典型的な「胸の谷間」画像を眺めてみれば、そんな「陰影」によるオッパイ形状認識に及ぼす影響の偉大さを感じ取ることができるハズだ。
 

典型的な「胸の谷間」
光が描き出す「陰影」は実に何とも官能的な立体感を(以下省略)

 実は、今回の主役「巨乳ビジョンLight」はこの「陰影」を手がかりにオッパイの形状認識を行うのである。「光」が描き出す胸の谷間の陰影、その「光=Light」による微妙な陰影を手がかりに「巨乳ビジョンLight」は見るバスト全ての形、特に胸の谷間の立体形状を明らかにするのである。そう、「巨乳ビジョンLight」はLightの力を利用するが故に、「巨乳ビジョンLight」であって、単なる廉価版「巨乳ビジョン」ではないのである。「巨乳ビジョンLight」の名は体を表してるのである。光があるところに陰がある。山があるところに、谷がある。もしそこに巨山があるならばやはり巨大な谷ができ、巨大な陰ができる。それすなわち「胸の谷間」なのである。だから、その陰影を「巨乳ビジョンLight」で解析してやるならば、山谷の立体形状を知ることができるのだ。
 

 というわけで、実際のところ「巨乳ビジョンLight」は基本的に普通のデジカメで撮影された画像に対して立体解析を行う単なる画像処理システムである。ワタシはそのシステムのために、まずはPhotoshopとExcelのような表計算ソフトを連携させるプラグインCSVf(制作日記)を作成した。
 

画像解析プラグインCSVfの動作中のスクリーンショット
画像の値を表計算方式のセルで表示させ、Excelでグラフを描いたりすることができる。

 これは画像の値を表計算方式のセルで表示させ、その表示されたデータをExcelでグラフにしたりすることができる。つまりは、画像データを解析して、色々な表示方式で立体化することが素晴らしくも簡単にできるようになるのだ。もちろん、フリーのソフトウェアでもScionImagePCやImage Toolなどで似たようなことはできるが、表計算方式のセルで表示という点において、このCSVfは使い勝手の点で勝っているハズである。

 そして、先ほど入手した「胸の谷間」画像に対して、試しに画像解析を行ってみることにしよう。何はともあれ、単に「胸の谷間」画像を立体化してみた場合の結果を眺めてみることにしよう。まずは、単純に画像の明るさを「バストの高さ」に直して、等高面グラフにしてみるのである。ちなみに、右肩上方から胸の谷間を覗くような方向に視線を設定して、三次元グラフに表示してみることにする。三次元グラフは色々な方向から眺めることができるが、やはり「胸の谷間」を覗く視線ベクトルは「右肩上方から斜め下60度」であるべきなのだ。
 

典型的な「胸の谷間」
右肩上方から胸の谷間を覗くような方向で三次元化する

 とはいえ、この「胸の谷間(点線で囲った矩形領域)」を単純にCSVfで立体グラフに直しても、下のグラフのようなわけの判らないグラフになってしまう。それはもちろん当たり前である。単純に「画像の明るさ」=「バストの高さ」になるわけがないのである。ほんの少しだけ、実写真の「胸の谷間」の高さ分布と似たような形状になってはいるが、これでは全くの別物であることは間違いない。よほどの想像力豊かな人であれば別だと思うが、少なくともワタシはこのグラフからでは「胸の谷間」を想像することはできないのである。
 

「胸の谷間」画像の輝度をプロットしたもの

 実は、「胸の谷間」画像の陰影からその立体形状を再構成するためには、この「胸の谷間」画像中の各ピクセルの「明るさ=輝度」を積分してやらなければならないのだ。詳しくは、次回以降のオッパイ星人の力学 「胸の谷間」の法線ベクトル編でそのベクトル解析理論と解法アルゴリズムを述べることとして、今回はまずはそんな作業を実際にしてみた例を次に示してみることにしたい。

 下のグラフが、「胸の谷間」画像の輝度をXY方向に積分し、胸の谷間を再構成してみた結果である。つまりは、先ほどの「胸の谷間」画像から新兵器「巨乳ビジョンLight」を使うことで得られる胸の谷間の立体形状なのである。先ほどの実写真と比べてみれば、驚くほどにその立体形状・胸の谷間の形状を再現・解析することができていることが判るだろう。しかもExcel上ではこのグラフをぐりぐりぐりぐり・ぐるぐるぐると色んな方向から眺めることだってできるのである。これが、「巨乳ビジョンLight」システムの恐るべき能力なのだ。
 

「胸の谷間」画像の輝度をXY方向に積分し、胸の谷間を再構成してみたもの

 このグラフを色々な角度から眺めれば眺めるほど、素晴らしく官能的な「胸の谷間」の立体形状を認識できていることがわかると思う。寄せて上げて胸の谷間がプレートテクトニクスのように作り出されているようす手に取るように実感できるハズだ。これが科学の力なのである。正義の武器廉価版「巨乳ビジョンLight」なのである。PyramidパワーダウンジングGPS捜査「思い込み」エネルギー、など他にも超科学の力で日夜戦いを続けている数多くの正義の味方達がいるが、ワタシもこの「巨乳ビジョンLight」を武器にオッパイ星人達との戦いを優位に進めたい、と思ったりするのである。

 とはいえ、初代「巨乳ビジョン」が「バスト全ての形を明らかにしてしまう」というその恐るべき能力と、その異様な(ヘンな)姿を理由にワタシが人知れず封印してしまったように、実際のところこの「巨乳ビジョンLight」だって、見てくれは「単なるデジカメ+解析ソフトウェア」であるにしても、やってることは「スケベな盗撮野郎」と違うとは言い切れないのだ。いや、初代「巨乳ビジョン」の方はまだ少しは計測っぽい感じが残っていたけれど、単なるデジカメ画像で十分使用することができる今回の「巨乳ビジョンLight」ではもう全く持って盗撮野郎と同じなのである。いくら何でも、普通のデジカメで街行く女性のバストを(人知れず)撮影し、そのバストの形全てを(勝手に)明らかにしてしまうなんてことは、いかにワタシがオッパイ星人と戦う正義の味方といえども決して許されるわけはないのである。

 というわけで、結局のところ「巨乳ビジョンLight」は実際に街中で使用できるわけもなく、オッパイ星人と日夜戦うhirax.netオッパイ戦隊の兵器庫にまたひとつ封印された禁断の武器が増えてしまったのである。今回のオッパイ星人対戦記はこんなふうにほろ哀しく終えるわけであるが、これに懲りずにこれからもワタシは強力兵器の開発を続けていくのである。それが、孤独な正義の戦いというものなのである。

2003-08-01[n年前へ]

ユーザー参加型「バカ日本地図」プロジェクト 

 「群馬・栃木・茨城の三つの区別がはっきりしてない人が多かったので、全部茨城にしました」「京都が日本海に面しているのは意外だそうなので、京都の海岸沿いを兵庫県にしました。結果、名所・天の橋立は兵庫県に属すことになりました」というようなアルゴリズムにより生成される「バカ日本地図」 人が県をごっちゃにしている具合を地図上で描いていけば、バカが思い描いている日本地図ができるのではないか、という発想がなんと素晴らしいことか。
 この地図では東京ディズニーランドはちゃんと東京都。

2003-11-19[n年前へ]

桜雷さんの特許申請の話 

 今日「サクライ・オプティカル・ラボの桜雷」さんからメールが届きました。題名が付けられていないメールは通常読まないのですが、幸か不幸か読みました。メールでももちろん別途書きますが、この話題に関して興味がある人もいるでしょうし、このメールに対してどう対応するかの判断材料を求める上でも、ここでも書いてみます。

(2003.11.22追記)
「私信として送ったメールなので、公開するのは止めて欲しい」と桜雷さんから要望を頂きました。とりあえず、文脈を保持しつつメールの元の文章は削除しておこうと思います。なお、削除作業前の以前の文章も記録として別途保存してあります。

メールの概略http://www.hirax.net/dekirukana5/bokeboke1/index.htmlhttp://www.hirax.net/dekirukana6/rin/index.htmlは当方の出願中の特許特願2000−100042(P2000−100042)application number09/77253201/28/01Publication NoUS-2001-0016082-A1に重なるものです。これらの特許に抵触しないと確信された上でソフトの公開をしているのか考えを聞かせて下さい。当方としましては、これにあたるものだと判断してるので、ソフトの公開を停止、回収されない場合には、ライセンス料の請求や法的な措置に出る考えでいる。また、これらの記事を見て私の出願を知らずにこのアルゴリズムでソフトを作っている人もでてきていますので、もしアルゴリズムに関する記事を公開される場合には、当方が特許を申請中であることを明記してください。
 以前、この桜雷さんからは
画像処理ソフトで、自然対数を使う数式を使ってピンボケを作り出すソフトまたはそのアルゴリズムが存在しただろうか
というような内容の問い合わせメールを頂いたことがあります。

 で、その後数通の返事のメールを書いたわけですが、そのメールで返答した内容をもう一度ここに書いておきます。
 さて、特開2001−216513をざっと眺めてみました。処理の流れは、画像データに対して、1.コンボリューションを行う(ただし限られたコンボリューションカーネルを用いる)2.その際特許内で示された非線形変換を行うという感じでしょうか。 以下、桜雷さんの参考になるかどうか判りませんが、私の感想をつらつらと書いてみます。 特許という観点で見ると、1、2ともに公知の技術であって、その組み合わせ自体もおそらく画像処理関連の学会誌・レポートなどを探れば、通常の写真・レンズの研究の一環で既に発表されていそうなので、公知資料があるのではないか、と思います。 ただし、公開された特許に対して、審査が通り、また、どこからか異議申し立てが無ければ、特許は通るかもしれません。 ただし、「画像処理ソフトで、自然対数を使う数式を使ってピンボケを作り出すソフトまたはそのアルゴリズムが存在しただろうか」という件は調べてみたり、じっくり記憶をたどらないとと判りません。 計算上は上記、1,2の組み合わせのソフトは結構ありそうですが、特許に書いてある式ずばりそのものを使ったものは無いかもしれません。 ただし、それは同時に特許の請求範囲が狭い(請求項に書かれている式に限定されているので)ということも意味します。この特許の式を使わなければ良いわけで、特許が成立しても特許から逃げやすいかもしれません。
 このメール、及び、そのあとの補足メールで書いたように、「非線形処理+畳み込み処理」の公知資料など、公知資料があるだろうと考えています。また、公開しているソフトはJPのクレーム(請求項)の計算式は使っておらず、そもそもクレームの範囲ではありません。

 また、「当方が特許を申請中であることを明記してください」という件については、桜雷さんがその後に自身で確認したように、記事を書いた最初の時点からそもそも記載してあります。

 ところで、以前に質問を受けた際に私が逆に桜雷さんにお尋ねした
> それで、少し知りたいのですが、私は自分で作ったプラグインなども> いつもそうしているように何かの話のネタを作って、ソフト自体は> フリーで配布すると思います。で、私以外にも自分で画像処理や> プログラミングをしている人は多いので、そんなこともあるだろう、> と思いますが、そういうときに桜雷さんはどうされるつもりでしょうか?
という問い合わせに対して桜雷さんから頂いたメールの返答の内容「メーカーに採用してもらって広く使ってもらうことが目的」「もしAEなどに採用されることになったら、細かいことは気にしない」「個人で作っている物に文句をつけても仕方ない」からすると、今回は実に残念な対応を桜雷さんはされているように私は思います。以前にお返事を頂いた頃とはずいぶんと考え方がお変わりになられたのでしょうか。実に残念です。 さて、画像処理を業務とされている多くの方達、あるいは画像処理を趣味とされている方達、はたまた特許業務に一言言わせろというような方などの意見などを広く求めたいと思います。何かご意見などありましたら、jun@hirax.netまでよろしくお願いします。また、特許庁への情報提供などを行うことについての意見も強く募集させて頂きます。

 ちなみに関連情報としてはUnderconstruction by Taiyo@hatenaも非常に参考になると思います。また、おととひのだいありにも書かれていますね。少し、補足をしておくと、畳込みを周波数領域で行っているのは当たり前の話になってしまいますが、単に計算量がN^2からNlogNのオーダーに落とせるという理由が一般的だと思います。

2003-11-20[n年前へ]

続々・桜雷さんの特許申請の話 - 二通目のメール - 

 人に書くメールというものはやはり丁寧に書きたいので、桜雷さんへの返事は日曜日にでも書くつもりですが、先に今朝届いた二通目のメールで述べられていた内容の概略を紹介しておきます。

(2003.11.22追記)
「私信として送ったメールなので、公開するのは止めて欲しい」と桜雷さんからの要望を頂きました。とりあえず、できるだけ文脈を保持しつつメールの元の文章は削除しておこうと思います。なお、削除作業以前の以前の文章も記録として別途保存してあります。

二通目のメールの概略現在、該当する特許申請については申請中であるため、公開停止を求める通知を取り消す。もし特許の申請が通れば、申請日までさかのぼり問題となる。別のアルゴリズムによる同機能のソフトを開発する場合には問題はない。

 とりあえず、特許の仕組みに対する認識が前回のメールからは変わられたようで何よりです。ところで、以前に質問メールを頂いたときに、
> hirax.netに「ご理解いただけましたら、私が同じ原理で特許を出している旨を> 掲示していただけたらと思います」ということを目立つように書いた場合には、> 異議申し立てをする会社や人が現れる可能性が高くなると思います。> なので、それは必ずしも桜雷さんに対して良い方向に向かうとは限らない> です。これは桜雷さんの好きな選択を尊重したいと思います。
と書いて、桜雷さんにとって望ましい選択を尊重したいと考えました。そして、「面倒なことになるのは避けたい」「そのままにしておいて欲しい」という希望に添いたいと考えました。

 それに加えて、「広くソフトが人に渡って安価で標準的に使えるようにしたい」「個人で作っている物には文句をつけない」という言葉があったことで、「桜雷さんの好きな選択を尊重したい」とお返事を書きました。請求項が狭いので特にその特許が何かの妨げにはならない、と判断したこともあります。

 とはいえ、前回のメールのような対応はあまり歓迎できるものではないので、とりあえず今回は公知資料を集めて特許庁への資料提供を行うつもりでいます。そんなわけで、公知資料提供を引き続き募集しております。また、あまりこの手の話を書くのもつまらないことですから、この記事を書くのもこれで終了したいと思っています。もちろん経過の報告は逐次させて頂きますが、「IrisFilterの特許とは? 」なんていうスレッドもできているようですし、この場では何か他のもっと楽しい話題でも書いていきたいと思います。

 個人的には、桜雷さんが今回のような対応をせずにこれからもただ良い製品を作っていかれることを期待しています。

(2003.11.21補足) 下記のメールを桜雷さんに返事として出させて頂いたことを報告しておきます。
(前記の理由により、なるべく文脈を保持しつつ桜雷さんからのメールの元文章は削除してあります)
 お久しぶりです。平林@hirax.netです。お問い合わせを頂いた件からまず先に回答させて頂きます。また、以前メールを頂いたときの記録が桜雷さんの手元に残っていないということなので、以前の返事と重なる部分はそのメールをなるべく引用しながらお答えさせて頂きます。> http://www.hirax.net/dekirukana5/bokeboke1/index.html> http://www.hirax.net/dekirukana6/rin/index.html> > は当方の出願中の特許に重なるもだと思います。> 日本とアメリカで申請中(アメリカは現在審査中)です。> アメリカの方は日本の申請のものを基本に、範囲を広げて申請しています。(中略)> これらの特許に抵触しないと確信された上でソフトの公開をされているのでし> ょうか、お考えをお聞かせください。 JP(日本特許)に関しては請求項に規定されているような対数変換の式は使っておらず、(仮に特許が成立したとしても)特許には抵触しないように配慮してあります。そのため、> 当方としましては、これにあたるものだと判断していますので、という判断の具体的な理由を参考までにお聞かせ頂ければ幸いです。> また、これらの記事を見て私の出願を知らずにこのアルゴリズムでソフトを作> っている人もでてきていますので、もしアルゴリズムに関する記事を公開され> る場合には、当方が特許を申請中であることを明記してください。 桜雷さんが特許を申請中であるということは、以前桜雷さんが「同じ原理で特許を出している旨を掲示して欲しい」という同様の要望を書かれてきた際に、その後「よくページを読むと特許の記述も書いてあった」とご自身でご確認されているようにこの記事を書いた時点から記載しておりますので、この点については再度よく確認頂きたいと思います。 さて、ここから先は以前メールでお知らせした事項と重なる部分も多いですが、桜雷さんの参考にもなると思いますので、若干書かせて頂きます。 最初に桜雷さんから頂いたメールは「画像処理ソフトで、自然対数を使う数式を使ってピンボケを作り出すソフトやアルゴリズムが存在したか教えて欲しい」というという内容のお問い合わせでした。それに対して、>  さて、特開2001−216513をざっと眺めてみました。> 処理の流れは、画像データに対して、>1.コンボリューションを行う(ただし限られたコンボリューションカーネルを用いる)> 2.その際特許内で示された非線形変換を行う> という感じでしょうか。>  特許という観点で見ると、> 1、2ともに公知の技術であって、その組み合わせ自体もおそらく画像処理関連の> 学会誌・レポートなどを探れば、通常の写真・レンズの研究の一環で既に発表されて> いそうなので、公知資料があるのではないか、と思います。> > ただし、公開された特許に対して、審査が通り、また、どこからか異議申し立て>が無ければ、特許は通るかもしれません。> > 計算上は上記、1,2の組み合わせのソフトは結構ありそうですが、特許に書いてある> 式ずばりそのものを使ったものは無いかもしれません。>  ただし、それは同時に特許の請求範囲が狭い(請求項に書かれている式に限定されて> いるので)ということも意味します。この特許の式を使わなければ良いわけで、特許が> 成立しても特許から逃げやすいかもしれません。と簡単に書きました。公知資料の方は例えば特開平8-241407 「画像処理システムの特許」SIGGRAPH97 Recovering High Dynamic Range Radience Maps from Photographなどの一例を挙げるに留めますが、このような画像をぼんやりさせる効果のために「非線形ガンマ変換→畳み込み→ガンマ逆変換」を行ったり、あるいは種々のボケ画像形成のために「フィルム特性を再現する変換カーブ→畳み込み→フィルム特性逆変換カーブ」を行う例を挙げている公知資料が見つかります。そのため、特許の新規性という点において、このような公知資料などと比較した上で、特許審査を通過するかどうかは若干の疑問があります。 また、上に書いたようにJPの請求項はそもそも規定範囲が非常に狭く特許回避は容易で、現実には他社技術の抑止力にはなりえないと思います。当然、請求項からすると「アルゴリズム」というような上位概念による抽象化は欠けており、そもそもアルゴリズムを規定する特許にはなりえていないように思えます。 この感想に対しては、前回桜雷さんも「請求項に式を書いてしまっているのは気になっている」「日本のは細かすぎたかもしれない」というような感想を書かれていましたから、同じご理解はされていたことと思います。また、同様の機能を有するソフトの作者の方々もおそらく「請求項に規定されている式は使っていない」と答える方が多いだろう、と思います。それだけ、規定範囲が非常に狭い特許申請になってしまっています。 また、USPの方ももし仮に通過したにせよ、現在のClaimであれば特許回避は非常に容易で、具体的な話は省きますが、他の類似のソフトも現状ですらほとんどがそのClaimを回避しているだろう、と考えます。 そのように、以前お話を伺ったときには、特許審査通過の可能性およびその実抑止力には疑問を感じましたが、とりあえずの感想としては>  ところで、私自身は特許はあまり好きではないです。といっても、「個人としては」ですけど。> それに、特許を申請する桜雷さんの考えも良く理解できます。> >  で、例えば実はワタシの手元にはIrisFilterと同様の機能を持つ自作Photoshop用のプラグインが> あります。こちらは従来からあるアルゴリズム組み合わせたものですが、私がどうしても> 欲しかった16bitモード対応、距離チャンネル対応(最新のバージョンではIrisFilterでも> 対応されたようですが)、そしてAdobeの通常のプラグインインターフェース、という> ものを備えたものです。あくまで、趣味で作成しているものですが自分で好きなようにできるので> 自分用にはなかなか良いです。で、こうした個人作成のソフトはインターネットに満ちあふれています。> そんな個人で作成してインターネットにあふれているソフトがさまざまな特許などで、出しづらい> 雰囲気を近年ひしひしと感じます。そんな雰囲気がそれほど好きでないのもまた確かです。 > それで、少し知りたいのですが、私は自分で作ったプラグインなどもいつもそうしているように>何かの話のネタを作って、ソフト自体はフリーで配布すると思います。で、私以外にも>自分で画像処理やプログラミングをしている人は多いので、そんなこともあるだろう、と>思いますが、そういうときに桜雷さんはどうされるつもりでしょうか?>  とはいえ、繰り返し書きますが、IrisFilterを拝見して、非常に面白く要望の高そうな> ソフトだなぁ、うれしく思いました。これからも、楽しみにさせて頂きます。 とメールで書かせて頂きました。それに対して桜雷さんの「特許を出したのは自分の研究が報われる部分が欲しいから」「自分や一部企業が独占して人が使えないような状態は望まない」「広く人に渡って安価で標準的に使えるように活動していきたい」「個人で作っている物に文句をつけても仕方ない」というような内容のお答えを頂き、「自分や一部企業が独占して人が使えないような状態は望んでいない」というお言葉と「いちいち個人で作っている物に文句をつけても仕方ない」というご判断を聞かせて頂き、納得しておりました。ですから、hirax.netで桜雷さんの特許申請についてさらに詳しく言及するかなどについては> > 目立つように書いた場合には、異議申し立てをする会社や人が現れる可能性が> > 高くなると思います。なので、それは必ずしも桜雷さんに対して良い方向に向かう> > とは限らないです。これは桜雷さんの好きな選択を尊重したいと思います。と、桜雷さんの希望を尊重することにし、「ややこしくなるのは避けたいのでそのままにしておいてほしい」という桜雷さんの判断をもとに、それ以降申請特許件には触れず、またなんのアクションもとらずにいました。 そういう桜雷さんからのご相談に乗っていた経緯で私自身は納得していたため、前回のメールのような> ソフトの公開を停止、回収されない場合には、ライセンス料の請求や法的な措置に出る考え> でおります。という対応には実に困惑を感じざるをえません。このようなことをされる予定であるならば、そもそも指摘の請求項には抵触していないので無関係である特許申請だと考えてはおりますが、そのような行為が私自身に及ぶことを防ぐために、特許庁への第三者による資料提供の制度に基づいて、公知資料の特許庁へ情報提供を行わせて頂こうと考えています。本当に、以前の桜雷さんのメールで書かれていた内容と今回の対応の違いは誠に残念でなりません。 また、多くの技術者は自らの特許申請・他社技術調査及び特許回避・あるいは異議申し立てなどを日常的に行っており、特許にいやでも慣れ親しんでいることが多い、ということはここに書き加えておきたいと思います。ですから、おそらく技術者以外の方が想像するよりも一般的に技術者は他者の特許を意識・尊重していることが多い、ということはぜひ理解しておいて頂きたいと思います。 最後になりますが、桜雷さんの特許申請というものは、後から他社から訴えられることを防止し、自分の技術の使用を保証するために、単に公開目的で使用するには有効であると思いますので、そのように活用されることを望んでいます。また、個人的には桜雷さんが良い製品をこれからも提供されていくことを願っております。 それでは、長文になりましたが、失礼させて頂ます。jun hirabayashi jun@hirax.net



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