hirax.net::inside out::2003年11月19日

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2003-11-19[n年前へ]

桜雷さんの特許申請の話 

 今日「サクライ・オプティカル・ラボの桜雷」さんからメールが届きました。題名が付けられていないメールは通常読まないのですが、幸か不幸か読みました。メールでももちろん別途書きますが、この話題に関して興味がある人もいるでしょうし、このメールに対してどう対応するかの判断材料を求める上でも、ここでも書いてみます。

(2003.11.22追記)
「私信として送ったメールなので、公開するのは止めて欲しい」と桜雷さんから要望を頂きました。とりあえず、文脈を保持しつつメールの元の文章は削除しておこうと思います。なお、削除作業前の以前の文章も記録として別途保存してあります。

メールの概略http://www.hirax.net/dekirukana5/bokeboke1/index.htmlhttp://www.hirax.net/dekirukana6/rin/index.htmlは当方の出願中の特許特願2000−100042(P2000−100042)application number09/77253201/28/01Publication NoUS-2001-0016082-A1に重なるものです。これらの特許に抵触しないと確信された上でソフトの公開をしているのか考えを聞かせて下さい。当方としましては、これにあたるものだと判断してるので、ソフトの公開を停止、回収されない場合には、ライセンス料の請求や法的な措置に出る考えでいる。また、これらの記事を見て私の出願を知らずにこのアルゴリズムでソフトを作っている人もでてきていますので、もしアルゴリズムに関する記事を公開される場合には、当方が特許を申請中であることを明記してください。
 以前、この桜雷さんからは
画像処理ソフトで、自然対数を使う数式を使ってピンボケを作り出すソフトまたはそのアルゴリズムが存在しただろうか
というような内容の問い合わせメールを頂いたことがあります。

 で、その後数通の返事のメールを書いたわけですが、そのメールで返答した内容をもう一度ここに書いておきます。
 さて、特開2001−216513をざっと眺めてみました。処理の流れは、画像データに対して、1.コンボリューションを行う(ただし限られたコンボリューションカーネルを用いる)2.その際特許内で示された非線形変換を行うという感じでしょうか。 以下、桜雷さんの参考になるかどうか判りませんが、私の感想をつらつらと書いてみます。 特許という観点で見ると、1、2ともに公知の技術であって、その組み合わせ自体もおそらく画像処理関連の学会誌・レポートなどを探れば、通常の写真・レンズの研究の一環で既に発表されていそうなので、公知資料があるのではないか、と思います。 ただし、公開された特許に対して、審査が通り、また、どこからか異議申し立てが無ければ、特許は通るかもしれません。 ただし、「画像処理ソフトで、自然対数を使う数式を使ってピンボケを作り出すソフトまたはそのアルゴリズムが存在しただろうか」という件は調べてみたり、じっくり記憶をたどらないとと判りません。 計算上は上記、1,2の組み合わせのソフトは結構ありそうですが、特許に書いてある式ずばりそのものを使ったものは無いかもしれません。 ただし、それは同時に特許の請求範囲が狭い(請求項に書かれている式に限定されているので)ということも意味します。この特許の式を使わなければ良いわけで、特許が成立しても特許から逃げやすいかもしれません。
 このメール、及び、そのあとの補足メールで書いたように、「非線形処理+畳み込み処理」の公知資料など、公知資料があるだろうと考えています。また、公開しているソフトはJPのクレーム(請求項)の計算式は使っておらず、そもそもクレームの範囲ではありません。

 また、「当方が特許を申請中であることを明記してください」という件については、桜雷さんがその後に自身で確認したように、記事を書いた最初の時点からそもそも記載してあります。

 ところで、以前に質問を受けた際に私が逆に桜雷さんにお尋ねした
> それで、少し知りたいのですが、私は自分で作ったプラグインなども> いつもそうしているように何かの話のネタを作って、ソフト自体は> フリーで配布すると思います。で、私以外にも自分で画像処理や> プログラミングをしている人は多いので、そんなこともあるだろう、> と思いますが、そういうときに桜雷さんはどうされるつもりでしょうか?
という問い合わせに対して桜雷さんから頂いたメールの返答の内容「メーカーに採用してもらって広く使ってもらうことが目的」「もしAEなどに採用されることになったら、細かいことは気にしない」「個人で作っている物に文句をつけても仕方ない」からすると、今回は実に残念な対応を桜雷さんはされているように私は思います。以前にお返事を頂いた頃とはずいぶんと考え方がお変わりになられたのでしょうか。実に残念です。 さて、画像処理を業務とされている多くの方達、あるいは画像処理を趣味とされている方達、はたまた特許業務に一言言わせろというような方などの意見などを広く求めたいと思います。何かご意見などありましたら、jun@hirax.netまでよろしくお願いします。また、特許庁への情報提供などを行うことについての意見も強く募集させて頂きます。

 ちなみに関連情報としてはUnderconstruction by Taiyo@hatenaも非常に参考になると思います。また、おととひのだいありにも書かれていますね。少し、補足をしておくと、畳込みを周波数領域で行っているのは当たり前の話になってしまいますが、単に計算量がN^2からNlogNのオーダーに落とせるという理由が一般的だと思います。

公知資料探し 

 桜雷さんの特許申請の話です。

対数変換による画像処理技術が既知であることを示す資料を過去のSIGGRAPH論文から探したのですがあいにくと1996年からのPROCEEDINGSしかなく、SIGGRAPH97 Proceedings p.369-378が一番近そうな資料でした。
 ありがとうございます。後ほどメール致しますが、こちらにも参考のため挙げておきます。
 また、この論文に関してはRecovering High Dynamic Range Radiance Maps from Photographsのようなもので、論文内で「非線形変換→畳み込み→逆変換によってリアルなモーションブラーが得られる」といった例(Fig.9)も挙げられている、との情報も頂きました。ありがとうございます。

京都は午前二時 

 考えてみると、七時間近くご馳走を味わっていたような…。このお礼は形を変えて実務でお返しをしたいと思います。もちろん、他の人にも目に見える形でお礼が反映されるようにしたいと思います。

初等ロリータ指向(嗜好)プログラミング 

 マクロを使って事務的で「非創造的」なプログラムを「創造的」プログラムに変えてしまうというロリータ指向プログラミング・メソッド。まずは、初級編を読んで、そして中級編の付録「フリルの構造とエンコーディング」まで読むと面白い。静止画像フォーマットERIはロリータ指向(嗜好)プログラミングで作成されているのかしらん。