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1999-02-14[n年前へ]

感温液晶でNotePCの発熱分布を可視化する 

熱いところで感じてみたい St.Valentine 記念

東急ハンズで実験材料をいくつか買った。その中から、感温液晶シートを使って計測を行ってみたい。
色が変わる材料というものは多い。温度により物質の色がかわる現象はサーモクロミズムと呼ばれる。光により色が変わるサングラスのような現象の場合はフォトクロミズム呼ばれる。けっこう、色々な応用を見かける。
通常の感温液晶はコレステリック(Cholesteric)効果により反射光のスペクトルが変わるため、色が変化する。

これが感温液晶シートである。よくで見かけると思う。

感温液晶シート

さて、それでは感温液晶を使っていくつか測定を行ってみたい。まずは、NotePCの発熱分布を調べてみる。最近のNotePCはかなり熱くなるものが多い。暖かいというよりもアッチッチ状態になるものさえある。

それでは、

  • Toshiba Libretto50
  • Panasonic Let'sNote mini(AL-N4)
の2つで発熱分布を調べてみたい。

いずれも、感温液晶シートをNotePCの上に載せることにより、評価を行っている。今回は発熱分布を知ることが目的であるので定量的な評価は行っていない。もし、温度を定量的に行いたいのであれば、色と温度の対応曲線をあらかじめ測定する必要がある。

以下に結果を示す。

Libretto 50
左上:上面
右上:上面の発熱分布
左下:下面の発熱分布


Panasonic Let'sNote mini (AL-N4)
左上:上面
右上:上面の発熱分布
左下:下面の発熱分布

感温液晶シートのサイズがA4であるため、Let'sNote miniにちょうどフィットする。

Libretto50ではPCカードのNICを右に挿しているため、キーボードの右側部分の発熱が大きい。また、下面ではハードディスク部分の発熱がわかる。また、ク*ックア*プしているせいかかなりアッチッチである。
Libretto50,Let's Note miniいずれにおいても液晶のドライバーがある部分(液晶の左)は発熱が激しいのがわかる。

本来ならば、愛用しているTOSHIBA Portege320でも計測を行いたい所だが、ただいま長期入院中である。間もなく使用1年になるが、これまでに入院3回を経験し、入院期間は計2ヶ月にわたる。昔の小説家もビックリの病弱さである。他の使用者の話を聞いていても実に不安定な機種のようだ。一体、疲労骨折を経験していないPortege320というのは、はたして存在するのだろうか。あぁ...

今回は手元にあったNotePCでのみ測定を行ったが、近所の協力の下に色々なNotePCの発熱分布を調べる予定である。特にパームレスト周りの発熱分布などは割に軽んじられているだけに、興味がある。

今回は感温液晶を使った温度分布の簡単な可視化をしてみた。同じような測定は色々してみる予定である。

感温液晶と同じように、温度で変化する材料は多い。例えば、FAXでよく使用される感熱紙もそうである。
他にも、RICOHの熱可逆性情報表示フィルム
http://ext.ricoh.co.jp/saiyo/sin/prof/eyes/page4_2.html
などもそうである。
これなどはお店のポイントカードなどでよく見掛ける。私の財布から探してみると、オートバックスのポイントカードがこれと同じようなものである。70-130℃位の温度変化により透明度を変化させる材料である。これ位の温度であると、真夏の車中にカードを放置するとどうなるか心配なところである。

今回の情報に関連するWEB一覧



1999-10-01[n年前へ]

五色不動のワンダランド 中編 

青と白の結界

 前回までのあらすじ

 江戸を守っている五色の結界、すなわち、五色不動を捜し求めて、私はさまよい歩いてみることにした。まずは、目黒不動をたずね、次なる青の結界をたずねるのであった。

 さて、目青不動の場所を示す。といっても、地図が古いので現在目青不動尊が在る場所とは違う。この地図では、渋谷駅の東の方角のあたり青山である(といっても、地図上に駅など無いが...)。したがって、現在は山手線の内部の場所ということになる。しかし、現在は三軒茶屋の裏に移転している。

目青不動尊の辺り

人文社 「江戸切絵図で見る幕末人物事件散歩」より
 目青不動である教学院は現在は三軒茶屋へ移転している。しかし、この地図では渋谷の東にある。この地図を頼りに探し回りえらい目にあった。ちゃんと、「虚無への供物」通りに行っとけば良かった。なまじ地図を信用してはいけない。
 

 地図を拡大したものを示してみる。「教学院」が探している目青不動である。

目青不動の地図の拡大

 さて、最初は渋谷の辺りを探してしまい、ずいぶん時間をロスしたが、結局三軒茶屋の方へ行き、やっと目青不動に辿りついた。その目青不動尊はこんな感じである。撮影した写真を示す。

目青不動尊

 広い境内に歩み入りながら、...青い薔薇 - 目青不動- そして ...
「虚無への供物」

 灯りに照らされた不動明王はとても不思議な雰囲気に満ちている。三軒茶屋の駅裏であるが、人通りは全く無い。まさにタイムカプセルの内側に入りこんだ気分だ。

 中を覗くと、絶妙に照らされた不動がいる。少し、恐ろしい。これは間違い無くワンダランドの入り口である。

 三軒茶屋の裏に今もこんなワンダランドが存在しているとは実に素晴らしいことである。

 さて、次は目白不動である。いいかげん、ここらへんで疲れが出てくる。いや、本当に歩き回っているのだ。文章を読むと何の問題も無いように思われるかもしれないが、実はかなりさ迷っているのである。やはり、持っている地図がやはり古すぎるのである。

目白不動

目白不動の場所

目白不動周辺の拡大

 そして、案内板はいっぱいあるのだが、ミステリのようにミスリードをしてくれるのだ。いや本当にだまされた。精神的にも、疲れてしまう。まだ三つめだというのに。

目白不動尊

 車は千歳橋のところで上の目白通りへ出ると左へ折れたが、見るとも無く窓の外を見た亜利夫は、ふいに短く声をあげた。...
「あれァ目白不動でさあ」
「虚無への供物」

 学習院大学のすぐ近くである。案内板に従って辿りつこうとすると、ものすごい遠回りになる。
 それはまるで、ミステリー小説の構成が実体化したかのようである。一回は目指す場所(真実)の近くを通りながら、迂回してしまうのである。

 いいかげん疲れてきたところで、次は後編

2000-01-27[n年前へ]

「富士の樹海」を目指せ 

磁界を可視化しよう

 以前から探していた「面白いもの」を入手した。この写真がその「面白いもの」なのであるが、何だかわかるだろうか? ちなみに、大きさは「1cm×5cm」位のシートである。
 

謎の「面白いもの」

 これは「マグネビュアー」というものである。磁界を可視化してくれるシートだ。マイラーフィルムの間に磁性体を混入させたマイクロカプセルを入れることで、磁界に対する配向性を持たせたものだ。と、言葉でいってもなかなかわかりにくいので、磁界を可視化した写真を示してみる。何しろ、百聞は一見に如かずである。
 次の写真は某ピザ店のマグネットシート(よく冷蔵庫の扉に張り付ける奴)の上に「マグネビュアー」をのせたところである。ピザ屋は私の食生活を支えていると言っても良い。私が生きているのはピザ屋のおかげである。
 

某ピザ店のマグネットシートの上に「マグネビュアー」をのせたところ

 私の「命の恩人」でもある某ピザ店のマグネットシートがつくる磁界が見て取れるだろう。磁界が可視化されているのである。

 本WEBではこれまで様々な「可視化」で遊んできた。例えば、

などである。様々な現象を可視化してきた。そこで、今回は磁石がつくる様々な「磁界」を可視化して遊んでみたい。

 上に示した「某ピザ店のマグネットシートの表面」の磁界の様子も面白いが、もっと面白いのは「某ピザ店のマグネットシートの境界」の磁界を可視化したものである。

 それが下の写真である。磁界の様子が実感できるのではないだろうか?
 

「某ピザ店のマグネットシートの境界」の磁界を可視化したもの

 下に示す図はドーナツ型の磁石の周りの磁界をCUPSを用いてシミュレーション計算した結果である。この計算結果と同じようなものが「マグネビュアー」を使うと簡単に可視化できる。
 

ドーナツ型の磁石の周りの磁界をCUPSを用いてシミュレーション計算した結果

 普通、こういった磁界の可視化は磁気造影剤や砂鉄みたいな磁性体粒子を用いるのであるが、そういったものはどうにもハンドリング性にかける。液体や粉体などを家の中で実験に使うのはイヤである。いや、もちろん仕事で使うのもイヤであるが... そこで、この「マグネビュアー」が登場するわけだ。

 それでは、その他の面白そうな磁界を可視化してみたい。磁界と言えば、やはりアレの登場だろう。もちろん、アレと言えば磁気カードである。クレジットカードや銀行のキャッシュカードといった磁気カードだ。一例を次に示してみる。こんなヤツだ。
 

磁気カードの一例

 カードの下に黒い磁気データ記録部があるのがわかるだろう。

 それでは、その「磁気データ記録部」に「マグネビュアー」をのせてみよう。はたして、磁気データは可視化されるだろうか?
 

「磁気データ記録部」に「マグネビュアー」をのせる

 といっても、この写真ではわかりにくいので、「マグネビュアー」を拡大してみよう。すると、バーコードのような模様が見えるのがわかると思う。「磁気データ」が簡単に可視化されているわけである。この「マグネビュアー」と普通のスキャナーがあれば磁気データ読み取り機がなくても磁気データが読みとれるのである。
 

「磁気データ」が簡単に可視化されている

 しかし、このカードに関しては内容を解析するとマズイ事情があるので、次回に「ソフマップ」のカードを題材にして磁気カードの内容を可視化してみるつもりだ。題して、

  • ソフマップでお買い物 - 磁界の可視化とバーコード - (仮称)
である。

 さて、話は変わるが、私はこの「マグネビュアー」を手に「富士の樹海」を目指すつもりだ。「富士の樹海」では」方位磁針が変な方向を示すと伝えられている。そしてまた「富士の麓」ではとかく人は判断を誤りやすいとも聞く。船頭多くして船山に登ると言うが、「富士の樹海」には判断を誤った船が沈没しまくりである。

 私は「富士の樹海」の真実をこの「マグネビュアー」で明らかにするつもりだ。「富士の樹海」の謎を明らかにするのである。何故、方位がそして人が判断を誤るのか、その謎を明らかにするのだ。

 しかし、もしも、もしも、の話であるが、本WEBの更新が止まった際には、「富士の樹海」で私が眠っていると思って欲しい。「マグネビュアー」が役に立たないはずがないのだが、きっと何か判断を間違えたのであろう。そうそう、あくまで「富士の樹海」である。「富士の裾野」ではないので念のため...
 

2000-01-31[n年前へ]

落ちゆくエレベーターの中…で悩みます? 

無重力の理想と現実(仮)


 今日もまた「ちゃろん日記(仮)」を読みに行くと、何とも面白い話があった。

である。この「ちゃろん日記(仮)」は「疑問とそこに隠れている真実を見つけだす感覚」に満ち溢れている、と私は思うのである。面白すぎである。さて、今回の話は、
 エンパイアステートビルでエレベーターが落ちたっていうけど、落ちていくエレベーターの中の人は
    1. 床に張り付く
    2. 天井に張り付く
    3. 宙に浮かぶ
    のどれなんスかね? わしはこれまで「床に張り付く」と思ってたっス。けど、本当は「宙に浮かぶ」らしいっスね。
という話である。

「ほんとう〜にそうか? ほんとう〜にそうか?」

 こういういかにも教科書に載っていそうな話には、時として落とし穴がある。教科書に書いてあるのは理想的で単純化した場合の結果である。それを鵜呑みにすると間違えてしまうことになる。極端に言えば、教科書に書いてあるような理想的な状態はほとんど存在しないので、教科書に書いてあるような現象はそうそう再現しない、ということになる。
 ピサの斜塔から「落下の実験」を行ったのはガリレオ・ガリレイであると思っていると間違いである、というのは少し違う例になってしまうか。

 久しぶりに思い出したが、私の所属していた研究室では重力測定は大きな柱であった。そして、確か大学院の入試問題の内の一題は、まさに

「落ちていくエレベーターの中の人達に働く力を精密に論ぜよ」
であった(簡単に大雑把に言えば)。私はちゃんとこの問題を解けた覚えがない。いや、はっきり言えばずいぶん悩んだ覚えしかない。ってことはいまいち解けなかったのだろう。なので、「落ちていくエレベーターの中の人達は無重力状態である」と聞くと、「ほんとう〜にそうか? ほんとう〜にそうか?」と歌いたくなる。

 研究室関連では、絶対重力測定を行う研究をする人達もいたわけである。絶対重力(加速度)測定は自由落下する物体の運動を測定して、重力加速度を測定するわけであるが、そう簡単に物体は自由落下してくれないのである。簡単な実験で物体を自由落下させて重力加速度を測定してみるとわかるが、大雑把な実験(自分の家ですぐできる程度の)では一桁ちょいの精度しか出ない。一桁ちょいの精度しかでないということは、(例えば)体重が10%弱程度になったように感じるかもしれないが、それは無重力ではない。体重が60kgの人であれば、6kgも感じてしまうのである。(雑な話だが。)

 空気中を落ちてくる雨だってそうだ。もし、雨が自由落下を続けていたらものすごいスピードになって、雨に打たれるのは命がけになってしまう。しかし、実際にはそんなことはない。空気抵抗で速度は飽和してしまい、自由落下状態ではないからである。

 さて、本題である。果たして、

「落ちていくエレベーターの中は無重力状態になるだろうか?」
エレベーターには空気抵抗やワイヤーを介して働く抵抗が働いている。すると、自由落下状態にはならない。当然、「エレベーターの中の人は無重力状態にはならない」だろう。

 例えば、

の中に、
 北海道の上砂川町にある施設(JAMIC)で、490m落下させることにより、10秒の無重量環境が得られます。落下中は空気抵抗を受けるので、落下カプセルを二重構造にし、空気抵抗を無視できるように工夫してあります。
と、記述されているように、実際には工夫をこらさなければ無重力状態は実現できないのである。絶対重力系などでも空気抵抗を無視するために、投げ上げて往復運動を測定するなどの工夫がいるのである。

 と、言葉だけで書いてもしょうがないので、適当な計算でもしてみる。いや、もちろん、実験をするのが良いわけであるが、面倒だし…

 まずはエレベーターには、

  1. 何の抵抗も働かない
  2. 空気抵抗とワイヤーの抵抗が働く
という二つの場合を考えてみる。空気抵抗などは速度の二乗に比例するとした。空気抵抗でもワイヤーの抵抗でもそれが自然だろう。また、エレベーターの重さ、抵抗の比例定数、etc.は適当に決めた。

 そして、エレベーターの中の人には空気抵抗は働かないとした。エレベーターの中の空気と人の速度差はほとんどないからである。また、エレベーターは人よりもはるかに重く、人の重さはエレベーターの運動に何の影響も及ぼさないと近似した。

 その計算の結果を以下に示す。これが落ちていくエレベーターの軌跡である。抵抗のない場合が(赤)で抵抗のある場合が(青)である。エレベーターが落ち始めてから30秒後までの軌跡である。

落ちていくエレベーターの軌跡
抵抗のない場合(赤)と抵抗のある場合(青)

 理想的な場合(赤)に比べて、抵抗のある場合(青)の落ち具合が鈍っているのがわかると思う。それでは、もっと時間が経った場合はどうだろうか?それを次に示す。エレベーターが落ち始めて300秒後までの軌跡である。つまり、五分間もこのエレベーターは落ち続けているのである。落ちた距離は理想的な場合で40kmの深さに達している。すごいエレベーターである。こんなに落ち続けていると、すでに重力加速度が一定とは言っていられなくなる。

落ちていくエレベーターの軌跡
抵抗のない場合(赤)と抵抗のある場合(青)

 ここまでくると、抵抗のない場合(赤)と抵抗のある場合(青)では全然違う軌跡になっている。抵抗のない場合(赤)では放物線そのものであるが、抵抗のある場合(青)では一定の速度になっている。

 それでは、エレベーターがこのような状態になった時の、エレベーターの中の人に働く加速度(と実際の加速度の差分)を示してみる。これを見れば、落ちていくエレベーターの中の人が無重力状態であるかどうかがわかる。まずは、300秒後までの変化を見てみる。

落ちていくエレベーターの中の人に働く重力加速度(と実際の加速度の差分)
抵抗のない場合(赤)と抵抗のある場合(青)

 理想的な場合(赤)はずっとゼロすなわち無重力状態であるが、抵抗のある場合(青)は無重力状態は最初だけで、50秒後位には通常の状態に戻ってしまっている。最初の部分をもう少し拡大してみる。次に示すのは、3秒後までの落ちていくエレベーターの中の人に働く重力加速度(と実際の加速度の差分)である。

落ちていくエレベーターの中の人に働く重力加速度(と実際の加速度の差分)
抵抗のない場合(赤)と抵抗のある場合(青)

 これを見ると、あっという間に人は無重力状態ではなくなっているのがわかると思う。

 というわけで、先の三つの選択肢、

  1. 床に張り付く
  2. 天井に張り付く
  3. 宙に浮かぶ
の中で、真実に一番近い答えはななゑ さんの最初の考えでもある「床に張り付く」であると思うのだ。日記の中の、
先日みたニュースのエレベーター落下実験の中で、中にいた男性リポーターが、落下しながら「ひぃ?」とアオ向けになった状態で床にハリ付いていたからなのです。
という実際の現象が正しいのである(いや、もちろん状況はかなり異なるが)。「頭の中だけ」で考えたことというのは大抵の場合間違ってしまう。(もちろん、今回の「できるかな?」の話もその例外ではない)
 そして、その後に、
ありはきっと、速度がそこまで充分でなかったのと、もしやのトキのために、男性リポーターに安全な姿勢をとらせていたタメだと思われます。
とあるが、実際問題として「速度がそこまで充分」になることは未来永劫ないわけである。だから、(私の中では)エレベーターの中の男性リポーター氏は床から浮かぶことはないのである。

 こういうのは、結局考える人の数だけ答えがあるのだと思う。もし、その内のどれが真実に一番近いかどうか知りたければ、実験すれば良いだけの話だし。

2000-07-08[n年前へ]

うれし、たのしい、「大人の科学」 

エジソン式コップ蓄音機

 先日、町田の東急ハンズをぶらぶらとしていた時に、こんな本を見つけた。
 

学研の「科学」と「学習」編 100円ショップで大実験! 監修:大山光春
  • 学研の「科学」と「学習」編 100円ショップで大実験! 監修:大山光春
である。以前、でも学研の科学の付録で遊んでみたが、学研の「科学」(「学習」では断じてなくて)に影響されている人は多いはずだ。影響どころか、それで理系に進んだという人だって、きっといるはずだ。むろん、私も学研の科学が大好きだったので、学研の「科学」と「学習」編という名前だけで思わず購入してしまった。文庫本だし、実験材料が100円ショップで売ってる格安モノだし、いいことずくめだからである。

 そして、この本の中でも、特に興味を惹かれた実験がこの「ファイルシート蓄音機」である。ファイルシートでソノシートを作ってやろうというものである。軟らかくて、同時に少し硬い材質のもに音の振動を刻み付けて記録・再生するという、エジソンが発明した蓄音機そのものの構造の機械を簡単に作ろうという話である。
 

「ファイルシート蓄音機」 コップでシートに録音

 私は以前から、うれし懐かしの「ソノシート」を作ってみたいと思っていたので、この記事を見つけたときは思わず声が出そうになった。いやはや、さすが学研の「科学」編集部である。もしや、これは私のために?と思ってしまう程である。(学研の科学で育った人たちは、きっとみなそう思うことだろう。)

 ところで、もしかしたら「ソノシート」を知らない人がいるかもしれない。そこで、念のために辞書で「ソノシート」をひいたものを書いておこう。

ソノシート (商標名Sonosheet)音の出る雑誌「ソノラマ」用にフランスで開発されたビニールレコード。(Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition)  Shogakukan1988/国語大辞典(新装版)小学館 1988)
知らない人はほとんどいないとは思うが、ソノシートは見た目は赤や青の薄っぺらくてペラペラなレコードである。昔は雑誌によく付録でついていた。そこに録音されているものは、テレビの主題歌だったり、声のドラマだったり、色々なおしゃべりだったりした。そして、私の記憶が確かならば、確かどこかのコンピュータ雑誌でソノシートを使ってのプログラム配布なども行われたこともあったと思う。

 それはさておき、この「ファイルシート蓄音機」を私もぜひ作ってみよう、と思っていた。ただ、、この記事そのままだと録音可能な時間が短いので、それでは少しつまらない。そこで、そこをどうしたものかとずっと悩んでいたのである。そのため、なかなか製作に取り掛かることができないでいた。

 ところが、これまた先日面白いものを見つけた。それは

である。これは、学研の「科学」で育った大人に向けて、学研の「科学」と「学習」が贈る「大人の科学の付録」だ。科学が好きな人向けの「大人の科学」であり、「大人のおもちゃ」なのである。「大人の科学」とか「大人のおもちゃ」という言葉は、何か誤解されそうな響きがある。特に、「最近、話題の傾向が何か変!?」と言われている、ここで書くと絶対に誤解されてしまいそうである。

 しかし、そんな杞憂は無用のココロだ。これは、学研の「科学」と「学習」が、「昔子どもだった大人」に贈る、タイムカプセルなのである。あの頃と変わらない、「ワクワクする心」を思い出させてくれるプレゼントなのである。これは私達を、「昔、見ていた夢」がいきなり目の前に現れたような気持ちにさせるである。

 少し長くなったが、その「大人の科学」の第一作がこの「エジソン式コップ蓄音機」である。
 

「エジソン式コップ蓄音機」

先程の「ファイルシート蓄音機」からはるかに性能が改良され、なんと20秒近くの録音が可能なのである。もちろん、迷うことなく私は購入を決めた。そして、何日か前に、送られてきたものを今日の朝に組み立ててみた。製作時間は20分位である。作ってるときの気持ちは、もう学研の「科学」の付録で遊んでるあの頃と同じだ。

 その組み立ててみた「エジソン式コップ蓄音機」が次の写真である。上の紙カップの底に針が着いていて、下の回転する透明カップの表面に紙カップの底の振動を溝として記録するのである。もちろん、再生のときはその逆である。透明カップの表面に刻まれた溝の揺れを針がなぞって、そして紙カップの底を振動させるのである。
 

「エジソン式コップ蓄音機」を組み立てたもの

 この「エジソン式コップ蓄音機」の構造自体は、先の「ファイルシート蓄音機」とかなり似ていることがわかる。紙カップと針の部分など全く同じである。もし、「3000円程の「エジソン式コップ蓄音機」が高い」と感じるのであれば、100円ショップで材料を揃えて「ファイルシート蓄音機」を作製してみるのもきっと面白いだろう。

 「エジソン式コップ蓄音機」の針がコップに刻んだ溝をなぞっている様子を次に示してみよう。音を再生している時にも、溝を少し削ってしまい、削りかすが出ているのが見えるだろう。
 

「エジソン式コップ蓄音機」 コップに刻んだ溝を針がなぞっている様子

 というわけで、もちろん私もエジソンと同じく「メリーさんの羊」を録音してみた。大きい声で歌っても、再生される「歌声」はとても小さい。いや、再生される「音」はうるさいくらいに大きいのだけれど、「歌声」はかすかにしか聞こえない。それでも、雑音の遠くで聞こえる人の声は、とても懐かしくていい響きがする。もちろん、実際にはガーガーうるさくて、私の声なんか微かにしか聞こえないのだけれど、そんなことはどうでもいいのだ。だって、あの科学の付録なんだから。それだけで、十分だ。もちろん、これの改良作業は早速始めるつもりだ。もう「大人」だからね。
 



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