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1998-12-19[n年前へ]

音階を勉強する 

単音シンセサイザーをつくる

 今回は、音階そのものについて勉強をしてみる。世の中には色々な音階がある。いわゆる12音階の中でも、純正調、平均率などいろいろある。12音階でないものもある。どのような音階があって、それぞれどのような音程になっているのか調べてみたい。といっても、まずは7音音階、すなわち、ダイアトニックスケールだけを考える。
 参考文献は手元にあった、「音楽の不思議」 別宮貞雄 著 音楽之友社である。なお、江尻氏の音律周波数表、音律について、音律実験(http://www.tg.rim.or.jp/~ejiri/)では色々な音階についての情報を知ることができる。5音階、すなわち、ペンタトニックスケールについての情報もある。同様なWEBサイトととしては「調律法ききくらべのページ」(http://www.top.or.jp/~murashin/index.htm)がある。ARATA氏の「MIDIで古典調律を」(http://www.nifty.ne.jp/forum/fmidicla/htmls/kotenj.html)にもかなりの情報がある。

 ここでは、簡単にピタゴラス音階、ツァルリーノ音階(純正調音階)、12平均率だけを考える。

 まずは、ピタゴラス音階を作る。Aという基準音を作る。その音に対して振動数が3/2倍の音をEとする。更に、Eに対して振動数が3/2倍の音をBとする。また、Aの振動数に対して、3/2倍の音をDとし、Dの4/3倍の音をGとする。そして、CGの3/2倍の音をCとする。最後に、Cの4/3倍の音をFとする。
 各音の倍、あるいは1/2の音のオクターブ違いの音を考えると、結果としてC,D,E,F,G,A,Bのダイアトニックの7音音階ができあがる。このピタゴラス音階は旋律が良く響くという性質がある。よく響くという言い方は誤解を生じるかもしれない。「うまく旋律がおさまる」といった方がいいかもしれない。

各音の間の振動数の比
D/CE/DF/EG/FA/GB/AC/B
ピタゴラス音階9/89/8256/2439/89/89/8256/243
ツァルリーノ音階(純正調音階)9/810/916/159/810/99/816/15
12平均率2^(2/12)2^(2/12)2^(1/12)2^(2/12)2^(2/12)2^(2/12)2^(1/12)

 次に、ツァルリーノ音階(純正調音階)は、各音の間の振動数の比を見てもわかるように、和音はよく響く。しかし、旋律として聞いた場合には、必ずしも良いわけではない。しかも、転調はできない。現在、一番使われている12平均率は振動数比をみてもわかるように必ずしも、和音の響きが良いわけではない。しかし、周波数を見てもわかるようにピタゴラス音階とツァルリーノ音階(純正調音階)の中ほどであり、和音の響き、旋律どちらも悪いわけではない。
 ただし、1曲の中で厳密に音階が同じというわけでもないらしい。プロの弦楽四重奏などでの演奏では、必ずしも12平均率でなく、曲の中でも意識して音程を変えるという話だ。
 また、ツァルリーノ音階(純正調音階)用に曲を作って聞いてみても、それほど良くなるとは思えない。確かにきれいに響くのだが、(私の感じでは)それだけなのである。

 セントで表したものも示す。セントは基準音の振動数Nに対して、振動数Mである音を、1200x log_2(M/N) と表す単位である。 セントで表せば、12平均率は当然きりのいい数字になる。

セントで表した各音の振動数
CDEFGABC
ピタゴラス音階020440849870290611101200
ツァルリーノ音階(純正調音階)020438649870288410881200
12平均率020040050070090010001200

音階についてあまり長々と考えてもきりがないので、ひとまずここまでにしておく。なにしろ、奥が深すぎる。最後に各音階の周波数表を示す。なお、Cの音はいずれも440Hzにしてある。ここでいうCは音名ではない、階名である。つまり、絶対的な音の高さを示すもの(音名)でなくて、相対的な音の高さを示すもの(階名)である。むしろ、よく使われるドと言ったほうが良いかもしれない。「Aをドにして歌ってみよう」という時の「ド」である。ところで、ドレミファソラシドの語源はどこにあるのだろう?SoundOfMusicがdoeの歌のイメージから"do a dear ..."と鼻歌を歌うことはあるが、語源は一体?次の宿題にしたいと思う。
 さて、使用した周波数は全て江尻氏の音律周波数表、音律について、音律実験 (http://www.tg.rim.or.jp/~ejiri/)に記載されていたセントから最初の音を440Hzとし、周波数に変換してある。

HzCDEFGAHC
平均率 12Equal440494554587659740831880
純正律 Pure(5-3)440495550587660733825880
純正律 Pure(5-3)'440495550594660743825880
純正律 PureQ-39(3-5)440489550587652733815880
純正律 PureT-71(5-3b)440495570594660760855880
メルセンヌ純正律440495550587660733825880
ピタゴラス律440495557587660743835880
中全音律440492550588658736822880
キルンベルガー 第2440495550587660738825880
キルンベルガー 第3440492550587658736825880
キルン-ヴェルク440492552587658736828880
ヴェルク 第1技法第3番440492551587658735827880
ヴェルクマイスター 第3'440495553589660740830880
ラモー440492550588658736822880
ヴァロッティ-ヤング440493552588659737826880
ヤング 第2440493552587659737826880
43平均律440493551588658737825880
53平均律440495550587660733824880
 それでは、このような音階を奏でることの出来るシンセサイザーを作ることにする。
National InstrumentsのLabViewのExample例の中でWindows環境でSoundを入出力するViがあったのでこれを利用する。また、その使用例としてプッシュホンの発信音を出力するものがあった。これを適当にいじって作ってみる。今回は簡単のために単音のみの出力である。いずれ、もうすこしちゃんとしたものを作ってみたい。

 作成したアプリケーションをここにおいておく。
Onkai.lzh 1,176kB(配布終了です。)
LabViewのライセンス上、ダウンロード数が50近くになったら削除する。(配布終了です。)

onkai.exeの動作画面
 まずは、赤丸部分のボタンを押して実行モードにする。
 実行中の画面はこのようになる。
音階の選択画面
 このように色々な音階を
選ぶことが出来る。
 鍵盤をマウスで押しても音が出る。また、ファンクションキーのF1からF8でも音を出すことができる。ちなみに「ホンキートンク」は適当につくったでたらめの音階である。それぞれの音階を単音で聞いても違いが分かるだろうか。

1999-09-26[n年前へ]

デバイスドライバーは仮免 

ClearTypeの秘密

 昨年、COMDEX/Fall '98においてMicrosoftが発表した「ClearType」技術というものがある。液晶ディスプレイなどの表示の解像度をソフトウェアのみで向上させるという技術である。PCだけでなく、液晶を使った電子ブックなどをターゲットにしているという。(参照:http://www.zdnet.co.jp/news/9811/16/gates.html)

 技術の詳細については、「特許申請中」ということで、明らかにされていない。しかし、その技術について推論している人は数多くいる。例えば、

や、Gibson Research Corporationのといった所がある。中でも、The Technologyof Sub-Pixel Font RenderingからはFree & Clearというデモプログラムをダウンロードすることができる。
Free & Clearの動作画面(縮小後、JPEGに変換しているのでこの画面では効果はわからない)

 ビックリすることに、確かに効果があるのである。カラーシフティングによりシャッキリした文字になるのだ。しかも滑らかなのである。デジタル接続の液晶を用いている方は確認すると面白いと思う。

 もっとも、こういう画像はWEB上で納得するのは難しい。JPEGのような圧縮画像では、情報が完全には保存されず、意図した出力ができないからである。とりあえず、デジタル接続の液晶ディスプレイを使っている方はとにかく試してみると良い。目からウロコである。

 さて、この原理であるが、カラーシフトについては色々なところで説明してあるが、若干わかりにくい画像例が多い。そこで、自分流に解釈しなおして考えてみたい。そして、実験してみようと思う。

 まずは、右上から左下に走る黒字に白斜線を考えてみる。1ドット幅で、しかも、上から下へ行く間に1ドット右から左にずれるようなものである。液晶の1ドットはRGBが縦に並んでいる。例えば、

で計測した画像例だと、
液晶ディスプレイの拡大画面
という感じである。良く見ればRed,Green,Blueの順番で並んでいるのがわかるだろう。

 1ドット幅で、しかも、上から下へ行く間に1ドット右から左にずれる黒字に白い斜線を考えてみる。これはそのような斜線を拡大したものである。

1ドット幅で、しかも、上から下へ行く間に1ドット右から左にずれる斜線
従って画像幅は本来2ドットである。

 そのような斜線を液晶で描くと通常は下の左図のようになる。通常の処理が左で、カラーシフトを用いた処理が右である。通常の処理ではRGBの位置を同じものとして処理しているので、RGBそれぞれが同じように変化している。しかし、カラーシフトを用いた処理においては、RGBの各位置が異なっていることを考慮の上、処理を行ってみたものである。そのため、滑らかな斜線になっているのがわかると思う。

左が通常の処理、右はカラーシフト処理

 このように、デバイスの個性を把握した上できちんと生かしてやれば、デバイスの能力をもっと引き出すことができるわけだ。 個性の違いを越える世界というのは、個性を無視した世界とはまったく逆であり、個性を最大限理解して初めて個性の違いを超えることができるのだ。

 さて、効果を確認するために、そのようなハーフトーンパターンを作成してみた。ただし、ここで表示している画像はJPEGに変換してしまっているので、効果は現れない。また、本来見えるはずの画像とはかなり異なってしまっているので、各画像をクリックしてオリジナルのTIFファイルをダウンロードして確認して欲しい。

1ドット幅で、しかも、上から下へ行く間に1ドット右から左にずれる斜線ハーフトーン
クリックでオリジナルのTIFFファイルにリンクしている
ノーマル斜線
カラーシフトを用いた斜線

  さて、この画像ではわからないだろうが、TIFFファイルの方を見て頂くと、カラーシフトを用いた斜線ハーフトーンの方では、色模様が出現してしまっているのがわかると思う。それは、液晶のガンマ特性を考慮していないからである。

 このガンマ補正については、一般的に使われるガンマの意味だけでないものが含まれている。一言では簡単には説明しきれないので、説明は次の機会にする。Free&Crearでもそのガンマ特性を調整する機能がついている。白地に黒文字であるか、黒字に白文字であるかの違いがあることに注意すれば、その数字の意味がわかる。ここでは、その補正をしたものを示すだけにしておく。と、いっても、私が使用している液晶のガンマを考慮したものなので、一般的には役に立たないだろう。

上の画像をそれぞれガンマ補正したもの
ノーマル斜線(ガンマ補正後)
カラーシフトを用いた斜線(ガンマ補正後)

 あなたが目にしている画像では、画像ではガンマ補正した方が変に見えていると思う。それは、私とあなたの使っているデバイス(と視点)が異なるからである。ここでやったのと同じやり方で、あなたの液晶に合わせて(なおかつ、同じ視点で)やれば、きれいに出るはずだ。
 さて、この結果を私の液晶で見てみると、カラーシフトを用いた斜線(ガンマ補正後)の方ではきれいに斜線のハーフトーンが出ている。ただ、いくつか問題があるのだが、それは次回までの宿題だ。と、いってもヒントはすでに「できるかな?」中でも出現している。ごく最近の話題でも、だ。

 このカラーシフト技術は実に単純なアイデアである。しかし、これは実に面白いアイデアであると思う。効果が有る無しに関わらず、こういうネタは私は大好きである。ただ、こういう技術が日本のデバイス屋さんから出てこないことが少し残念だとは思う。デバイスもドライバーも両方作っているところにがんばって欲しいものだ。それまでは、「デバイスドライバーは仮免」といった所だろう。 .....うーん、ちょっと、強引かな。というわけで、何故か私の手元にはPalm-size PCであるCasio E-500があり、そして、久しぶりにVisualStudioをいじり始めるのであった。。

1999-12-19[n年前へ]

母に捧げるバラード 

宿題は自分でやってくれぇ

 今回の話は、とあるメーリングリストから始まる。仮にそのメーリングリストを"family-ml"と名付けておく。そのfamily-mlで論争が起きたのである。
 メーリングリストで論争が起きることはよくある。しかし、このfamily-mlは通常のメーリングリストではなかった。実は、とある家族を構成員とするものであった。そう、この家族は専用のメーリングリストを持っているのである。そこで、この論争は起きた。

 各登場人物の紹介は随時していこうと思う。

Tue, 14 Dec 1999 21:54:26 +0900 (JST)
To family-**@hirax.net From 母
Subject: レポート課題がわからない

みなさんお元気ですね。
   <中略>
ところで久しぶりに学校に行ったら、レポートの課題が出てました。そのうえ授業が進んでました。外国語聞いているみたいです。レポート課題 SOSです。だれか教えて下さい。

 大気の持つ質量あたりのエネルギーを、次の二つの例について求めなさい。

 「下」 赤道付近の地表面付近の大気
    高さ 0m
気温 300K
比湿 0.02(=20g/Kg)
風速(絶対値) 5m/s

「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気
    高さ 1500m(=15Km)
気温(300-6×15)K{気温減率6K/Kmと仮定}
比湿 0
風速(絶対値)20m/s

結果を次のような表にまとめなさい。
                       下 上
  A  内部エネルギーの温度に比例する部分
  B  内部エネルギーの水蒸気に比例する部分
  C  位置エネルギー
  D  運動エネルギー

さて、インドの話はいらしたときにします。大変な国ですが、行って良かったです。

 この「母」はいまはやりのヤンママではない。戦中に生まれたお年の方である。去年辺りから仕事のない日に大学へ社会人学生として通うようになったのである。

Date: Thu, 16 Dec 1999 05:43:06 +0900
To family-**@hirax.net From 兄
Subject:Re: レポート課題がわからない

> レポート課題 SOSです。だれか教えて下さい。

 この「母」のレポートって「弟」の得意な専門の問題じゃないの?

>    高さ 1500m(=15Km)

 あと、15000mの間違い?

 「兄」はとあるWEBのwebmasterである。「母」の年からすれば、そうそう若くもないことがわかる。

Date: Thu, 16 Dec 1999 09:12:06 +0900
To family-**@hirax.net From 父
Subject:Re: レポート課題がわからない

>結果を次のような表にまとめなさい。
 
 「お母さん」には無理だ。

 「父」はhiraxという名前を数十年名乗ってきた、元祖hiraxである。

Date: Thu, 16 Dec 1999 20:21:11 +0900
To family-**@hirax.net From 母
Subject:Re: レポート課題がわからない

 今年は地球科学概論をとった。確か昨年「兄」が次は地球科学がいいと、
いったはず、責任があるはずです。自分の責任のあることを「弟」に振ろうとしていませんか。だれでもいいです。「弟」、助けてくれますか?

 確か、この「母」は去年は「応用化学」をとっていた。なぜ、そういう無理なことをしたがるのだ。
気持ちはわからないでもないが、もう少し考えて欲しいものである。

Date: Thu, 17 Dec 1999 04:12:34 +0900
To family-**@hirax.net From 兄
Subject:Re: レポート課題がわからない

> 今年は地球科学概論をとった。確か昨年「兄」が次は地球科学がいいと、
>いったはず、責任があるはずです。

 いや、私が言ったのは「どうせ習うなら自然科学史みたいなのの方がいいよ。」です。「地球科学概論」だなんて言っておりません。
 それに、去年取った「応用化学」に較べれば楽なものじゃないですか。「応用化学をやったならこんなの簡単なんじゃないの?」

>自分の責任のあることを「弟」に振ろうとしていませんか。

 いや、私に責任はないと思うのですが...

>だれでもいいです。「弟」、助けてくれますか?

 そうそう > 「弟」


Date: Thu, 17 Dec 1999 13:21:00 +0900
To family-**@hirax.net From 弟
Subject:Re: レポート課題がわからない

>そうそう > 「弟」

 地球科学概論なんだから、宇宙・地球物理専攻の人がやるべき
なのでは > 「父」 & 「兄」

 最近、修論のまとめで忙しいです。


Date: Thu, 17 Dec 1999 23:49:03 +0900
To family-**@hirax.net From 兄
Subject:Re: レポート課題がわからない

> 地球科学概論なんだから、宇宙・地球物理専攻の人がやるべき
> なのでは > 「父」 & 「兄」

 しかし、これってほとんど化学工学ではないでしょうか。だから、
化学専攻の人の方が良いのではないでしょうか? > 「母」 & 「弟」


Date: Thu, 18 Dec 1999 07:33:06 +0900
To family-**@hirax.net From 母
Subject:Re: レポート課題がわからない

>>> そうそう助けてやれよ > 「弟」
>> 地球科学概論なんだから、宇宙・地球物理専攻の人がやるべき
>> なのでは > 「父」 & 「兄」
> 化学専攻の人の方が良いのではないでしょうか? >  「母」 & 「弟」

 そろいもそろって、冷たい兄弟ですね。

 うちの「母」はこうなると怖い。

Date: Thu, 18 Dec 1999 09:23:06 +0900
To family-**@hirax.net From 「妹姉」
Subject:Re: レポート課題がわからない

>>>> そうそう助けてやれよ > 「弟」
>>> 地球科学概論なんだから、宇宙・地球物理専攻の人がやるべき
>>> なのでは > 「父」 & 「兄」
>> 化学専攻の人の方が良いのではないでしょうか? >  「母」 & 「弟」

>そろいもそろって、冷たい兄弟ですね。

 そういうと、私まで一緒みたいに聞こえます。やめて下さい。兄妹とか姉弟
とか書かれるよりはいいですけど。それに、「父」は?

「妹姉」


Date: Thu, 18 Dec 1999 10:43:06 +0900
To family-**@hirax.net From 父
Subject:Re: レポート課題がわからない

 「母」がせっかく苦労してレポートをと考えているので、hiraxファミリーの
英知を結集して」、コメントしてやってください。
 今朝、「父」は物理的な意味だけは、10分間講義してあげました。

 多分、「兄」や「弟」だったら、チョチョイだから。

> どうせ習うなら自然科学史みたいなものの方がいいよ。
に賛成。地球科学には物理の素養が必要なので、一挙に地球科学に
行くより、物理か、自然科学史がいい。どっちかといったら、自然科学史が無難。


Date: Thu, 18 Dec 1999 07:43:06 +0900
To family-**@hirax.net From 兄
Subject:Re: レポート課題がわからない

>多分、「兄」や「弟」だったら、チョチョイだから。
 「弟」ならともかく、私にはチョチョイではありません。

>今朝、「父」は物理的な意味だけは、10分間講義してあげました。
 そのとき答えも講義してくれたら...

 そんなに若くはない年で働きながらも、大学へ行こうとする「母」の
エネルギーには頭が下がる思いです。しかし、科目の選択はじっくり
考えて欲しいです。

 さて、配達された最後の手紙が以下である。

Date: Thu, 18 Dec 1999 08:43:06 +0900
To family-**@hirax.net From 兄
Subject:Re: レポート課題がわからない

 昨日の電話など、何やらプレッシャーが感じられてきたので、適当に問題にとりかかって
みました。答えが合っているどうかはわかりません。また、手元に資料が
あまりないので、とんでもない間違いをしている可能性もあります。

 まずは、簡単そうな位置エネルギーと運動エネルギーから。「地球科学概論」
ということなので、式の導出までを求められてはいないと思います。そこで、
公式を使って解くことにします。

「問題」
 大気の持つ質量あたりのエネルギーを、次の二つの例について求めなさい。
 「下」 赤道付近の地表面付近の大気
高さ 0m、気温 300K、比湿 0.02(=20g/Kg)、風速(絶対値) 5m/s

「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気
高さ 15000m(=15Km)、気温(300-6×15)K、比湿 0、風速(絶対値)20m/s

「上」「下」それぞれについて
  A  内部エネルギーの温度に比例する部分
  B  内部エネルギーの水蒸気に比例する部分
  C  位置エネルギー
  D  運動エネルギー
を求めよ。

「回答」
 高さ=h、質量=m、重力加速度=gとし、今回の問題で質量=m=1kgであることを考えて、位置エネルギーCは

と書ける。これに
「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気 h=15000(m)
「下」 赤道付近の地表面付近の大気 h=0(m)
を代入し、
「上」 1.47*10^(5) J
「下」 0 J
を得る。

 運動エネルギーDは速度v(m/s)に対して、

となるから、
「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気 v=20(m/s)
「下」 赤道付近の地表面付近の大気 v=5(m/s)
を代入し、
「上」 200 J
「下」 12.5 J
を得る。

 さて、次に「A.内部エネルギーの温度に比例する部分、B.内部エネルギーの水蒸気に比例する部分」
です。空気は主として窒素N2と酸素)O2からなり、いずれも2原子分子である。また水分子H2Oは3原子分子であるが、酸素原子Oを中心とした結合角度の振動などが小さく、無視できるとして、2原子分子と同等の自由度であるものと近似する。また、
比湿 0.02(=20g/Kg)ということから、水分子の数は窒素、酸素に対して無視できる程少ないため、無視して良い。
 すると、1mol辺り気体のエネルギーを1(kg)辺りに直すために、上式に1000/28.94(g/mol)をかけた

が求める答えである。

「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気 (300-6×15)K
「下」 赤道付近の地表面付近の大気 (300)K
を代入し、
「上」 150752. J
「下」 215359. J
を得る。

 最後に「B.内部エネルギーの水蒸気に比例する部分」であるが、水が液体から気体に変化するときのエネルギー収支を考る。蒸発熱が2498J/gであることを考え、計算を行う。

「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気 水蒸気0g
「下」 赤道付近の地表面付近の大気 水蒸気20g
を代入し、
「上」 0 J
「下」 2498 * 20 = 49960. J
を得る。当然のことですが、この水蒸気のエネルギーは
太陽のエネルギーが形を変えたものです。

 なお、検算も読み直しもしておりません。

 ごくまれにではあるが、「課題を解いてください」という大学生からのメールが届くことがある。そういうメールを見るたびに「うーむ...」という気分になっていたのである。しかし、まさか自分の親の宿題をやるはめになるとは。しかもこの年になって...

2000-05-27[n年前へ]

ささやかだけれど、役にたつこと 

メール紹介の小ネタ集

 
 

  「できるかな?」の話題に関して色々と面白いメールを頂くことがある。その中には、私の知らない色々な面白いことが書いてあるものも多い。今回はそういったものの一部から小ネタ集(探偵ナイトスクープの桂小枝風)をやってみたい。メールは多少こちらで書き換えている部分もあるが、基本的には頂いたそのままである。

 まずは、

の時のように計算間違いをしたりすると、さまざまな正解がメールで送られてくる。非常にありがたいことである。簡潔に間違いの個所を指摘してあるメールもあれば、私と同じように迷路にはまり込んでしまった答えが書いてあるメールもある。どちらにしても、私にはとても面白く、ありがたいものである。

 例えば、最近で言うとこんな面白い「間違い指摘メール」を頂いた。
 

k氏からのメール
 早速ではありますがにて
どんぐりころころ、どんぐりこ
と記述されておりますが「どんぐりこ」ではなくて「どんぶりこ」が正しい歌詞だと記憶しております。真偽を確認の後、然るべき行動を取られることを切に願います。

 「えっ」、と一瞬思うが、口ずさんで、後の歌詞のつながりを考えてみると、確かにそうかもしれない。どんぐりがお池にはまるなら、確かに「どんぶりこ」の方が自然である。桃太郎の桃が「どんぶりこ」と川を流れてきたように、どんぐりも「どんぶりこ」となるのが自然である。

 そこで、WEB上で情報を探してみると、

に歌詞が載っている。確かに、「どんぐりころころ どんぶりこ」となっている。この後、身の回りの20人以上に聞いてみたが、「どんぐりころころ」の歌詞を正しく歌った人は一人もいなかった。メールを頂いたときには恥ずかしくて顔から火が出そうになったが、私だけではないようなので、恥ずかしさは新鮮な驚きに変わった。きっと、これを読んでいる人の中でもかなりの人が勘違いをしているのに違いない(そう思いたい)。

 そして、同じ「どんぐりころころ」ネタと言えば、こんなものもある。
 

O氏からのメール
にて、 - 「どんぐりころころ」と水戸黄門の主題歌の輪唱 - というものを書かれておりましたが、「赤とんぼ」と水戸黄門の主題歌(あぁ、人生に涙あり)も輪唱可能 です。

 他に思いついたのが、

おたまじゃくしは、カエルの子。ナマズの孫ではないわいなぁ。
も、「あぁ人生に涙あり」の節でいけそうです。

 どうも、山田耕作系の曲は合うようですね。以前、「山田耕作の曲は日本語の音韻律に合わせてある。」という話を聞きましたがこれが関係しているのでしょうか?

 他に、昔TVで見たものですが、

  • 「帰ってこいよぉ?」の節で、「帰ってきたウルトラマン」が歌えます。
  • 「ゲゲゲの鬼太郎OP」の節で、「おさるのかごや」が歌えます。

 私には水戸黄門の主題歌の題名が「あぁ人生に涙あり」であると知れただけでも、うれしくてたまらない。いいタイトルだ。日本人の心にグッとくるタイトルである。

 そして、その後の

  • 山田耕作系の曲と「あぁ人生に涙あり」のカノンについての関係性
などいつか必ずネタにしたいと考えているくらいである。その答えには、きっと不思議なおもむきと科学とバカバカしさが同居しているに違いない。それこそ、「できるかな?」が追い求めている理想の姿である。
 と、思いつつなかなか手をつけられないでいるので、今回ここに紹介してみた。もちろん、いつか挑戦しようという気持ちは変わっていない。いつか、必ず登場させるだろう。

 そして、同じ「モナ・リザ」つながりでは、こういう面白い話を教えてくれるメールもある。
 

R氏からのメール
の福田繁雄氏とモナリザの微笑みで思い出したのですが、トーストの焦げ目で描いた作品を見た記憶があります(これが福田氏の作品だったかどうかあいまいなのですが)。この時の作品は、焼け具合の違うトーストを並べてありましたが、展示が終わった後はどうしてしまったのでしょうか。

 インドあたりでやってる砂で描いたマンダラに通じるものがあると思いました。(その場限りのものという意味で…)

 このメールを読んでから、「モナリザ」の自己相似形ソフト 料理材料編 に必ず挑戦したいと考えているのである。そのために写真満載の料理ブックも購入してしまった程である。

 他にも色々な知識と言えば、こんな情報もとても勉強になった。
 

K氏からのメール
で、
 ところで、ドレミファソラシドの語源はどこにあるのだろう?SoundOfMusicがdoeの歌のイメージから"doa dear ..."と鼻歌を歌うことはあるが、語源は一体?次の宿題にしたいと思う。
とありますが、これはなんと、ドレミ....も歌からとられたもので、<聖ヨハネ賛歌>という歌の歌詞から引用したものだそうです。聖ヨハネ賛歌は当時使われていた、6音音階の各音を正しく理解、視唱させるために各行の開始音が6音音階の各音になっていた曲です。
 つまり、聖ヨハネ賛歌の各行のはじめの歌詞が、Ut,Re,Mi,Fa,Sol,Laだったので
す。

 Do Re Mi、は、もとはフランス語のUt Re Mi Fa Sol La Si Utでしたが、16世紀になってイタリアで呼びにくいUtが現在のDoに変わったのでした。

 こういう言葉が変化していく様子というのは私のとても興味のあるところである。そういう話、「蝸牛考」、あるいは探偵ナイトスクープの「アホとバカの境界線」のような面白い話があったら、ぜひ私まで教えてもらえるとうれしい限りである。

 さて、最後にこんなメールをご紹介したい。これは、さまざまな色空間の多様性について書いたものについて頂いた意見の一部である。
 

B氏からのメール
 複数種類の蛍光色素を用いて動物組織を染色し顕微鏡観察した画像をコンピュータで解析する技術が一般的になっています。ここで使われている疑似カラーが緑と赤ですが、私は緑と紫にしました。2色が重なるところは白くなります。通常使用される疑似カラーで赤を暗く感じることも問題ですが、もっと問題なのは、赤と緑の重なったところを黄色に表示した場合、緑と黄色が区別できないのです。

 自分が赤の変わりに紫を使って、緑と紫、重なったことろが白としたのは、これであれば健常者の人でも赤緑色盲の人でも余容易に区別がつくと思ったからです。色盲の人は日本で5%ですがアメリカではその倍以上います。学会の会場や雑誌の読者の中にこのプレゼンテーションが理解できない人が10ー20%いたら、発表している人にも損が生じます。

 この考えには私もずいぶんと影響を受けた。そのせいで

つくった自作ソフトの色はその方式に合わせたし、では他のソフトの画面をWEB上では色調変換して表示している。
 
赤-緑の色調を使わないようにした画像例

 こういう「ささやか」なやり方ではあるが、私は緑-紫の疑似カラーの布教活動に勤めているのである。

 今回は五通のメールを紹介してみた。その他にもたくさんの「面白いメール」を頂いている。別に技術的な話でもなんでもなくて、単に「こんな面白いことがあった」というメールを頂くこともあるが、それもまたとても私には役に立つのである。例え、現実的には「役立たなく」ても、それはとても「役に立つ」のである。
 そんな「ささやかだけれど、役にたつこと」を今回はいくつか紹介してみた。そういうことは「どんなことでも」、こちら(jun@hirax.net )まで送ってもらえると、とてもうれしい。
 

2000-12-29[n年前へ]

Pavane Pour Une Infante Defunte 

 M. Ravel。「亡き王女のためのパヴァーヌ」。ラベルが学生時代の宿題で作った曲。宿題で作ってしまうというところが口惜しいくらいだ。この曲はChabrierのIdylleに影響を受けたものだが、今の時代そのIdylleでさえすぐに聞くことができる。あぁ、スゴイ時代だ。(リンク)(リンク



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