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1998-12-28[n年前へ]

本歌取 1998 

1999年の夏休み

まもなく、1999年だ。1999年というとノストラダムスも有名だが、結構好きな映画に「1999年の夏休み」というものがあった。これを振り出しにして、双六のように考えてみる。

「1999年の夏休み」

 金子修介監督の映画だ。不思議な雰囲気の映画だ。原作は萩尾望都の「トーマの心臓」である。そのまた元を辿ると、同じく萩尾望都の「11月のギムナジウム」に辿り着く。つまり、

萩尾望都「11月のギムナジウム」 -> 萩尾望都「トーマの心臓」 -> 岸田理生(脚本)「1999年の夏休み」となる。-> 金子修介(映画)「1999年の夏休み」

これは、ある本歌に対して、それを翻案したものが連なっているように見える。本歌取が連なった連歌に見える。だから、それぞれ単独で楽しんでもいいが、どのように変わっていったか、などを楽しむのもいい。

「1999年の夏休み」については
「AngelHouse」( http://www2s.biglobe.ne.jp/~sgsc793/index.htm )
「こどものもうそう」( http://www.asahi-net.or.jp/~IH9K-YNMT/ )
などが詳しい。

リンク先はhttp://www2s.biglobe.ne.jp/~sgsc793/index.htmより
 「1999年の夏休み」では、上の右に写っている、深津絵里が初々しい。
 この中で、薫という登場人物が登場するが、エヴァンゲリオンに出てくるカヲルはこれに影響されているのではないか、という話が先のWEBに出ていた。底が浅いTVに興味はないが、最後の方で登場する人物の名前が「薫」というのは源氏物語の昔に溯る。それは、日本で初めての物語からの伝統なのである。源氏物語の本歌取といっても良いだろう。「薫」という名前を持つ人物を考える際には、源氏物語の「薫」の役割を意識するべきである。最後に物語の全てを背負い、繋げていく役割を背負うのは「薫」なのだ。この本歌取を意識する読み方は、記号論に通じる。
 同じ「薫」が登場するミステリィというと、栗本薫の作品群があるが、特に栗本薫の「猫目石」を読む際には源氏物語の「薫」を意識しなければ意味がないと思う。また、ミステリィ作家で「薫」の名前を持つ人は多い。
  • 北村 薫
  • 栗本 薫
  • 高村 薫
 他にもいたかもしれない。ミステリ作家にこだわらなければ、「赤頭巾ちゃん気をつけて」の作者もそうだ。

 「1999年の夏休み」と同じ金子修介脚本監督の映画として、「毎日が夏休み」がある。こちらは、大島弓子が原作だ。この場合は

大島弓子「毎日が夏休み」 -> 金子修介(脚本)「毎日が夏休み」 -> 金子修介(映画)「1999年の夏休み」

となる。

 次に、深津絵里繋がりで(ハル)に移る。

(ハル)

深津絵里はこの映画にも出ていた。 オープニングの雰囲気は「1999年の夏休み」に似ている。どちらも、映画の重要な要素である画像を(ある意味で)使わず、表現をしているというのがいい。登場人物も非常に少ない。表現は制限をかけてこそいいものができると思う。完全に自由な中にはなかなか良い物ものは生まれない。それは、選択肢が増えすぎると、人は良いものを見つけるのは困難だからかもしれない。
 この映画の内容はパソコン通信関係だ。
リンク先はhttp://www.ntv.co.jp/sinepa/h90708.htmlより

深津絵里の眉毛はまだ太くて良い。

HOME-TOWN EXPRESS

 JR東海のCMというとクリスマスエクスプレスの印象は強いが、第二回目の牧瀬理穂の回しか覚えていない人も多い。しかし、第一回目の深津絵里が演じたHOME-TOWNEXPRESSのクリスマスバージョンが一番良かった。HOME-TOWN EXPRESSはその他にも良いものがたくさんあった。クリスマスエクスプレスになって第二回目の牧瀬理穂の回は、「最後にプレゼントを持って柱の後ろで恋人を待ち、その向うに恋人がいる」ところなど、第一回目の回に対する返歌にも見える。

 JR東海とくると、萩尾望都関連で「半神」の夢の遊眠社のステージをCMに使っていたものもあった。これなども連歌であり、本歌取の繋がったものである。

ブラッドベリ「霧笛」 -> 萩尾望都「霧笛」 + 萩尾望都「半神」 -> 野田秀樹「半神」 -> JR東海「もっと私 CM」

となる。

HOME-TOWN EXPRESS X'mas 1988はもう10年前であることに驚く
HOME-TOWN EXPRESS 1988
帰ってくるはずの恋人がホームに降りてこない。と、思うと柱の向うからプレゼントを持った恋人が現れる。
JR東海「もっと私 CM」
「そんな音をつくってやろう...」

 最近、NODA MAPの「半神」に深津絵里が出る、と聞いた。これで、深津絵里を狂言回しとして、物語は一周したことになる。

そういえば、深津絵里は「虚無への供物」のTVドラマにも出ていた。あのTVを見た人に、原作の「虚無への供物」の面白さがわかるだろうか...

虚無への供物といえば、連歌はこうなる。

中井英夫「虚無への供物」 -> 竹本健二「匣の中の失楽」

というわけで、「匣の中の失楽」を読む前には「虚無への供物」を読まなければならない。「虚無への供物」の中の「どちらが現実で、どちらが架空の世界なのか、誰がわかる?」という訴えを、そのまま展開したのが「匣の中の失楽」である。「匣の中の失楽」に連なるミステリィ物もあるようだが、問題外としておく。

 ここ2,3年は、まるで「虚無への供物」の舞台のような年であったように思う。何が現実で何が架空なのか。

1999-08-29[n年前へ]

「私と好みが似てる人」 その3 

ドメイン一覧とreferer log

 www.hirax.netはレンタルサーバー上で稼動している。1999/6月からレンタルサーバー業者を変えた。業者を変えた一番目の理由は、それまで依頼していた業者の規約で定められているデータ転送量を超えてしまう恐れがあったことである。もし、転送量を超えると割に高額な追加料金が発生してしまうのであった。安い居酒屋がある瞬間からボッタクリバーに早変わりしてしまうのである。

 今回、レンタルサーバー業者を変えた後の3ヶ月間のLog解析をしてみた。以前、

私と好みが似てる人 - analog Windows版用のサブドメイン解析ソフトを作る- (1999.01.24)

でドメイン名から機関名への変換ソフトを作成したが、何しろ32kBまでのドメインリストにしか対応していないのでほとんど役に立たない。むしろ役に立ってしまっては(WHOISサーバーの負荷上)困るのである。従って、前回と同様のドメイン名とその名称の解析をするためには、ドメイン名リストの一覧を手に入れる必要がある。今回ドメイン解析をするために、「日本ドメイン一覧」を手に入れることにした。

 かつてはJPNICの公開文書( ftp://ftp.nic.ad.jp/pub/jpnic/)から日本ドメイン一覧等の文書は自由に手に入れることができた。しかし、現在はフリーでは公開されていない。ftp://ftp.nic.ad.jp/pub/jpnic/domain-list.txtの中から引用すると、

 これまで JPNIC では、JP ドメイン名リストと IP アドレスリストを ftpサービスによって一般公開してきましたが、プライバシー保護およびセキュリティ保全のため、1999年5月11日(火) より原則的に一般非公開といたしました。 JPドメイン名リスト、IPアドレスリストの利用申請については以下のURL をご覧下さい。
http://www.nic.ad.jp/jp/db/application.html関連文書: 『JPドメインのDNSゾーン情報・逆引き情報転送停止および JPドメインリスト等の配布停止について』
http://www.nic.ad.jp/jp/topics/archive/19990401-01.html
というような状態である。

 しかし、FTPsearchで探してみると、その残骸らしきものがいくつかあった。例えば、

6.3M 1999 Feb 19 ftp.web.ad.jp /pub/Internet-Document/jpnic/domain/domain-list.txt

などだ。

 このファイルを見ると、将来(といってもこのファイルはすでに現在のものではないが)使用されるであろうドメイン名が予約されており、面白い。

    (hichiyahigashi-e     # *予約ドメイン名* 日知屋東小学校)(hida-sh              # *予約ドメイン名* 岐阜県立飛騨養護学校)(hida-sh-b            # *予約ドメイン名* 岐阜県立飛騨養護学校高山日赤分校)(hidaka-ao-e          # *予約ドメイン名* 阿尾小学校)(hidaka-chisaka-e     # *予約ドメイン名* 千栄小学校)(hidaka-fuchu-e       # *予約ドメイン名* 府中小学校)
といったように小学校などもずらずら羅列されている。

今回はこのファイルを加工して、Logファイル解析ソフトのanalogで使用することにした。そうすると、日本国内のドメインからのわかりやすいアクセス解析をすることができる。試しにCO.JPドメインとAC.JPドメインの解析サンプルを示してみる。

    %PAGE %Bytes
    1205: 1.51%: SONY.CO.JP (ソニー株式会社)
    794: 1.99%: NEC.CO.JP (日本電気株式会社)
    607: 0.12%: SQUARE.CO.JP (株式会社スクウェア)
    600: 1.09%: ADVANTEST.CO.JP(株式会社アドバンテスト)
    548: 0.75%: HITACHI.CO.JP(株式会社日立製作所)
    410: 0.66%: CANON.CO.JP (キヤノン株式会社)
    395: 0.42%: FUJITSU.CO.JP(富士通株式会社)
    313: 0.68%: FUJIXEROX.CO.JP(富士ゼロックス株式会社)
    279: 0.54%: TOSHIBA.CO.JP(株式会社東芝)
    267: 0.34%: SHARP.CO.JP (シャープ株式会社)
    234: 0.30%: RICOH.CO.JP (株式会社リコー)

 企業の人数の割にSONY,SQUARE,ADVANTESTといった企業はアクセス数が多いように思う。「私と好みが似ている人」が多いようである。また、namcoもこのすぐ下に位置しているので、SQUARE,Namco,Sonyというゲーム関係の企業が「私と好みが似ている」のかもしれない。

 下は、AC.JPドメイン。

    %PAGE %Bytes
    761: 1.16%: U-TOKYO.AC.JP(東京大学)
    672: 1.92%: KYUSHU-U.AC.JP(九州大学)
    425: 1.09%: CHITOSE.AC.JP(千歳科学技術大学)
    330: 0.45%: KYOTO-U.AC.JP(京都大学)
    329: 0.32%: WASEDA.AC.JP (早稲田大学)
    265: 0.39%: OSAKA-U.AC.JP(大阪大学)
    230: 0.30%: HOKUDAI.AC.JP(北海道大学)
    205: 0.39%: CHIBA-U.AC.JP(千葉大学)
    168: 0.23%: HIROSHIMA-U.AC.JP(広島大学)
    164: 0.80%: TSUKUBA.AC.JP(筑波大学)
    163: 0.53%: TITECH.AC.JP (東京工業大学)

 WEBのLog解析をして何が一番面白いかというと、知らなかった面白いことが載っているWEBを知ることができることである。どこかのWEBページからwww.hirax.netへのリンクがされて、それによりwww.hirax.netへ辿りつく様子はrefererlogを見ればわかるのである。試しにreferer logを解析した結果のサンプルを示してみる。

    #reqs: URL
    ----- ---
    1132: http://www.maqmakmac.com/
    355: http://www.cds.co.jp/ff/bbs/minibbs.cgi
    155: http://freebee.saccess.co.jp/~gridman/gfx/99summer.html
    147: http://www.cds-co.com/ff/main.html
    138: http://www.cds.co.jp/ff/main.html
    114: http://www.jin.gr.jp/~nahi/link-misc.html
    114: http://www2s.biglobe.ne.jp/~chic/pilot.html
    82: http://www.puppenhaus.co.jp/mirror-site/fukatsu-eri.htm
    63: http://www.cds-co.com/ff/zakki.htm
    57: http://www.t3.rim.or.jp/~munemasa/links.html
    57: http://www2.saccess.co.jp/~gridman/gfx/99summer.html

そして、そのrefer元の持つ情報は私にとってとても面白いのである。www.hirax.netにリンクを貼っているページの作者というのは大抵「私と好みが似てる人」であるし、なおかつ、私ではない。ということは、そこには

  • 私の好みに合っていて、
  • 私がちっとも知らないこと
が載っているのである。
 そういったWEBを探そうと思っても、それはとても困難である。何しろ、キーワード検索ができないのである。キーワードで調べるにも「私がちっとも知らないこと」であるから、そのキーワードを私が思いつくはずがないのである。というわけで、「好みに合っていて、(私のちっとも知らないことが多い)新鮮なページを見つけるのは難しい」のであった。
 しかし、それも今では違う。www.hirax.netのreferer logを見るとそういったWEBを見つけることができるのである。これがとても嬉しいのである。

1999-09-29[n年前へ]

五色不動のワンダランド 前編 

黒ビロードのカーテンが開く

 本WEBは色にこだわっている。今回はとある五色に関する物語である。「もしかして、iMacのこと?」と思われる人もいるだろうが、残念ながら違う。数百年にわたり東京を守っているという五色の場所の話である。

五色といっても色々ある。このiMacも実は五行説に影響されている?

 「黒天鵞絨(びろうど)のカーテンは、そのとき、わずかにそよいだ。」と黒という色で物語が始まり、
「辛子いろのカーテンは、そのとき、わずかにそよいだ。」とやはり色で終わるミステリがある。これは以前、

でも書いた中井英夫の「虚無への供物」 である。「虚無への供物」は不思議な色に彩られた小説である。その中の鍵の一つが江戸五色不動だ。現在も東京に張り巡らされている五色による結界、すなわち、江戸五色不動について調べてみたいと思う。というわけで、今回の話を楽しむためには、中井英夫の「虚無への供物」を本屋へ買いに走らねばならない。私は中井英夫の「虚無への供物」は日本が誇るミステリーの最高傑作の一つだと思うのだ。

 もう10年近く前になると思うが、「本の雑誌」に江戸五色不動が実在し、そこを巡ってみたという話があった。それを読んでから、機会があれば江戸五色不動を巡ってみたいと思っていた。ミステリーの登場人物のように、東京の街の中でさ迷い歩いてみたいと思っていたのである。そして、東京のワンダランドの入り口を見てみたいと思うのである。

 五色不動の内、目黒不動は有名であるし、目白不動は目白という地名としても残っているので有名といってもよいだろうが、残る目青、目赤、目黄不動はそれほど有名ではないだろう。そもそも、 「五色」の由来は、古代中国の五行説に遡る。木、火、土、金、水の五つの要素から万物が成ると考えるものである。

五色と五行
1青龍
2朱雀
3中央天位
4西白虎
5玄武

 それでは、その江戸五色不動の位置を示してみる。このように五色の結界の中に東京があるとは知らないで、住んでいる人も多いのではないだろうか。

東京を囲む五色の結界

(位置は極めてアバウト。また、移転したものは江戸末期に存在した位置に描いたつもりである。)

 こうしてみると、五色不動の方向は江戸城を中心にして五行説の通りになっているわけではないことがわかる。しかし、江戸城を中心としているのは確かなようだ。また、黄色が二つあるのは、移転(あるいは分裂か?)があったためだという。三代将軍家光の時代に五色不動を作らせた天海大僧正の頭の中にはどのような設計図があったのだろうか?

 さて、今回の探検のために私が持参した地図は少し古い。いや、はっきり言えばかなり古い。不動尊はしっかり載っているのであるが、これを頼りにしてもすぐ迷うのだ。大体、現在位置もよくわからないし、気のせいか地形すら違うように感じるのだ。まずは、目黒不動である。最初に地図で示してみよう。

目黒不動尊の辺り 目黒白金図 (1858)

人文社 「江戸切絵図で見る幕末人物事件散歩」より
 地図の左上辺り(一番明るい所)が目黒不動。 JR目黒駅は目黒川の場所から想像して欲しい。

 さて、その時の写真を以下に示す。これが現代の目黒不動である。

目黒不動尊
 目黒という地名は目黒不動があるからだけど...."黒の部屋"が突然出現して、そこが...
「虚無への供物」

 この目黒辺りは台地が繰り返す地形であるが、やはり目黒不動尊も台地の上にある。

 この日は目黒駅前では「目黒のさんま祭り」が開かれていた。ビールとさんまが夏の終わりを感じさせるのだ。

 目黒白金図 (1858)による、目黒不動の部分。内部の位置関係はそれほど変わっていなかった。内部に入ると龍泉寺という名前が納得できるだろう。

 また、「虚無への供物」が好きな方ならば、いきなりコンガラ童子達が出現するのには驚くはずだ。

 1858年といってもたかだか150年前である。江戸時代の圧倒的な長さから比べたらごく最近である。
 
 
 
 

 さて、あまりに重いページになってきたので、この続きは次回に。
 

1999-10-04[n年前へ]

五色不動のワンダランド 後編 

奇怪な偶然

 前回前々回までのあらすじ

 江戸を守っている五色の結界、すなわち、五色不動を捜し求めて、私はさまよい歩いてみることにした。目黒不動から物語りは始まり、目青不動、目白不動を訪れていく。しかし、その最中に、現実が異様な形で姿を現すとは気づいていなかった...

 WEBの中では私は未だに江戸五色不動を訪れ、さまよっている。しかし、その最中に現実は異様な姿を現した。目黒不動でバラバラ死体の一部が発見されたのである。


 記事の一例は、
1999年10月1日(金) 21時32分
<死体遺棄>駐車場に切り取られた男性の性器 東京・目黒区 (毎日新聞)
http://news.yahoo.co.jp/headlines/mai/991001/dom/21320000_maidomc098.html
で読むことができる。10/1に目黒不動内で男性の下腹部が発見され、死後1-5日というからとは時期的にちょうど合ってしまう。それどころか、その後の情報に寄れば9/29に行方不明になったというから、ちょうどその日である。偶然が必然にすりかわっていくのが中井英夫の「虚無への供物」である。奇妙な偶然が続き、まるで自分が犯人であるような現実に襲われる話である。まるで、「虚無への供物」である。これで、他の不動でも死体が発見されていったら、まるで犯人は私であるかの錯覚に襲われてしまう。理不尽な偶然を受け入れるか、そうでなければ、自分が犯人でしか有り得ないという状況が出現してしまうのである。

 しかし、WEBの中の私はそんなことは露も知らず目赤不動尊、目黄不動尊を探しさまよっているのであった。目赤不動は駒込の駅から歩いていった。ちょうど夏の終わりで、お祭りをそこらかしこでやっていた。しかし、不思議なことに、人とはほとんど会わない。不思議な程である。
 このあと、地下鉄で東京駅に移動したのだが、駅にも人っ子一人いないのである。まさにワンダランドである。

目赤不動尊

東都駒込辺絵図(1857)


拡大図

目赤不動尊

 上の地図でも判ると思うが、ここら辺りは寺ばかりである。東京は実は寺で満ちているのであった。本当に寺ばかりなのだ。

 本郷、動坂の都電の停留所から、追分に向かって、...
中井英夫の「虚無への供物」


  目赤不動から名づけられた動坂という地名は今でも残っている。この動坂は江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」で有名な団子坂のすぐ近くである。ミステリ好きにはたまらないだろう。

 さて、最後は目黄不動尊(永久寺)である。目黄不動尊はもうひとつ平井にもあるが、今回はパスさせて頂いた。中井英夫の「虚無への供物」でもパスしているからである。

目黄不動尊(永久寺)

今戸箕輪浅草絵図(1853)

 
拡大図

 この辺りの町も奇妙に趣がある。実は東京は素晴らしい街であるのだ。

目黄不動尊

 残念ながら、中には入れなかった。

 たしかあれもお不動さんですわ、永久寺さんとかおっしゃって...。さぁ、でも目黄不動っていいましたかしら。
中井英夫の「虚無への供物」

 「虚無への供物」の冒頭で
 竜泉寺、といっても、あの「たけくらべ」で知られた大音寺界隈ではない。日本堤に面した三ノ輪よりの一角で、...
と目黄不動の近くから話は始まるが、ここに出てくる「竜泉寺」に注目すべきだろう。目黒不動は「龍泉寺」であり、ここでも話の奇妙な繋がりが存在するのである。

 確かにこのすぐ近くに「竜泉寺」は存在する。また、実はこの近くに「龍泉寺」も存在していた、その隣は不動尊なのであった。

 目黄不動尊はもうひとつあるが、そちらはいつかまた行く予定だ。それまで、奇妙な偶然が続き、江戸五色不動のワンダランドの扉が開かないことを祈るばかりである。
 

2000-02-06[n年前へ]

パノラマ写真と画像処理 Pt.1 

パノラマ写真を実感する

 「パノラマ」という言葉は何故か大正ロマンを感じさせる。かつて、流行ったパノラマ館や江戸川乱歩の「パノラマ島奇譚」という言葉がそういったものを連想させるのだろう。私も自分で写真の現像・焼き付けをしていた頃は、フィルム一本まるまる使ってベタ焼きでパノラマ写真を撮るのが好きだった。

 そういう癖は持ち歩くカメラが「写るんです」と「デジカメ」へ変化した今でも変わらない。例えば、

の時に撮ったこの写真もそうである。
1999年12月の万座温泉

 そしてまた、次に示す写真もそうだ。これは1999年夏頃の早朝に箱根の湖尻で撮影したものである。360度のパノラマを撮影したものだ。

1999年夏頃の早朝に箱根の湖尻で撮影したもの

 観光に行った先で撮影したと思われるかもしれないが、残念ながら違う。出勤途中に撮影したものである。豊かな自然がありすぎて、涙が出そうである。

 パノラマ写真としては、こういう景色を撮ったものも良いが、人が写っているものも良い。私の勤務先がこの大自然の中に移転してくる前、都会の中にあった頃に居室で撮ったパノラマ写真などはとても面白い。窓の向こうにはビルが見えたり、周りに写っている人ですでに退職した人が何人もいたりして、涙無しには見られない。

 もちろん、こういった写真はパノラマ写真で楽しむのも良いが、もっと実感できるものに加工しても楽しい。私がかつて都会の居室で撮影したものは、当時はAppleのQuicktimeVRのムービーファイルに変換して遊んでいた。今はもうない居室の中をグリグリ動かすのはホロ哀しいものがあり、とても味わい深かった。

 ところで、WEB上でそういうパノラマのVRファイルを見せるにはどうしたら良いだろうか?もちろん、AppleのQuicktimeVRを用いれば良いわけではあるが、プラグインが必要である。私はQuicktimeは好きであるが、ブラウザーのQuicktimeのプラグインは嫌いである。WEBを眺めているときに、「Quicktimeのアップグレードはいかがでしょう?」というダイアログが出ると、少しムッとしてしまう。そこで、Javaを使うことにした。いや、もちろんJavaをサポートしていないブラウザーもたくさんあるが、こちらの方がまだ好きなのである。

 そのようなパノラマのVRを実現するJavaアプレットには、例えば

といったものがある。今回は先に示した「1999年夏頃の早朝に箱根の湖尻で撮影したパノラマ写真」を"Panoramania"を使って実感してみることにする。かなり重い(私のPCではかなりしんどいようである)Japaアプレットであるが、それを以下に示す。箱根の朝を実感して頂きたい。マウスでグリグリと言いたい所であるが、これがサクサク動くPCなんてそんなにあるのだろうか?
「1999年夏頃の早朝に箱根の湖尻で撮影したパノラマ写真 VR」





 さて、ここまでは単なる前振りである。本題は、実はこれから始まる。先日このようなメールを頂いた。

 私はWindowsを使っているのですが、AppleのQuicktimeVRに興味があって、QuicktimeVRのパノラマ・ムービーを作っています。しかし、素材となる画像の作成に四苦八苦しております。ご承知の通り、
    1. ライカ版カメラに24ミリ広角レンズをつけて、
    2. 三脚にパノラマヘッドをつけて、ぐるりと周囲を12枚撮りして、
    3. 現像、プリントし、
    4. スキャニングして、ステッチャソフトでレンダリングし、
    5. それをMacintosh上でMake-QTVR-Panoramaにドロップして、
    ようやく1枚のパノラマmovファイルができるわけですが、最初のカメラ撮影で、タイムラグのため、歩行者など、動きのあるものがうまくパノラマ化できません。

     その場合には、スリットスキャンカメラを入手し、それをカラープリントする設備を準備すればいいのでしょうけど、高価です。

     そこで、

    1. 8ミリビデオに広角レンズを付け、
    2. 90度横倒しにして、10秒程度で1回転するようにステッピングモーターで駆動するパノラマヘッド(自作)に乗せ、
    3. 高速シャッター撮影し、
    4. マックのAV機能で円周12枚の静止画を取り出
    5. し、
    パノラマ化しています。

     長々と分かりにくいことを書きましたが、要は、「マックで動く電子スリットスキャンソフト」をなんとか作っていただけないでしょうか?もし、そのようなソフトがあれば、

    1. 8ミリビデオを横倒しにして、
    2. モーター回転するヘッドでぐるりと360度撮影し、
    3. その撮影した動画ファイルの、各フレームから走査線にして数本分を抽出し(インターレースで256本のうちセンター128本目の前後数本の走査線分)、
    4. それを貯めて1枚のjpgファイルにする、
    5. そのJPEG画像をMakeQTVRPanoramaの入力にして、パノラマムービーを作る、
    ということが簡単にできるようになります。こういうソフトがあれば、だれでも、旅先などで、ビデオを横倒しに持ってぐるりとスピンするだけで、あとはAVマックとパノラマ化ソフトで簡単にQuicktimeVRパノラマファイルが作れるようになると思うのですが…
 これはとても楽しい話である。しかもとても簡単なことなので、遊んでみることにした。

 まずは、答えを先に書いてしまおう。私が作らなくても、

  • NIH-Image (MacOS)
  • ScionImagePC (Windows)
というソフトがある。これらのソフトであれば、上に書かれている
  • 複数画像(動画)からの走査線抽出
は実現できる(ファイルサイズが少々不安だが)。特に、NIH-Imageであれば動画ファイルを読み込むことができる。つまり、Mac上で簡単に処理ができるのである(と、書いた。しかし、後日気づいたが256色の画像でなければ、駄目だった。どうしよう?)。ScionImagePCはNIH-ImageをWindows向けにポーティングしたものである。Macを科学技術に使う人であれば、NIH-Imageを知らない人はいないだろう。

 ScionImagePCの動作画面を以下に示す。NIH-Imageとほぼ同じである。

ScionImagePCの動作画面

 これらのソフトのStack-Slice機能を用いれば「複数画像(動画)からの走査線抽出」ができる。その使用例と、その面白い座標軸変換について考えてみたい。しかし、このページは少々重くなってきた。まして、走査線の抽出の話は使用画像が多くならざるをえない。そこで、次回、詳しく使用例を紹介することにする。よく、次回といったまま数ヶ月経つことがあるが、今回は大丈夫である。少なくとも数日後には登場することと思う(多分)。

 あれっ、ここまで書いてからinfoseekで検索すると、

なんてソフトがある。しまった、先に検索すればよかった。けど、まぁいいか。これはWindows上のソフトのようだし。とりあえず、次回へ続く。



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