hirax.net::Keywords::「モアレ」のブログ



1999-10-07[n年前へ]

CCDカメラをバラせ! 

モアレは自然のClearText

 あまり、「できるかな?」では工作の話題が出ていない。いや、もしかしたら全然出ていないかもしれない。そこで、手元に8mmビデオのジャンクがあったので、こいつをバラしてみることにした。そして、これまで「できるかな?」に登場しているような話に関連していることがないか調べてみるのだ。いや、本当は嘘で計画済みの伏線張りまくりの話である。もしかしたら、勘のいい方はもう話の風向きはもうおわかりかもしれない。

 さて、今回分解するカメラはかなり前(といっても数年前)のモデルである。まずは、分解してみよう。

1 8mmビデオカメラのCCD&レンズ部分.
2. 方向を変えるとこんな感じ
3. 正面のレンズを外す
4. もっとばらす。中央にCCDチップ部分がある。
5. これがCCD部分。
6. CCD前部のフィルターを外す
7. CCD素子を正面から見ると
8. もっともっと拡大するとこうだ

 5.の写真でわかるように、CCD前部にはフィルターが着けてある。(当初はこれを赤外線フィルターだと考えていた。なので、このフィルターを外してやると、画質はとんでもないことになる。しかし、その上で赤外線投光器を装着すれば面白いカメラになりそうである。が、用途を間違えるととんでもないことになるので、今回はやらない。が、いつかやってみようとは思っている。もちろん、私は品行方正がモットーであるので、悪用はするわけがない。もちろんである。)と、書いたがその後、「これは赤外線とは逆のエイリアシング防止用のハイカットフィルタだろう」というご指摘を頂いた。フィルターが青色だったので、単純に赤外線カット用途かと思い込んでいたが、どうやら違うらしい。指摘の文章をそのまま、使わせていただくと「CCDは空間サンプリング素子であり、サンプリング周期(ピクセルのピッチ)よりも短い波長の光が入ると、エイリアシング(折り返しノイズ)を生じて擬似カラー、干渉縞を生じてしまいます。これを避けるためのハイカットフィルタです。」とある。その後、知人から頂いた資料(勉強しなおせ、ということだろう)を読むと、水晶板をだぶらせて2重像にすることにより、細かい解像ができないようにしているローパスフィルターであるようだ。空間周波数のローパスである。今回のCCDでは3層構造になっており、中央の層にのみ色がついている。反省がてら、次回にもう少し調べてみようと思う。

 ところで、7.などの拡大画像で周辺部が丸くケラれているのがわかると思う。これは、

と同じく実体顕微鏡の接眼部からデジカメで撮影を行っているからである。デジカメはこういう時に何より重宝する。さて、デジカメと言えば、こちらも同じくCCDを用いているわけである。

 さて、8.の拡大画像を見ると、このカメラのCCDのカラーフィルターは補色方式(CMYG=シアン、イエロー、マゼンダ、グリーン)であることがわかる。原色タイプでないところを見ると、どうやら感度重視の製品であるようだ。また、この拡大画像などを眺めると、

で調べた液晶のフィルターと同じような構造であることがわかる。よくストライプ模様の服を着ている人をCCDビデオカメラで撮影すると、モアレが発生することがあるが、それはこういったフィルターの色の並びに起因しているわけである。フィルターの周期とストライプの模様が干渉してモアレが生じてしまうのである。

 最近のものではソフト的にかなりの処理をしてモアレが出にくいようにしているし、CCDも高解像度化が進んでいるので、なおさら出にくい。私が使用している富士写真フィルムのFinePix700でそのようなモアレを出そうと思ってみたが、なかなか出なかった。むしろ、ピントを正確に合わせることができなかった。それでも、何とか白黒の縦線模様を撮影して、モアレを出してみたのが下の写真である。左がオリジナルで、右がそれに強調処理をかけたものである。

FinePix700で白黒の縦線模様を撮影した際のモアレ
(左上から右下へ斜めにモアレが出ている)
オリジナル
左に強調処理をかけたもの

 モアレが発生しているのがわかると思う。さてさて、こういう白黒ストライプをよく眺めてみれば、

で登場したこの画像を思い出すはずだ。
ノーマル
ノーマル斜線
カラーシフトを用いた斜線

 そう両者ともまったく同じ斜線である。そもそも、前回作成したパターンは今回への伏線であったのである。白黒の縞模様を撮影しているのであるから、普通は白黒模様しか撮影されない。しかし、モアレが発生している場合というのは、CMYGからなる1画素の中でのさらに細かな位置情報が判るのである。先ほどのCCDの色フィルターの拡大写真のような配置になっていることを知っているのであるから、その配置も考慮の上処理してやれば良いのである。もちろん、白黒の2値からなる画像を撮影しているという前提条件は必要である。その前提条件さえつけてやれば、モアレが生じていることを逆に利用して、高解像処理ができるはずだ。

 例えば、

CCDのCMYGからなる一画素
GreenMagenda
YellowCyan

という画素のGreenだけ出力が大きかったとすると、グレイ画像であるとの前提さえ入れてしまえば、1画素のさらに1/4の領域まで光が当たっている位置を推定できるということになる。もちろん、実際のカメラでも4色の間で演算をしてやり、ある程度の推定はしているだろう。しかし、前提条件を入れてやれば、より高解像度が出せるだろう。

 ClearTextの場合は白黒2値の文字パターン、あるいはハーフトーンという前提条件をつけて液晶に出力を行った。今回は、白黒2値の文字パターン、あるいはハーフトーンという前提条件をつけて、CCDからの出力を解釈してやれば良いわけである。CCDカメラにおいては自然が自動的にカラーシフト処理をしてくれるのである。そのカラーシフト処理からオリジナルの姿を再計算してやれば良いわけである。もっとも、これらのことは光学系がきちんとしている場合の話である。

 今回考えたような、そういった処理はもうやられていると思う。FinePix700でも撮影モードに

  • カラー
  • 白黒
の2種類があるので、もしかしたらそういう処理が含まれているのかもしれないと思う。それでは、実験してみよう。白黒の方がキレイに縞模様が撮影できているだろうか?
FinePix700で白黒の縦線模様を撮影した際のモアレ
(左上から右下へ斜めにモアレが出ている)
白黒モードで撮影
カラーモードで撮影

 うーん、白黒のほうがキレイなような気もするが、よく判らない。念の為、強調処理をかけてみる。もしかしたら、違いがわかるかもしれない。

上の画像に対して強調処理をかけたもの

 うーん、これではますます違いがよくわからない。これは、次回(すぐにとは限らないが)に要再実験だ。ただ使っている感覚では、まずピントがきちんと合わないような気がする。うーん、難しそうだ。それに、今回の実験はローパスのフィルター部分をなくしたものでなければならなかったようにも思う。ならば、FinePix700を使うのはマズイ(直すのメンドクサイから)。どうしたものか。

1999-10-23[n年前へ]

新聞記事をデコンボリューションしよう 

プロバイダーの実効アクセス数を知りたい

 今回は、新聞記事の内容を再確認してみたい。

 今回のタイトルからすると、「新聞記事のアミ点をどうにかしたい」という話だろう、と思う人もいるだろうが、そういう話ではない。そういう話はいつかまた別の機会にやってみたいとは思っている。とりあえず、今回は別の話である。

 新聞記事、特にネットワークに関する記事などには、時々どうにも首を傾げてしまうものがある。例えば、.comドメインと.jpドメインの数の差から、日本とアメリカのネットワークについて語るような記事などである。日本にサーバーがあるから、*.jpドメインと決めかかっているような記事だ。

 そういう新聞記者のフィルターがかかっている記事(別にそのことが悪いとは私は思わない)を、自分なりに再構成して、再確認してみたいのである。

 今回は、朝日新聞の10月20日の「インターネット接続サービスの会員数」というグラフに関して調べてみたい。この記事は富士通系のniftyとInfoWebが一体化することに伴い、インターネット接続サービスがどう変化していくか、ということに関する記事である。

朝日新聞の10月20日の「インターネット接続サービスの会員数のグラフ」
 本題とはまったく関係なのであるが、左の写真ではモアレが発生している。本来は、下のようなアミ点画像である。

今回のタイトルからすると、「新聞記事のアミ点をどうにかしたい」という話に思えるかもしれないが、全く関係ないのである。念の為。

 このグラフは一位のniftyと三位のInfowebが合併して、巨大なネットワーク接続サービスが生まれると言いたいようである。また、一位のniftyと二位のBiglobeはとにかく巨大で、三位以降とずいぶんと差があるように思えてしまう。

 しかし、niftyの「インターネット接続サービス」に関する数字として、この300万人弱という数字を出しても良いものだろうか? 確かに、nifty経由でインターネットにつなぐ人もいるだろうが、その数ははるかに少ないのではないだろうか?ちょっと数字の使い方が違うように思う。
 nifty会員であるとしても、それはインターネット接続サービスを使用しているという意味とは違うだろう。私もniftyには加入しているが、nifty経由でインターネットに接続することはほとんどない。ただ会員であるだけで、インターネット接続サービスは使っていないかもしれない。一体、nifty会員のどれだけがnifty経由でインターネットを使っているのだろうか?

 また、一位・二位と三位以降の差はそれほどあるのだろうか? ネットワーク上で見かけるアドレスのほとんどがniftyかBiglobeであるような気がしないのである。

 こういった疑問を、HIRAX.NETへの最近1ヶ月のログ解析の結果から調べて見ることにした。つまりは、「私と好みが似てる人」の"*.ne.jp,*.or.jp, *.ad.jp"バージョンである。何しろ、これまで*.ac.jpや*.co.jpの解析ばかりであったので、たまには他のものもしてみたかったのである。だから、今回の話は単なる雑談なのである...
 HIRAX.NETはアクセス数が多いサイトではない。だから、得られる結果は全然正確なものではない。また、母集団自体が偏りを持っている恐れは十分にある。いや、あるだろうとさえ思っているのである。偏りがあるならあるで結構である。

 それでは、"*.ne.jp, *.ad.jp,s *,or.jp"からの最近1月のアクセス数(Page)のグラフを下に示す。これは、HIRAX.NET内の全ページに対するものである。したがって、HIRAX.NET内のページを沢山よんだ人がいたならば、その人の属するプロバイダーはより多くの数の「アクセス数(Page)」をカウントされることになる。

*.ne.jp, *.ad.jp,s *,or.jpからのアクセス数(Page)

 ログ解析をした中で"*.nifty.ne.jp"からのアクセスは一つも見つからなかった。これは、

  • niftyからインターネット接続でHIRAX.NETへ訪れている人が一人もいない
  • niftyからインターネット接続でHIRAX.NETへ接続した場合に、nifty.ne.jpからのアクセスという風には記録されない
という可能性がある。しかし、そのうちのどちらであるのだろう? と、書いておけば知ってる人が教えてくれるかもしれない...

 さて、ここからは追記である。期待通り協力してくれた方がいた。やはり、書いてみるものである。協力者:べっきさんが接続してくださった。そのniftyからつないだ状態では、HIRAX.NETにはfrom ***.ppp.infoweb.ne.jpと記録されていた。ということは、infoweb経由のようである。すると、nifty+infowebでもso-netに負けているということになる。(追記 ここまで)

 先の朝日新聞の記事と重なるのは、Biglobe(mesh.ad.jp)とso-net、InfoWeb位である。

 so-netは朝日新聞の記事のグラフよりも、他と比較して、多いように感じる。so-netのユーザーは比較的にインターネット環境を活用している人が多いのだろう。まさか、PostPetのせいではないだろうな? 恐るべし、So-net。

 さて、NEC系であるBiglobeはここではmesh.ad.jpと表示されているようだ。Biglobeも先の朝日新聞の記事ほどアクセス数は多くないように思われる。また、富士通系であるInfowebのアクセス数もそ朝日新聞の記事よりは少ない。もしかしたら、富士通やNEC系のプロバイダーに加入している人というのは、

  1. コンピューターを買う
  2. その製造元系のプロバイダーに加入
  3. だけど、あんまり使わない
という行動パターンなのかもしれない。何しろ、パソコンショップでも「タッチおじさん」や「バザールでこざーる」の景品を欲しいがために、パソコンを買いたがる人もいる位だ。バリバリ使うとはとても思えない。

 今回のグラフを見る限りにおいては、一位・二位が三位以降を引き離しているという感じではないし、富士通、NECが主催するインターネット接続サービスが活用されているという感じでもないようだ(少なくとも本WEBに関する限りは)。しかし、Sony主催のSo-netは活用されているようなのだ。

 強引ではあるが、「富士通、NEC、Sonyの主催するネットワーク接続サービスの活用度の違いに何か意味はないのだろうか?いや、きっとある。」と思ってしまう(少しだけだけど...)。

 今回は、とりあえず偏見出まくりの結論で終わってしまうのでも、オチもない...あぁ、しかもInfowebやBiglobeに入っているパワーユーザーがいたらどうする気なのだ。いや、きっといるぞ。先にゴメンと言っておこう。だから、抗議メールは遠慮のココロだ。


2000-04-09[n年前へ]

心に浮かぶハートマーク 

色覚の時空間特性で遊んでみよう

 4月である。「四月物語」の4月である。

で書いたように、私は4月だけは英語の勉強をしたくなるのである(何故なら、全然できないから)。そこで、ここのところ英語の先生のところに足繁く出向いている。その時に、信号機の例題を出されて「青信号」と言おうとして私は"ablue light"と言ってしまった。すると、「青信号は"green"だ -> The run signalis green.」と言われてしまった。しまった、確かにその通りだ。いや、英語でそう表現することに納得という話ではない。英語ではこうだと言われたら、私はそのまま頷くのみである。"Yes,sir"状態である。納得したのは、信号機の「現実の」色の話だ。そう言えば、日本でも信号機は「緑色」だった。試しに、信号機の一例を次に示してみる。
 
MacOS Xのファインダー上の「緑」信号

実は人にそう優しくないユーザーインターフェースの一例

 本当は「緑色」なのに、「何故、青信号と言われていたのだっけ?」と考えながら、帰り道に交差点、「緑」信号をじっと見ていた。すると、「緑」信号は消えて、黄信号になった。しかし、私の目にはその瞬間「赤」信号が見えたのである。
 私は夢を見ていたわけでも、予知能力があるわけでもむろんなくて、それは単なる錯覚である。「緑」信号が消えた瞬間に「赤」信号が見える、という錯覚である。

 私が見た「赤」信号機の錯覚を実感してもらうために、こんなアニメーションGIFを作ってみた。ソフトをレジストしてないが故の、SGという文字は気にしないでもらいたい。下の画像中央にある黒い点を見つめていて欲しい。すると、緑のハートマークが消えた瞬間から、赤いハートマークがおぼろげに見えるはずである。
 

白地に浮かぶ赤いハートマーク
(黒点を見つめること。)

 

 これは、色覚の時間特性による錯覚の一つである。実際に、赤いハートマークがあるわけではない。私の心の中にだけ、浮かぶハートマークである。

 その原因となる色覚の時間特性を示すグラフを以下に挙げる。これは色覚の時間特性を示すグラフの例である。色覚のインパルス応答のようなものである。ある色を見た後には、その色の反対色を感じるということを示している。
 

色覚の時間特性を示すグラフの例
朝倉書店 内川恵二著 色覚のメカニズム 色を見るしくみ より
 このような、色覚の時間特性により、緑色のハートマークを見た後に、赤いハートマークが心の中に見えたのである。ハートマークの黄色い縁取りの残像は青く見えるのだ。そして、同じように私の信号機の錯覚に繋がるのだ。

 このような錯覚というのはとて興味深いものである。視覚という「デバイスの特性」が「目に見えて実感できる」ことが特に面白い。以前、

で考えた「電子写真」の画像特性や、の時のCCDや液晶といったものの画像特性を考えたときにも何故だかその「デバイスの変なところ」というものには心惹かれるのである。何故なら、私は「短所は長所」でもあると思うからだ。いやもちろん、「長所は短所」というわけで、要は考え方と使い方次第、ということだ。

 さて、先の錯覚は色覚の時間特性によるものだった。それと全く同じような錯覚が、色覚の空間特性から得ることができる。そのような錯覚の一つにこのようなものである。それを下に示してみる。
 

白い線の交差部が赤く見える錯覚

 この有名な画像パターンを見れば、「白い線の交差部が赤く見える」はずだ。

 これは、色覚の空間特性によるものである。これを示すグラフの例を以下に示す。この場合もやはり色覚の時間特性のように、ある刺激があるとその周囲に反対の色の影響が表れる。例えば、周りに白が多いと、その部分は黒っぽく見える。赤色の周りは緑がかって見えるのである。逆に緑色のものの周りは赤く見えるのだ。
 そして、それをさらに進めると、周囲に赤色が少ない場所は、周りに比べて赤く見えるのである。上の画像で言えば、白の交差部は、赤の刺激が少ないので、赤の刺激を逆に感じるのである(ちょっと説明をはしょりすぎかな)。
 

色覚の空間特性を示すグラフの例
朝倉書店 内川恵二著 色覚のメカニズム 色を見るしくみ より

 今回は、このような色覚の空間特性をシミュレートしてみたい。道具は単純にPhotoshopだ。もう手作業でやってみるのだ。ネコの色覚で遊んだ

の時と同じである。
 
色覚の空間特性をシミュレートし、錯覚を生じさせてみる
 これがオリジナル画像。黒背景に白い線で格子模様が描かれている。
  白い(つまり光刺激が多い領域)からの影響を考える。先に示したグラフのように、光刺激がある箇所と少し離れたところではそれと逆の刺激を受けたような効果がある。
 そこで、まずは白い部分からの影響をガウス形状のボカシにより、真似してみる。ある画素から少し離れた所に影響が及ぶのをシミュレートするのである。
 白い部分からの影響(実際には、比較問題となるので黒い部分からの影響と言っても良いだろうか?)は「白と逆の方向、すなわち黒い方向」に働く。
 そこで、上の画像を階調反転させる。すなわち、ある画素から少し離れた所に元の明るさと逆の影響が及ぶことをシミュレートするのである。そしてさらに、階調のカーブを鋭くしてやる。
 
 上で計算したものとオリジナルの画像を加算してやる。これが、人間が感じる画像をシミュレートしたものである。
 白い格子の交差点部が黒く見えているのがわかると思う。といっても、もともとその部分は黒く見えていたとは思うが。

 下に、シミュレート画像とオリジナル画像を並べてみる。

シミュレートした画像
オリジナル画像

 このようにして、オリジナル画像を見たときに感じる錯覚をシミュレートできたことになる(もどきだけど)。

 さて、上では簡単のためにグレイスケールで遊んでみたが、最初に示した赤白の場合のようなカラーの例を示してみる。次に示す四角形の中央部は、右と左ではいずれも右の方が赤っぽく見えるはずである。緑に囲まれた領域は、本来の色に対して、緑と逆の赤色に見えるのである。上に示した白黒格子と全く同じ理屈である。
 

右と左ではいずれも右の方が赤っぽく見える

 さて、この右下の画像中の赤は通常の「赤」よりもさらに鮮やかな「赤」を実現していることになる。左下のものと同じ赤100%の色であるが、左よりももっと鮮やかに見えている筈だ。右下と比べると、左下の赤は落ち着いた赤色に見えてしまうのではないだろうか?
 この右下の赤、すなわち緑に囲まれた赤は、物理的にCRTあるいは液晶(今あなたがこのWEBページを見ているデバイス)などの表現可能領域を越えた、さらに鮮やかな赤色に見えているわけだ。ヒトの視覚のデバイス特性が故に鮮やかに見えることになる。

 さて、鮮やかな「赤」と言えば、「ポケモンチェック」によれば、日本民間放送連盟のガイドラインには

  1. 映像や光の点滅は、原則として1秒間に3回を超える使用を避けるとともに、次の点に留意する。
    1. 「鮮やかな赤色」の点滅は慎重に扱う。
    2. 前項1の条件を満たした上で1秒間に3回を超える点滅が必要なときには、5回を限度とし、かつ、画面の輝度変化を20パーセント以下に押さえる。加えて、2秒を超える使用は行わない。
  2. コントラストの強い画面の反転や、画面の輝度変化が20パーセントを超える急激な場面転換は、原則として1秒間に3回を超えて使用しない。
  3. 規則的なパターン模様(縞模様、渦巻き模様、同心円模様など)が、画面の大部分を占めることも避ける。
とあるらしい。私は「赤」と「緑」の細かいパターンというのは見ていると、何故だか「チカチカして」気持ちが悪くなるのである。かといって、「赤」と「緑」のパターンであっても、細かくなければクリスマス気分で好きなのである。その証拠にでは、その色使いを使っている位である。パターンが細かくない限りにおいては、緑と赤が鮮やかさを互いに引き立てて良い感じに見えるのである。

 しかし、その「赤」と「緑」パターンが細かくなると、何故だか不快なのだ。色覚の時空間特性を考えると、「赤」と「緑」の細かいパターンというのは、もしかしたら読む際に刺激が強すぎるのではないか、と想像してみたりする。根拠はたいしてないのだけれど。
 

2000-05-02[n年前へ]

モアレがタネの科学のふろく 

うれし、懐かし、学研の科学


 先日、友人夫妻で面白いものを見せてもらった。そこで、すかさずオネダリをして手に入れてきた。それが下の写真のものである。
 

6年の科学 1998年1号 トリックトランプ「マル秘」超魔術13

 これは学研の科学の学習教材である。「科学の学習教材」というよりは、「科学のふろく」といった方が通りが良いかもしれない。この写真のものは「6年の科学 1998年1号 トリックトランプ「マル秘」超魔術13」である。これを私にくれた友人(妻の方)は「学研教室」の「先生」をやっているので、こういう面白いものを持っているのである。

 残念ながら、付録の一部だけで、中身が全部揃っているわけではない。それに加えて、本誌もない。そこで、手元にある材料からトランプトリックを想像しなければならない。しかし、その想像しなければならないところが、また面白いのである。手品の「タネ」を想像し、実際に検証できるのだから、楽しくないわけがない。

 こういう理系心をくすぐる、懐かしいものというのは色々ある。以前登場した、学研の電子ブロックもそうであるし、雑誌の「子供の科学」もそうだ。そういった中でも、この学研の科学のふろく(学習教材)はその最たるものだろう。こういった、科学の付録は学研のサイト内の

でいくつか眺めることができる。私が持っていた(すぐなくしたけど)ものもいくつか掲載されている。

 さて、今回の「6年の科学 1998年1号 トリックトランプ「マル秘」超魔術13」のネタ探しをしていると、面白いものを見つけた。それが下の写真である。何にも書いてないトランプに半透明シートをかけると、アラ不思議、ハートの5が現れるのである。
 

何にも書いてないトランプに半透明シートをかけるとアラ不思議
ハートの5が現れる

 この「魔法のトランプ」のタネはもちろん「アレ」だ。「できるかな?」にもよく登場してきた「モアレ」である。これまで、

という感じで「モアレ」を調べてきたが、それをネタに使ったトランプ手品なのである。私がモアレを考えるときには、違うものの「ネタ・Seed」として眺めることが多いのであるが、こういう手品の「タネ」として扱われているものを見ると、新鮮で面白い。

 このトランプの表面の模様を拡大してみるとこんな感じになる。これは「ハートの先端部分の拡大写真」だ。赤い線によるハーフトーンパターンが変化している部分(実はハートマークの先端部分)があるのがわかる。この模様は結構細かく、400線/inchくらいである。
 

ハートの先端部分の拡大写真

 このようなトランプに、黒い斜線が描かれた半透明シートをかぶせると、モアレが発生して模様が見えるわけである。下の写真が、トランプに半透明シートをかぶせたところである。半透明シートには実は黒い斜線模様が描かれていることがわかる。
 

このようなトランプに、
黒い斜線が描かれた半透明シートをかぶせると、
モアレが発生して模様が見える

 そして、トランプの模様と半透明シートの模様の間でモアレが発生して、その結果として「5」
の文字が浮かび上がっているのがわかると思う。

 このトランプのタネのような画像を自分でも適当に作ってみることにする。やり方はとても簡単である。ハーフトーン模様を作成して、模様を書いて、模様部分だけハーフトーンを変化させてやればいいだけである。そして、元のハーフトーンと重ね合わせてやれば、模様が浮き上がるのである。こういう細工をしないと読めない画像を使って、何か面白いことをできるかもしれない。
 

同じような画像の例
A ハーフトーンを作成する
B 模様を書いて、模様部分だけハーフトーンを変化させてやる
C AとBを重ね合わせるとアラ不思議(子供にとってはね)

 一応、モアレはデバイスに依存するか?(1998.11.20)の時のように今回も二つの画像の重ね合わせの時に、線形性が成り立つ場合と、成り立たない場合の比較をしておく。
 

上の画像の重ねあわせにおいて、線形性が成り立つ場合と成り立たない場合の比較
線形性が成り立つようにして
先のAとBを重ね合わせてみたもの
上の画像を平滑化したもの
線形性が成り立つ場合には、モアレが発生していないのがわかる
ちなみにこれが先のCを平滑化したもの
つまり、非線形性を持つ場合
この場合にはモアレが発生する

 今回の場合も当然、線形性が成り立つ場合にはモアレが発生しないのがわかると思う。今回のトランプ手品も、半透明シートとトランプの模様の間の重ね合わせの非線形性を利用していたわけである。
 この線形性と非線形性の重ね合わせの違いも利用してみれば、もっと新しい何か面白い手品やおもちゃのネタになるかもしれない。インクジェットプリンターの淡色インクと、濃いインクの違いを利用して何か面白いトリックはできないだろうか?

 さて、先の知人夫妻は共に「先生」である。なので、時折子供に「どうやって教えるか」という話になることがある。子供という「タネ」をどうやって育てていくか、という話である。子どもが人から言われたことでなく、自分で調べて何かを覚えるにはどうしたら良いか、などだ。もちろん、それは「先生」もまた同じである。人に言われたことを鵜呑みにするのではなく、自分で「実感する」のはむしろ子どもより「先生」の方が難しいかもしれない。

 私も先日あるメーリングリストで

「先々」のある(製造業に携わる)子ども・青年などわずかでしょう
という言葉を見てしまって以来、そういったことについて色々と考えてしまうことが多いのであるが、こういう「タネ」つながりについて考えているのも面白いかもしれないな、と思うのである。
 

2000-07-08[n年前へ]

うれし、たのしい、「大人の科学」 

エジソン式コップ蓄音機

 先日、町田の東急ハンズをぶらぶらとしていた時に、こんな本を見つけた。
 

学研の「科学」と「学習」編 100円ショップで大実験! 監修:大山光春
  • 学研の「科学」と「学習」編 100円ショップで大実験! 監修:大山光春
である。以前、でも学研の科学の付録で遊んでみたが、学研の「科学」(「学習」では断じてなくて)に影響されている人は多いはずだ。影響どころか、それで理系に進んだという人だって、きっといるはずだ。むろん、私も学研の科学が大好きだったので、学研の「科学」と「学習」編という名前だけで思わず購入してしまった。文庫本だし、実験材料が100円ショップで売ってる格安モノだし、いいことずくめだからである。

 そして、この本の中でも、特に興味を惹かれた実験がこの「ファイルシート蓄音機」である。ファイルシートでソノシートを作ってやろうというものである。軟らかくて、同時に少し硬い材質のもに音の振動を刻み付けて記録・再生するという、エジソンが発明した蓄音機そのものの構造の機械を簡単に作ろうという話である。
 

「ファイルシート蓄音機」 コップでシートに録音

 私は以前から、うれし懐かしの「ソノシート」を作ってみたいと思っていたので、この記事を見つけたときは思わず声が出そうになった。いやはや、さすが学研の「科学」編集部である。もしや、これは私のために?と思ってしまう程である。(学研の科学で育った人たちは、きっとみなそう思うことだろう。)

 ところで、もしかしたら「ソノシート」を知らない人がいるかもしれない。そこで、念のために辞書で「ソノシート」をひいたものを書いておこう。

ソノシート (商標名Sonosheet)音の出る雑誌「ソノラマ」用にフランスで開発されたビニールレコード。(Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition)  Shogakukan1988/国語大辞典(新装版)小学館 1988)
知らない人はほとんどいないとは思うが、ソノシートは見た目は赤や青の薄っぺらくてペラペラなレコードである。昔は雑誌によく付録でついていた。そこに録音されているものは、テレビの主題歌だったり、声のドラマだったり、色々なおしゃべりだったりした。そして、私の記憶が確かならば、確かどこかのコンピュータ雑誌でソノシートを使ってのプログラム配布なども行われたこともあったと思う。

 それはさておき、この「ファイルシート蓄音機」を私もぜひ作ってみよう、と思っていた。ただ、、この記事そのままだと録音可能な時間が短いので、それでは少しつまらない。そこで、そこをどうしたものかとずっと悩んでいたのである。そのため、なかなか製作に取り掛かることができないでいた。

 ところが、これまた先日面白いものを見つけた。それは

である。これは、学研の「科学」で育った大人に向けて、学研の「科学」と「学習」が贈る「大人の科学の付録」だ。科学が好きな人向けの「大人の科学」であり、「大人のおもちゃ」なのである。「大人の科学」とか「大人のおもちゃ」という言葉は、何か誤解されそうな響きがある。特に、「最近、話題の傾向が何か変!?」と言われている、ここで書くと絶対に誤解されてしまいそうである。

 しかし、そんな杞憂は無用のココロだ。これは、学研の「科学」と「学習」が、「昔子どもだった大人」に贈る、タイムカプセルなのである。あの頃と変わらない、「ワクワクする心」を思い出させてくれるプレゼントなのである。これは私達を、「昔、見ていた夢」がいきなり目の前に現れたような気持ちにさせるである。

 少し長くなったが、その「大人の科学」の第一作がこの「エジソン式コップ蓄音機」である。
 

「エジソン式コップ蓄音機」

先程の「ファイルシート蓄音機」からはるかに性能が改良され、なんと20秒近くの録音が可能なのである。もちろん、迷うことなく私は購入を決めた。そして、何日か前に、送られてきたものを今日の朝に組み立ててみた。製作時間は20分位である。作ってるときの気持ちは、もう学研の「科学」の付録で遊んでるあの頃と同じだ。

 その組み立ててみた「エジソン式コップ蓄音機」が次の写真である。上の紙カップの底に針が着いていて、下の回転する透明カップの表面に紙カップの底の振動を溝として記録するのである。もちろん、再生のときはその逆である。透明カップの表面に刻まれた溝の揺れを針がなぞって、そして紙カップの底を振動させるのである。
 

「エジソン式コップ蓄音機」を組み立てたもの

 この「エジソン式コップ蓄音機」の構造自体は、先の「ファイルシート蓄音機」とかなり似ていることがわかる。紙カップと針の部分など全く同じである。もし、「3000円程の「エジソン式コップ蓄音機」が高い」と感じるのであれば、100円ショップで材料を揃えて「ファイルシート蓄音機」を作製してみるのもきっと面白いだろう。

 「エジソン式コップ蓄音機」の針がコップに刻んだ溝をなぞっている様子を次に示してみよう。音を再生している時にも、溝を少し削ってしまい、削りかすが出ているのが見えるだろう。
 

「エジソン式コップ蓄音機」 コップに刻んだ溝を針がなぞっている様子

 というわけで、もちろん私もエジソンと同じく「メリーさんの羊」を録音してみた。大きい声で歌っても、再生される「歌声」はとても小さい。いや、再生される「音」はうるさいくらいに大きいのだけれど、「歌声」はかすかにしか聞こえない。それでも、雑音の遠くで聞こえる人の声は、とても懐かしくていい響きがする。もちろん、実際にはガーガーうるさくて、私の声なんか微かにしか聞こえないのだけれど、そんなことはどうでもいいのだ。だって、あの科学の付録なんだから。それだけで、十分だ。もちろん、これの改良作業は早速始めるつもりだ。もう「大人」だからね。
 



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