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2000-04-24[n年前へ]

ボクのテレビは白黒だった 

Benhamのコマを作ってみよう


 「O plus E」のバックナンバーを眺めていると面白い記事があった。1985/7のNo.68に畑田豊彦氏が書かれている「生理光学 -各種運動知覚現象 -」である。視覚周りの色々な話が書かれていた連載である。なぜ、こういう記事を読んでいるかというと、少し前の、

で視覚特性の資料を探した時に、この畑田豊彦氏の連載を見つけて以来、どうもはまってしまっていたのである。

 特に今回面白く感じたのはBenhamのコマ(Benham's top)である。Benhamのコマというのは次のような画像を「コマ」にして回転させるというものだ。次に示すのは、「Oplus E」に掲載されていた杉浦康平氏デザインのBenhamのコマである。
 

杉浦康平氏デザインのBenhamのコマ その1

 このような画像を回転させると、白黒の模様しか描かれていないのに、何故かほのかに色づいた模様が見える。それが、Benhamのコマである。人間の視覚特性のために、白黒模様から色を感じてしまうのである。こういった「おもちゃ」で子供の頃に遊んでいたように思うのだが、すっかり忘れていた。きっと、理科の時間などにこういった「おもちゃ」で遊んでいたはずなのに、記憶の彼方に飛んでしまっていた。こういう記事を読み返さないと、たぶん忘れたままになってしまっていただろう。

 ところで、プリンターをお持ちの方は、このWEBページを印刷して、コマを作成してみると面白いと思う。白黒プリンターで印刷しても、コマさえ作れば、アラ不思議、その回転するコマは色づいて見えるのである。モノクロプリンターでもカラー模様が印刷できるわけだ(人間が感じるところまで含めれば)。

 他にも「O plus E」に掲載されていた杉浦康平氏デザインのBenhamのコマを示しておく。
 

杉浦康平氏デザインのBenhamのコマ その2

 さて、このBenhamのコマを私も作成してみようと思う。もちろん、実際にコマは作成して楽しんでみたのだ。しかし、せっかくなので、動画ファイルの形で簡単に見ることができるようにしてみた。WEB上で簡単に見ることができるBenhamのコマである。

 先の、「杉浦康平氏デザインのBenhamのコマ その1」を回転させるのではなく、時間的に変化する動画にしてみるのだ。といっても、こう書いただけでは判りにくいので、図で示してみる。まずは、作成した動画の各「コマ(このコマは静止画の意味)」を見てみよう。
 

今回作成したBenham's topの各コマ(このコマは静止画の意味)
1
2
3
4
5
6

 これが、「杉浦康平氏デザインのBenhamのコマ その1」を時間的に変化する動画にしてみたものだ。この図で4,5,6コマめが、先のA,B, Cに対応しているわけである。

 これをある程度高速で連続的に眺めると、この白黒模様が色づいて見えるはずである。まずは、これらの画像をアニメーションGIF画像にしたものを次に示す。とはいっても、作っては見たが再生スピードがどうにも遅い。これでは、色づいて見えるどころではない。このBenhamのコマをアニメーションGIFにする計画はひとまず挫折である。
 

今回作成したBenham's topをGIF画像にしたもの
(再生スピードが遅すぎて失敗 - 私の環境では - )

 そこで、先の画像をAVIファイルにまとめたものを作ってみた。こちらの方ならスピードはなんとか満足できている(少なくとも、私の環境では)。AVIファイルということで、Windows以外の環境では不便だと思うが、動画変化ツールは色々あるから大丈夫だろう(多分)。
 人によって、どの速さの場合が一番色づいて見えるかどうかは異なるだろうから、三種類の速度のものを作成してみた。それをここにおいておく。ちなみに、再生ソフトの設定を「自動繰り返し」にする必要がある。

 これらの各動画像を眺めて比較してもらうと、白黒の画像が色づいて見えるのが判ると思う。ちなみに、私の場合は、真ん中から左の縦線の辺りが黄色っぽく見え、右の縦線の辺りが青っぽく見える。この動画に関しては、カラーディスプレイで見る必要がない。白黒ディスプレイで見て頂いて構わない。それでも、色づいて見えるはずである。

 さて、WEB上で情報を探してみると、面白い話があった。

によれば、かつてNHKの教育放送で白黒テレビを用いて、このBenhamのコマを放送する実験がされたようだ。白黒テレビを用いてカラー放送をしようとするわけである。白黒しか表現することができないデバイスである白黒テレビも、それを眺める人間というデバイスの特性を考慮に入れてやれば、カラー放送が「できる」わけだ。実に夢があり、(人の感性を主眼にしているという意味において)先進的な実験である。こういう実験の話を聞くと、うれしくなる。

 昔、ウルトラマンをTVで見ていた頃、白黒TVで見ていた。その頃は、カラータイマーの色は私にはよく判らなかった。ボクのテレビは白黒だったからだ。ウルトラマンのカラータイマーの点滅をこのBenhamのコマのパターンで放送したりしたら、とても面白かったのにな、と思うのである。
 

2000-08-13[n年前へ]

WEBの時間、サイトの寿命 

ゆっくり長く続けましょうか?

 以前、

でロゲルギストが
  • 第五物理の散歩道 ロゲルギスト著 岩波新書  「通信を考える」
の中で「信号の伝わる速度と距離と処理速度の関係」を論じていることについて触れた。例えば、計算機は処理速度を高めるためには回路の大きさを小さくしなければならないとか、人間の頭脳の働きの速さから集団生活の広がりの限界があるんじゃないか、という話について論じている部分である。短く言ってしまうと、「通信を考える」の中で、ロゲルギスト達は「ある系」について
  • その系の情報処理の単位時間
  • その系の信号の伝わる速度
  • その系の空間スケール
には
  • 空間スケール < 情報処理の単位時間 × 信号の伝わる速度
という関係が成り立つだろう、と論じていたのである。速いコンピュータを作るためには、コンピュータのサイズを小さくしなければならない(信号の伝わる速度= 光速度は一定で情報処理の単位時間を短くすると、空間スケールは小さくならざるをえない)、なんてのはこの一例である。また、このロゲルギストの推論からは、人と人の間の情報伝達の速度が同じなら、
  • 大人数から構成される企業のスピードは、少人数から構成される企業のそれには遙かに及ばない
などのごく当たり前の事実が導かれるわけだ。
 
 

 ところで、ロゲルギスト達はある系の「単位時間・信号伝達速度・大きさ」の間の関係について、

  • 「単位時間・信号伝達速度」を入力値として、「大きさ」を考える
  • 「大きさ・信号伝達速度」を入力値として、「単位時間」を考える
ということをしていた。ところが、この話の30年以上前に実は似たようなことを考え、この話をさらに展開していた人がいる。それはもちろん寺田寅彦である。この手の話題を考えるときには、どうしても夏目漱石-> 寺田寅彦 -> ロゲルギストという流れを意識せざるをえない、と私は思う。

 さて、寺田寅彦が「単位時間・信号伝達速度・大きさ」について、さらにどのようなことを展開していたかというと、それはある系の「大きさ・寿命」についての関係である。寺田寅彦は

  • 空想日録 三 身長と寿命 (寺田寅彦随筆集 第四巻 岩波文庫 小宮豊隆編)
の中で
  • 人体感覚について振動感覚の限界を調べた実験データ、 - 人は自らの体の固有振動周波数の振動に対してもっとも過敏である- 、というものをきっかけとして、
  • 生物の時間の長さの単位は相対的なものである
  • ある系の「時間の長さの感覚 = 相対的な単位」はその系の固有周期と密接な関係がある(振り子時計なんてわかりやすいだろう)
  • ある系の「寿命」を測る単位は、その系の「時間の相対的な単位」、すなわち、その系の固有周期だと想像してみよう。
  • その場合、ある系の固有周期はその系の大きさに比例するから、大きい動物ほどその系の「時間の相対的な単位」は長いものとなり、見かけ上の「寿命」はその動物の「大きさ」に比例するだろう。
という想像を展開している。

 なるほど、サイズが小さい動物(すなわち固有振動の波長の短い動物)にとっては、ほんの小さな変化も大きな変化である。ということは、その動物の感じる「時間単位」は短くなければ、生き残れないだろう。逆に、サイズの大きな動物は俊敏な動きはできないわけで、その動物の「時間単位」は長くならざるをえないだろう。
 ゾウのような大きい動物は「時間単位」が長く、一見「寿命」が長いように見え、ノミのような小さな動物は「時間単位」が短く、一見「寿命」が短く見えるというわけだ。実は、ゾウもノミもその動物自身の「時間単位」を基準にすると、同じ寿命を生き抜いているということになる。

 本川達雄の中公新書「ゾウの時間 ネズミの時間」では- 体重の4分の1乗に比例して「その動物の時間単位=生理的時間」が長くなる-と述べられているが、昭和八年に既に寺田寅彦は体重は身長の3乗に比例する、逆に言えば体重は身長の3分の1乗に比例するから、「体重の3分の1乗に比例して時間が長くなるだろう」と想像を巡らせているのである。素晴らしい、想像力である。
 

 さて、寺田寅彦はロゲルギストと違って、「単位時間・大きさ」については言及しているが「信号伝達速度」については触れていない(その替わり、さらに「寿命」にまで触れているわけであるが)。もっとも、私があえて書き加えてみるならば、ある系の固有振動にはその系の中での弾性が密接に関係するし、弾性はその中での弾性波の速度も密接に関係する。つまり、ある系の固有振動の周期というものには「その系中での波の伝達速度」が暗に隠されていて、寺田寅彦は単にそれを一定とおいていたわけで、寺田寅彦が述べた内容は実はロゲルギスト達の述べた内容を包括している、と私は思うのである。
 

 このような「単位時間・大きさ・信号伝達速度・寿命」に関する話は動物に限るものではない。

  • ロゲルギストが「信号伝達速度=光速度」として、「処理速度を確保する」ための人類の行動範囲について論じたり、
  • 私(いきなり自分を例に出すのも何だが)が「信号伝達速度の変化」と「大きさ(人口)の変化」から人類の処理速度の変化について論じたり
したように、集合体に対してもその適用が可能であると思う。ここらへんは、ロゲルギスト達が寺田寅彦の想像しえた範囲を越えている部分でもあり、時の流れを感じさせる部分でもある。
 

 さて、前振りが長くなった。前回、

では、単に「信号伝達速度の変化」と「大きさ(人口)の変化」を並べて「処理速度」の変化について考えてみただけだった。今回は寺田寅彦が考えたのと同じく、「信号伝達速度」と「大きさ(人口)」から「寿命」が決まると考えることにより、「人類」の「寿命」の変化について考えてみることにしたいと思う

 まずは、前回使った「人類の大きさ=人口」の変化が次のグラフである。ただし、この人口は全然正確ではないし、むしろかなり不正確なものであることは先に断っておく。ここでは、細かな値を使うのが目的ではないので別に構わないだろう。
 

「人類の大きさ=人口」の変化

 そして、「人類」の中での「情報伝達速度」の変化を示したものが次のグラフである。この速度が「人類」という集合体の中での波の進行速度を決めるのである。
 

「情報伝達速度」の変化

 それでは、「人類」という集合体の固有振動はどうやって扱うかというと、この

  • 「人類の大きさ=人口」
  • 「情報伝達速度」
から求めることができる。「人類の大きさ=人口」をその内部での波の速度「情報伝達速度」で割った
  • 人口 / 情報伝達の速度
というものが、「人類の固有時間」の目安となるのである。この「人類の固有時間」が短くなれば、人類の時間の流れは速くなり、それに応じて見かけの「寿命」は短くなる。これが逆に、「人類の固有時間」が長くなれば、人類の時間の流れは遅くなり、それに応じて見かけの「寿命」は長くなるのである。

 その、人口 / 情報伝達の速度 = 「人類の固有時間」を計算してみたものを次に示してみよう。
 

固有「時間単位」の変化

 こうしてみると、人類というヒトの集合体においては、どんどん時間の流れは速くなり、それに応じて見かけの「寿命」は短くなっている、ということがわかる。人類はまさに生き急いでいるのである。もし、この流れを止めようと思ったら、どうしたら良いだろうか?それには、今回の計算から言えば情報転送速度を遅くするか、人類の大きさを大きくするしかない。情報転送速度を遅くするのはなんとも後ろ向き(byわきめも)だし、人口を減らすというのもなんとも後ろ向きだ。だとしたら、宇宙へでも人類が進出して、人類の空間的なスケールを大きくしていくしかないのだろうか?これもまた難しい話である。
 

 さて、最近、大好きなWEBサイトが閉鎖してしまったり、更新速度が遅くなっていたりしていて少しさみしい。だけど、もしかしたら各WEBサイトにも、「更新速度が速いと、WEBサイトの寿命が短い」なんて法則が実はあるのかもしれない。更新速度が速いということは、そのWEBサイトの固有時間が速く流れているということで、限られた寿命をどんどん使い果たしているのかもしれない。

 だとしたら、更新速度が遅いということはそのWEBサイトの寿命が長くなるということだから、それはそれで良いのかなぁ、などと思ってみたりする。「太くて短い寿命」も「細くて長い寿命」も実は本人からすればどちらも同じ長さなのかもしれないけれど、外から見ている私は「細くても良いから長く続いて欲しいなぁ」なんて思ってもみたりするのである。
 

2001-01-13[n年前へ]

オッパイ星人の力学 第四回 

バスト曲線方程式 編

 先日、父から封書が届いた。二十一世紀にもなったというのに、e-mailでもなくて封書が届いたのである。これは、やはりアレだろうか。いい年にもなってるのに、クダラナイWEBサイトを立てているデキの悪い息子を厳しく叱るためだろうか?しかも、そのクダラナイWEBサイト(しかも、有害公式認定サイト)の名前が自分の名前(hirax)だったりするからだろうか?それとも、「本が出たなら送れ」とは言われても実は送りたくなかった「あの本」を、少し前に父に送ってしまったからだろうか?いや、それとも…

 そんなこんなでドキドキしながら封筒を開けると、記事のコピーが二つ入っていた。他には何も入っていないのである。一体これは何の記事だろう?と思いながらそのコピーを眺めてみた。すると、まずひとつは去年の12月25日付けの毎日新聞の科学欄である。二十一世紀を専門家達が予想した記事の横に「究める」というコーナーがあって、そこに「女性の胸と男性の好みの進化的関係は?」というインタビュー記事があった。そして、その記事が蛍光ペンでマーキングしてあったのである。

 これは一体、どういうことなのだ?と頭の中がグルグル&複雑な気持ちになりながら、とりあえずその記事を読んでみた。すると、この記事がとても面白い。インタビュー中の

 ヒトは異性をどう選ぶのか?そんな疑問から女性のバストと弾性の好みに進化的関係があるかを研究している。
(中略)
 小さいバストほど魅力的だと母に教えられて育った。しかし、大きいバストが好きな男性がいることに気付いて驚き「なぜ」と考えたのが研究のきっかけだった。
(中略)
 「大きいバストが本当に普遍的に好まれるかを知りたい。控えめなバストが淘汰されてしまうとは考えたくないから」と話す。
という東大大学院の東海林さんの語りもとても面白いし、バストサイズを5段階に変えた女性の合成写真を使い、男子学生300人にアンケートしたという実験とか、巨乳好きの性格が父から受け継いだものであるかを調べるために、父子間で性的好みが伝達されるかを調べる、などの話もとても面白い。最高である。

 そして、父からの封筒に入っていたもう一つの記事は宇宙科学研究所の新聞の中の宇宙基地利用研究センターの黒谷氏の「Anti-Gravity」というエッセイだった。なんでも、Anti-Gravityという化粧品があって、
それは顔の皮膚のコラーゲンに皮膚がたるまないようにするというものらしい。顔の皮膚にハリをあたえて、顔のたるみを防ぐのである。顔の皮膚のたるみ元をたどれば重力のせいだから、「anti-gravity= 無重力」化粧品ということになるわけだ。じゃぁ、このAnti-Gravityを体中に塗れば、バストやヒップが垂れるという女性の悩みもなくなるのではないか、と「無重力における生物の専門家」である黒谷氏は書いていて、参考文献に本サイトが挙げられていたのである。

 うむむ、世の中には巨乳の科学について進化論的に研究している人がいたり、オッパイの力学について考え(てみたりもす)る無重力生活の専門家もいるのだ。これはマズイ。油断している場合ではない。私もオッパイ星人研究をもっと真剣にしなければならない。父はきっと私に「研究の厳しさ」を教えようとしたに違いないのである。私の父はこれまでの「オッパイ星人の力学」を読んで、美味しんぼの海原雄山風に「うわあっはっ、こんなものでオッパイ星人の力学だとは笑止千万!」位のことを言ったに違いないのである。

 しかし、それだけではない。「二十一世紀、小さいバスト、大きいバスト、無重力、皮膚、オッパイのたれ」というヒントを与えてくれたのである。ここまでされて何かを書かなくて何としよう。オッパイ星人研究の手は一瞬たりとも休めてはならぬのである。そこで今回は「皮膚のハリ」や「重力」を気にしながら、「オッパイのたるみ・形状」について考えてみることにした。
 

 さて、一体バストの形状というものはどうなっているのだろう?これまでの「オッパイ星人の力学」では

  • 半球モデル
  • 円錐モデル
などのモデルを導入してきた。しかし、これらのモデルは自分で言うのも何だがかなりの無理があったと思う。実際、これらのモデルを元に計算を積めていくとどうにも矛盾が出てくる。そのため、その計算上の矛盾を隠すために「松坂季美子項」等を無理を承知で導入したりしていたのだ。
 そしてもちろん、このモデルに対して不満を持つのは私だけではなくて「これらのモデルには私は納得できません。」というメールがたくさん送られてきた。それどころか、「本当のオッパイをあなたは知らないのではないですか?」という実に失礼?なメールさえ送られて来ていたのである。「それでは、参考までに本当のオッパイの資料でも送って頂けないでしょうか?」とは私は大人なので返事をしなかったが、ちゃんとしたモデルを作らないことにはこれからもそんなメールがまだまだ来るに違いないのだ。

 というわけで、今回は新しいバストの形状モデルを提唱してみたい。それは「バストの内部は液体に満ちていて、その液体を外側の皮膚が支える」という

  • 水風船バストモデル
である。何故こんなモデルを作ったかというと、噂の真相の2000年2月号の中に「生理食塩水を2000cc注入するという豊胸手術」という文章を見かけたからだ(その後reimyさんより、最近はムコ多糖という物質を使ったバイオジェル(ハイドロジェル)を使用するのが主流だ、と教えていただいた。噂の真相の古い感覚こういうところにも現れているかもしれない。)。この記事が本当であれば、生理食塩水という液体がバスト中に注入されていてそれを皮膚が支えるという水風船バストモデルもそれほど不自然ではないと思われるのだ。
 

 こんなモデルに基づいて、バストの形状を計算するにはどのように考えれば良いだろうか?次の図が「水風船バストモデル」における内部の水と各皮膚部分にかかる力を示してみたものである。これはバストの断面をを鉛直方向に示しており、左の黒い鉛直線が胸板であり、赤い線がバストの形状を示すバスト曲線である。(ちなみに、今回はバストを二次元の断面でのみ考えている。)
 

「水風船バストモデル」における内部の水と各皮膚部分にかかる力
左の黒い鉛直線が胸板
赤い線がバストの形状を示すバスト曲線

 「水風船バストモデル」における内部の水には重力がかかり、バストの下の方にいくほど圧力がかかっている。そして、皮膚に面している内部の水はその圧力を皮膚に伝える。そして、皮膚はその圧力で変形しながら水で満ちたバストを支えるのである。この時、バストの形状= 皮膚の形状を示すバスト曲線はどんな条件を満たしているだろうか?

 ここで、胸板にそって下向きにY軸をとり、バスト曲線をB(Y)で表すことにしよう。上の図をよく眺めるとわかると思うのだが、バストの形状= 皮膚の形状を示すバスト曲線をB(y)とすると、バスト曲線B(y)は実はこんな方程式を満たす。
 

「水風船バストモデル」におけるバスト曲線B(y)が満たす方程式

 まぁ、ここでは簡単のために、係数を省略していたり、バストが本当に垂れてしまうような状況は考えていなかったりするので、ごく簡易的なバスト曲線方程式だと思って欲しい。大雑把に係数などを無視して、言葉で言ってしまえば、バスト曲線の傾きの変化はその点より上に位置するバストの重量に等しい、という感じである。自由境界におけるLaplaceの関係でも連想して頂ければわかりやすいだろうか?とにかく、この条件と適当な境界条件さえ入れてやれば、「水風船バストモデル」におけるバスト曲線B(y)は計算することができるのである。
 

 さて、このバスト曲線方程式を一般化したり、係数をちゃんと計算したり、三次元に拡張したりということはまたいつか行うことにして、まずは適当にこのバスト曲線方程式を数値的に解いてみた。それが、例えば、次の図である。これが、「水風船バストモデル」のバストの形状の一例だ。
 

バスト曲線方程式を数値的に解いてみた結果
すなわち、「水風船バストモデル」のバストの形状
「小さいバスト」の場合

赤:すごくハリのあるヤングな皮膚の場合
マゼンダ:普通のハリを持つ皮膚の場合
藍色:ちょっとハリの少ない皮膚の場合

 この図の中でバスト形状のプロットが三種類あるのは「皮膚のハリ = 皮膚のヤング率」として三種類の値を使ってみたからだ。以前

の中で
 そう、もうお判りのはずだ。 「バストに関するヤング率」はまさにヤング率(Young率)なのである。実は年齢に比例する係数だったのだ
と書いたが、あれと同じである。今回は、年齢で変わっていくバストの皮膚のハリを「バストの皮膚のヤング率」とおいてみたのである。そういうわけで、皮膚のハリ= 皮膚のヤング率によってバストの形状は異なるわけだが、まずは眺めてみてもらいたい。以前のどうみても不自然な「半球バストモデル」等に較べて、ずっとましになっているとは思わないだろうか?特に、藍色・マゼンダのプロットなどかなり自然な形状になっていると思うのである。感受性の豊かなオッパイ星人であれば、必ずしやググッとくるハズである。

 さすがに、メチャクチャ皮膚のハリがある赤色のプロットなどは松坂大輔もビックリの「超ロケット乳」になってしまっているが(といっても、この図のアスペクト比に意味はないんだけど)、今や時代は二十一世紀、宇宙へロケットで飛び出す時代だと思えば、こんな「超ロケット乳」を眺めるのもそれまた一興ではないだろうか。ぜひこの「超ロケット乳」には宇宙へ飛び出してもらいたいものである。
 

 もちろん、世の中には「大きいことは良いことだ」という巨乳大好きオッパイ星人達もいるわけで、そんな人達のためにもう少し「大きいバスト」の場合で計算してみたものと並べて比較してみたのが次の図である。
 

「小さいバスト」と「大きいバスト」の計算結果

赤:すごくハリのあるヤングな皮膚の場合
マゼンダ:普通のハリを持つ皮膚の場合

藍色:ちょっとハリの少ない皮膚の場合
「小さいバスト」の場合

「大きいバスト」の場合

 個人の好みもあると思うが、けっこう自然な「巨乳形状」が再現できている。ちなみに、今回使用した簡易的なバスト曲線方程式ではすごく巨乳だったり、皮膚のハリが無さ過ぎてあまりにバストが垂れている場合の計算はできない。簡単に言えば、Yに対してバスト曲線B(Y)が一対一対応しないためである。が、それゆえに巨乳と言っても美乳の範囲のみ考えることができるのである。

 また、この「小さいバスト」の場合と「大きいバスト」の場合の比較から、「巨乳は垂れるのよっ!だから、小さい方が良いのっ!」という世の小振りなバストの女性がよく言うセリフの妥当性も確認してみたいところではなるが、そういうことは何か危険なことであるような気もしてきたので、今回は止めておきたい。

 ところで、今回の話はAnti-Gravityから話が始まっているわけだが、ちなみに「水風船バストモデル」は無重力下ではどのような形状をとるかと言えば、当然体積に対して表面積が最小となる「半球形状」になる。つまり、「半球バストモデル」は「水風船バストモデル」の重力を無視した特殊な場合であり、逆に言えば「水風船バストモデル」は「半球バストモデル」にバスト内部での重力の影響を加えて一般化したものだったのである。

 今回は、とりあえず新たに「水風船バストモデル」を提唱し、そのモデルにおけるバスト曲線B(y)を解くための簡易的な方程式を考察し、それを数値的に試しに解いてみた。次回は今回行った考察を用いながら、少し違うアプローチで「オッパイ星人の力学」を考えてみたいと思う。
 

 さて、今回の話のきっかけともなった黒谷氏らの書いた本「星と生き物たちの宇宙」は原稿のごく初期の段階で実は読ませてもらっていた。その時感想を聞かれたときは、この本はメールのやりとりで構成されているので、「なるべく著者達の私的な部分を消さないままにしておいた方が面白いんじゃないか」なんて適当なことを言っていたのだった。その著者達が書いたこの本のあとがきの言葉を最後に引用して、これからの「オッパイ星人の科学」への「戒め」と「言い訳」としておきたい、と思うのだった…
 

 科学は応用を通じて実生活に関わり、知的追求というこころの喜びにも関わる二面を持っています...多くの人に、こころを喜ばせる科学を楽しんでもらいたいですね。    H.Hirax, A.Kurotani

 

2001-02-27[n年前へ]

『毒電波は本当に存在するのか。』 

 依頼内容 >>> よく駅なんかで、「世界が危機に陥るのは、携帯電話からでてくる毒電波の仕業だ。たばこは麻薬だー」と、叫んでいる人がいますが、本当なんでしょうか。あと、うちの近所で、「私の生理不順は松下電器が出している有毒宇宙電波のせいだぁー」と通行人に主張していらっしゃるかたが、住んでおられますが、本当なんですか。調査お願いします。
進行状況 未調査
依頼主 W K一郎
これってもしかしてもしかして > わきめも(リンク

2004-11-05[n年前へ]

「恋愛の磁場」「神経ネットワーク」「磁場反転」 

HPO:個人的な意見 ココログ版: 恋愛論 恋愛脳 love brain 「恋愛の磁場」「神経ネットワーク」「磁場反転」そんなキーワードで興味を惹かれる人は読んでみると面白いだろう「恋愛脳
 認知科学を学ぶ書き手が「神経生理学」について考えるうちにたどり着いた結論が「性愛と想像性の先にあるのが恋愛かもしれない」ということ。そして、書き手は呟く、「恋愛って一つの創発現象かもしれない」と…。さらに下に示す文章を読んで「書き手の頭に電波が飛ばされていのでは?」と考えてはイケナイ。頭に強い電波、すなわち強い電磁波が押し寄せてくるのが、それがすなわち恋愛なのだから。

神経線維に「恋愛」という情報刺激が流れると、イメージをフェアライト・コアにして電磁石が出来て、相手への思いという強い磁場を発生させてしまう…



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