2000-02-13[n年前へ]
■競馬の写真判定とパノラマ写真
パノラマ写真と画像処理 Part.2
前回 、
の時にi_matさんから頂いたメールを紹介した。i_matさんは- I*MAT The HomePage (http://www.nsknet.or.jp/~i_mat/ )
- atoz@gol.com (http://www2.gol.com/users/atoz/index.html )
さて、前回
これらのソフトのStack-Slice機能を用いれば「複数画像(動画)からの走査線抽出」ができる。その使用例と、その面白い座標軸変換について考えてみたい。と書いた。今回もまた「数日後には登場」と言った割には時間が経っているような気もする。しかし、ここのところ文字通り忙殺されていたのである。と、言い訳をしながら今回この作業をやってみることにした。しかし、このページは少々重くなってきた。まして、走査線の抽出の話は使用画像が多くならざるをえない。そこで、次回、詳しく使用例を紹介することにする。
よく、次回登場と言ったまま数ヶ月経つことがあるが、今回は大丈夫である。少なくとも数日後には登場することと思う(多分)。
まずは、
- 「複数画像(動画)からの走査線抽出」
- 「座標軸変換」
以下に示す連続の画像は競馬のゴール地点に競走馬が到着した瞬間である。「馬に見えない」という人がいたら、それは目がおかしい。誰がなんと言おうとこれは馬である。馬と鹿の区別がつかない人は馬鹿と呼ばれるが、これはとにかく馬なのである。
視野の中に馬がもっと入ってくる。
視野の中に馬がものすごく入ってる。 |
さて、このビデオカメラで撮影された画像は例えば以下のようなものである。
撮影された各時間の画像から、この画像の赤で囲んだところを抽出し、並べたらどのようになるだろうか?
それはこのようになるだろう。よくある競馬の着順判定写真である。
一見、これまで眺めてきたビデオカメラで撮影された画像と同じように見えるが、全く違う。ビデオカメラの撮影画像の動画中における、複数画像間の「位置」は全く変化していない。変化しているのは「時間」だけである。
だから、このような赤い長方形の画像を並べた方向というものは「時間軸」を意味しているのである。それを、下の画像に示してみる。
この画像は縦方向は「空間軸」であるが、横方向は「時間軸」なのである。ビデオカメラの画像が縦横共に「空間軸」を示しているのに対し、その一軸を「空間軸」から「時間軸」に変換したものなのである
この競馬の着順判定写真の場合、カメラは空間に固定され「時間軸に変化するもの」を撮影していた。だから、このように各画像から一部を抽出して並べると、それは「時間軸」に対する変化を示すものを得ることができる。
また、例えば実験条件を変えたときの計測画像に対して「各画像から一部を抽出して並べる」ということをするならば、それは「空間軸」x「実験条件」というものを表す画像を得ることができる。
それでは、時間的には変化しないものを、ビデオカメラで撮影する方向を変化させながら撮影したらどうなるだろうか?例えば、ビデオカメラを下のようにして360度回転させながら撮影をしてみるのである。
この場合撮影画像の各画像は撮影方向角度が異なるわけである。従って、先ほどのように一部分を抽出して並べると、一方向は「空間軸」であり、もう片方の軸は「撮影方向角度」になる。結局当たり前ではあるが、ある位置から眺めた周りの景色が得られるわけだ。
これが、前回i_matさんの要望していた
- 8ミリビデオを横倒しにして、 モーター回転するヘッドでぐるりと360度撮影し、
- その撮影した動画ファイルの、各フレームから走査線にして数本分を抽出し(インターレースで256本のうちセンター128本目の前後数本の走査線分)、
- それを貯めて1枚のjpgファイルにする、
- そのJPEG画像をMakeQTVRPanoramaの入力にして、パノラマムービーを作る、
それでは、その作業を実際にしてみようと思う。i_matさんから送って頂いた動画ファイル
を使い- 動画から静止画に変換し(走査線の狭間-1/60秒の世界を目指せ- (1999.07.08) 参照)、
- Image PC(NIH-imageをWindowsに移植したもの)で、走査線の一部を抽出し並べた静止画を作成する
もういきなり結果を出してしまおう。これが、「動画ファイルから走査線を抽出し、パノラマ写真にしたもの」である。
おや?何が何だかわからない画像になってしまっている。変なモザイクがかかったみたいな画像になっているし、グレイ画像である。参考までに、先ほどの動画から手作業でパノラマ画像を作成したものを以下に示す。上の画像と比較してみると画像の示すものの対応がわかるだろう。
さて、今回の実験結果が
- 変なモザイクがかかったみたいな画像になっている
- グレイ画像である
まず、
- 「グレイ画像」になっている理由
そして、「変なモザイクがかかったみたいな画像になっている」のは(動画中の)各画像から走査線をそれぞれ一本しか抽出しなかったからである。だから、横方向(カメラの撮影方向角度)のデータが足りないのである。そのため、モザイク画像のようになってしまったのである。
本来、抽出する走査線の数は、カメラの回転速度に応じて増やしてやらなければならないわけであるが、それが上手く合っていなかったのである。また、今回の画像を見て頂くと判ると思うが、動画ファイル自体も、実は一秒辺りのフレーム数が間引かれたものとなっている。それにより、抽出する走査線の数が一本ではますます足りなくなってしまっていたのである。
というわけで、今回は「失敗した」と言わざるをえない。何か、前回は「簡単である」などと言い切ったような気もするが、それはきっと気のせいであろう。
やはり、これは適当にあるもので間に合わせ仕事をしようとしたせいかもしれない。いつの日か「mov2panorama.exe」を作成し、必ずや必ずや再挑戦をするつもりである(Macでやるのは少しあきらめモード)。
2000-02-19[n年前へ]
■携帯電話の同時性?
競馬の写真判定とパノラマ写真 その後
先日
を書いてから面白いメールを頂いた。その一部を抜粋すると、小生は超音波を利用した新しい流体場測定を行っていますが、この方法で得られるDataは空間1次元時間1次元の2次元データです。従って得られるのは、このページにあったような画像が直接得られるわけです。とある。この方法といくつかの結果を発表してから、あちこちからコンタクトがありましたが、その中の一つが、NYのSirovichという高名な流体力学者からの手紙でした。彼はいわゆるSnapShotを、逆に小生のデータから構築できないか、というのです。
今このWebでされたことの逆をしたいというわけです。流れの空間構造を解析するために使いたいのです。残念ながらこれは、以下に少々説明するように、原理的に無理な話で断らざるをえませんでした。
つまり、時間軸に速度をかけて空間軸に変換できればよいのですが、流体場はそれ自身が速度分布を持っていますから、一体何を使えば良いのかが定まらない。
電磁波の場合には光速が一定ですから、時間情報から空間情報を得ることができますが、古典流体力学では不可能なのです。工学的には平均流速を使って、時間-空間の変換をしますが、それはインチキとまでは言わないまでも、便宜的なも
のでしかありません。このWEBの中での例では、馬?の速度のみであとは静止しているので、可能でし
ょう。
「馬?」という箇所に、私との意見の相違があるようだ。私が明らかに「馬」であると言い張っているものに疑問を持たれているような気がするのであるが、今回そこは気にしないでおく。
なるほど、音波や電磁波などを使って計測を行い、得られた
- 空間(あるいは量)-時間
- 空間(あるいは量)-空間
- 海の中の魚を探知する「魚群探知機」
- 気象状況を計測する「気象レーダー」
- 固体の中の電荷分布を計測する「電荷分布測定装置」
「魚群探知機」は超音波を水中に発信して、その反射波が刻々と帰ってくる様子から、(超音波の速度を用いて、空間位置に変換した後に)障害物(ここでは魚群)の様子を計測するものである。「気象レーダー」も電波を使って同様に雲の分布などを測定する。
「電荷分布測定装置」の場合は、(例えば外部電界を印加し)電荷を持つ個所を振動させてやり、その振動がセンサー部に刻々と伝わってくる様子から(あぁ、なんて大雑把な説明なんだ)、(固体中の弾性波の速度を用いて、空間位置に変換した後に)固体の中にどのように電荷分布が存在しているかを計測するものである。
と、文章だけでは何なので、WEB上から、それらの計測器を用いた場合の計測例を示してみる。
下が魚群探知機である。リンク先は
である。また、この下は空間電荷測定装置である。これなども、とても面白いものだ。リンク先は
である。 さて、こういうことを、調べてみるだけではしょうがない。自分でもそういう計測をしてみたい。
そこで、次のような実験をしてみようとした。
- 部屋の中に複数の「音の発信源」を配置する。
- 複数の「音の発信源」から同時に音を発する。
- それをPCで収録する。
- 音声が「音の発信源」からPCに到達するまでの時間を解析する
- 複数の「音の発信源」の位置を計測する。
そこで、安易にも時報を使おうかと考えてしまった。しかも、数があって手軽ということで、携帯電話を使おうとしたのである。
しかし、複数の携帯電話を集めて、117に電話して時報を同時に聞いてみると、とても同時どころではない。てんでばらばらなのである。電話のスピーカーから流れてくる時報のタイミングには結構ズレがあるのである。
携帯電話の間には結構同時性がないのだ。また、固定電話とも比較したが、固定電話よりも時報が速いものもあれば、遅いものもあった。
そこで、複数の携帯電話を聞き比べた結果を以下に示してみたい。この写真中で左の携帯電話ほど時報が先に流れており、右になるほど時報が遅れているのである。一番早い左と、一番遅い右では一秒弱の違いがあった。
また、参考までに、家の固定電話と携帯電話の時報を一緒に聞いたサウンドファイルを示しておく。
この携帯電話は先に示した画像の一番左である。つまり、先の携帯電話群では一番時報が早かったものなのである。しかし、家の電話よりは一秒弱遅かった。ということは、家の固定電話と先の一番遅い携帯電話では時報の時間にして2秒弱の違いがあることになる。 そして、「家の固定電話と携帯電話の時報を一緒に聞いた音の変化」をスペクトログラムにしたものを以下に示す。
水平軸が時間軸であり、時間は左から右へ流れている。また、縦軸は音の周波数を示している。ここでは、「1」で示したのが家の固定電話の時報であり、少し遅れて「2」の携帯電話の時報が聞こえているのが見てとれる。
よく時報を確認することはあるが(実は私はほとんどないのだが...)、携帯電話・PHSで時報を聞く限り、秒の精度はそれほどないようである。また、勤務先の固定電話は先の携帯電話群と比べても遅い方であった。それは少し意外な結果であった。
今回調べた「携帯電話の同時性のなさは」は常識なのかもしれないが、電話の時報で時計を合わせるのはあまり精度が出ないやり方であることがわかっただけでもよしとしよう(別に実験を途中で投げ出した言い訳ではないけれど)。
今度、TV(衛星TVなども遅延時間を考慮した時報の放送を行っていると聞くし)やラジオを用いて当初計画していた実験を行おうと思う。その際には、時報がPCに到達する時間のズレで「音の発信源」までの距離を計測し、左右のマイクでの違いを計測することにより、「立体音感シリーズ」のように「音の方向」を得てみたい。
というわけで、話が「立体音感シリーズ」に繋がったところで、今回は終わりにしようと思う。
2000-07-15[n年前へ]
■外の世界を眺めてみれば
ビデオ入力を活用しよう
先日、トランジスタ技術の2000/07号を読み直していた。読み直していたのは「色センサー」の記事である。有限会社レンテックが視覚障害者用の製品として発売しているものである。PICをよく使う人だったら、この記事を読んでいなかったとしても、多分よく知っている話だと思う。何しろ昨年の「第三回PICmicroデザイン・コンテスト」で優勝した作品だからである。PICと音声ICの数多い制限と、測定上の制限の中で、「(使用用途を考えた上での)安定した色名決定」を行うルーチンがとても苦労していて、読んでいてとても面白い。
個人的には、この「第三回PICmicroデザイン・コンテスト」で入賞している「マルチ・チャンネル分光器」と
みたいなものを組み合わせて、「5000円でできるパーソナル・マルチ・チャンネル分光器」なんてものを作ってみたいと思っているのだけれど、こちらはなかなか作業が進んでいない。それはさておき、この「色センサー」のように、持ち歩いて色々なところですぐに調べることのできる測定器というのはとても便利なものだ。そして何より、それを作っている側からしても面白いものである。そこで、私も試しに作ってみることにした。といっても、計測器を作り出すと仕事と区別がつかなくなってしまうので、ハード的に作業をするのは気分が全然のらない。そこで、PCに接続されているビデオカメラを用いて、ソフト的に作ってみることにした。やってみたことは、以前作成した「色覚モドキソフト」を、ビデオカメラからのリアルタイム入力用に作ってみただけである。
以前
ではインターネット上にある画像ファイルに対して、画像処理をかける「色覚モドキソフト」を作ってみた。コンピュータにネットワーク上のものが見える「色覚」を持たせて、ネットワーク上の画像について考えてみたわけだ。そして、ではそれを自分のPCの中にある画像ファイルをいじるようにしてみた。つまり、コンピュータに自分の中のものが見える「色覚」を持たせて、自分の中を覗いてみたのである。そして、今回はPCに接続されているビデオカメラを用いて、コンピュータに現実社会を眺める「色覚」を持たせてみることにしたのである。そんな現実社会を眺めることができて個性を持つコンピュータを通して、現実社会を眺めてみたいと思うわけだ。
最近の持ち歩き用の小型ノートPCにはビデオカメラが取り付けられているものが多い。例えば、こんな感じだ。
私もCasioのPalm-sizePCは使っているし、ノートPCにもUSB接続のビデオキャプチャーを取り付けている。こういう持ち歩けるPCに取り付けてあるビデオカメラを活用しないのは勿体ない、というわけで、以前作った
を改造し、で作ったtruecolorを合体させて、ちょこちょこっと作ってみたのがこれだ。- truecolor5.exe ( truecolor5.lzh 746kB)
例えば、次の画面はTVで放映している「ターミネーター」を見ているところである。一番左の画面がコンピュータのビデオカメラに写っているそのままの画面だ。そして、真ん中がリアルタイムに色調変換をかけている画面である。つまりは、「色覚に個性を持つ」コンピュータが眺めている「ターミネーター」である。また、一番右はシャッターを押したときに取り込まれた静止画像である。
くれぐれも勘違いしないで欲しいのだが、上の一番左の画面で「赤い」部分が、真ん中の色調変換をかけた後では緑っぽく見えているからといって、このコンピュータがそこを「緑」と認識しているわけではない。あなたが、この真ん中の画面を見て何かを解釈しようとした瞬間に、それはコンピュータの感覚に加えてあなたの感覚が混入してしまうのである。もし、それでもそう考えたくなる人がいれば、そもそも「赤」とか「緑」という言葉はどういう意味なのかを考えてみると良い、と思う。
また、今回のL,M,S(これは具体的な何かを指すわけではないので、この意味についてはあえてここでは説明しない)の各スライダーの感度パーセンテージを以前のような0〜100%ではなくて、0〜200%の範囲で動かせるようにしてみた。もし、あなたのPCのモニタがこのLに対応するところが弱くなりがちならば、このLのスライダーをいじってやって、Lに関する情報を増幅してやることができる、と考える人もいるだろう。といっても、いじってみるとわかると思うが、そもそもモニタの出力可能な限界と画像フォーマット上の限界があるわけで、なかなかそういうわけにはいかない。ただ、色々と実験してみるのには面白いかもしれない。
ちなみに、次の画面は「週間アスキー」の広告を眺めている画面だ。おやおや、この広告はこのコンピュータには今ひとつアピールしないようだ。
さて、先ほど
そもそも「赤」とか「緑」という言葉はどういう意味なのかを考えてみると良い、と思う。とあっさり書いたが、「言葉」とか、「現実」とか、あるいは「感覚」といったものはすこしづつ重なり合ってはいるけれど、それは一致し得ないものだと私は思っている。まして、それらは一人の人の中で完結できるものでもないし、同時に万人にとって同じでもない。以前書いた「クジラは哺乳類か魚か?」とかと同じで、心底考えてみることに意味があるんじゃないか、と思ってたりするのだ。
2000-07-18[n年前へ]
■モザイクの向こう
隠しているから良いのです
「できるかな?」への質問?で、同じような内容のメールを頂くことがよくある。その内の一つは、
感温液晶の入手先を教えて下さい。というものである。何か不思議な気がするのだが、けっこう感温液晶を欲しいと思う人がいるらしい。しかも、そのような人はインテリア関係を扱う人が多い。「人のぬくもり」を感じさせるものを作りたい、というわけのである。これを逆に言えば、「人のぬくもり」を感じさせないものが世の中には溢れているということなのだろう。液晶という実に物理的なものを通して「人のぬくもり」を感じることができる、ということが実に不思議で同時に爽快でもある。
さて、私自身は新宿の東急ハンズで感温液晶を購入したのだが、その人達のメールによれば、最近はどうも置いていないらしい。仕方がないので、
- 日本書籍 後藤富治 村上 聡 著 おもしろ科学モノ情報 200選 2000年版
感温液晶シートですが、実験材料でなくて遊ぶのにという返事を最近は出すことにしている。
使うのでしたら、光洋 03-3212-1571にあるようです。
日比谷パークビル9F
平日8:30-5:30
JR有楽町駅近く
そういうわけで、こちらの感温液晶の入手方法に関するメールの方は良いのだが、もうひとつのよく頂くメールの内容がある。こちらの方はメールを頂いても、返事ができるわけでもなく、いつもそのままになっていた。その内容はと言えば、
画像処理と言えば、まずはAVのモザイクの消し方を研究して下さい。というものである。AVのモザイクというと、あの映してはマズイ部分を隠すアノ画像処理のことだろう。本来のモザイクという言葉のモノだけではなくて、アノマズイ部分を隠す画像処理一般について、それをどうにかして欲しい、と言っているのだろうと思う。
しかし、そう言われても困ってしまう。もちろん、私は「見えないもの」を「見える」ようにするのは大好きであるし、趣味でも仕事でも、「見える?見えない?」の境界線に興味を惹かれ、日夜考え続けている。だから、AVのモザイク〜マズイ部分を隠すアノ画像処理〜のようにわざわざ「見えない」ように細工をされてしまうと、それを何とか「見える」ようにしたいという気持ちが無い、と言ってしまうと嘘になるだろう。
しかし、残念ながら、このAVのモザイクの件に関しては「見えない」方が良いと思っているのである。それは、私の好みの根幹に関わる部分なのであるが、ダラダラと言い訳を書いても仕方がない、やはりここはFAQに対しての答えを用意しておくべきだと考えて、ここに簡単な説明を書いておくことにした次第である。
まずは、代表的なマズイ部分を隠すアノ画像処理の種類を示してみたい。次に示す画像は左から、
- オリジナル
- オリジナルに「モザイク」をかけたもの
- オリジナルに「ぼかし」をかけたもの
- オリジナルに「塗りつぶし」をかけたもの
この3つのマズイ部分を隠すアノ画像処理のなかから、今回は
- オリジナルに「モザイク」をかけたもの
- オリジナルに「ぼかし」をかけたもの
さて、まずは「モザイク」に挑戦してみたい。試しに、ミロのヴィーナスのヌード画像に対して、「モザイク」をかけてみよう。次に示すのが、とあるヌード画像に対して「モザイク」をかけたものである。
19kB | 1kB |
GIF画像ということで圧縮もかけてあるため、一概に比較はできないが、オリジナル画像が19kBであるのに対して、右の「モザイク」画像は1kBしかない。つまり、情報量がおよそ1/20であるわけだ。それもそのはず、上の「モザイク」画像は実はオリジナル画像を単に縮小したものを拡大表示してみたものである。情報量が少なくなるのも当然だろう。
19kB | 縮小したもの(GIF画像) 1kB | 単に拡大表示したもの 1kB |
それでは、画像の情報量が減ってしまっている場合に、元の画像を復元することはできないのだろうか?いや、ハッキリと言えばヌード画像に対して「モザイク」がかけられてしまったとしたら、その「モザイク」の向こうのヌード画像を拝むことはできないのだろうか?
それが実はできるのである。その証拠に巷には「AVモザイク消し器」というものが溢れている。また、そんな大層な機械でなくても、巷には「モザイク」の向こうを見通すノウハウという秘伝が伝えられている。例えば、私がリサーチした限りでは、
- TVの前に半透明のシートを張る
- 目を薄開きにして、TV画面を見る
その原理とは「オリジナルの画像の性質を考える」ことである。先のオリジナルのヌード画像をじっくり見ればわかると思うが、ヌード画像というものは割合滑らかである。マッチョなヌード画像ならばいざしらず、少なくとも女性のヌード画像は普通滑らかな画像であるわけだ。当然である。だとしたら、その性質をフル活用してやれば、「モザイク」の向こうのヌード画像を拝むことができるのである。
もう少しわかりやすく言うと、こんな感じだ。まずは、滑らかなグレイスケールの画像に「モザイク」をかけてみよう。
オリジナル | |
上の画像に「モザイク」をかけたもの |
すると、元のオリジナル画像は極めて滑らかな画像であるのに、下の「モザイク」をかけた画像は「モザイク」のせいで滑らかでなくなってしまっている。だとすれば、「モザイク」画像を滑らかにしてやれば、元のオリジナル画像っぽくなるのではないだろうか?周囲の画像を考えながら、滑らかな画像にすれば良いのではないだろうか?具体的に言えば、注目画素の周囲で平均値などを計算してやればよいのだろう。つまり、「ボカシ」をかけてやれば良いのである。「ボカシ」をかけると画像はソフトで滑らかになる。「モザイク」をかけた画像が滑らかでなくなってしまっているのを、「ボカシ」をかけることで滑らかにして、元の画像っぽくしてやれば良いのだ。
先の秘伝
- TVの前に半透明のシートを張る
- 目を薄開きにして、TV画面を見る
例えば、上の「モザイク」画像にぼかしをかけたものを次に示してみよう。「モザイク」画像にぼかしをかけることで、元のオリジナル画像に極めて近い画像になっていることがわかると思う。
オリジナル | |
上の画像にモザイクをかけたもの | |
モザイク画像にぼかしをかけたもの |
これが、いわゆるひとつの「モザイク」の向こうのヌード画像を拝む秘訣なのである。試しに、先のとあるヌード画像に対して「モザイク」をかけた画像を「ぼかす」ことで「モザイク」の向こうのヌード画像を拝んでみたのが次の画像である。「モザイク」画像よりはオリジナル画像っぽいことがわかると思う。
オリジナル | オリジナル画像に モザイクをかけたもの | モザイク画像に ぼかしをかけたもの |
さて、それでは逆にオリジナルに「ぼかし」をかけることでマズイ部分を隠すアノ画像処理をした場合はどうだろうか?この場合は「モザイク」の向こうのヌード画像を拝むことはできるだろうか?
といっても、こちらは以前
で扱っているので、ここでは詳しく書かない。ぼけた画像は例えば、- ウィーナ・フィルタ
- ハイパス・フィルタ
と書くだけでも何なので、試しに、Photoshopのカスタムフィルタで簡単な「ボカシ復元用フィルタ」を作成してみたものをここにおいておく。Photoshopユーザは試してみると面白いかもしれない。
このカスタムフィルタの内容はごく簡単なオペレータ演算で、次の図に示すようなオペレータ演算子を用いたフィルタである。 試しにこのカスタムフィルタを用いて、とあるヌード画像に対してかけられた「ぼかし」画像の向こうのヌード画像を拝んでみたのが次の例である。ちなみにここでの「ぼかし」はPhotoshopでガウス「ぼかし」の半径4ピクセルの設定でフィルタをかけてみたものだ。
オリジナル | オリジナル画像に ぼかしをかけたもの | ぼかし画像に 先のカスタムフィルタをかけたもの |
こんな簡単なカスタムフィルタでもとあるヌード画像の「ボカシ画像」を鮮鋭化できて、その「ぼかし」の向こうのヌード画像を拝むことができることが判ると思う。
実際に、私がネット上で膨大な数のエロ画像、いや違った「ボカシ」画像だ、を収集し試した結果ではかなりの割合の画像に対して、驚くべき効果を挙げることができた。本WEBに訪れるような方のほとんどには当然の知識だとは思うが、もしもこういった処理をかけたことのない方がいらっしゃれば、是非一回挑戦しみてもらいたい。特に素人ヌードの「ぼかし」画像がお薦めである(あくまで復元効果の大きさに関してだけど)。
さて、ここまで書いてから言うのはどうかと思うのだが、以前
でも書いたように、私は「素晴らしい芸術は完全な自由の中では生まれない」と思っている。それと同じで、制限の中で表現する方が実は素晴らしいものができると思っているのである。それは、私服の女子高生には心ときめかないが、制服の女子高生には思わず目を惹かれるのと同じである。完全に何でもありの私服だと実はそう簡単に輝かないのだが、制限のかかっている制服だと何故かとても輝いてしまうのと同じだ。私などは、通っていた高校が制服がなかったため、思わず同級生に「セーラー服を着て来てくれぇ」とリクエストをしてしまったくらいである。あれ、何の話だっけ...そう、つまりわざわざ隠してある部分を眺めてみることは良いとは思わないのである。隠してあるものは、隠しておいたままにしておいた方が良いのではないか、と思うのである。
そう言えば、先ほど「ミロのヴィーナス」の画像用に表紙を使わせて頂いた細野不二彦のギャラリーフェイクの中では、主人公藤田が、
「ミロのヴィーナスは腕が隠されているからこそ、人々の心を捉えたんじゃないですかね」というようなことを言う。私も本当にそう思う。
「ミロのヴィーナス」の存在しない腕を想像することで、現実には作りえない理想の姿を、その像を見る人々は感じることができるのだろう。隠してあるからこそ、良いのである。
あまりに緻密に描写した弟子に「言い仰せて何がある」と言ったのは松尾芭蕉だったはずだ。想像する余地を残して、現実よりもさらに大きいものを表現した方が良い、ということである。私も本当にその通りだと思う。ある一部分だけを切り取ってその部分だけを見てみて、後は想像力におまかせというのが、私も表現としては一番良いと思うのである。もちろん、全ての人の想像力を越えるものを表現する力があるというならばともかく、そんなことができないのならばわざと一部分だけを表現するのが一番良いと思うのである。
いや、だからって別に私が変な想像をしまくりってわけじゃないとは思うけど。かといって、私が想像力とか好奇心が少ない方かと言われると...うーん...
2000-11-19[n年前へ]
■間違いだらけのカラープリンター選び
もういくつ寝るとお正月
今年はずいぶんと夏が長かった。もう11月になっているにも関わらず、ほんの数日前まで少し暑いくらいでは夏の終わりといっても良いような天気が続いていた。ところが、数日前に急に寒くなった。もう正真正銘の冬が訪れたようである。
冬が始まり今年もあとわずかとなれば、安いインクジェットのカラープリンターが飛ぶように売れる季節だ。もちろん、家で年賀状をせっせと印刷し始める人達が多いからである。安いカラープリンターを買って、家が小さな小さな印刷工場に変わるのである。それはまさに家庭内手工業だ。
家庭内手工業という響きを聞くだけで、誰しも「安い賃金で汗水流す家族」が頭の中に浮かぶことだろう。もちろん、この正月を控えた「小さな小さな印刷工場」もその例外ではないのである。子供が家にいる家庭であれば、子供達に宛名書き(最近なら宛名入力か?)やプリントアウト作業をほとんどタダのような賃金でやらせている親は多いのである。例えば、一枚プリントアウトするごとに10円というくらいの賃金で子供に作業をやらせていたり、それどころか一枚数円位の賃金体系の家庭だってあるハズである。それは、企業が安い賃金で雇える労働力を求めてアジア・アフリカ諸国へ工場を移していくのと瓜二つである。
実際のところは、子供の方も「そんなタダのような賃金」でも何も考えずに喜んでやるとは思うのだが、親からすればそれは実に便利なパシリなのである。もちろん、そのタダのような賃金の値上げを求めてスト決行する子供がいても面白いと思われるかもしれないが、そんな向上心溢れる子供達には親から教育的指導がすかさず入ってしまい、賃金値上げはそうそう行われるわけはないのだ。現に私も幼い頃にはそんな内職をしていたわけだが、少しは知恵がついて向上心に突き動かされ(もう少しおゼぜが欲しくなって)
「アンタ以外にも働きたい人はいるの。」
話が脱線した。とにかくこの時期には、年賀状印刷のためにカラープリンタの購入を考える人達は多く、プリンター関連の情報が集まる場所、例えば
などのような場所では、「プリンターは何が良いですか?」とか「エプソンとキヤノンとhpのどのプリンターが良いのでしょう?」というような質問を数多く見かけるようになる。そして、その質問の中でもよく登場するカラープリンターがこの二機種である。エプソンPM900CとキヤノンF870だ。もちろん、もうひとつメジャーどころとしてhpもあるわけだが、写真画質を重視していないのと、日本ではまだそれほど強くないこともあって、年賀状プリントなどの用途ではあまり選択肢には入らないようである。http://www.i-love-epson.co.jp/products/ printer/inkjet/pm900c/img/pm900c.jpg | http://www.canon-sales.co.jp/ Product/BJ/img/f870.jpg |
この二機種はパンフレットも何か対照的で、少なくとも私はキヤノンF870のパンフレットは好きではない。夏までのラルクを表紙にあしらったパンフレットの方がずっと華やかで良かったと思う。寸前までGlayを使う予定だったのに、わざわざラルクに変更したというくらい(名前を考えれば実に賢明な選択である)だったのに何故「黒ずくめ」の中田に変えたのだ…
まぁ、そんな気持ちはさておきパンフレットを眺めていると、あることを確かめたくなった。それは、エプソンPM900Cの売り文句の一つである"EpsonNatural Color"である。エプソンのWEBの情報によれば、
エプソンのカラー技術が目指すべきもの。それは、ナチュラルな色の再現でした。新カラリオは、モニタ上の色域制限(sRGB)にとらわれずに、自然界の色により近いカラープリントを実現する新画像処理技術「EPSONNATURAL PHOTO COLOR(エプソン・ナチュラルフォトカラー)」を搭載。モニタに映る色ではなく、あくまで人の目に映る自然の色をプリントすることにこだわりました。写真に収めた美しい思い出を、あの時の感動を、カラリオなら記憶のままに忠実に再現。と書いてある。つまりは、「CRTモニタや液晶モニタでは出ない色(の一部)をPM900Cでは出力するようにしましたよ」ということである。「これまではモニタで見た色と同じような色を出力するようにしていたから、モニタで出ない色はプリンターでも出力していなかったのだけれど、モニタと同じでなくても自然の生の色に近い方を出力するようにしましたよ」ということだ。ビールも色も「生」に限る(byわきめも)わけで、結構カッコ良い割り切りかたである。あくまで「人の目に映る色」がホントの色で、「モニタ上で表されるRGBの色」なんかニセモノなのだぁ(少し大げさ)、という主張が込められているようで面白いと思う。「モニタで確認した色が出ない」とか言われることはもう覚悟の上なのだろう。
といっても、エプソンPM900Cがホント〜にそんな出力をしているのかどうか、実際に確かめてみなければよく判らないだろう。といっても、私の家には実はプリンターは一つもない(家でプリンターを触るのはちょっとイヤだから)ので「実際に」確かめるわけにはいかない。そこで、
の時と同じくプリンタードライバーが使う、「カラープロファイルファイル」の中を覗いてみることで、それぞれのプリンターが出力する色の範囲を調べてみることにした。出力できる色空間が広いことを謳うPM900Cがホント〜に多くの色を出力できるかどうかを確かめてみるわけだ。「実際に機械を使わずしてどうするのか」と言われるような気もするが、ネットで手に入るモノだけを使ってプリンターの性能を推理してみるのもたまには良いのではないだろうか。 というわけで、エプソン・キヤノン各社のドライバーをダウンロードしてきて、それぞれのICCファイルの中に書かれている出力可能な色空間をab平面で表したのが次の結果である。
この結果を見ると、確かに若干ではあるがPM900Cの方がF870よりも出力できるab色平面が広いように見える。といっても、この図では見づらいと思うので、この二つを重ねて、
- PM900Cの方だけが出力できる範囲を白
- F870の方だけが出力できる範囲を黒
ナルホド、確かにエメラルドグリーンというような色の辺りでPM900Cには出力できるけど(少なくともICCファイル上は)、sRGB・F870にはその色は出せないという領域もあるようである。そして、さっきのパンフレットをもう一度眺めてみると、確かにその色をパンフレットのメインの色としてあしらっていることがよくわかるだろう(ホントかいな?)。このエメラルドグリーンの服は伊達ではないのである。黒ずくめの男を表紙に使ってるのとは大違いの素晴らしさである。
さて、もちろん言うまでもないと思うが、今回の色空間の広さ競争はまさに「間違いだらけのカラープリンター選び」である。何しろ、実際のプリントアウトをしていないのである。いや、もちろんこれらのプリンターを使ったこともちゃんとあるのではあるが、事情によりその出力結果はここでは言うわけにはいかないのである。きっと、それを書いたらX○△×(以下省略)
ところで参考までに、、写真画質がある程度固まった機種のエプソンのPM750Cと最新機種であるPM900Cの比較を比較してみた。PM750Cに比べて、着実にPM900Cの出力できる色空間が広くなっている。プリンターの技術の進化具合がちょっと実感できたりするのではないだろうか?(ホントかウソか知らないけれど)
ここまでテキト〜に書いてみたが、これを読んでいる人の中でホントにちゃんと選びたいというような人がいるのなら、何より自分で実際に使ってみるのが一番だと思う。そうすれば、自分の必要と経験に応じた機種が必ずや手に入るハズだ。あと、広告が入りまくりのPC雑誌の評価はあまり参考にならないと思うなぁ。