hirax.net::Keywords::「性と愛研究所」のブログ



2001-01-06[n年前へ]

二十一世紀の有害サイト 

有害と無害の境界線!?

 正月休み明けの初出勤日のことだ。いきなり、こんな感じで声をかけられた。
「ついに公式認定されたな!」
「一体何ですか?年明け早々?」
「有害サイトのウェブマスターになった気分はどうだい?」
「な・なんと、それはホントにホントですか?人畜無害を絵に描いたような私こともあろうに有害サイトのウェブマスターですか!」
 話は簡単、私の勤務先からwww.hirax.netがアクセスできなくなったのである。hirax.netもついに有害サイト公式認定されたのである。

 といっても、実はなんとなく予想はしていた。去年の聖なるクリスマスの日にサンタの贈り物ならぬ「業務とは関係のないWEBサイト(公序良俗に反していたり、娯楽・趣味性の高いもの)のWEBサイトの閲覧を制限するからね」という全社通達が送られてきた時から、薄々予想はしていたのである。
 そして、それだけでなく二十一世紀の記念すべき初日に

 毎日会社の昼休みにwww.hirax.netを見るのを日課としていましたが、(ちなみにFirst&Fast、今日の必ずトクする一言も)あまりにも面白いので会社の女性達に本サイトを教えてしまいました。案の定、ハマッタ彼女たちは狂ったように見つづけたようです。
 その数日後、昼休みにwww.hirax.netを見ようとブックマークをクリックすると、なんと、画面にはあのエロサイトなどを見ようとすると現れる、フィルターソフトの画面が...www.hirax.netをエロサイトと同等に扱うのか?何故だ?!内容をよく読んだのか?いや読んだからか?オッパイ星人がいけなかったのか?ピストン桑田か?
 彼女たちが見すぎたのが原因なのかどうかはわかりませんが、IMに抗議も出来ず、しょうがなく自宅で見るようにしています。会社で思う存分見ることが出来る方々が羨ましい...
というありがたいメールをもらっていたので、その予感はますます強くなっていたのである。

 何はともあれ、ついに二十一世紀になった私の勤務先からhirax.netにアクセスするとこんな画面が出るようになったのだ。昼休みにアクセスするくらいいいじゃないのと個人的には思ったのだけれど、そんなつぶやきは情報システム(仮名)に通じるわけもなく、当然のごとくアクセスできないのである。
 

某所からwww.hirax.netにアクセスすると…

 まぁ、別に私自身は勤務先のネットワーク内からhirax.netにはアクセスしないから良いのだが、hirax.netが有害サイト公式認定されたからには他のサイトがどうなっているのかは知りたいところである。いい子を絵に書いたようなhirax.netが有害サイトに公式認定されたからには、世の中は有害サイトで溢れているに違いないのである。

 そこで、まずは調べてみたのが「今日の必ずトクする一言」である。www.tomoya.comとキーを打ち、期待と共にリタ〜ンキ〜を力一杯押す…と、

おっ?、ちゃんと表示されるぞ…
こんな実に的確な指摘があったりするので、てっきり有害サイト殿堂入りしているかと思ったが、う〜む、「今日の必ずトクする一言」はOKか。まぁ、確かにそうかもしれないな。エコロジーを考えるならここは非常に参考になるものなぁ… うん、確かにそうだ。良いところは良いのだ。確かにそうだ。

 と思いつつ、じゃぁ「Fast &First」はどうだ?ことある毎に法律*****をしてそうなここならどうだ、と思いhttp://www.cds.co.jp/ff/リタ〜ン…と?

あぁ?やっぱり、ちゃんと表示されるぞ……

ってことは、有害と無害の境界線は結構正しいのかぁ?と私はちょっと弱気になった。し・しかしである。

アレ?Fast&First情報掲示板には入れないぞ?
だ・だ・だけど
Fast&First動物と熱帯魚の掲示板には入れるぞ〜?
何だこりゃぁ?

 そうか、「Fast & First情報掲示板」は有害で「Fast & First動物と熱帯魚の掲示板」は無害か!なるほど、たしかにそう言われればそうかもしれない。有害と無害の境界線は「Fast& First情報掲示板」と「Fast & First動物と熱帯魚の掲示板」の間にあったのか!「Fast& First動物と熱帯魚の掲示板」はエコロジーだから無害で、よくわからないけど「Fast& First情報掲示板」は公序良俗に反していたり、娯楽・趣味性の高い有害サイト(ちょっと大げさだけど)だったのか。「Fast& First情報掲示板」は私も昼休みに勤務先からよく覗いていたが、有害サイトだとは知らなかった。うん、実に勉強になった。

 じゃぁ「数々のアヤシゲな実験」をしている「突撃実験室」はどうだ!ここなら、きっと期待に答えてくれるだろう。うん、答えてくれるに違いない。http://www.exp.org/リタ〜ン…と?

と・と・突撃実験室もお・お・おっけ〜ですかぁぁ!?
なんてこったい。上の文字の通り私は思わず叫んでしまった。そして、無茶苦茶ロンリ〜な気分になった。「オマエだけは信じていたのに〜」と泣きたくなるような気分である。
ホントにホントにおっけ〜ですかぁぁ!?

ってことは、有害サイトはhirax.netと「Fast & First情報掲示板」だけか…なんてこったい。

 というわけで、「いわゆるひとつの実験?系サイトにおける有害と無害の境界線」を描いてみたのが次の図である。
 

いわゆるひとつの実験?系サイトにおける
有害と無害の境界線

 こ・これはちょっと何だぞ。有害サイト仲間をもっと見つけないと、むちゃくちゃヤナ感じだ。何か「オレは腐ったミカンじゃねぇ〜」とか叫びたくなってきたぞ、と。

 というわけで、「ただいま実験中」の「実験・調査系HP、傾向分析図」にでてるサイト達に勤務先の「有害・無害チェッカ〜」を通してみたのが次の図である。
 

実験・調査系WEBサイトにおける
いわゆるひとつの有害・無害分布

 へ・へ・へ(矢吹ジョー風の乾いた笑い)…有害仲間がいたぞ、いたぞ。「みんなきてKOIKOI」も「なんでも実験室」もみ〜んなみ〜んな有害サイトだ。無害サイトもいっぱいいるけど、とりあえず、有害サイトは結構いるじゃないの。「できるかな?」と「Fast& First情報掲示板」だけじゃないもんね、っと。

 しかし、じっと見てみるとなんだか大雑把な傾向があるじゃないか。頭で勝負しようが体を張ろうが何をしようが「結果重視」のサイトは有害で、「過程重視」のサイトは無害か!なんだかよくわからない基準だけど、そういう基準の企業は実際のところ多いかもしれないしなぁ… お?お?おやぁぁ??

おぉおぉ…!
せ・せ・性と愛研究所は無害ですかぁ!?!?!?…
性と愛研究所は無害でできるかな?は有害ですかぁ… 「胸は揉んだら大きくなるのか」が無害で「恋の力学」は有害ですか!なんてこったい… オッパイ星人がいけなかったのか?ピストン桑田か?ションベン小僧か?ミニスカートか?スクール水着か?透け透け水着か?…(以下、省略)
 
 

 そんなわけで、その後同僚達から集まってきた情報を集めると以下のようになった。例えば、テレビ局のWEBサイトの有害と無害の境界線はこんな感じだ。
 

テレビ局のWEBサイトの有害と無害の境界線…

 そう、NHKは無害だけど、その他は有害なのである。実にスッキリとした有害と無害の境界線である。これはNHK以外はコマーシャリズムに毒されてるから有害なのか?スゴイ!マルクスが聞いたらきっと泣いて喜ぶに違いない…あるいはキムジョ(以下、都合により削除) やはり、無害と言えば国営放送に限るのだ。その他の有害放送局の情報なんか見てはいけないのである。そういう情報はシャットしなければならないらしい…
 

 じゃぁ、日本を支える自動車会社のWEBサイトの有害と無害の境界線はどうか、というとこんな感じだ。
 

自動車会社のWEBサイトの有害と無害の境界線…

 そう、光岡自動車以外はほとんど有害サイトなのであった。大企業は悪で中小企業は正義なのである。男たるもの弱きを助け、強きを挫かねばならぬのであった。大企業は有害で光岡自動車は無害なのである。判官贔屓の日本魂炸裂である。日本人の鏡である。誠に頭が下がる思いだ。
 

 他にも朝日新聞は無害だけど、日刊スポーツは有害だとか、日記猿人(才人)は無害だけどReadMeJapan!は有害だとか、秋月電子は無害だけど秋葉館は有害だとか、笑える境界線は数限りなくたくさんあるのだけど、とりあえず今回はこのあたりで満足することにしよう。とりあえず、アクセス数の多いところは根こそぎNGてな感じかなんだろうな。おっ!?ってことは、アクセスログ片手に人が見ながら判断したのかぁ?それはそれでかなりスゴイものがあるぞ…信じられないような気もするが…
 

 というわけで、該当する某所の人はテキトーな経路、例えば、

とかでアクセスして下さいな、と伝言をしておきます。anonymizerがOKってのもおマヌケですが。とりあえず、アクセスできるので。ハイ。

 それにしても、二十一世紀ってこんな時代だったのだろうか? 何故1984年は1984のようにはならないか、あなたはわかるはずだ。」と言われたのはもうすでに二十年近く前の話だ。あのコマーシャルの中でBIGBROTHERは延々と「害ある情報を隠せば、我々は安泰で、そして繁栄していくのだ」と演説していた。そのBIGBROTHERは走ってきた女性の投げたハンマー、言い換えれば個人が使うコンピューター、が壊した。情報が駆けめぐってる今日はあの延長上にあると私は思うのだ。そしてまた、二十世紀に生まれた人間としては、二十一世紀には素晴らしい世紀になって欲しいと少しばかり夢を抱いていたりするのである。
 
 

2001-01-27[n年前へ]

オッパイ星人の力学 仏の手にも煩悩編 

時速60kmの風はおっぱいと同じ感触か?

 本サイトhirax.netは「実験サイト」というジャンルに分類されることが多いようである。何が実験で、何が実験でないのかは私にはよくわからないのだが、とにかく「実験サイト」と呼ばれるサイトは数多くある。そして、その数ある実験サイトの中でも、人間そして愛について日夜取り組んでいるサイトの一つが「性と愛研究所」である。

 その「性と愛研究所」を読んでいると興味深いことが書いてあった。テレビ番組の「めちゃめちゃイケてる!」の中で何でも「時速60キロの風圧はおっぱいの感触である」と言っていたらしい。そしてまた、「性と愛研究所」では「おっぱいの感触と風圧に関する考察」の中で、「時速60kmでは全然おっぱいの感触ではなくて、ちょうど時速100kmを境に急におっぱいの感触を感じます。」というメールを紹介しながら、

「時速100kmの風では、本物は触れないけどお手軽に疑似体験、名付けて『プリンに醤油でウニ』ではなくなってしまう。それでは、まるで『キャビアにフォアグラでトリュフの味』だ。青少年のために疑似おっぱいを探してあげる必要があるな。」
と結論づけている。

 この「時速60kmの風」現象は「できるかな?」的にとても興味深いと思われるので、今回じっくりと考えてみることにしてみた。そして、この結論に何らかのプラスαをしてみたいと思う。

 そう、前回「オッパイ星人の力学 第四回- バスト曲線方程式 編- (2001.01.13)」でオッパイの表面で働いている力について考えてみたのは、実は単に今回・そしてさらに次回の話のための準備だったのである。(さて、ちなみに今回は会話文体をメインに話が進む。「性と愛研究所」ではないが、この手の話は会話文体の方が書きやすいように思うし、私のバイブル「物理の散歩道」でも「困ったときの会話文体」と言われていたので挑戦してみた次第である。言うまでもないが、AもBも私が書いてはいるが、私自身ではない。)
 

A : 「東名高速で出勤途中に確認してみたんだが、やはり時速100kmあたりが妥当な感じだったな。」

B : 「何を根拠に妥当なのかがよくわからないが、確かに時速60kmでは手に何かが触っているという感触すらないな。それにしても、哀しい出勤の景色だぞ、それ。」
A : ほっとけ!だけど、少し考えてみると、このおっぱい(ニセモノ)の感触問題は結構面白く、技術的にもなかなかに深い話だと思うんだよ。」
B : 「はぁそうですか…、としか言いようがないな。」
A : まぁ、聞け。何しろこのおっぱい(ニセモノ)の感触問題には流体力学のエッセンスがぎっしりと詰まっているんだからな。」
B : 「そんな話は聞いたことはないが、とりあえず聞かせてもらおうか。」
A : 「このおっぱい(ニセモノ)の感触問題を解くためには、とりあえず車の窓から手を出したときの指の周りの空気流を計算すれば良いわけだ。」
B : 「ちょっと待て。何で指の周りなんだ。手のひらじゃなくて?」
A : 「簡単なことさ。試しにおっぱいを揉む仕草をしてみろよ。」
B : 「こ、こうか?あぁ?手のひらじゃなくて指で揉んでるっ!
A : 「そうだろ。何故かわからないが、おっぱいを揉む仕草=Mr.マリックが超魔術をかける時のような指使いらしいんだよ。」
B : 「うむ、確かにそのようだな。」
A : 「だから、時速60kmの風からおっぱいの感触を受けているのは指先だと考えるのが自然だろ。それなら、とりあえず下の図のような「指の間を抜けていく空気の流れ」を計算してみれば、おっぱい(ニセモノ)の感触問題が解けるわけだ。」
B : 「実写の手に二次元の計算結果を三次元的に合成するという凝った処理が、実にクダラナイことに使われている例だな…」
車の窓から手を出して、指の周りの空気流を計算しよう
  高速で走る車の窓から手を出して、その手の指の間を抜けていく空気の流れを計算しよう。

 鉛直方向の指の等方性を考えて、右の図に示すような指を輪切りにするような水平面のみを考える。

 こんな写真を撮るときに、自己嫌悪に陥りがちなのは何故だか知りたい今日この頃。

A : 「こういう「空気の流れ」ような流体の力学は、ニュートンのプリンキピアに始まり、オイラーとベルヌーイにより非圧縮・非粘性の理想流体の運動方程式とエネルギー保存則が導かれた。それがオイラーの運動方程式とベルヌーイの式だ。オイラーの運動方程式はちなみにこんな感じだ。」
 

オイラーの運動方程式

加速度 = 外力 + 圧力勾配力
 
v : 速度
s : vに沿ってとった座標
t : 時間
p : 圧力
K : 外力

A : 「基本的には「加速度 = 外力 + 圧力勾配力」という形だな。この非圧縮・非粘性の理想流体の場合はラプラシアンがゼロのポテンシャル流れと呼ばれる単純な流れになる。試しに、そんな場合をNast2Dを元にしたプログラムで計算してみた結果はこんな感じになる。ホントはこの計算自体は完全な理想流体ではないのだが、まぁ大体はこんな感じだ。」

B : 「おっ、あっという間に計算したな。」
A : 「まぁ、ポテンシャル流れならエクセルでもちょちょいと計算できるくらいだからな。ちなみに、これは窓から手を出してしばらくしてからの空気の流れだ。」
 
粘性が(ほとんど)ない時の指の周りの空気の流れ

A : 「で、どうだ?」

B : 「いや、どうだ、と言われても困るが、なんかキレイだな。だけどちょっと小さくて見にくいなぁ。」
A : 「そう言われれば確かにそうだ。じゃぁ拡大してみるか。」
 
粘性が(ほとんど)ない時の指の周りの空気の流れ (拡大図)
空気は右から左へ流れている。いや、指が右から左へ移動していると言った方が良いか?
B : 「で、この結果から何がわかるんだ?」
A : 「この図で空気は左から右へ流れているわけだが、左端の空気の速度と右端の空気の速度は、実は同じなんだ。」
B : 「そう言われても、よくわからないが?」
A : 「指を通り過ぎてく空気は、指をとおる前後で運動量がそのまま変わってないってことさ。つまり、空気は指を通り過ぎる時になんら抵抗を受けてないってことだ。」
B : 「えっ?おかしいじゃないか、それなら逆に言えば指も空気から何の抵抗を受けないってことか?
A : 「そういうことだ。これがダランベールのパラドックスだ。」
B : 「じゃぁ、何か?この指先に感じるまぎれもないおっぱいの感触はだとでもいうのか!? そんなのオレは認めないぞ!」
A : 「まぎれもない、っていうほどのものでもないし、ニセモノおっぱい自体は何か一種の幻のような気もするが、もちろん感触自体は幻であるハズはない。そもそも、空気をサラサラな理想流体として取り扱ったところが間違っているわけだ。そこで、登場するのがナヴィエとストークスだ。彼らはオイラーの運動方程式に粘性を導入した。全てはおっぱいの感触を説明するため、だ。」
B : 「それウソだろ。ナヴィエとストークスが聞いたら怒るぞ。」
非圧縮流体に対するナヴィエ・ストークスの方程式

加速度 = 外力 + 圧力勾配力 + 粘性力
 
v : 速度
t : 時間
p : 圧力
K : 外力
μ: 粘性係数

A : 「見ればすぐわかるだろうが、この非圧縮流体に対するナヴィエ・ストークスの方程式は、最後に粘性項が入っている以外はオイラーの運動方程式と全く同じだ。」

B : 「なるほど。こうしてみると意外に簡単な式だな。」
A : 「あぁ、オイラーの運動方程式に粘性項が入っただけだからな。そのせいで計算はちょっと複雑になるが、最近のパソコンならノープロブレムだ。というわけで、粘性を考慮して計算してみた結果が次の図だ。」
 
 
粘性を考慮した指の周りの空気の流れ
B : 「おっ、ちょっと様子が違うな。何か、ジェットエンジンみたいに尾を引いてるぞ。」
A : 「そうだろ。指の後ろのl様子がずいぶんと違うだろう。で、これを拡大してみたのが次の図だ。」
 
 
粘性を考慮した指の周りの空気の流れ (拡大図)
B : 「左端の空気の速度はもちろんさっきと同じだが、指の後ろでは空気が渦巻いているし、右端の空気の速度は全然違うな。」
A : 「もっとリアルに、窓の外に手を出したときの、指の周りの空気の動きを時間を追って計算してみた計算結果のアニメーションが次の図だ。指の周りに空気が渦巻いていく様子がよくわかるハズだ。」
 
車の窓から手を出して、指の周りの空気流を計算しよう
 窓の外に手を出したときの、指の周りの空気の動きを時間を追って計算してみたもの。指の周りに空気が渦巻いていく様子がよくわかる。

 メッシュを細かく切ったおかげで、計算結果は1GB弱。なんてこったい。

B : 「指が空気の中を走り抜いていく様子がよくわかるな。確かにこれなら、空気の抵抗を受けまくりだな。」
A : 「そうだ。空気は指から力を受けるし、逆に、指は空気からしっかりと力を受けるわけだ。」
B : 「なるほど、この計算結果は指先に感じるまぎれもないおっぱいの感触を説明しているわけだな。いい感じじゃないか。流体力学そして粘性項さまさまじゃないか!」
A : 「あぁ、それも全てナヴィエとストークスのおかげだ。」
B : 「おやっ?ちょっと待てよ!これでは、ただ現実を説明してみただけで、何の解決にもなってないぞ!時速60kmと時速100kmの風の感触の差を説明しているわけでもないし、青少年のためのもっと安全な擬似おっぱいを提供しているわけでもない!」
A : 「いや、それがそういうわけでもない。実はこの先があるんだ。このナヴィエ・ストークスの方程式の解はレイノルズ数という無次元数によって決定されるんだ。今回の場合で言うと、レイノルズ数は「指の直径x 車の速度 / 流体の運動粘性率」という形になる。そして、このレイノルズ数が大きくなるほど渦が延びていくんだ。」
B : 「なるほど、わかってきたぞ。つまりあれだな。時速60kmから時速100kmに速度を上げれば、それに応じてレイノルズ数が大きくなって、空気の渦もおおきくなるし、おっぱいの感触も確実なものになるわけだな。勉強になるな。」
A : 「う〜ん、実際には密度の違いの方が大きいんだが、ナヴィエ・ストークスの方程式の理解としてはそれでいいかもな。あと、単にレイノルズ数を大きくしたかったら指を太くする、っていうのでもいいわけだ。」
B : 「そう言われても指の太さはなかなか変えられないしなぁ。」
A : 「指サックとか色々手はあると思うが、もっといい方法がある。さっきの式を眺めてみれば流体の運動粘性率が小さくなれば、レイノルズ数は大きくなる。例えば、水の運動粘性率は空気のそれの十五分の一だ。」
B : 「ってことは、水の中だったら、レイノルズ数も大きいし、密度も大きいし、指先に抵抗を受けまくりってことだな。すると、水中で手を動かしてみれば、それは空気中の高速クルージングと同じってことになるな!」
A : 「そうさ、風呂の中で手をひとかきすれば良いだけの話さ。何もわざわざ時速100kmの車の窓から手を出す必要はないんだ。実際、風呂の中で確かめてみたけど、なかなかイイ感じだ!」
B : 「時速100kmで走る車の窓から手を出すのに較べれば、風呂の中で手をひとかきすれば良いだけなんて、まさに青少年のためのもっと安全な擬似おっぱいだな!」
A : 「あぁ、それも全てナヴィエとストークスのおかげだ。」
B : 「それはもういいっ言ってるだろ。」
A : 「ところで、ふと考えてみたことがあるんだ。さっき、指を太くすれば遅い速度でもレイノルズ数が大きくなるって言っただろ。東大寺の大仏なんかかなり指が太いじゃないか。」
B : 「確かに、そうだな。」
東大寺の大仏 (想像図)

A : 「今調べてみると、大仏の掌の長さは256cmだ。つまり普通の人間の10倍くらいある。だったら、指の太さも10倍はあるだろう。ってことは、ほんのそよ風が吹いただけでも、大仏の手にはしっかりとしたおっぱいの感触が感じられているんじゃないのかな?」

B : 「単に手が大きいから空気の抵抗も大きいだけどいう気がしないでもないが、指の長さもでかいしさぞかし超巨乳の感触かもしれんな!そう考えると、あの大仏の手も何か実にイヤラシイ手つきに見えてくるから不思議だな!」
A : 「う〜ん、悟りを開いているから、指先のヘンな感触なんかには惑わされないんだとは思うけどな。しかし、案外と仏もそんな煩悩と日夜闘っていたりするのかもしれないなぁ。しかも、その煩悩がホントーにあるのかもよくわからない幻のような擬似おっぱいってところが面白くないか?大仏の指先は二十一世紀の煩悩そのものを暗示しているのかもしれん。仏の手にも煩悩ってところだな!」
B : 「言いたい放題だな、全く。」


 さて、今回は「オッパイ星人の力学第四回 - バスト曲線方程式 編- (2001.01.13)」と繋がるところまで話が辿り着かなかった。おっぱいの表面張力、マボロシのような指先の流体力学、そして大仏の煩悩をめぐる大河ドラマは人生そのもののようにまだまだ続くのである。
 

2001-05-20[n年前へ]

オッパイ星人の力学 あなたのオッパイ星人度 編 

擬似オッパイに関するhiraxの関係式

 オッパイ星人シリーズも第六回である。いつの間にか、「片手」で数えられる回数を超えてしまった。前回の話では、大仏が差し出す「片手」も実は擬似オッパイの感触を楽しんでるのかもしれない、という結論だった。今回はそんな「時速60キロの風圧はおっぱいの感触か?」という問題の続きを少し違うアプローチで考えてみたい。そして、そもそもの出発点「時速60キロの風圧はおっぱいの感触か?」を考え直すとともに、前回の目的「そんな危ない擬似オッパイではなくて、青少年のためにもっと安全な疑似おっぱいを探す」ということについても考え直してみたいと思う。

 まずは、簡単な「あらすじ」を先に書いておこう。

 なんでも、テレビ番組の「めちゃめちゃイケてる!」の中で「時速60キロの風圧はオッパイの感触である」と言っていたらしい。そしてまた、人間そして愛について日夜取り組んでいる「性と愛研究所」の「おっぱいの感触と風圧に関する考察」中で、「時速60kmでは全然オッパイの感触ではなくて、ちょうど時速100kmを境に急にオッパイの感触を感じます。」というメールが紹介され、擬似オッパイの感触を受けるのは時速100km以上だと結論づけられている。前回、私自身も東名高速で出勤途中に確認してみた感じでは「時速100km/h」以上が妥当に思われた… と、その時は思われたのだが、先日またもや東名高速で出勤途中にふと実験し直してみると何か違うのである。「時速100km/h」では風圧が強すぎるのだ。「時速60km/h」でも「何やら十分イケてる感じ」に思えたのである。「オヤ?これは一体どういうことだ?」と私は疑問に思うと同時に、そういえば「時速60キロの風圧はオッパイの感触か?」という問題を長いこと放り出していたなぁ、久しぶりにアレをやってみるかぁ(遠い目)と思い筆を取る次第である。

 この前、

では車の窓から突き出した掌の指の形状を考えながら、その指の周りの空気流の計算してみた。もちろん、こういった形状的なアプローチも必要なのであるが、原理的なものを考えようとした場合にはそれはちょっと応用編すぎる。今回は単純な近似則を使って、「風圧はどの程度の大きさなのか?」「そして、その風圧の大きさはどの程度のオッパイの大きさなのか?」という風に考えていくことにしよう。
 

 まずは、下に示すのが単純な手と複雑な手だ。左が私の掌で、右が私の目標ドラえもんの掌である。私の掌は結構複雑な形状をしている。それに対して、ドラえもんの掌の方は極めて単純、球そのものである。もう、ツルツルの球そのまんまなのである。
 

複雑な手(左)と単純な手(右)
複雑な手
単純な手

複雑な私の掌の方は、さすがに複雑というだけあって掌の周りの空気流なんかを計算しようとすると、結構それは複雑だ。何しろ、前回は簡単な空気流の計算を行っただけでも出力ファイルは1ファイル当たり1Gバイト程になった位である。
しかし、右のようなドラえもんの単純な掌の場合はどうだろう?ツルツルの球そのまんまの掌は空気流により、どんな力を受けるだろうか?こちらの場合も計算は複雑なのだろうか?

 実は、このツルツルの球そのまんまの掌の場合はそれほど計算は難しくないのである。一般的に、速度vで動く半径rの球が受ける「空気の粘性により生じる抵抗力」はストークスの法則により、

  • 粘性抵抗
と表されることが知られている。ここで、ηは空気の粘性率である。標準状態の空気ではη=1.82x10^-5(kg/ms)である。式を眺めれば判るように、この粘性抵抗は球が動く速度vに比例した大きさになる。

 どうして粘性によって抵抗力が生じるかはまた別の回で考えることとして、とりあえず掌が受ける抵抗にはもうひとつ大きなものがある。それが、一般的に「慣性抵抗」と言われるものである。こちらの方は、掌が静止している空気の「いわゆる」速度を変化させることによる抗力であり、半径rの球に対しては近似的に、

  • 慣性抵抗
と表すことができる。Cdは物体の形状から定まる抵抗係数であり、ドラえもんの掌のようなツルツルの球の場合は0.5である。また、ρは空気の密度であり、1.29(kg/m^3)である。この慣性抵抗の大きさの方は球が動く速度vの二乗に比例する。

 ツルツルの球形状の掌の半径rは、私の掌を握りしめた時の大きさを参考にして0.1(m)としてみた。もちろん、このサイズではちょっとでかすぎるわけだが、実際の掌の形状はもっと複雑で空気抵抗が大きいことを考慮して、実際の掌の受ける力に近づけるために大きめに設定してみた。

  さて、掌を窓から出す車の速度を時速60km/hとか100km/hとかいった辺りで

という条件下で計算を行うと、粘性抵抗よりも慣性抵抗の方がはるかに大きく、掌の受ける力はほとんど慣性抵抗である。試しに、これらの数値を使って窓から出した(単純な)掌が受ける力を計算してみたのが次のグラフである。このグラフを見れば、窓から出した掌が受ける力が車の速度の二乗に比例していることが判ると思う。なお、ここで掌が受ける力の単位は(g重)に換算したものである。オッパイ星人の力学を考えるときの単位はkgでなくて、gの方が使いやすいのである。
 
窓から出した掌が受ける力 ( g重換算 )

 まずは、このグラフを見ると時速60kmでは掌に300g重位の力を受けていることが判るし、それが時速100km程度になれば大幅にその力は増えて800g重程度になる。掌にズシっと力を受けるわけである。

 さて、掌が受ける力が判ってしまえば、こっちのものだ。何しろ、こっちには懐かしのオッパイ星人の力学シリーズ第一回

で計算した「胸のカップ数とオッパイ一個あたりの重さ(g)」(もちろん、この「オッパイ一個あたりの重さ」の値はどうにもおかしいところがたくさんあるのだが、そこはそれ女性の神秘(トリック?)なのである)がある。これを使って、窓から出した掌が受ける力を比較してみることにしよう。
 
胸のカップ数とオッパイ一個あたりの重さ(g)

 この「オッパイ一個を持ち上げるときの掌が受ける重さの感覚」を「窓から出した掌が受ける力」と比較してみる。すると、窓から出した掌が感じる擬似オッパイがどの程度の大きさであるかが判ることになる。極めてバーチャルな擬似オッパイのカップサイズが判るわけである。

 というわけで、下に示したグラフが

  • 窓から出した掌が受ける力 ( g重換算 )
  • 胸のカップ数とオッパイ一個あたりの重さ(g)
を重ね合わせた「擬似オッパイに関するhiraxの関係グラフ」である。
 
窓から出した掌が受ける力 ( g重換算 )
胸のカップ数とオッパイ一個あたりの重さ(g)
を重ね合わせたもの

 おやっ、なかなか良い対応が見られるではないか!時速60km/hというと、C〜Dカップ位のオッパイの感覚で、時速100km/hだとFカップ位である。時速30kmでもA〜Bカップ位のオッパイを持ち上げる位の力を窓から出した掌は受けていることになる。

 ということは、各人の「擬似オッパイを感じる速度」が判れば、「その人が願うオッパイのサイズ」が判るのではないだろうか?そして、もし「その人の願うオッパイのサイズ」が結構大きければ、それはすなわちオッパイ星人度が高いということになるし、「その人の願うオッパイのサイズ」が小さければオッパイ星人度が低いということが判るわけである。

 例えば、先の「時速60kmでは全然オッパイの感触ではなくて、ちょうど時速100kmを境に急にオッパイの感触を感じます。」というメールの書き主の思うオッパイのサイズは何とFカップである、ということが判るわけだ。実際のところ、何が標準かどうかは判らないが、Fカップというのはかなりな巨乳に思えることであるし、このメールの書き手はとてもオッパイ星人度が高い、ということになる。
 
 

擬似オッパイ速度からみるあなたのオッパイ星人度

 ぜひ、あなたもこのグラフを片手に、走る車の窓から手を突き出し、掌に受ける擬似オッパイの感覚を確かめて欲しい、と思う。そして、「擬似オッパイの適正速度」を頼りにあなたのオッパイ星人度をチェックして欲しいのである。そして、その結果を是非私(jun@hirax.net)まで知らせて頂けたら幸いである。

 さて、前回「安全な擬似オッパイ」を探すべく考察をしてみたわけだが、実は考え直すべきは「人の願うオッパイのサイズ」であったのかもしれない。Eカップ巨乳を願うから時速100km/hが必要だったのであって、Cカップで満足すれば、時速60km/hで十分だったのである。そして、Aカップを願うならば、スクーターでもオッケーの時速30km/hでこと足りるのである。そう、実は車の窓から掌を突き出す擬似オッパイはとても安全なものだったのである。その本来安全な「車の窓から掌を突き出す擬似オッパイ」を危険たらしめていたのは、「高すぎるオッパイ星人度」だったのである。

 というわけで、交通安全、そして世界平和へ通じる道は、実はオッパイ星人度を低くしていくことにあるのかもしれない、と思う今日この頃なのであった。
 



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