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1999-02-28[n年前へ]

分数階微分の謎 

線形代数、分数階微分、シュレディンガー方程式の三題話

分数階微分?

InterLabの1999No.5を読んでいると面白い記事があった。いわき明星大学理工学部の榊原教授の「Waveletと数式処理ツール」という記事である。といっても、興味を持ったのはWaveletのことではない。もちろん、Waveletに興味がないわけではない。この榊原教授が講師を務めたWavelet講習にも参加したこともある。しかし、今回興味を惹かれたのはその記事中にあった「分数階微分の解析」である。

InterLabの榊原教授の記事を引用すると、-通常微分・積分は整数回実行できるが、分数階微分はこれを分数に一般化したものである。さまざまな物理や工学の現象の記述に使われるようになった-とある。一階微分とか二階微分というものはよく使うが、0.5階微分などというものは使ったことがない。どのようなモノなのかさえよくわからない。

参考:

一体、どんな物理や工学の現象の記述に使われているのか知りたくなったので、infoseekで調べてみる。すると、

いわき明星大学の清水・榊原研究室の「粘弾性動モデル」が引っ掛かる。

参考:

衝撃吸収・シリコーンの弾性率などに興味を持っている人には面白いかもしれない。

もう少し調べてみると「バナッハ空間バナッハスケールにおける分数階積分作用素」というようなキーワードも引っ掛かる。

そこで、まずは勝手に分数階微分について考えてみた。

分数階微分・積分の勝手な想像図


まずは、イメージを考えるためにグラフを作成してみる。x^2の関数、および、それを微分・積分した関数である。微分は3階まで、積分は2階まで行っている。

図.1:x^2を微分(3階まで)したものと、2階まで積分したもの

このグラフ形式の表示をちょっとだけ変えてみる。

図.2:x^2を微分(3階まで)したものと、2階まで積分したもの

ここまでくると、平面グラフにしてみたくなる。つまり、微分・積分の階数を離散的な整数値でなく、連続的な値としてのイメージに変えたくなる。

図.3:x^2を微分(3階まで)したものと、2階まで積分したもの

これで、微分・積分が整数階でない場合のイメージ(勝手な)ができた。微分・積分が離散的なものではなくスムーズにつながっているものであるというイメージである。図.2から図.3への変化をよく覚えていてほしい。

といっても、これは数学的なイメージのみで物理的なイメージはまだここでは持っていない。位置、速度、加速度などの微分・積分で選られるものに対して同じようなイメージを適用すると、位置なんだけれどちょっと加速度っぽいもの、とか、速度と加速度の「合いの子」みたいなものというような感じだろうか?

さらに、これから先は、f(x)という関数が示す無限個の値を位置ベクトルと考えて、f(x)というのは無限次元空間の一つの点だというイメージを持つことにする。線形代数を考えるならそれが一番わかりやすいだろう。任意の階で微分された関数群が集まって、さらに高次元の空間をなしているというイメージである。

分数階微分を調べる

勝手なイメージはここまでにして、手元にある数学の参考書の中から手がかりを探してみた。すると、
大学院入試問題解説 - 理学・工学への数学の応用 - 梶原壌二 現代数学社ISBN4-7687-0190-6
の中に手がかりがあった。あれ、ということは以前にやったはずなのか...そう言えばおぼろげな記憶がちょっと...

その中の言葉を少し引くと、
フーリエ変換は等距離作用素である、関数空間L^2(R)における回転といえる。結局、

ここで、fは元の関数であり、Fはフーリエ変換
となる。そして、古典力学におけるハミルトン関数において、運動量を微分演算子で置き換えれば、量子力学や量子化学のハミルトン演算子が得られ、シュレディンガー方程式などにつながるのである、とある。他の資料を眺めてみると、どうやら量子力学などの分野からの要請に応じてここらへんの微分演算子の分野が発展しているようだ。理論物理などをやった方ならよくご存知のことだろう。例えば、水素原子の基底状態の波動関数へ運動エネルギーの演算子を作用させるというような、基本的な所でも、このフーリエ変換を用いた微分演算が用いられてる。

さて、この式自体は非常に簡単である。それにイメージも湧きやすい。
i を掛ける演算、私のイメージでは複素数空間の中で90度回転をする(言い換えれば、位相が90度ずれる)演算、が微分・積分であるというイメージはスムーズに受け入れやすい(それが正しいかどうかは知らないが)。なぜなら、微分が空間の中での回転であるとすると、三角関数の微分・積分に関する性質(例えば、Sinを微分するとCosに、Sinを2階微分すると-Sinになる、すなわち、一回の微分につき位相が90°ずつ回転する(位相がずれる)というような性質)が納得でき、それがフーリエ変換という形で登場してくることがスムーズに受け入れられるのである。また、微分といえばとりあえず三角関数の登場というイメージもある。

 もう少しわかりやすく書くと、

  • 三角関数では一階微分の結果は90度位相がずれる(回転する)。
  • ならば、(例えば)0.5階微分は45度位相をずらせば良い。
  • 任意の関数もフーリエ変換により、三角関数に分解される。
  • ならば、任意の関数に任意の実数値の微分が成立する。
ということである。

 任意の関数をフーリエ変換し三角関数に分解した時の位相、言い換えれば、周波数領域での位相ずらし、で分数階微分が定義されるということは、物理的実用的に大きな意味を持つ。例えば、電磁波、弾塑性運動などの物理現象の中での位相変化を分数階微分で解けることになる。例えば、複素貯蔵弾性率などについて分数階微分との関係は深そうである。あるいは、媒体中の電磁波の位相などについて適用するのも面白そうである。

分数階微分を使ってみる


よく分からないところも多いが、とりあえず、

という式を使ってみる。まずは、使ってみないとわからない。とりあえず、1次元の関数を作成して、この式を適用してみる。まずは、よく出てくるガウス分布で適用してみる。まずはガウス分布とそれの通常の一階微分の解析解を求める。
ガウス分布(左)とその一階微分の解析解(右)

それでは、今回の方法による一階微分の結果と、それと解析解との比較を示す。なお、本来無限領域のフーリエ変換を有限の領域で行っているため、端部近くで変なことが生じるのはしかたがないだろう。また、色々な事情により係数の違いは無視して欲しい。

フーリエ変換を用いた方法(左)と解析解(右)の比較

ちょっとずれが生じているが、こんなものだろう。しかし、これだけでは今回のフーリエ変換を用いた微分の面白さはでてこないので、0から2の範囲で連続的に分数階微分をしてみる。

ガウス分布の0から2の範囲における連続的な分数階微分

1/10 (=0.1)階微分

1/2 (=0.5)階微分

7/10 (=0.7)階微分

1階微分

13/10 (=1.3)階微分

15/10 (=1.5)階微分

17/10 (=1.7)階微分

2階微分

モーフィングのようで面白い。

さて、今回は分数階微分を勉強してみる所までで、これの応用は別に行ってみたい。もちろん、言うまでもないと思うが、間違いは多々あると思う。いや、田舎に住んでいるもので資料がないんですよ。

1999-03-14[n年前へ]

ぼやけた測定系でシャープな測定をしたい 

恋のインパルス応答 WhiteDay記念

 新幹線でトンネルを通過していた時のことである。窓の外を照明灯が走馬灯のように過ぎていくのを見ていた。人の一生が走馬灯のようだ、とか、光陰矢のごとし、とか哲学的なことを考えていた、言い換えればボケっとしていたのである。「あぁ、頭もボケているけど、窓の外のライトもボケているなぁ。動体視力が低下しているのかなぁ」と思った瞬間に次のようなことを考えた。

  1. 窓の外の照明灯がぼやけているのは、目のピントが合っていないからだということにする。
  2. ピントは合っていないが、目の時間的な応答性は問題ないとする(本当は問題がいっぱいあるだろう)。
  3. 仮に、鋭い一点の光が窓の外を通過したときに見えるパターンがわかっている、としてみる。
  4. だとしたら、あとは「宇宙人はどこにいる? - 画像復元を勉強してみたい その1-(1999.01.10) 」と同じようにして、窓の外の光パターンを復元できる。
ぼけた測定系でシャープなオリジナルを再現する

鋭い一点の光
->

このときに見えるパターンがわかっているなら、

元の光パターンを再現できる
<-

こういうパターンが見えたなら

 そして、これは一般的な測定装置でも使える話だ(むしろ、当たり前過ぎるか)。そういえば、光学望遠鏡なんかはその最たるものだ。しかし、一般生活?では色々な測定器を使うが、使用目的に応じたインパルス応答の測定はそれほどしたことがない。それは、原理上ぼやけてしまうような測定機器(地表に置いた光学望遠鏡のように)であるならなおさらである。たまに、インパルス応答の測定をしたにしても、単に測定をしただけで終わることが多い。もしかしたら、結構面白い結果がでるような測定機器もあるかもしれない。

 どういうことをしたいか、もう一度さらってみる。といっても、内容は「宇宙人はどこにいる?- 画像復元を勉強してみたい その1- (1999.01.10) 」 そのままである。そんなことはよく分かっている、という方は本文章の末尾の人の気持ちと出来事に関するhiraxの関係式の話の方へ飛んでもらえばいい。

まずは、「鋭い一点の光(あるいは、測定されるべきエネルギー源)」をつくる。

「鋭い一点の光」
(or あるエネルギー源)

データ.1

 このときに見えるパターンはこんなものだとしよう。見えるパターン(or 測定された結果)がブロードになっているのは、色々な理由があるだろう。

「このときに見えるパターン」
(or このとき測定されるパターン)

データ.2

 それでは、以下のようなパターンが見えたとしよう。

「こんなパターンが見えたなら」
(or それでは、こんなパターンが測定されたとしたら)

データ.3

それでは 「データ.3のフーリエ変換」 / 「データ.2のフーリエ変換」 を計算し、その結果を逆フーリエ変換する。それをデータ.4として示す。

「こういうパターンだったのだ」
(or 測定対象のエネルギー分布はこういうパターンである)

データ.4

 このようにして、ぼけた測定系でシャープな測定ができたことになる。「宇宙人はどこにいる? - 画像復元を勉強してみたい その1-(1999.01.10) 」と全く同じ話である。それを何故繰り返すかというと、身近な測定器でも色々やってみたいという宣誓と提案である。無理だとおもえる測定も、実は無理ではないものもあるのではないだろうか。

 ところで、今回の場合、境界条件は完全な周期性をもつように考えている。同じ状態が無限に繰り返されている。計算の簡単のためにそうしてある。この状態を例えてみると、光源(or エネルギー源)は円上に配置されているようなものである。そう、これは走馬灯そのものである。一応、その概念図を下に示しておく。喩えれば、円筒上のエネルギー源の分布を測定するようなものだ。

境界条件のため、光源を円上に配置した概念図

 今回の計算のモデルはこのような「ぼやけた走馬灯」である。今回は、単に計測機器で測定をするだけではなく、その後の解析をさらに進めることができるか、という話である。今回は前振りだけであるが、いずれ実験をする予定でいる。例えば、ライトペンなどを作成して、実験をする予定でいる。
 さて、話が飛躍するようであるが、人の一生が「ぼやけた走馬灯」のようであつならば、今回の解析と同じようなことをすることができる。

「一生の気持ちのフーリエ変換」 / 「一瞬の出来事により生じた気持ちのフーリエ変換」= 「一生の出来事のシャープな出来事」のフーリエ変換

という、人の気持ちと出来事に関するhiraxの関係式が成り立つかもしれない。この関係式を私は提案したいと思う。この関係式は、恋愛問題に適用すると面白いと思う。つまり、

( 「一生の気持ちのフーリエ変換」 / 「一人の人により生じた恋のフーリエ変換」)の逆フーリエ変換 = 「一生の中で好きになった人の出現データ」

となる。例えば、一人の人に対する気持ちが支配的な人の一生は「恋のインパルス応答」を示していることになる。具体的に言えば、尾花沢兼次の一生は「太郎ちゃん」に対する恋のインパルス応答を示しているのである。(あぁ、元ネタがわかる人がいるだろうか。)
 さて、今日はホワイトデイである。恋愛中の人も「恋のインパルス応答」などについて考え、相手(あるいは自分の)過去の恋愛遍歴などについて考えてみるのも良いと思う。    いや、余計なお世話か。

1999-12-12[n年前へ]

色覚モドキソフトを作る(色弱と色空間その4) 

五十歩百歩

  まず、先に書いておこう。今回は、

で作成したTrueColorと似たようなプログラムを作成してみたい。何しろ関係ない話が以降、長々と続くからである。

  昔から、科学者は「色」というキーワードに強く惹かれている、と思う。そんなことを私が思うまでもなく、量子色力学(quatumchromodynamics)、色つき空間群(Color-symmetry)等のキーワードにその事実は現れている。これらの言葉は普通に使われる「色」という言葉とは違う性質を表すものである。しかし、科学者が「色」というものを基本的なものであると感じているために、どんなものが対象でも、「性質」の代表的なものとして、「色」という言葉が連想されるのだろう。

  私は学生時代の量子力学の授業のおかげで、「色」という言葉を聞くと今でも眠くなってしまうのである。何しろ、私の通う理学部の教室の横は農学部の畑だったのだ。教授の声と共に「モゥーーー」という牛の鳴き声が聞こえてくるのだ。教授の声と牛の鳴き声が絶妙のハーモニーとなるのである。ただでさえ眠くなるのに、そのハーモニーはクロロホルムもビックリの睡眠作用を発揮するのだ。私はそのハーモニーのおかげで何回も記憶を飛ばされた。
また、その牛達のおかげで、授業の中で「匂い」と聞いたりすると、牛の糞の「匂い」しか連想できないのである。困ったものである。あの農学部の畑がなければ、もしかしたら私は量子力学を好きになっていたかもしれない。そして、量子力学を極めていたかもしれないのだ...簡単に言えば私は量子力学の授業では落ちこぼれてしまったわけだ。

  ところで、昔の科学者達を考えると、「色」に関わらなかった人を探すほうが逆に難しいように思う。ニュートン、マクスウェル、ヤング、ヘルムホルツなどが代表的である。当たり前である。物理・化学に関わらず、「光」には関わらざるを得ない。当たり前である。さまざまな計測を行ったり、エネルギーを考えたりする上で光は最も重要なモノである。
 そして、「色」というものは「光」の大きな性質の一つである。しかも、それは「科学者自身にとっても」目に見える性質である。目に見えるものを無視する科学者は少ないと思われるので、科学者が「色」に関わらないわけにはいかないのだ。

  割に最近の科学者でも、意外な分野の人が「色そのもの」の研究をしていることがある。例えば、シュレディンガーなども色空間の提唱をしていたらしい。確かに、量子力学から色空間へはつながりを感じないこともないのではあるが、少し意外でもある。そのシュレディンガーが提唱した色空間がどのようなものであるのか、私は残念ながら知らないのだが、波動を深く研究していたシュレディンガーが提唱する色空間というのは非常に興味のあるところである。また、化学。物理学者であるダルトンは自らも色弱であるため、特にその辺りのことを研究し、報告している。

  さて、そのダルトンをinfoseekで検索してみると、

というページを見かけた。ここに、色覚バランスチェック用の図があった。昔、身体検査でやったことがあるような図である。こういった、図が人によってどのように見えるかは非常に興味があるし、気にかかるところでもある。
 もちろん、WEBページは会社の心(色弱と色空間 その2) - WEBページのカラーを考える 3 - (1999.08.10)で作成したTrueColorも同じような目的のために作成したものであるが、あれはあまりにも大雑把なモノだったので、作り直してみたいのである。なお、今回は画像のRGBとL、M、S錐体の反応の間の変換は
画像のRGBとL、M、S錐体の反応の間の変換マトリクス
左=RGB2LMS、右=LMS2RGB
という変換マトリクスを用いている。

  そこで、こういったWEB上の画像を読み込んで、

でやったL,M,Sの各錐体の感度が低いときの色覚シミュレーションを行うソフトを作成してみた。ソフトはこれである。前回と同じく、Susieプラグインを用いて画像を読み込んでいるので、「Susieの部屋」などから、Susie本体・あるいはプラグインを入手する必要がある。
 また、手間を惜しんだためProxy対応にはしていない。さて、動作画面サンプルを以下に示す。初期状態ではから画像を読み込むようになっている。もちろん、他のURLからも画像を読み込むことが可能である。画面左の三本のスライダーで各錐体の感度を調整できる。
truecolor2.exeを実行した画面

  この画面例では各錐体の感度は全て100%になっている。

  それでは、以下に適当に錐体の感度パラメータを変化させた場合のサンプルを示してみる。

truecolor2.exeで錐体の感度パラメータを変化させた場合のサンプル

  こうしてみると、これまで見てきたものとは違う数字が浮かび上がることがわかる。89,52などである。こういう仕組みを用いたのが、石原式などの色覚検査のやり方である。つまりは、異なる色を識別できないこと、すなわち、混同色を用いているのである。混同色を用いて文字を描くことにより、色弱であるかどうかを判断しようとするものだ。

  さて、こういった書き方をすると、色を混同してしまうのが色弱の人だけと勘違いされてしまいそうであるが、そんなことはない。全ての人が「色を混同してしまう」のである。どんな人でも、異なる波長の光であっても、例えばRGBなどの(多くても)三色を混合すれば同じ色に見えてしまう。つまりは、混同色だらけなのである。健常者と呼ばれるヒトも色弱と呼ばれるヒトもたかだか数種類の錐体を持つにすぎない。
 色々な光の波長分布を認識できる生物がいたとすると、彼らがからすればヒトは全て色弱ということになるのだろう。つまりは、五十歩百歩といったところなのかな、と思うのである。

1999-12-19[n年前へ]

母に捧げるバラード 

宿題は自分でやってくれぇ

 今回の話は、とあるメーリングリストから始まる。仮にそのメーリングリストを"family-ml"と名付けておく。そのfamily-mlで論争が起きたのである。
 メーリングリストで論争が起きることはよくある。しかし、このfamily-mlは通常のメーリングリストではなかった。実は、とある家族を構成員とするものであった。そう、この家族は専用のメーリングリストを持っているのである。そこで、この論争は起きた。

 各登場人物の紹介は随時していこうと思う。

Tue, 14 Dec 1999 21:54:26 +0900 (JST)
To family-**@hirax.net From 母
Subject: レポート課題がわからない

みなさんお元気ですね。
   <中略>
ところで久しぶりに学校に行ったら、レポートの課題が出てました。そのうえ授業が進んでました。外国語聞いているみたいです。レポート課題 SOSです。だれか教えて下さい。

 大気の持つ質量あたりのエネルギーを、次の二つの例について求めなさい。

 「下」 赤道付近の地表面付近の大気
    高さ 0m
気温 300K
比湿 0.02(=20g/Kg)
風速(絶対値) 5m/s

「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気
    高さ 1500m(=15Km)
気温(300-6×15)K{気温減率6K/Kmと仮定}
比湿 0
風速(絶対値)20m/s

結果を次のような表にまとめなさい。
                       下 上
  A  内部エネルギーの温度に比例する部分
  B  内部エネルギーの水蒸気に比例する部分
  C  位置エネルギー
  D  運動エネルギー

さて、インドの話はいらしたときにします。大変な国ですが、行って良かったです。

 この「母」はいまはやりのヤンママではない。戦中に生まれたお年の方である。去年辺りから仕事のない日に大学へ社会人学生として通うようになったのである。

Date: Thu, 16 Dec 1999 05:43:06 +0900
To family-**@hirax.net From 兄
Subject:Re: レポート課題がわからない

> レポート課題 SOSです。だれか教えて下さい。

 この「母」のレポートって「弟」の得意な専門の問題じゃないの?

>    高さ 1500m(=15Km)

 あと、15000mの間違い?

 「兄」はとあるWEBのwebmasterである。「母」の年からすれば、そうそう若くもないことがわかる。

Date: Thu, 16 Dec 1999 09:12:06 +0900
To family-**@hirax.net From 父
Subject:Re: レポート課題がわからない

>結果を次のような表にまとめなさい。
 
 「お母さん」には無理だ。

 「父」はhiraxという名前を数十年名乗ってきた、元祖hiraxである。

Date: Thu, 16 Dec 1999 20:21:11 +0900
To family-**@hirax.net From 母
Subject:Re: レポート課題がわからない

 今年は地球科学概論をとった。確か昨年「兄」が次は地球科学がいいと、
いったはず、責任があるはずです。自分の責任のあることを「弟」に振ろうとしていませんか。だれでもいいです。「弟」、助けてくれますか?

 確か、この「母」は去年は「応用化学」をとっていた。なぜ、そういう無理なことをしたがるのだ。
気持ちはわからないでもないが、もう少し考えて欲しいものである。

Date: Thu, 17 Dec 1999 04:12:34 +0900
To family-**@hirax.net From 兄
Subject:Re: レポート課題がわからない

> 今年は地球科学概論をとった。確か昨年「兄」が次は地球科学がいいと、
>いったはず、責任があるはずです。

 いや、私が言ったのは「どうせ習うなら自然科学史みたいなのの方がいいよ。」です。「地球科学概論」だなんて言っておりません。
 それに、去年取った「応用化学」に較べれば楽なものじゃないですか。「応用化学をやったならこんなの簡単なんじゃないの?」

>自分の責任のあることを「弟」に振ろうとしていませんか。

 いや、私に責任はないと思うのですが...

>だれでもいいです。「弟」、助けてくれますか?

 そうそう > 「弟」


Date: Thu, 17 Dec 1999 13:21:00 +0900
To family-**@hirax.net From 弟
Subject:Re: レポート課題がわからない

>そうそう > 「弟」

 地球科学概論なんだから、宇宙・地球物理専攻の人がやるべき
なのでは > 「父」 & 「兄」

 最近、修論のまとめで忙しいです。


Date: Thu, 17 Dec 1999 23:49:03 +0900
To family-**@hirax.net From 兄
Subject:Re: レポート課題がわからない

> 地球科学概論なんだから、宇宙・地球物理専攻の人がやるべき
> なのでは > 「父」 & 「兄」

 しかし、これってほとんど化学工学ではないでしょうか。だから、
化学専攻の人の方が良いのではないでしょうか? > 「母」 & 「弟」


Date: Thu, 18 Dec 1999 07:33:06 +0900
To family-**@hirax.net From 母
Subject:Re: レポート課題がわからない

>>> そうそう助けてやれよ > 「弟」
>> 地球科学概論なんだから、宇宙・地球物理専攻の人がやるべき
>> なのでは > 「父」 & 「兄」
> 化学専攻の人の方が良いのではないでしょうか? >  「母」 & 「弟」

 そろいもそろって、冷たい兄弟ですね。

 うちの「母」はこうなると怖い。

Date: Thu, 18 Dec 1999 09:23:06 +0900
To family-**@hirax.net From 「妹姉」
Subject:Re: レポート課題がわからない

>>>> そうそう助けてやれよ > 「弟」
>>> 地球科学概論なんだから、宇宙・地球物理専攻の人がやるべき
>>> なのでは > 「父」 & 「兄」
>> 化学専攻の人の方が良いのではないでしょうか? >  「母」 & 「弟」

>そろいもそろって、冷たい兄弟ですね。

 そういうと、私まで一緒みたいに聞こえます。やめて下さい。兄妹とか姉弟
とか書かれるよりはいいですけど。それに、「父」は?

「妹姉」


Date: Thu, 18 Dec 1999 10:43:06 +0900
To family-**@hirax.net From 父
Subject:Re: レポート課題がわからない

 「母」がせっかく苦労してレポートをと考えているので、hiraxファミリーの
英知を結集して」、コメントしてやってください。
 今朝、「父」は物理的な意味だけは、10分間講義してあげました。

 多分、「兄」や「弟」だったら、チョチョイだから。

> どうせ習うなら自然科学史みたいなものの方がいいよ。
に賛成。地球科学には物理の素養が必要なので、一挙に地球科学に
行くより、物理か、自然科学史がいい。どっちかといったら、自然科学史が無難。


Date: Thu, 18 Dec 1999 07:43:06 +0900
To family-**@hirax.net From 兄
Subject:Re: レポート課題がわからない

>多分、「兄」や「弟」だったら、チョチョイだから。
 「弟」ならともかく、私にはチョチョイではありません。

>今朝、「父」は物理的な意味だけは、10分間講義してあげました。
 そのとき答えも講義してくれたら...

 そんなに若くはない年で働きながらも、大学へ行こうとする「母」の
エネルギーには頭が下がる思いです。しかし、科目の選択はじっくり
考えて欲しいです。

 さて、配達された最後の手紙が以下である。

Date: Thu, 18 Dec 1999 08:43:06 +0900
To family-**@hirax.net From 兄
Subject:Re: レポート課題がわからない

 昨日の電話など、何やらプレッシャーが感じられてきたので、適当に問題にとりかかって
みました。答えが合っているどうかはわかりません。また、手元に資料が
あまりないので、とんでもない間違いをしている可能性もあります。

 まずは、簡単そうな位置エネルギーと運動エネルギーから。「地球科学概論」
ということなので、式の導出までを求められてはいないと思います。そこで、
公式を使って解くことにします。

「問題」
 大気の持つ質量あたりのエネルギーを、次の二つの例について求めなさい。
 「下」 赤道付近の地表面付近の大気
高さ 0m、気温 300K、比湿 0.02(=20g/Kg)、風速(絶対値) 5m/s

「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気
高さ 15000m(=15Km)、気温(300-6×15)K、比湿 0、風速(絶対値)20m/s

「上」「下」それぞれについて
  A  内部エネルギーの温度に比例する部分
  B  内部エネルギーの水蒸気に比例する部分
  C  位置エネルギー
  D  運動エネルギー
を求めよ。

「回答」
 高さ=h、質量=m、重力加速度=gとし、今回の問題で質量=m=1kgであることを考えて、位置エネルギーCは

と書ける。これに
「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気 h=15000(m)
「下」 赤道付近の地表面付近の大気 h=0(m)
を代入し、
「上」 1.47*10^(5) J
「下」 0 J
を得る。

 運動エネルギーDは速度v(m/s)に対して、

となるから、
「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気 v=20(m/s)
「下」 赤道付近の地表面付近の大気 v=5(m/s)
を代入し、
「上」 200 J
「下」 12.5 J
を得る。

 さて、次に「A.内部エネルギーの温度に比例する部分、B.内部エネルギーの水蒸気に比例する部分」
です。空気は主として窒素N2と酸素)O2からなり、いずれも2原子分子である。また水分子H2Oは3原子分子であるが、酸素原子Oを中心とした結合角度の振動などが小さく、無視できるとして、2原子分子と同等の自由度であるものと近似する。また、
比湿 0.02(=20g/Kg)ということから、水分子の数は窒素、酸素に対して無視できる程少ないため、無視して良い。
 すると、1mol辺り気体のエネルギーを1(kg)辺りに直すために、上式に1000/28.94(g/mol)をかけた

が求める答えである。

「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気 (300-6×15)K
「下」 赤道付近の地表面付近の大気 (300)K
を代入し、
「上」 150752. J
「下」 215359. J
を得る。

 最後に「B.内部エネルギーの水蒸気に比例する部分」であるが、水が液体から気体に変化するときのエネルギー収支を考る。蒸発熱が2498J/gであることを考え、計算を行う。

「上」 赤道付近り対流圏界面付近の大気 水蒸気0g
「下」 赤道付近の地表面付近の大気 水蒸気20g
を代入し、
「上」 0 J
「下」 2498 * 20 = 49960. J
を得る。当然のことですが、この水蒸気のエネルギーは
太陽のエネルギーが形を変えたものです。

 なお、検算も読み直しもしておりません。

 ごくまれにではあるが、「課題を解いてください」という大学生からのメールが届くことがある。そういうメールを見るたびに「うーむ...」という気分になっていたのである。しかし、まさか自分の親の宿題をやるはめになるとは。しかもこの年になって...

1999-12-21[n年前へ]

恋の力学 

恋の無限摂動



クリスマスが近くなると、街のイルミネーションが綺麗に輝き始める。いかにも、ラブストーリーが似合う季節である。そこで、今回は、"Powerof love"、すなわち、「恋の力」について考えてみたいと思う。「恋の力」により、人がどのような力を受け、人がどう束縛されるのか、などについて考えみたいのである。また、恋に落ちたカップルがどのような行動をするのかについて解析を行ってみたい。

「できるかな?」では以前、

において、カップルが他のカップルを意識する力について考えたことがある。カップル同士の間に働く斥力を考えることにより、鴨川カップルの行動を考えてみた。それと同様に、今回はひとつのカップルのみを考え、その中に働く力を考えてみるのである。ひとつのカップルの「男」と「女」の間にどのような力が働くかを考えるのである。

そういうわけで、今回の登場人物は「男」と「女」である。その二人は「恋に落ちた二人」である。二人の間には「恋の力」が働いているのだ。その二人の間に働く「恋の力」について考察することにより、恋に落ちたカップルの行動について考察を行ってみることにする。

といっても、「恋の力」を精密に測定した報告例は未だ存在しないので、ここでは適当な値を用いていくことにする。「恋は距離に負けない」とか「遠くて近きは男女の仲」などとははよく言われる。そこで、距離によらないと近似した。また、「遠くて近きは男女の仲」の意味を考えれば、恋の力は無限遠まで働く力である、と考えるのが自然である。
そこで、今回の「恋の力」は距離に関わらず一定であると仮定した。距離=rとした時に-r/Abs[r]の大きさで「相手に惹かれる」ものとした。仮に第一種「恋の力」(仮称)とでもしておく。

今回は「恋の力」は距離によらないものとした。しかし実際は、(通所の距離においては)「男」と「女」は距離が近いほど惹かれ合うし、離れてしまうと惹かれ合う力は弱くなるというのが自然であると思われる。そこで今回の第一種「恋の力」(仮称)は、あくまで大雑把な近似ということにしておく。

恋する二人の間に働く力をもう少し正確に記述しておくと、

  • 「恋の力」 = - 「相手の魅力」 * 「二人の間の距離ベクトル」 / 「二人の間の距離スカラー」
であり、恋する二人には「(hiraxの)恋の運動方程式」
  • 「恋の力」=優柔不断度 *  「恋の加速度」
が成立する。ニュートンの運動方程式に少し似ているが、かなり異なるものである。ニュートンの運動方程式との違いは、「質量」にかわるものが「(hiraxの)恋の運動方程式」においては、「優柔不断度」
であることだ。心がトキメいてもなかなか行動を起こすことが出来ない人がいるだろう。そういう人は「優柔不断度」が高いというわけである。恋の行動における慣性を示すパラメータである。

また、今回は空間を1次元であると簡略化してみた。1次元の空間の中で「男」と「女」が動き回るのである。その時間的変化を調べてみるのだ。従って、シミュレーション結果は空間軸が一次元+時間軸一次元で、合わせて2次元となる。

さて、この「恋の運動方程式」を解くことにより、恋する二人の行動は予測することが可能となるわけだ。試しに、その計算サンプルを示してみる。なお、今回は時間方向で数値的に逐次解を求めている。

初期状態は

  • 「男」位置=5, 速度=0,魅力=100,優柔不断度=10
  • 「女」位置=0, 速度=0,魅力=100,優柔不断度=10
とした。すなわち、「男」も「女」も二人とも停止した状態で恋に落ちたのである。「二人は立ち止まって恋に落ちた」というやつである。一番良くあるパターンであろう。もちろん、「すれ違いざまの恋」といったような初期速度を持つ恋愛パターンも存在するが、今回はパスしておく。
位置や時間の単位は任意単位である。「0」と「5」は東京と大阪であっても良いし、ロンドンとニューヨークであっても良い。あるいは、実空間でなく精神的な空間と考えてもらっても構わない。すなわち、心の動きを示しているものとするのである。
また、二人の「魅力」や「優柔不断度」は対等である場合だ。その結果を下に示す。このグラフは縦軸が空間位置であり、横軸が時間である。黒線が「男」であり、赤線が「女」である。
 
恋する二人の軌跡(「男=黒」と「女=赤」が対等な場合)

「男」と「女」が同じように相手の方向へ向かっているのがわかると思う。これが「恋の無限摂動」である。こういった「恋の無限摂動」の代表的なものには「君の名は」の主人公達の動きなどがある。恋に落ちた二人が、延々とすれ違いを続ける物語である。これは、この「男」と「女」の行動そのものである。

この計算結果では「男」と「女」が糸を紡いでいるようにうまく絡みあっているのがわかる。「恋の無限摂動」の幸せなパターン例である。これは、「男」と「女」が対等であったことがその一因である。

その証拠に、「男」と「女」が対等でない場合の計算結果を示してみる。次に示すのは、

  • 「男」位置=5, 速度=0,魅力=10,優柔不断度=10
  • 「女」位置=0, 速度=0,魅力=100,優柔不断度=10
の場合である。すなわち、「男」の魅力が「女」の十分の一である場合だ。
 
恋する二人の軌跡(「男=黒」の魅力が「女=赤」の1/10の場合)

「男」が右往左往するのに対して、「女」はほとんど動いていないのがわかると思う。おそらく、この場合には「男」と「女」の「心」もこれと同様のパターンを示しているものと思われる。すなわち、「男」の「心」は揺れ動いているのに対し、「女」の「心」はほとんど動いていないのである。

先の例と異なり、これは実に不幸な計算例である。不幸ではあるが実際によくある例であると思う。以降、これを「男はつらいよ」パターンと呼ぶことにする。「女」に「男」が振り回されているパターンだ。もし、奇跡的に結婚などしても、将来どうなるかは火を見るより明らかである。

それでは、「男」と「女」の「魅力」が同等で、かつ、とてもスゴイ場合を示してみる。すなわち、ドラマの主人公達のようにとてつもなく魅力的な二人が恋に落ちた場合である。一般人とは違う二人が恋に落ちたら、果たしてどのような行動を示すのであろうか?この場合のパラメータは以下に示す、

  • 「男」位置=5, 速度=0,魅力=1000,優柔不断度=10
  • 「女」位置=0, 速度=0,魅力=1000,優柔不断度=10
である。
 
恋する二人の軌跡(「男=黒」、「女=赤」の魅力が両方1000の場合)
この場合、見てわかるように「男」と「女」は激しい動きをしながら、絡み合う。芸能人で言うならば、小柳ルミ子夫妻の場合などが挙げられる。まるで、激しいダンスのように「男」と「女」は絡み合うのである。
「魅力ある二人が恋に落ちた場合には、あまり近づかない方が良い」という教訓をここから得ることができる。

最後に、「男」と「女」の二人ともにあまり魅力がない場合である。パラメータとしては、

  • 「男」位置=5, 速度=0,魅力=2,優柔不断度=10
  • 「女」位置=0, 速度=0,魅力=2,優柔不断度=10
の場合である。
 
恋する二人の軌跡(「男=黒」、「女=赤」の魅力が両方2の場合)

これなど「恋」と言えるのかどうかもわからない位である。ほとんど、「ただすれ違っただけの相手」である。これがさらに進むと、魅力がお互いに0同士のパターン、

  • 「男」位置=5, 速度=0,魅力=0,優柔不断度=10
  • 「女」位置=0, 速度=0,魅力=0,優柔不断度=10
の場合となる。下に示すように、
 
恋する二人の軌跡(「男=黒」、「女=赤」の魅力が両方0の場合)

これっぽっちも「男」と「女」は「恋」に落ちていないのである。これではカップルの「男」と「女」ではなく、単なる他人である。

さて、今回は行わなかったが、カップルに「恋のエネルギー損失」を導入することにより、「恋の無限摂動」を減衰させることができる。それにより、現実のカップルの行動にさらに近づくことができるのではないかと、私は考える。何らかの抵抗が生じることにより、「恋の無限摂動」が減衰するのだ。そして、二人は接近した状態で停止するわけだ。

さて、今回の登場人物は「男」と「女」だけであった。しかし、現実でも、ドラマの中でも、通常は多くの登場人物が登場する。登場人物が「男」と「女」だけというような理想的な条件のみではない。
人の恋路を邪魔する(主人公からすれば)ヤツも必ず登場する。また、特定の登場人物の間では斥力が働くだろう。そのような場合、一体どのような現象が生じるのだろうか。

そもそも、今回の恋する二人の行動パターンは予測可能であったが、現実そのようなことがあるだろうか?果たして、未来の行動パターンは予測可能なのだろうか?色々な登場人物が現れる場合にも、今回の結論は成立するのだろうか?

それらは次回の課題にしておく。題して、「恋の力学 三角関係編- 恋の三体問題- (仮称)」である。「恋の力」を一般化し、多体問題として解いてみたいのである。恋する人達とその周りの人達がどのような行動をするか、恋の三角関係においてどのような力が働いているのか、について解析を行ってみたい。今回は、そのための前準備というわけである。
 



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