2000-08-07[n年前へ]
■高いか、安いか、この価格
愛はお金で買えるのでしょうか?
私がよく使う日本国内向け情報検索サイトはinfoseekである。何かを探すときには、居酒屋の生ビールではないが、何はともあれinfoseekである。何故かは上手く説明できないが、他の検索サイトに比べて私にとって感覚的に「合う」のである。
ところで、こういった検索サイトはバナー広告などの広告収入で運営されている。しかし、私は「そんなバナー広告って、高いお金を出すほど効果があるのかなぁ?」とかねがね疑問に思っている。といっても、広告シロートの感覚なのできっとそれは間違っているのだろう。
そんな広告シロートの私でも、「あぁ、これは便利だなぁ。これはきっと効果があるよなぁ。」と思うバナー広告がある。それは、「検索のキーワードに応じて表示されるバナー広告」である。
例えばinfoseekで「センサ」というキーワードで検索をかけるとこんな結果表示の画面になる。
色々な「センサ」に関する情報を知りたいと思って、「センサ」に関するサイトをinfoseekで調べると、
センシング・計測技術の総合サイト = キーエンスというバナーがデッカク表示されるのである。なんとも、これは便利である。普通のバナー広告は邪魔なだぁと思うことも多いが、こんなバナー広告は全然邪魔だとは思わない。むしろ、便利だなぁと私は素直に思うのである。
私の気持ちに関わらず勝手に無条件で表示されるバナー広告は、私にとって単なるノイズにすぎない。「このバナー広告がなければ、もっと素早く情報が表示されるのになぁ」などと思い出すと、腹が立ってくるほどである。しかし、私の探している情報に関するバナー広告を表示してくれるとなると、それが180度変わるのである。それは単なるノイズではなくて価値あるシグナルに変わってしまうのだ。邪魔な存在から、とってもありがたい存在に変わるのである。
これは他の色々なキーワードでもそうで、例えばプリンターやコピー機の「トナー」に関する情報を探してみると、こんなバナー広告が表示される。「トナー」を探している人には
ウチでは安いトナーを売ってますよ!という広告を教えてくれるのである。なんともありがたいことである。これは決して邪魔ではない。むしろ、適切なアドバイスである(いや、もちろんここのトナーが本当に安いのかどうかは私は知らない)。
この「センサ」、「トナー」といった例はinfoseekの場合だが、これは別にinfoseekに限るものではない。他の検索サイトでもこんなバナー広告は同様に表示される。例えば、
- excite ( http://www.excite.co.jp/)
- LYCOS ( http://www.lycos.co.jp/ )
- infoseek ( http://www.infoseek.co.jp/)
- goo ( http://www.goo.ne.jp )
どこの検索サイトでも「デジカメに関する情報を探している人」には「デジカメの広告」を表示してくれるのである。いやはや便利な時代になったものである(ちょっと年寄り風)。
ところで、こんな検索をかけている内に、こうした広告を出すのに「いくら位お金がかかるのか」と疑問に思い
を見てみると、これが実は結構安い。- Search Word/サーチワード 検索する言葉に合わせて出現する、待ち伏せ広告 (サイズ:60×468)
- 4週間2,500PV以上のワード 4週間で¥12×PV
- 上記外のワード 4週間で¥30,000 (固定)
- Top Page Banner/トップページバナー
私にとっては「邪魔な存在なだけのバナー広告」が一週間で¥2,000,000であるのに、「ありがたい存在のバナー広告」が4週間で¥30,000なのである。もう、こんなに安くて良いのかしら、という位である。こんなに安いと個人で広告を出してみても良いと思うくらいである。私も小遣いがもう少しあれば、試しに広告を出してみるところだ。「できる?」で検索をかけると、自動的に「HIRAX.NET」のバナー広告を表示したい程である。それは四週間で3万円なら安いモノだ。
それどころか、このバナー広告を使ったシュールなプロポーズなんてのもオツなものだと思う。例えば、こんな感じだ。
ホラ、キミinfoseekでキミの「運命の人」を検索してごらん。なんて具合である。しかし、そんなことはもう実はされているかもしれない。
アラ、アナタのバナー広告が出てるわ! 何てこと!
ところで、このinfoseekの広告についての情報を読んでいると、infoseekにアクセスするユーザーに関する
なんて面白い情報がある。 これを見ると、infoseekにアクセスするユーザーは男性がほぼ70%で、女性がほぼ32%であるから、これを標準の割合と考えて、チャンネル別男女構成比で「男の方が割合が高いジャンルと、女の方が割合が高いジャンル」を示すと次の図のようになる。
「カルチャー&ホビー」が男女半々のジャンルで、それを境にして「男の興味ある世界」と「女の興味ある世界」が分かれているのが判ると思う。「学び」に関しては女性の方が興味を持っていることが判るし、「インターネット」に関しては男性の方が興味を持っていることも判る。比較的、男性が「コンピュータ・ビジネス・経営・政治・法律・社会・マネー...」なんて無機的なものに興味を持っているのに対して、女性は「グルメ&クッキング・ショッピング・キャリア・トラベル・くらしの情報...」なんて血の通ったものに興味を持っている。うーん、面白い。男性の比率が一番多い(いや、女性の比率が少ないと言うべきか)のは「クルマ」で、女性は「ヘルス&ビューティー」だというのも何かとても面白く、笑ってしまう。
これを見ると、「住まい」なんかもうほとんど女性の支配する世界であることなども判るだろう。なるほど、「男の隠れ家」なんて雑誌が売れるわけだ。ここまで「住まい」が女性の世界であれば、それも当然だろう。
さて、話を検索キーワードに関するバナー広告に話を戻そう。試しにinfoseekで「結婚」で検索をかけるとこんな結婚情報サイトの広告が表示される。ありがたくて、涙が出そうになるくらいである。
そこで、調子にのって私はexciteで「愛」で検索をかけてみた。
もちろん、これは単なる偶然だろう。「愛」を探しているのに、消費者金融のバナー広告が表示されるわけはない。「愛」を探しているのに、「お金」の広告が出るわけがない。「愛がお金で買える」わけがない。単なる偶然とはわかっているけど、何ともイヤな偶然である。もちろん、単なる偶然の筈だ。
神様、愛はお金で買えるのでしょうか?
2000-10-25[n年前へ]
■虹の彼方に。
色覚モドキソフトを作る その7
今年は好きなWEBサイトがいくつも店じまいしてしまった。「わきめも」もそんなサイトの一つだ。その今はもうない「わきめも」の中で、きれいな虹が見えた。だからビールを飲んだ。だけど、目に見えている虹の色は写真のフィルムには写らない。どんなフィルム・CRT・プリンターの出力色空間もとても狭くて、虹の中に見える色は出せないからだ。ビールも虹も「生」に限る。という話があった。もう元のWEBページがあるわけじゃないから、細かいところは違っていたかもしれないけれど、大雑把な内容はこんな感じだった。- ビールも虹も「生」に限る - なんてとてもシブイセリフで良い感じだ。
このセリフの中の「どんなフィルム・CRT・プリンターの出力色空間もとても狭くて、虹の中に見える色は出せないからだ。」というのを図示してみると、下の図のようになる。
例えば、虹の中に見えるスペクトル色はこの図で言うと、黄色の矢印で描いた側の、色で塗りつぶした領域の外枠の色だ。波長の長い単色光、つまり最初は赤色から始まって、波長が短くなるに従い「赤→黄色→緑→青→紫」というようにスペクトル色はつながっている。
この図中に、とあるCRTとプリンターの出力可能な色空間(CCMファイル中に埋め込まれているプロファイル情報を参考にしたもの)を白点線と白実線で示したが、とても狭い領域の色しか出せず、とてもじゃないが虹の中に見えるスペクトル色はこれらの機器では出ないことが判るだろう。
だから、「生」の虹を見たときの感じは写真でもCRTでもプリンターの出力でも味わえないわけだ。おいしいビールは「生」に限る(私の趣味では)のと同じく、虹も「生」に限るのだ。
だから、虹の色と同じ
の時に撮影したような太陽光のスペクトルも、こんな風にWEBページの上で眺めても、それはやっぱり分光器を「生」で覗いている感じはとてもじゃないが味わえない。 こんな、「赤→黄色→緑→青→紫」というスペクトル色を眺めていると、中学の頃の美術の授業を思い出した。その授業の中で、こんな色相環が教科書か何かに載っていて、「こんな色のつながりは「赤→黄色→緑→青→紫」というスペクトル色に対応しているんだよ」と美術の先生に言われた。それを聞いていた私はよく判らなくなって、「すると、何で紫と赤のところで繋がってるのでしょうか??」と先生に聞くと、その先生も「う〜ん。」と悩み始め、しまいには「いつか調べて答えが判ったら、私にも教えてくれたまえ。」と言うのである。今考えてみると、それはとても素晴らしい言葉だった(間違っても皮肉でなくて、本当に素晴らしいと思うのだ)。
色覚のメカニズム 内川恵二 朝倉書店 口絵より |
だけど、「赤→黄色→緑→青→紫」という単色光のスペクトルが波長としては単に一方向に変化していくだけなのに、グルっと一周する感覚を受けるのはとても不思議である。そこで、色感覚モドキソフトを作ってそこらへんの感覚を眺めてみる、つまり「できるかな?」の常套手段である「その謎を見てみよう」と思うのである。
この「色感覚モドキソフト」はいつものように極めて大雑把でチャチな作りである。ソフトの流れとしては次に示すように、
1.光源としては二種類の場合
- RGBのCRTモニタ
- 単色スペクトル光
2.画像を読み込み、画像の任意の場所のRGB値を元に光全体としてのスペクトルを計算する。
3.錐体の分光感度を適当に設定し、Boynton色覚モデルをもとに
- 「赤<->緑」チャンネル
「青<->黄」チャンネル
「輝度」チャンネル
ここに今回作成したtruecolor7を置いておく。細かい使い方は今回は割愛したい。が、多分少し使えば(使う人がいるともそうそう思えないが)、使い方はすぐに判ると思う。
- truecolor7.lzh 522KB
truecolor7の動作画面はこんな感じである。
左上から下に向かって、RGBそれぞれのスペクトル設定、全体でのスペクトル、読み込んだ画像、右上から、錐体の分光感度、反対色応答の出力値である。
画像の任意の場所を調べたければ、BMP画像を読み込んでマウスで好きな場所をなぞるなり、クリックすればよいし、「赤→黄色→緑→青→紫」という単色光のスペクトル色の場合を計算したければ、右下にある「SpectrumColor」ボタンを押せば良い。
さっそく、赤→黄色→緑→青→紫というスペクトル色の反対色応答「モドキ」を見てみたのが次のグラフである。縦軸が「輝度チャンネル」で、向かって左の軸が「青<->黄」チャンネルで、向かって右の軸が「赤<->緑」チャンネルである。この「輝度チャンネル」・「青<->黄」・「赤<->緑」という「感覚的」3次元空間で波長が一方向に変化するスペクトル色を連続的にプロットしてみると、見事に円状につながっていることが判る。「赤<->緑」チャンネルの計算が基本的にはL錐体出力からM錐体出力の差分をとって、さらにS錐体の出力をほんの少しだけ引いてやるという計算をしているため、短波長側でL錐体の感度がM錐体の感度を上回っている(ように実は設定した)のでこんな風になるのだ。単純に波長が短くなるだけなのに、見た感じ何故か紫と赤が近く見える。あくまで、大雑把な話だけれど。
中学の頃の私がこれで納得するとは思えないが、少なくとも今の私はこの円環構造を目にすることができればこれで満足である。
ちなみに、つぎに示すのは輝度が一定になるようにした画像の周辺部をグルッと計算してみたものである。このグラフでは縦軸の「輝度チャンネル」の値はずっと同じで、「青<->黄」チャンネル・「赤<->緑」チャンネル平面内で円環状にグルッと一周しているのがわかると思う。自分自身が下の画像を眺めたときに、つながりが自然だなぁ、あるいは自然じゃないなぁ、と感じる感覚と重ね合わせながら見てみると面白いのではないだろうか。
さて、興味がある方がいらっしゃれば、このバッタもんソフトを使って、ぜひ色々なパラメータを振って色々な画像を読み込んで試行錯誤をしてみてもらいたいと思う。そして、その結果を私に教えていただければとてもうれしい。もちろん、このソフトを使うという話に限らず、面白そうなアイデアがあれば大歓迎である。
さて、虹というとミュージカル「オズの魔法使い」の中でジュディ・ガーランドが歌っていた"OverThe Rainbow"を何故か思い出す。実は、このソフトを作っているときも「ふ〜ん、ふ〜ん、ふ〜んふんふふふ〜ん」と歌詞が判らないまま鼻歌を歌いながら作業していた。歌詞が判らないまま、というのも何なので、せっかくなので調べた歌詞で今回の話を終わらせたいと思う。虹の彼方には…
Somewhere, over the rainbow, skies are blue.And the dreams that you dare to dream really do come true.
2000-11-19[n年前へ]
■間違いだらけのカラープリンター選び
もういくつ寝るとお正月
今年はずいぶんと夏が長かった。もう11月になっているにも関わらず、ほんの数日前まで少し暑いくらいでは夏の終わりといっても良いような天気が続いていた。ところが、数日前に急に寒くなった。もう正真正銘の冬が訪れたようである。
冬が始まり今年もあとわずかとなれば、安いインクジェットのカラープリンターが飛ぶように売れる季節だ。もちろん、家で年賀状をせっせと印刷し始める人達が多いからである。安いカラープリンターを買って、家が小さな小さな印刷工場に変わるのである。それはまさに家庭内手工業だ。
家庭内手工業という響きを聞くだけで、誰しも「安い賃金で汗水流す家族」が頭の中に浮かぶことだろう。もちろん、この正月を控えた「小さな小さな印刷工場」もその例外ではないのである。子供が家にいる家庭であれば、子供達に宛名書き(最近なら宛名入力か?)やプリントアウト作業をほとんどタダのような賃金でやらせている親は多いのである。例えば、一枚プリントアウトするごとに10円というくらいの賃金で子供に作業をやらせていたり、それどころか一枚数円位の賃金体系の家庭だってあるハズである。それは、企業が安い賃金で雇える労働力を求めてアジア・アフリカ諸国へ工場を移していくのと瓜二つである。
実際のところは、子供の方も「そんなタダのような賃金」でも何も考えずに喜んでやるとは思うのだが、親からすればそれは実に便利なパシリなのである。もちろん、そのタダのような賃金の値上げを求めてスト決行する子供がいても面白いと思われるかもしれないが、そんな向上心溢れる子供達には親から教育的指導がすかさず入ってしまい、賃金値上げはそうそう行われるわけはないのだ。現に私も幼い頃にはそんな内職をしていたわけだが、少しは知恵がついて向上心に突き動かされ(もう少しおゼぜが欲しくなって)
「アンタ以外にも働きたい人はいるの。」
話が脱線した。とにかくこの時期には、年賀状印刷のためにカラープリンタの購入を考える人達は多く、プリンター関連の情報が集まる場所、例えば
などのような場所では、「プリンターは何が良いですか?」とか「エプソンとキヤノンとhpのどのプリンターが良いのでしょう?」というような質問を数多く見かけるようになる。そして、その質問の中でもよく登場するカラープリンターがこの二機種である。エプソンPM900CとキヤノンF870だ。もちろん、もうひとつメジャーどころとしてhpもあるわけだが、写真画質を重視していないのと、日本ではまだそれほど強くないこともあって、年賀状プリントなどの用途ではあまり選択肢には入らないようである。http://www.i-love-epson.co.jp/products/ printer/inkjet/pm900c/img/pm900c.jpg | http://www.canon-sales.co.jp/ Product/BJ/img/f870.jpg |
この二機種はパンフレットも何か対照的で、少なくとも私はキヤノンF870のパンフレットは好きではない。夏までのラルクを表紙にあしらったパンフレットの方がずっと華やかで良かったと思う。寸前までGlayを使う予定だったのに、わざわざラルクに変更したというくらい(名前を考えれば実に賢明な選択である)だったのに何故「黒ずくめ」の中田に変えたのだ…
まぁ、そんな気持ちはさておきパンフレットを眺めていると、あることを確かめたくなった。それは、エプソンPM900Cの売り文句の一つである"EpsonNatural Color"である。エプソンのWEBの情報によれば、
エプソンのカラー技術が目指すべきもの。それは、ナチュラルな色の再現でした。新カラリオは、モニタ上の色域制限(sRGB)にとらわれずに、自然界の色により近いカラープリントを実現する新画像処理技術「EPSONNATURAL PHOTO COLOR(エプソン・ナチュラルフォトカラー)」を搭載。モニタに映る色ではなく、あくまで人の目に映る自然の色をプリントすることにこだわりました。写真に収めた美しい思い出を、あの時の感動を、カラリオなら記憶のままに忠実に再現。と書いてある。つまりは、「CRTモニタや液晶モニタでは出ない色(の一部)をPM900Cでは出力するようにしましたよ」ということである。「これまではモニタで見た色と同じような色を出力するようにしていたから、モニタで出ない色はプリンターでも出力していなかったのだけれど、モニタと同じでなくても自然の生の色に近い方を出力するようにしましたよ」ということだ。ビールも色も「生」に限る(byわきめも)わけで、結構カッコ良い割り切りかたである。あくまで「人の目に映る色」がホントの色で、「モニタ上で表されるRGBの色」なんかニセモノなのだぁ(少し大げさ)、という主張が込められているようで面白いと思う。「モニタで確認した色が出ない」とか言われることはもう覚悟の上なのだろう。
といっても、エプソンPM900Cがホント〜にそんな出力をしているのかどうか、実際に確かめてみなければよく判らないだろう。といっても、私の家には実はプリンターは一つもない(家でプリンターを触るのはちょっとイヤだから)ので「実際に」確かめるわけにはいかない。そこで、
の時と同じくプリンタードライバーが使う、「カラープロファイルファイル」の中を覗いてみることで、それぞれのプリンターが出力する色の範囲を調べてみることにした。出力できる色空間が広いことを謳うPM900Cがホント〜に多くの色を出力できるかどうかを確かめてみるわけだ。「実際に機械を使わずしてどうするのか」と言われるような気もするが、ネットで手に入るモノだけを使ってプリンターの性能を推理してみるのもたまには良いのではないだろうか。 というわけで、エプソン・キヤノン各社のドライバーをダウンロードしてきて、それぞれのICCファイルの中に書かれている出力可能な色空間をab平面で表したのが次の結果である。
この結果を見ると、確かに若干ではあるがPM900Cの方がF870よりも出力できるab色平面が広いように見える。といっても、この図では見づらいと思うので、この二つを重ねて、
- PM900Cの方だけが出力できる範囲を白
- F870の方だけが出力できる範囲を黒
ナルホド、確かにエメラルドグリーンというような色の辺りでPM900Cには出力できるけど(少なくともICCファイル上は)、sRGB・F870にはその色は出せないという領域もあるようである。そして、さっきのパンフレットをもう一度眺めてみると、確かにその色をパンフレットのメインの色としてあしらっていることがよくわかるだろう(ホントかいな?)。このエメラルドグリーンの服は伊達ではないのである。黒ずくめの男を表紙に使ってるのとは大違いの素晴らしさである。
さて、もちろん言うまでもないと思うが、今回の色空間の広さ競争はまさに「間違いだらけのカラープリンター選び」である。何しろ、実際のプリントアウトをしていないのである。いや、もちろんこれらのプリンターを使ったこともちゃんとあるのではあるが、事情によりその出力結果はここでは言うわけにはいかないのである。きっと、それを書いたらX○△×(以下省略)
ところで参考までに、、写真画質がある程度固まった機種のエプソンのPM750Cと最新機種であるPM900Cの比較を比較してみた。PM750Cに比べて、着実にPM900Cの出力できる色空間が広くなっている。プリンターの技術の進化具合がちょっと実感できたりするのではないだろうか?(ホントかウソか知らないけれど)
ここまでテキト〜に書いてみたが、これを読んでいる人の中でホントにちゃんと選びたいというような人がいるのなら、何より自分で実際に使ってみるのが一番だと思う。そうすれば、自分の必要と経験に応じた機種が必ずや手に入るハズだ。あと、広告が入りまくりのPC雑誌の評価はあまり参考にならないと思うなぁ。
2001-03-19[n年前へ]
■自分へのメモ Be プリンタードライバー
それにしても、LIPSの非公開機能を誰か公の場所に書いておいてくれたらなぁ。(リンク)
2001-04-29[n年前へ]
■ファイト!縦文字文化
縦と横の解像度を考えよう
今年も去年に引き続き英語研修を受けている。といっても、去年は毎日十五分の英語研修だったが、今年は週二日のものを二種類受けている。何事も、「一番弱いところを強くするのが一番」というわけで、それが私の場合は英語であるわけだ。いや、もちろん弱いところは数え切れないほどあるのだが、英語はもうどうしようもないくらいダメなのである。
その英語研修を受ける中で、本当に実感するのが「頭の中でも英語で考えないとキツイ」ということである。頭の中で日本語で考えてから英語で喋ろうとすると、その「日本語→英語変換」のオーバーヘッドはすさまじくて、とても会話にならないのである。もちろん、当然その逆もしかりで「英語→日本語変換」なんかもやっていたら、あっというまに相手の喋るスピードについていけず、「ここはどこ?私はだれ?」状態になってしまう。
もちろん、「頭の中で英語で考えられる位なら、そもそも苦労はせんのじゃぁ!」と叫びたくなることもしばしばあるわけで、実際のところ私にはどうしたら良いのか全然わからないのである。「頭の中に言いたいことは沢山あるけど、それを伝えられない状態」と「頭の中でたいしてものを考えることができない、それを伝えられる状態」とどっちかを選べと言われても困ってしまう。残念ながら、「英語で頭の中でビュンビュンと考えて、それが口からペラペラとでてくる」状態は私には遠い夢物語のようなのである。
こんな苦労は、日本語人生一本やりだった私が英語を使う場合にはどうしても避けられない話なのであるが、そんな「私の苦労」と似たような話はコンピュータの世界にも実はある。例えば、「今日の必ずトクする一言」でもよく登場する「Windowsの日本語化のオーバーヘッドに関する一連の話」などがそうである。超漢字あたりであれば話は別なのかもしれないが、Windowsに限らずどんなOSであっても英語だけを使うときと、日本語のような言語を使うときではスピードが全くと言って良いほど違ってしまう。
例えば、英語版のWindowsであれば最新型のPCでなくてもサクサク動くのであるが、これが日本語版のWindowsともなると、最新型のPCでなければカタツムリのようなスピードに変わってしまうのである。最新型のWindowsやMacOS***の推奨マシンスペックは○×○×です、とOSメーカーが言ったところで、それは英語圏での話で日本語人生の私のようなものにはそれは当てはまらないのだ。わずか100文字ほどのアルファベットですむ英語の場合と、約七千字ほどもある日本語を使う場合とでは文字・フォント処理のスピードが違ってしまうのは当たり前の話である。
ところで、英語と日本語をコンピューターなどで扱う時の大変さというものは文字数だけの話なのだろうか?数が多いから大変なのは当たり前なのだが、それだけではないのではないだろうか。単に文字数が多いというだけではなくて、一つの文字当たりの情報量も日本語の方が遙かに多いと思うのである。例えば、アルファベットの中でも複雑な形をしている"M"と、日本語というか漢字の中でも結構複雑な形をしている「廳」を比べてみれば一目瞭然だろう。"M"よりも、「廳」の方がずっと複雑な形状をしている。
漢字の文字数が多いということは、そのたくさんある文字を区別するためにも漢字という文字の形状自体が複雑にならざるをえないわけで、それはすなわち漢字一文字の情報量はアルファベット一文字の情報量よりも遥かに多いということだ。ということは、
- 一文字辺りの情報量が多くて
- しかも文字数が多い
しかし、「PC内部での処理も大変ではあるが、それを外部に出すときも大変だろう」というのが今回の話のテーマである。モニタやプリンタに出力する時の大変さも英語と日本語では大違いで、しかも英語文化で考えると見えない落とし穴があるのではないだろうか、という話である。
まず、文字を表示するスペースというのは大体決まっている。そんな限られた同じスペースの中に、一文字辺りの情報量が少ないアルファベットと多い漢字を同じように詰め込めるだろうか?先ほどの"M"と「廳」を縮小して10pt程度にしてみると、その答えはすぐにわかる。アルファベットの"M"の方はちゃんと読めるとは思うが、漢字の「廳」の方がちゃんと識別できる環境の人がいるだろうか?PCの画面に表示されている「廳」はずいぶんと省略されたてしまっていたり、あるいは潰れてしまっていたりするはずである。
つまりは、PCの内部でも漢字のような文字を扱うのは大変であるが、それを外部へ表示したりするのも実際問題大変なのである。英語圏のアルファベット文化から考えれば、10ptなんて大きくて読みやすいと思うのかもしれないが、漢字などを考えると今のモニタの解像度では10ptでも小さすぎるのである。逆にいえば、アルファベットなどを表示する時に比べて漢字などの文字を表示する時には、遥かに高い解像度のモニタが必要とされるのである。PC自体の能力だけではなくて、モニタなどの出力機器も遥かに高い能力が必要とされるわけだ。
もちろん、それは漢字だけの話ではない。世界中の文字で当てはまるハズの話である。試しに、
- 世界の文字 (http://www.nacos.com/moji/)
アラビア文字あたりはラテン文字であるアルファベットと同じ程度の複雑さであるが、その他の文字はやはり遥かにアルファベットよりも複雑な形状をしている。「この中の半分くらいは使われていない文字じゃねぇーか!」という声も聞こえてきそうな気もするが、そんな小さいことを気にしてはいけない、とにかくアルファベットは色々ある文字の中でも単純な形状をしていて、漢字は複雑な形状をしているのである。
次に、それぞれの文字画像の複雑さの特徴を眺めるために、それぞれ二次元フーリエ変換をかけて、周波数空間に変換してみたものを示してみることにしよう。まずは、漢字の例を示して図の見方を説明してみたい。
図の横・縦方向が実際の文字の横・縦方向に対応し、図の中で中央から外周方向に向かって低周波から高周波の成分の量を示している。強さは 小 ← 赤 黄 黄緑 青 紫 → 大の順番になっている。 たとえば、この漢字の例だと |
上の説明に書いたように、こんな風に文字画像を周波数空間に変換すると、「漢字は縦と横の線が多い」ということがよくわかる。しかも、
の時に調べたように、漢字は「縦方向に周波数成分が多い」、すなわち言い換えれば「横方向の線が多い」こともわかるのである。 さて、世界の文字六種に戻って、それぞれを周波数空間に変換して並べてみると、こんな感じになる。
こうして六種の文字種を周波数空間に変換して眺めてみると、色々なことが判る。例えば、
- アラビア文字はほとんど高周波を含まない
- ヒエログラフは比較的高周波が少なく、方向性も持たない
- 漢字に含まれる高周波成分はほとんどが縦・横方向のみであり、その中でも「縦方向に周波数成分が多い」、すなわち言い換えれば「横方向の線が多い」
- アルファベットは低周波がメインであり、縦横では横方向の方が高周波を含んでいる、すなわち縦の線が多い
- マヤ文字は一番高周波まで含んでおり、比較的方向性も少ない
- ロンゴロンゴ文字はアラビア文字よりも高周波が多いが、それでも比較的低周波メインであり、方向性もない
もちろん、ラテン文字が比較的高周波が少ないからといって今の表示装置で十分だというわけではなくて、ラテン文字でもより高解像度のディスプレイが必要とされている。例えば、液晶画面などで文字を多量に読むことを想定している電子ブックなどの用途のためには、
で調べたMicrosoftの「ClearType」などの技術がある。これは液晶のRGBの画素の配列が横方向に並んでいることを利用して、横方向の解像度を高める技術である。ということは、こういう技術は横方向の高周波成分が多いラテン文字などでは効果が大きく、またラテン文字自体が比較的高周波成分が少ないために、こういう技術を使えば必要十分ということになるのかもしれない。しかし、日本語(漢字)のようなもともと高周波成分が多くしかもそれが縦方向に多い、というようなものでは効果は比較的少ないことが考えられる。もちろん、それは液晶というデバイスの特徴によるもので仕方のない部分もあるのだが、もしかしたらもしかしたら日本語のような縦方向の高周波を再現しなければならない言語のことを意識していないせいかもしれない。
こんなことは液晶などのモニタだけではなくて、一般的なプリンタもそうだ。例えば、インクジェットプリンタではエプソンのPM-900Cの仕様などを眺めてみても、標準で720×720dpiで、高画質モードでは1440×720dpiとなっている。それはレーザービームプリンタなどでも同じで、リコーのプリンター大百科からウルトラスムージングテクノロジーを見てみても、やはり横方向の解像度のみを高めて2400dpi×600dpiとなっている。やはり、プリンタなどの印字装置でも横方向の解像度を高めようとはするが、縦方向の解像度は低いままにしているのである。もちろん、縦方向の解像度を高くすると印字速度が遅くなってしまうという、プリンタの特性があるにしても、やはり日本語を印字するためには不利な設定となっているのである。日本人としては、解像度表示は縦方向を重視するべきで、横方向の解像度表示にダマされるべきではないのである。高解像度2400dpiなんて言われても、「ヘヘン、オレは縦文字文化の日本人だから関係ないんだもんね」くらいは言って欲しいわけである。
実際のところ、せっかく日本語(漢字)を使うのだから、日本語の特性に応じたPCやモニタやプリンタがあっても良いのになぁ、と思う。いや、というより日本語の特性をもっと理解するところから始めなければならないのかもしれない。そうだ、私はまずは日本語の勉強から始めるべきなのだ。英語の勉強をしている場合ではないし、頭の中で英語で考えていたりすると、縦文字文化に合った発想ができなくなってしまうに違いないのである。って、英語学習から逃げてるだけだったりして…
あぁ、しまったぁ。今回はホントに真面目な話になってしまったぞ、と。しかも、まるで国粋主義者みたいだし。