hirax.net::Keywords::「次元」のブログ



2000-10-25[n年前へ]

虹の彼方に。 

色覚モドキソフトを作る その7

 今年は好きなWEBサイトがいくつも店じまいしてしまった。「わきめも」もそんなサイトの一つだ。その今はもうない「わきめも」の中で、
 きれいな虹が見えた。だからビールを飲んだ。だけど、目に見えている虹の色は写真のフィルムには写らない。どんなフィルム・CRT・プリンターの出力色空間もとても狭くて、虹の中に見える色は出せないからだ。ビールも虹も「生」に限る。
という話があった。もう元のWEBページがあるわけじゃないから、細かいところは違っていたかもしれないけれど、大雑把な内容はこんな感じだった。- ビールも虹も「生」に限る - なんてとてもシブイセリフで良い感じだ。
 

 このセリフの中の「どんなフィルム・CRT・プリンターの出力色空間もとても狭くて、虹の中に見える色は出せないからだ。」というのを図示してみると、下の図のようになる。
 

 

 例えば、虹の中に見えるスペクトル色はこの図で言うと、黄色の矢印で描いた側の、色で塗りつぶした領域の外枠の色だ。波長の長い単色光、つまり最初は赤色から始まって、波長が短くなるに従い「赤→黄色→緑→青→紫」というようにスペクトル色はつながっている。

 この図中に、とあるCRTとプリンターの出力可能な色空間(CCMファイル中に埋め込まれているプロファイル情報を参考にしたもの)を白点線と白実線で示したが、とても狭い領域の色しか出せず、とてもじゃないが虹の中に見えるスペクトル色はこれらの機器では出ないことが判るだろう。

 だから、「生」の虹を見たときの感じは写真でもCRTでもプリンターの出力でも味わえないわけだ。おいしいビールは「生」に限る(私の趣味では)のと同じく、虹も「生」に限るのだ。
 

 だから、虹の色と同じ

の時に撮影したような太陽光のスペクトルも、こんな風にWEBページの上で眺めても、それはやっぱり分光器を「生」で覗いている感じはとてもじゃないが味わえない。
 
太陽光のスペクトル

 こんな、「赤→黄色→緑→青→紫」というスペクトル色を眺めていると、中学の頃の美術の授業を思い出した。その授業の中で、こんな色相環が教科書か何かに載っていて、「こんな色のつながりは「赤→黄色→緑→青→紫」というスペクトル色に対応しているんだよ」と美術の先生に言われた。それを聞いていた私はよく判らなくなって、「すると、何で紫と赤のところで繋がってるのでしょうか??」と先生に聞くと、その先生も「う〜ん。」と悩み始め、しまいには「いつか調べて答えが判ったら、私にも教えてくれたまえ。」と言うのである。今考えてみると、それはとても素晴らしい言葉だった(間違っても皮肉でなくて、本当に素晴らしいと思うのだ)。
 

色相環

色覚のメカニズム 内川恵二 朝倉書店 口絵より

 だけど、「赤→黄色→緑→青→紫」という単色光のスペクトルが波長としては単に一方向に変化していくだけなのに、グルっと一周する感覚を受けるのはとても不思議である。そこで、色感覚モドキソフトを作ってそこらへんの感覚を眺めてみる、つまり「できるかな?」の常套手段である「その謎を見てみよう」と思うのである。

 この「色感覚モドキソフト」はいつものように極めて大雑把でチャチな作りである。ソフトの流れとしては次に示すように、

1.光源としては二種類の場合
    • RGBのCRTモニタ
    • 単色スペクトル光
    を考える。そして、RGBのCRTモニタのRGBそれぞれのスペクトルを設定する。次に、RGBのCRTモニタを使用する場合には、以下の作業を行う。

    2.画像を読み込み、画像の任意の場所のRGB値を元に光全体としてのスペクトルを計算する。

    3.錐体の分光感度を適当に設定し、Boynton色覚モデルをもとに

      「赤<->緑」チャンネル
      「青<->黄」チャンネル
      「輝度」チャンネル
    のそれぞれの応答値を計算する。
という感じになっている。自分自身でいじることのできるパラメーターはRGBそれぞれのスペクトルと錐体の分光感度である。少し前に「からーふぃくしょん」のwebmasterと話している時に、錐体の分光感度が違う場合には、その違いに応じた「自然な色のつながり」があるんじゃないか、という話になったことがあったので、今回はそれを考慮して錐体の分光感度を自分でいじれるようにしてみた。

 ここに今回作成したtruecolor7を置いておく。細かい使い方は今回は割愛したい。が、多分少し使えば(使う人がいるともそうそう思えないが)、使い方はすぐに判ると思う。

いつものようにα版なのは言うまでもない。

 truecolor7の動作画面はこんな感じである。
 

truecolor7の動作画面

 左上から下に向かって、RGBそれぞれのスペクトル設定、全体でのスペクトル、読み込んだ画像、右上から、錐体の分光感度、反対色応答の出力値である。

 画像の任意の場所を調べたければ、BMP画像を読み込んでマウスで好きな場所をなぞるなり、クリックすればよいし、「赤→黄色→緑→青→紫」という単色光のスペクトル色の場合を計算したければ、右下にある「SpectrumColor」ボタンを押せば良い。

 さっそく、赤→黄色→緑→青→紫というスペクトル色の反対色応答「モドキ」を見てみたのが次のグラフである。縦軸が「輝度チャンネル」で、向かって左の軸が「青<->黄」チャンネルで、向かって右の軸が「赤<->緑」チャンネルである。この「輝度チャンネル」・「青<->黄」・「赤<->緑」という「感覚的」3次元空間で波長が一方向に変化するスペクトル色を連続的にプロットしてみると、見事に円状につながっていることが判る。「赤<->緑」チャンネルの計算が基本的にはL錐体出力からM錐体出力の差分をとって、さらにS錐体の出力をほんの少しだけ引いてやるという計算をしているため、短波長側でL錐体の感度がM錐体の感度を上回っている(ように実は設定した)のでこんな風になるのだ。単純に波長が短くなるだけなのに、見た感じ何故か紫と赤が近く見える。あくまで、大雑把な話だけれど。

 中学の頃の私がこれで納得するとは思えないが、少なくとも今の私はこの円環構造を目にすることができればこれで満足である。
 
 

赤→黄色→緑→青→紫というスペクトル色の反対色応答「モドキ」

 ちなみに、つぎに示すのは輝度が一定になるようにした画像の周辺部をグルッと計算してみたものである。このグラフでは縦軸の「輝度チャンネル」の値はずっと同じで、「青<->黄」チャンネル・「赤<->緑」チャンネル平面内で円環状にグルッと一周しているのがわかると思う。自分自身が下の画像を眺めたときに、つながりが自然だなぁ、あるいは自然じゃないなぁ、と感じる感覚と重ね合わせながら見てみると面白いのではないだろうか。
 

輝度が一定になるようにした画像の周辺部をグルッと計算してみたもの

 さて、興味がある方がいらっしゃれば、このバッタもんソフトを使って、ぜひ色々なパラメータを振って色々な画像を読み込んで試行錯誤をしてみてもらいたいと思う。そして、その結果を私に教えていただければとてもうれしい。もちろん、このソフトを使うという話に限らず、面白そうなアイデアがあれば大歓迎である。
 

 さて、虹というとミュージカル「オズの魔法使い」の中でジュディ・ガーランドが歌っていた"OverThe Rainbow"を何故か思い出す。実は、このソフトを作っているときも「ふ〜ん、ふ〜ん、ふ〜んふんふふふ〜ん」と歌詞が判らないまま鼻歌を歌いながら作業していた。歌詞が判らないまま、というのも何なので、せっかくなので調べた歌詞で今回の話を終わらせたいと思う。虹の彼方には…
 

 Somewhere, over the rainbow, skies are blue.And the dreams that you dare to dream really do come true.

2000-12-01[n年前へ]

続々オッパイ星人の力学 

胸を揺さぶるパラメータ励振 編

 前回、

では、純真でピュア〜な幼心に戻って公園で大きく揺れるブランコの動きを考えてみた。近所の公園でよく見かける、小学生位の子供達が一心不乱にブランコを揺らす景色の中に隠れている科学をちょっとばかり考えてみたわけだ。そして、「ブランコの漕ぎ方の謎」の中には「パラメータ励振」という物理現象が隠されていることを眺めてみた。動きの周期のタイミングに合わせて、パラメーターを変えてやることでブランコの振動を大きくしていたのだった。

 ところで、公園でブランコを揺らす子供達と同じく、純真でピュア〜なのが生まれたばかりの乳児達である。もちろん、そんな乳児達はまだまだ公園でブランコを揺らすなんてことはできなくて、大きく成長するために母親の母乳を飲んで、そしてただひたすら眠る毎日を過ごしているのである。

 そんな乳児の頃の純真でピュア〜な気持ちを、大人になっても持ち続けている人達もいる。そんな純真でピュア〜な大人達は大人になっているにも関わらず、生まれたばかりの乳児と同じくオッパイに惹かれ続けているのである。そして人は彼らをほんの少しばかりの尊敬と沢山の侮蔑を込めて「オッパイ星人」と呼ぶのである。
 

 これまで「できるかな?」では、そんなオッパイ星人達の科学である

を考察してきた(いやもちろん目的はオッパイ星人と闘うためであって、女性を守るためであることはもう一度ここで確認しておきたい)。
 今回は「純真でピュア〜」をキーワードにして「子供達がブランコを揺らす景色の中に隠れている科学」と同じように、「オッパイ星人の力学」について考えてみたい、と思うのである。

 
 まずは、次に示す「純真でピュア〜」な二つの運動を見てもらいたい。一つは、「純真でピュア〜」な
子供達が公園のブランコを揺らしている時の動きであり、もう一つは「純真でピュア〜」な「オッパイ星人」達が眺めているGカップバストを揺らす女性の胸板の動きである。
 

「純真でピュア〜」な二つの運動
「純真でピュア〜」な
子供達が公園のブランコを揺らしている時の動き
 
 
 




 

「純真でピュア〜」な
「オッパイ星人」達が眺めている
Gカップバストを揺らす女性の胸板の動き

 この二つの図をじっと眺めてみると、何か共通点が見えてはこないだろうか?少なくとも、私(純という名前を持つ位だから純真さでは保証付きである)と同じく「純真でピュア〜」な目で眺めてみれば、共通点が見えてくるハズなのである。

 「何か、単に両方グニョグニョした動きにしか見えないぞ。」という人、つまり「純真でピュア〜」な目を持たない人もきっと多いことだろう。哀しいことに、この世知辛い世の中ではそんな「純真でピュア〜」な目を持ち続けるのはムズかしいことなのである。そこで、そんな不純な人でも判りやすいように、さらに

  • 子供がブランコを動かすときの「子供の上下方向および水平方向の動き」
  • 女性が歩くときの「女性の胸板の上下・左右方向ぞれぞれの動き」
を並べて見てみることにしよう。ちなみに、この図は大雑把に書いてみたもので、全然正確なものではない。
 
ブランコを動かすときの「子供の上下方向および水平方向の動き」を簡易的にしたもの
ブランコを漕ぐ子供の
重心の上下方向への運動
ブランコの水平方向の運動

 そして、こちらが女性が歩くときの「女性の胸板の上下・左右方向ぞれぞれの動き」である。
 

女性が歩くときの「胸板の上下・左右方向ぞれぞれの動き」
女性が歩くときの
胸板の上下方向への運動
女性が歩くときの
胸板の左右方向への運動

 こうしてみると、ブランコを揺らす子供の動きと、Gカップバストを揺らす女性の動きが、よく似ていることがわかるだろう。上下方向への運動は全く同じであるし、左右方向への動きはタイミングが違うだけ、つまり位相が違うだけなのである。その位相の違いを実感するためには、

  • 時間
  • 左右の動き = X
  • 上下の動き = Y
という三次元でそれぞれの動きを見てみるのが一番判りやすい。というわけで、それを図示すると次のようになる。
 
それぞれの動きの「時間・左右動・上下動」
ブランコを揺らす子供の動きの場合
Gカップバストを揺らす女性の動き

 方向性が逆であるだけで、全く同じであることがよく判ると思う。方向性の違いを除けば、ブランコを揺らす子供の動きとGカップバストを揺らす女性の動きは全く同じなのであって、私はこれら二つの運動の根本原理は全く同じものなのではないか、と思うのだ。もちろん、その原理を「純真でピュア〜な心」である、と言ってしまえばそれで終わってしまうわけなのだが、それでは「科学(?)」ではない。「純真でピュア〜な心」がブランコを動かし、世界を動かし、ついにはGカップバストを動かしているのだぁ、と言えば哲学的(?)ではあるが、科学(?)ではない。いや、そんなのは科学的でも哲学的でもなくて、単なるエロ・エロ・トークだと言う人もいるかもしれないが、そういうことを言うヤカラは「純真でピュア〜」な目を持たない人に違いないのである。少なくとも、「なんて素晴らしいファンタジ〜なんだぁ」という位には言って欲しいのである。
 

 ただ、「ブランコを揺らす子供の動きとGカップバストを揺らす女性の動きは方向性が逆がである」ということは実は面白い考察ができるのである。前回、ブランコの動きを考えた時に、ブランコの効果的な漕ぎ方と方向性が逆の「ブランコが下にきたあたりで座り込み、ブランコが上にきたあたりで立ち上がった場合 」のシミュレーション計算をしてみた。その結果は、ブランコの振動がどんどん小さくなってしまったのであった。つまり、除振効果が働いてしまうのである。

 ということは、である。Gカップバスト(いやAAAカップでも同じであるが)を揺らす女性の動きは、実は揺らしているのではなくて、Gカップバストを揺らさないために最も効果的なのではないだろうか?Gカップバストが揺れ動いてしまってはオッパイ星人はともかく、本人はとても困るわけでそのために実は彼女らは「パラメータ(パラメトリック)励振」という物理現象・科学を応用しているのではないか、と想像してみるのもオツなものではないか、と私は思うのである。

 もちろん、ブランコの動きが実は結構複雑であるの以上にGカップバストの動きは複雑である。弾性・塑性・そして様々なブラジャ〜による拘束条件も解明しなければならないだろう。それは実にメンド〜な試みではあるが、きっといつか「純真でピュア〜な心」を持つ学生諸君がその謎を解明するに違いない。「天使のブラによる拘束条件とGカップバストのパラメトリック励振」なんていうタイトルの論文を近日中に目にすることができるに違いない、と私は夢見ているのであった。
 

2000-12-17[n年前へ]

9人の女神はピンク映画の夢を見るか? 

WEBの画像の色分布を調べよう

 
 

 「お笑いパソコン日誌」の「2000/12/4 今日のネタ・パッチワーク」で、「エクスプローラーが作るブックマークのサムネイル」の話が書かれていた。「うんうん、そうなのだ。」と思ったネタだったのでちょっと引用してみると、
 

2000/12/4 今日のネタ・パッチワーク
 1日の Dekirukana?? Diary に、favicon.ico のパッチワークという話が書かれていた。実は私も、似たようなネタをだいぶ前から抱えている。ただしこちらはアイコンではなく、左図のような、エクスプローラーが作るブックマークのサムネイルを使うつもりだった。

    (中略)

 そんなわけで、この企画は投げ出したままになっているのだけど、もともとの意図はパッチワークを作ることにはなかった。私がやりたかったことは、ポルノサイト、ニューズサイト、アニメサイト、女性タレントサイトといった具合に、それぞれ代表的な10個ぐらいをサンプリングし、サムネイルの中で使われている色の分布を調べることだった。当然、グラフ化してサイト別の特徴を調べるのが目的である。おお、なんかまるで「できるかな?」みたいなネタやんけ、と思われただろう。まったくその通りである。ただ、大きな違いは、私の場合、ざっとサムネイルを見ただけで、おおむね予想された結果に近いとわかった時点で終わってしまうことであった。わははは(嘆息)。
 

という内容である。そうそう、私もやはり同じようなことをずっとやりたかったのだった。WEBページを小さな画像にして、それを何らかの色空間の中で再配置してみたかったのである。そして、その色空間の中でのWEBページ達の配置を参考にして、大きな画像をパッチワークで作ってみたかったのだ。

 結局のところ、私はやはり最終的に一つの画像をパッチワークで作ってみたかったのだ。それはパッチワークという言葉を使うより、モザイクという言葉を使った方がずっと良いだろう。きっと、その方が私の作りたい画像のイメージが伝わりやすいに違いない。そう、私はMosaic等から始まったWEB空間を、「小さなWEBサイト達で点描写することで一つの大きなモザイク画像として描いてみたかった」のである。

 ここまで読んで、「それってMosaicとモザイクをかけただけの、ただのダジャレ?」などと言ってはイケナイ。ホントのところは全然知らないのだが、Mosaicを作ったMarkAndreessen達とそもそもMosaicの語源であるミューズ達もきっとそんなモザイク画像を心に思い浮かべていたに違いないのである。全然根拠はないのだけれどそう思うのである。チョットだけそう考えてみれば、誰にだってそんあモザイク画- 一つ一つの点を眺めているとそれらは小さなWEBページだけど、遠く離れてみると何やらぼやけて大きな一つの画になるモザイク画- が見えてくるに違いない、と私は思うわけだ。
 

 さて、お笑いパソコン日誌のおかげでIEのThumbnailsViewを使うという面白い方法が見えてきたわけではあるが、いきなり「WEBページのモザイク画像」に挑戦するのもキツイものがある(いや、私にはね)。そこで、今回はWEBページで使われている画像の色分布を調べてみることにしようと思う。WEBページ内には写真が多く使われているわけで、それらの写真がモザイク画像を作ることができるほど色々な色合いを持っているかどうかを調べてみるのである。
 

 今回行う手順はこんな感じだ。

  1. WEBサイトから画像をゴッソリと収集する
  2. 低機能解析ソフトでそれらの画像の色分布を解析する
  3. とりあえずそれを眺めてみよう
この手順の中で「WEBサイトから画像を根こそぎゲット(収集)する」というソフトは色々あるのでそれを使うとして、まずは解析ソフトがないと話にならない。というわけで、作ってみたのがこのソフト(あくまで低機能)である。名前はそのものズバリMosaic(ニセモノ)である。
 
Mosaic(ニセモノ)の動作画面

 まずはローカルディスクの適当なフォルダに画像ファイルを保存しておく。そして、このMosaic(ニセモノ)でそのフォルダ内の画像を全部読み込んで、それらの各画像の色を調べるのである。本来は、それぞれの画像の特徴色(っていっても意味不明であるが)を抽出したりする方が良いのかもしれないが、今回は簡単のために各画像内で色味をテキトーに平均した結果を用いた。

 このソフトの目的はあくまでモザイク作成(しかし未実装)なので、何の役にも立たないボタン(というより動くボタンがLoadFolderボタン一つだけ…)や領域があるが、それはそれいつものことなので気にしないで欲しい。というわけで、これ

である。いつものように、色々な画像フォーマットの画像を読み込むためにはSusieプラグインが必要である。

 これを使って、例えばカラフルフリースで絶好調のWEBサイトwww.uniqlo.comで使われている画像をゴッソリとゲットして、それらの画像をMosaic(ニセモノ)で解析してRGB色空間で眺めてみた結果はこうなる。赤い点がいっぱいあるが、その一点一点が一枚の画像の平均の色味なのである。
 

ユニクロのサイトで使われている写真の色分布
RGB色空間

 といっても、三次元のRGTB色空間を平面のグラフでこんな感じで眺めてみてもワケわからん状態なので、Red-Green平面、Red-Blue平面で眺めてみたのが次の二つの図である。
 

ユニクロのサイトで使われている写真の色分布
Red-Green平面
Red-Blue平面

 こんな風にしてみてもやはり同じワケわからん状態かもしれないが、もうひとつGreen-Blue平面を眺めてみると何やら面白い様子が見えてくる。
 

ユニクロのサイトで使われている写真の色分布
Green-Blue平面

 そう、実は「緑と青」はあまり独立ではないのである。結構相関があるのだ。青が強けりゃ緑も強い、というわけで一緒に動いているのである。ということは、「青も緑も多い青緑」や「青も緑も少ない赤」は多いがそれ以外の色は少ないということである。ユニクロのWEBで使われている写真は実は青緑・赤指向が強いのである。ところで、ユニクロのWEBで使われている写真はユニクロのフリースなどの製品の写真がほとんどである。ということは、ユニクロのフリースは青緑・赤指向が強く、青純色とか緑純色の色は実は少ないということになる。

 それが端的にわかるのがa*b*平面で表示させてみた場合である。a*方向すなわち赤色方向は多いのに対して、b*の小さい方向つまり緑方向などには妙に点がないことがわかるだろう。今のユニクロは緑を何故か避けているのである。緑の純色のフリースは人気がないのだろうか?う〜ん、不思議なところだ…
 

ユニクロのサイトで使われている写真の色分布
a*b*平面

青○は色味のないa*=0,b*=0の点
参考:La*b*色空間

 いや、そんなことはどうでもいい。別に私はユニクロのフリースを買う予定があるわけでもないし、ライバル社の社員でもないのである。色と言えばもっと他の種類のサイトを調べてみなければならないだろう。
 

 そう、それはもちろんエロサイトである。カラフルなユニクロももちろん興味深いところではあるのだけれど、色と言えば、何はともあれ色気タップリのお色気サイトを調べなければならないだろう。

 そこで、国内某エロサイトからエロエロ画像を根こそぎゲット(収集)してそれを解析してみたのが次の結果である。ハイ、ゲットしまくった結果です。
 

国内某エロサイトで使われている写真の色分布
a*b*平面

青○は色味のないa*=0,b*=0の点
参考:La*b*色空間

 とりあえず結果を眺めてみると、この国内某エロサイトにある画像では青・緑方向の色はほとんどないのである。ほとんど赤から黄色にかけての色なのである。Lすなわち明度は高いものが多かったので、結局のところは明るい赤から黄色にかけての色が多い、ということになる。

 明るい赤と言えば、それはもちろんピンク色というわけで、私は「なるほど!だからピンク映画なのか!」「エロはやっぱりピンクなのか!」とチョット思ったりしたわけである。しかし考えてみれば、英語ではスケベ映画のことをbluefilmて言うわけでこの説には全然説得力がないのだった。

 しかししかし、である。もしも、英語圏のエロサイト内のエロ画像では青方向に色味が強いのだったら、英語でスケベ映画のことをbluefilmと呼ぶ理由が説明できるのではないか、と私は考えてみた。もう少し細かく書いてみると、エロと言えばやはりヌードなわけで、それすなわちスケベ色= 肌色である。日本人の場合それが

肌色 = ピンク色
で、肌の色が白くて静脈が透けまくりの白人であれば、
肌色 = 青色
であるというのもそれほど不自然ではないし、だとしたらピンク映画 = blue filmであっても良いだろう、というわけだ。

 もし、白人の場合「肌色 = 青色」だったりするとしたら、英語圏のエロサイト内のエロ画像では「肌色= 青色」を含みまくりというわけで、青方向に色味が強いということがあっても不思議ではない。
 というわけで、さらに英語圏某エロサイトからエロエロ画像をまたもや根こそぎゲット(収集)してみた結果が次の結果である。別に私はエロエロ画像をゲットすることが目的ではないので、やましいところはないと思うのだが、やってることは「何だかな〜」状態である。
 

英語圏某エロサイトで使われている写真の色分布
a*b*平面

青○は色味のないa*=0,b*=0の点
参考:La*b*色空間

 さてさて、英語圏某エロサイトからエロエロ画像をゲットして解析してみた結果は「英語圏のエロサイト内のエロ画像では青方向に色味が強い」なんてことは全然無くて、むしろ青みは少ないのだった。というよりやたらに黄色が強いのである。とりあえず、エロエロ画像には青色や緑色はほとんど無いといっても良いようである。

 
 ところで忘れている人も多いかもしれないが、今回の目的は「WEBページ内の写真がモザイク画像を作ることができるほど色々な色合いを持っているかどうかを調べてみる」ことだったのである。別にエロエロ画像を根こそぎゲット(収集)したり、それをただひたすらに眺めることではないのである。

 というわけで、その観点から見てみると

  • ユニクロサイトの画像には緑がなかったり、
  • エロサイトのエロエロ画像には青や緑がなかったり、
して、WEBサイトの写真なんかを使ってきれいなモザイク画像を作るのは一筋縄ではいきそうにないが、次回には必ずモザイク画像作成ソフト-Mosaic(ニセモノ)-を完成させたい、と思うのである。
 
 

 ところで先に少しだけ書いたが、モザイクすなわちMoisacの語源はギリシャ神話の中の学問・芸術をつかさどる9人の女神Museである。ネットワークを学問・芸術をつかさどるMuse達が動かしているわけだ。Muse達が色々な思いにふけったり、楽しんだりしながら動かすネットワークの中をMosillla= Mosaic Gozilla達が動き回っているなんて考えると、とてもワクワクしたりはしないだろうか?ギリシャ神話は遠い昔の話なのではなくて、今私たちの周りに満ちているような気がしたりするのである。
 

2001-01-13[n年前へ]

オッパイ星人の力学 第四回 

バスト曲線方程式 編

 先日、父から封書が届いた。二十一世紀にもなったというのに、e-mailでもなくて封書が届いたのである。これは、やはりアレだろうか。いい年にもなってるのに、クダラナイWEBサイトを立てているデキの悪い息子を厳しく叱るためだろうか?しかも、そのクダラナイWEBサイト(しかも、有害公式認定サイト)の名前が自分の名前(hirax)だったりするからだろうか?それとも、「本が出たなら送れ」とは言われても実は送りたくなかった「あの本」を、少し前に父に送ってしまったからだろうか?いや、それとも…

 そんなこんなでドキドキしながら封筒を開けると、記事のコピーが二つ入っていた。他には何も入っていないのである。一体これは何の記事だろう?と思いながらそのコピーを眺めてみた。すると、まずひとつは去年の12月25日付けの毎日新聞の科学欄である。二十一世紀を専門家達が予想した記事の横に「究める」というコーナーがあって、そこに「女性の胸と男性の好みの進化的関係は?」というインタビュー記事があった。そして、その記事が蛍光ペンでマーキングしてあったのである。

 これは一体、どういうことなのだ?と頭の中がグルグル&複雑な気持ちになりながら、とりあえずその記事を読んでみた。すると、この記事がとても面白い。インタビュー中の

 ヒトは異性をどう選ぶのか?そんな疑問から女性のバストと弾性の好みに進化的関係があるかを研究している。
(中略)
 小さいバストほど魅力的だと母に教えられて育った。しかし、大きいバストが好きな男性がいることに気付いて驚き「なぜ」と考えたのが研究のきっかけだった。
(中略)
 「大きいバストが本当に普遍的に好まれるかを知りたい。控えめなバストが淘汰されてしまうとは考えたくないから」と話す。
という東大大学院の東海林さんの語りもとても面白いし、バストサイズを5段階に変えた女性の合成写真を使い、男子学生300人にアンケートしたという実験とか、巨乳好きの性格が父から受け継いだものであるかを調べるために、父子間で性的好みが伝達されるかを調べる、などの話もとても面白い。最高である。

 そして、父からの封筒に入っていたもう一つの記事は宇宙科学研究所の新聞の中の宇宙基地利用研究センターの黒谷氏の「Anti-Gravity」というエッセイだった。なんでも、Anti-Gravityという化粧品があって、
それは顔の皮膚のコラーゲンに皮膚がたるまないようにするというものらしい。顔の皮膚にハリをあたえて、顔のたるみを防ぐのである。顔の皮膚のたるみ元をたどれば重力のせいだから、「anti-gravity= 無重力」化粧品ということになるわけだ。じゃぁ、このAnti-Gravityを体中に塗れば、バストやヒップが垂れるという女性の悩みもなくなるのではないか、と「無重力における生物の専門家」である黒谷氏は書いていて、参考文献に本サイトが挙げられていたのである。

 うむむ、世の中には巨乳の科学について進化論的に研究している人がいたり、オッパイの力学について考え(てみたりもす)る無重力生活の専門家もいるのだ。これはマズイ。油断している場合ではない。私もオッパイ星人研究をもっと真剣にしなければならない。父はきっと私に「研究の厳しさ」を教えようとしたに違いないのである。私の父はこれまでの「オッパイ星人の力学」を読んで、美味しんぼの海原雄山風に「うわあっはっ、こんなものでオッパイ星人の力学だとは笑止千万!」位のことを言ったに違いないのである。

 しかし、それだけではない。「二十一世紀、小さいバスト、大きいバスト、無重力、皮膚、オッパイのたれ」というヒントを与えてくれたのである。ここまでされて何かを書かなくて何としよう。オッパイ星人研究の手は一瞬たりとも休めてはならぬのである。そこで今回は「皮膚のハリ」や「重力」を気にしながら、「オッパイのたるみ・形状」について考えてみることにした。
 

 さて、一体バストの形状というものはどうなっているのだろう?これまでの「オッパイ星人の力学」では

  • 半球モデル
  • 円錐モデル
などのモデルを導入してきた。しかし、これらのモデルは自分で言うのも何だがかなりの無理があったと思う。実際、これらのモデルを元に計算を積めていくとどうにも矛盾が出てくる。そのため、その計算上の矛盾を隠すために「松坂季美子項」等を無理を承知で導入したりしていたのだ。
 そしてもちろん、このモデルに対して不満を持つのは私だけではなくて「これらのモデルには私は納得できません。」というメールがたくさん送られてきた。それどころか、「本当のオッパイをあなたは知らないのではないですか?」という実に失礼?なメールさえ送られて来ていたのである。「それでは、参考までに本当のオッパイの資料でも送って頂けないでしょうか?」とは私は大人なので返事をしなかったが、ちゃんとしたモデルを作らないことにはこれからもそんなメールがまだまだ来るに違いないのだ。

 というわけで、今回は新しいバストの形状モデルを提唱してみたい。それは「バストの内部は液体に満ちていて、その液体を外側の皮膚が支える」という

  • 水風船バストモデル
である。何故こんなモデルを作ったかというと、噂の真相の2000年2月号の中に「生理食塩水を2000cc注入するという豊胸手術」という文章を見かけたからだ(その後reimyさんより、最近はムコ多糖という物質を使ったバイオジェル(ハイドロジェル)を使用するのが主流だ、と教えていただいた。噂の真相の古い感覚こういうところにも現れているかもしれない。)。この記事が本当であれば、生理食塩水という液体がバスト中に注入されていてそれを皮膚が支えるという水風船バストモデルもそれほど不自然ではないと思われるのだ。
 

 こんなモデルに基づいて、バストの形状を計算するにはどのように考えれば良いだろうか?次の図が「水風船バストモデル」における内部の水と各皮膚部分にかかる力を示してみたものである。これはバストの断面をを鉛直方向に示しており、左の黒い鉛直線が胸板であり、赤い線がバストの形状を示すバスト曲線である。(ちなみに、今回はバストを二次元の断面でのみ考えている。)
 

「水風船バストモデル」における内部の水と各皮膚部分にかかる力
左の黒い鉛直線が胸板
赤い線がバストの形状を示すバスト曲線

 「水風船バストモデル」における内部の水には重力がかかり、バストの下の方にいくほど圧力がかかっている。そして、皮膚に面している内部の水はその圧力を皮膚に伝える。そして、皮膚はその圧力で変形しながら水で満ちたバストを支えるのである。この時、バストの形状= 皮膚の形状を示すバスト曲線はどんな条件を満たしているだろうか?

 ここで、胸板にそって下向きにY軸をとり、バスト曲線をB(Y)で表すことにしよう。上の図をよく眺めるとわかると思うのだが、バストの形状= 皮膚の形状を示すバスト曲線をB(y)とすると、バスト曲線B(y)は実はこんな方程式を満たす。
 

「水風船バストモデル」におけるバスト曲線B(y)が満たす方程式

 まぁ、ここでは簡単のために、係数を省略していたり、バストが本当に垂れてしまうような状況は考えていなかったりするので、ごく簡易的なバスト曲線方程式だと思って欲しい。大雑把に係数などを無視して、言葉で言ってしまえば、バスト曲線の傾きの変化はその点より上に位置するバストの重量に等しい、という感じである。自由境界におけるLaplaceの関係でも連想して頂ければわかりやすいだろうか?とにかく、この条件と適当な境界条件さえ入れてやれば、「水風船バストモデル」におけるバスト曲線B(y)は計算することができるのである。
 

 さて、このバスト曲線方程式を一般化したり、係数をちゃんと計算したり、三次元に拡張したりということはまたいつか行うことにして、まずは適当にこのバスト曲線方程式を数値的に解いてみた。それが、例えば、次の図である。これが、「水風船バストモデル」のバストの形状の一例だ。
 

バスト曲線方程式を数値的に解いてみた結果
すなわち、「水風船バストモデル」のバストの形状
「小さいバスト」の場合

赤:すごくハリのあるヤングな皮膚の場合
マゼンダ:普通のハリを持つ皮膚の場合
藍色:ちょっとハリの少ない皮膚の場合

 この図の中でバスト形状のプロットが三種類あるのは「皮膚のハリ = 皮膚のヤング率」として三種類の値を使ってみたからだ。以前

の中で
 そう、もうお判りのはずだ。 「バストに関するヤング率」はまさにヤング率(Young率)なのである。実は年齢に比例する係数だったのだ
と書いたが、あれと同じである。今回は、年齢で変わっていくバストの皮膚のハリを「バストの皮膚のヤング率」とおいてみたのである。そういうわけで、皮膚のハリ= 皮膚のヤング率によってバストの形状は異なるわけだが、まずは眺めてみてもらいたい。以前のどうみても不自然な「半球バストモデル」等に較べて、ずっとましになっているとは思わないだろうか?特に、藍色・マゼンダのプロットなどかなり自然な形状になっていると思うのである。感受性の豊かなオッパイ星人であれば、必ずしやググッとくるハズである。

 さすがに、メチャクチャ皮膚のハリがある赤色のプロットなどは松坂大輔もビックリの「超ロケット乳」になってしまっているが(といっても、この図のアスペクト比に意味はないんだけど)、今や時代は二十一世紀、宇宙へロケットで飛び出す時代だと思えば、こんな「超ロケット乳」を眺めるのもそれまた一興ではないだろうか。ぜひこの「超ロケット乳」には宇宙へ飛び出してもらいたいものである。
 

 もちろん、世の中には「大きいことは良いことだ」という巨乳大好きオッパイ星人達もいるわけで、そんな人達のためにもう少し「大きいバスト」の場合で計算してみたものと並べて比較してみたのが次の図である。
 

「小さいバスト」と「大きいバスト」の計算結果

赤:すごくハリのあるヤングな皮膚の場合
マゼンダ:普通のハリを持つ皮膚の場合

藍色:ちょっとハリの少ない皮膚の場合
「小さいバスト」の場合

「大きいバスト」の場合

 個人の好みもあると思うが、けっこう自然な「巨乳形状」が再現できている。ちなみに、今回使用した簡易的なバスト曲線方程式ではすごく巨乳だったり、皮膚のハリが無さ過ぎてあまりにバストが垂れている場合の計算はできない。簡単に言えば、Yに対してバスト曲線B(Y)が一対一対応しないためである。が、それゆえに巨乳と言っても美乳の範囲のみ考えることができるのである。

 また、この「小さいバスト」の場合と「大きいバスト」の場合の比較から、「巨乳は垂れるのよっ!だから、小さい方が良いのっ!」という世の小振りなバストの女性がよく言うセリフの妥当性も確認してみたいところではなるが、そういうことは何か危険なことであるような気もしてきたので、今回は止めておきたい。

 ところで、今回の話はAnti-Gravityから話が始まっているわけだが、ちなみに「水風船バストモデル」は無重力下ではどのような形状をとるかと言えば、当然体積に対して表面積が最小となる「半球形状」になる。つまり、「半球バストモデル」は「水風船バストモデル」の重力を無視した特殊な場合であり、逆に言えば「水風船バストモデル」は「半球バストモデル」にバスト内部での重力の影響を加えて一般化したものだったのである。

 今回は、とりあえず新たに「水風船バストモデル」を提唱し、そのモデルにおけるバスト曲線B(y)を解くための簡易的な方程式を考察し、それを数値的に試しに解いてみた。次回は今回行った考察を用いながら、少し違うアプローチで「オッパイ星人の力学」を考えてみたいと思う。
 

 さて、今回の話のきっかけともなった黒谷氏らの書いた本「星と生き物たちの宇宙」は原稿のごく初期の段階で実は読ませてもらっていた。その時感想を聞かれたときは、この本はメールのやりとりで構成されているので、「なるべく著者達の私的な部分を消さないままにしておいた方が面白いんじゃないか」なんて適当なことを言っていたのだった。その著者達が書いたこの本のあとがきの言葉を最後に引用して、これからの「オッパイ星人の科学」への「戒め」と「言い訳」としておきたい、と思うのだった…
 

 科学は応用を通じて実生活に関わり、知的追求というこころの喜びにも関わる二面を持っています...多くの人に、こころを喜ばせる科学を楽しんでもらいたいですね。    H.Hirax, A.Kurotani

 

2001-01-27[n年前へ]

オッパイ星人の力学 仏の手にも煩悩編 

時速60kmの風はおっぱいと同じ感触か?

 本サイトhirax.netは「実験サイト」というジャンルに分類されることが多いようである。何が実験で、何が実験でないのかは私にはよくわからないのだが、とにかく「実験サイト」と呼ばれるサイトは数多くある。そして、その数ある実験サイトの中でも、人間そして愛について日夜取り組んでいるサイトの一つが「性と愛研究所」である。

 その「性と愛研究所」を読んでいると興味深いことが書いてあった。テレビ番組の「めちゃめちゃイケてる!」の中で何でも「時速60キロの風圧はおっぱいの感触である」と言っていたらしい。そしてまた、「性と愛研究所」では「おっぱいの感触と風圧に関する考察」の中で、「時速60kmでは全然おっぱいの感触ではなくて、ちょうど時速100kmを境に急におっぱいの感触を感じます。」というメールを紹介しながら、

「時速100kmの風では、本物は触れないけどお手軽に疑似体験、名付けて『プリンに醤油でウニ』ではなくなってしまう。それでは、まるで『キャビアにフォアグラでトリュフの味』だ。青少年のために疑似おっぱいを探してあげる必要があるな。」
と結論づけている。

 この「時速60kmの風」現象は「できるかな?」的にとても興味深いと思われるので、今回じっくりと考えてみることにしてみた。そして、この結論に何らかのプラスαをしてみたいと思う。

 そう、前回「オッパイ星人の力学 第四回- バスト曲線方程式 編- (2001.01.13)」でオッパイの表面で働いている力について考えてみたのは、実は単に今回・そしてさらに次回の話のための準備だったのである。(さて、ちなみに今回は会話文体をメインに話が進む。「性と愛研究所」ではないが、この手の話は会話文体の方が書きやすいように思うし、私のバイブル「物理の散歩道」でも「困ったときの会話文体」と言われていたので挑戦してみた次第である。言うまでもないが、AもBも私が書いてはいるが、私自身ではない。)
 

A : 「東名高速で出勤途中に確認してみたんだが、やはり時速100kmあたりが妥当な感じだったな。」

B : 「何を根拠に妥当なのかがよくわからないが、確かに時速60kmでは手に何かが触っているという感触すらないな。それにしても、哀しい出勤の景色だぞ、それ。」
A : ほっとけ!だけど、少し考えてみると、このおっぱい(ニセモノ)の感触問題は結構面白く、技術的にもなかなかに深い話だと思うんだよ。」
B : 「はぁそうですか…、としか言いようがないな。」
A : まぁ、聞け。何しろこのおっぱい(ニセモノ)の感触問題には流体力学のエッセンスがぎっしりと詰まっているんだからな。」
B : 「そんな話は聞いたことはないが、とりあえず聞かせてもらおうか。」
A : 「このおっぱい(ニセモノ)の感触問題を解くためには、とりあえず車の窓から手を出したときの指の周りの空気流を計算すれば良いわけだ。」
B : 「ちょっと待て。何で指の周りなんだ。手のひらじゃなくて?」
A : 「簡単なことさ。試しにおっぱいを揉む仕草をしてみろよ。」
B : 「こ、こうか?あぁ?手のひらじゃなくて指で揉んでるっ!
A : 「そうだろ。何故かわからないが、おっぱいを揉む仕草=Mr.マリックが超魔術をかける時のような指使いらしいんだよ。」
B : 「うむ、確かにそのようだな。」
A : 「だから、時速60kmの風からおっぱいの感触を受けているのは指先だと考えるのが自然だろ。それなら、とりあえず下の図のような「指の間を抜けていく空気の流れ」を計算してみれば、おっぱい(ニセモノ)の感触問題が解けるわけだ。」
B : 「実写の手に二次元の計算結果を三次元的に合成するという凝った処理が、実にクダラナイことに使われている例だな…」
車の窓から手を出して、指の周りの空気流を計算しよう
  高速で走る車の窓から手を出して、その手の指の間を抜けていく空気の流れを計算しよう。

 鉛直方向の指の等方性を考えて、右の図に示すような指を輪切りにするような水平面のみを考える。

 こんな写真を撮るときに、自己嫌悪に陥りがちなのは何故だか知りたい今日この頃。

A : 「こういう「空気の流れ」ような流体の力学は、ニュートンのプリンキピアに始まり、オイラーとベルヌーイにより非圧縮・非粘性の理想流体の運動方程式とエネルギー保存則が導かれた。それがオイラーの運動方程式とベルヌーイの式だ。オイラーの運動方程式はちなみにこんな感じだ。」
 

オイラーの運動方程式

加速度 = 外力 + 圧力勾配力
 
v : 速度
s : vに沿ってとった座標
t : 時間
p : 圧力
K : 外力

A : 「基本的には「加速度 = 外力 + 圧力勾配力」という形だな。この非圧縮・非粘性の理想流体の場合はラプラシアンがゼロのポテンシャル流れと呼ばれる単純な流れになる。試しに、そんな場合をNast2Dを元にしたプログラムで計算してみた結果はこんな感じになる。ホントはこの計算自体は完全な理想流体ではないのだが、まぁ大体はこんな感じだ。」

B : 「おっ、あっという間に計算したな。」
A : 「まぁ、ポテンシャル流れならエクセルでもちょちょいと計算できるくらいだからな。ちなみに、これは窓から手を出してしばらくしてからの空気の流れだ。」
 
粘性が(ほとんど)ない時の指の周りの空気の流れ

A : 「で、どうだ?」

B : 「いや、どうだ、と言われても困るが、なんかキレイだな。だけどちょっと小さくて見にくいなぁ。」
A : 「そう言われれば確かにそうだ。じゃぁ拡大してみるか。」
 
粘性が(ほとんど)ない時の指の周りの空気の流れ (拡大図)
空気は右から左へ流れている。いや、指が右から左へ移動していると言った方が良いか?
B : 「で、この結果から何がわかるんだ?」
A : 「この図で空気は左から右へ流れているわけだが、左端の空気の速度と右端の空気の速度は、実は同じなんだ。」
B : 「そう言われても、よくわからないが?」
A : 「指を通り過ぎてく空気は、指をとおる前後で運動量がそのまま変わってないってことさ。つまり、空気は指を通り過ぎる時になんら抵抗を受けてないってことだ。」
B : 「えっ?おかしいじゃないか、それなら逆に言えば指も空気から何の抵抗を受けないってことか?
A : 「そういうことだ。これがダランベールのパラドックスだ。」
B : 「じゃぁ、何か?この指先に感じるまぎれもないおっぱいの感触はだとでもいうのか!? そんなのオレは認めないぞ!」
A : 「まぎれもない、っていうほどのものでもないし、ニセモノおっぱい自体は何か一種の幻のような気もするが、もちろん感触自体は幻であるハズはない。そもそも、空気をサラサラな理想流体として取り扱ったところが間違っているわけだ。そこで、登場するのがナヴィエとストークスだ。彼らはオイラーの運動方程式に粘性を導入した。全てはおっぱいの感触を説明するため、だ。」
B : 「それウソだろ。ナヴィエとストークスが聞いたら怒るぞ。」
非圧縮流体に対するナヴィエ・ストークスの方程式

加速度 = 外力 + 圧力勾配力 + 粘性力
 
v : 速度
t : 時間
p : 圧力
K : 外力
μ: 粘性係数

A : 「見ればすぐわかるだろうが、この非圧縮流体に対するナヴィエ・ストークスの方程式は、最後に粘性項が入っている以外はオイラーの運動方程式と全く同じだ。」

B : 「なるほど。こうしてみると意外に簡単な式だな。」
A : 「あぁ、オイラーの運動方程式に粘性項が入っただけだからな。そのせいで計算はちょっと複雑になるが、最近のパソコンならノープロブレムだ。というわけで、粘性を考慮して計算してみた結果が次の図だ。」
 
 
粘性を考慮した指の周りの空気の流れ
B : 「おっ、ちょっと様子が違うな。何か、ジェットエンジンみたいに尾を引いてるぞ。」
A : 「そうだろ。指の後ろのl様子がずいぶんと違うだろう。で、これを拡大してみたのが次の図だ。」
 
 
粘性を考慮した指の周りの空気の流れ (拡大図)
B : 「左端の空気の速度はもちろんさっきと同じだが、指の後ろでは空気が渦巻いているし、右端の空気の速度は全然違うな。」
A : 「もっとリアルに、窓の外に手を出したときの、指の周りの空気の動きを時間を追って計算してみた計算結果のアニメーションが次の図だ。指の周りに空気が渦巻いていく様子がよくわかるハズだ。」
 
車の窓から手を出して、指の周りの空気流を計算しよう
 窓の外に手を出したときの、指の周りの空気の動きを時間を追って計算してみたもの。指の周りに空気が渦巻いていく様子がよくわかる。

 メッシュを細かく切ったおかげで、計算結果は1GB弱。なんてこったい。

B : 「指が空気の中を走り抜いていく様子がよくわかるな。確かにこれなら、空気の抵抗を受けまくりだな。」
A : 「そうだ。空気は指から力を受けるし、逆に、指は空気からしっかりと力を受けるわけだ。」
B : 「なるほど、この計算結果は指先に感じるまぎれもないおっぱいの感触を説明しているわけだな。いい感じじゃないか。流体力学そして粘性項さまさまじゃないか!」
A : 「あぁ、それも全てナヴィエとストークスのおかげだ。」
B : 「おやっ?ちょっと待てよ!これでは、ただ現実を説明してみただけで、何の解決にもなってないぞ!時速60kmと時速100kmの風の感触の差を説明しているわけでもないし、青少年のためのもっと安全な擬似おっぱいを提供しているわけでもない!」
A : 「いや、それがそういうわけでもない。実はこの先があるんだ。このナヴィエ・ストークスの方程式の解はレイノルズ数という無次元数によって決定されるんだ。今回の場合で言うと、レイノルズ数は「指の直径x 車の速度 / 流体の運動粘性率」という形になる。そして、このレイノルズ数が大きくなるほど渦が延びていくんだ。」
B : 「なるほど、わかってきたぞ。つまりあれだな。時速60kmから時速100kmに速度を上げれば、それに応じてレイノルズ数が大きくなって、空気の渦もおおきくなるし、おっぱいの感触も確実なものになるわけだな。勉強になるな。」
A : 「う〜ん、実際には密度の違いの方が大きいんだが、ナヴィエ・ストークスの方程式の理解としてはそれでいいかもな。あと、単にレイノルズ数を大きくしたかったら指を太くする、っていうのでもいいわけだ。」
B : 「そう言われても指の太さはなかなか変えられないしなぁ。」
A : 「指サックとか色々手はあると思うが、もっといい方法がある。さっきの式を眺めてみれば流体の運動粘性率が小さくなれば、レイノルズ数は大きくなる。例えば、水の運動粘性率は空気のそれの十五分の一だ。」
B : 「ってことは、水の中だったら、レイノルズ数も大きいし、密度も大きいし、指先に抵抗を受けまくりってことだな。すると、水中で手を動かしてみれば、それは空気中の高速クルージングと同じってことになるな!」
A : 「そうさ、風呂の中で手をひとかきすれば良いだけの話さ。何もわざわざ時速100kmの車の窓から手を出す必要はないんだ。実際、風呂の中で確かめてみたけど、なかなかイイ感じだ!」
B : 「時速100kmで走る車の窓から手を出すのに較べれば、風呂の中で手をひとかきすれば良いだけなんて、まさに青少年のためのもっと安全な擬似おっぱいだな!」
A : 「あぁ、それも全てナヴィエとストークスのおかげだ。」
B : 「それはもういいっ言ってるだろ。」
A : 「ところで、ふと考えてみたことがあるんだ。さっき、指を太くすれば遅い速度でもレイノルズ数が大きくなるって言っただろ。東大寺の大仏なんかかなり指が太いじゃないか。」
B : 「確かに、そうだな。」
東大寺の大仏 (想像図)

A : 「今調べてみると、大仏の掌の長さは256cmだ。つまり普通の人間の10倍くらいある。だったら、指の太さも10倍はあるだろう。ってことは、ほんのそよ風が吹いただけでも、大仏の手にはしっかりとしたおっぱいの感触が感じられているんじゃないのかな?」

B : 「単に手が大きいから空気の抵抗も大きいだけどいう気がしないでもないが、指の長さもでかいしさぞかし超巨乳の感触かもしれんな!そう考えると、あの大仏の手も何か実にイヤラシイ手つきに見えてくるから不思議だな!」
A : 「う〜ん、悟りを開いているから、指先のヘンな感触なんかには惑わされないんだとは思うけどな。しかし、案外と仏もそんな煩悩と日夜闘っていたりするのかもしれないなぁ。しかも、その煩悩がホントーにあるのかもよくわからない幻のような擬似おっぱいってところが面白くないか?大仏の指先は二十一世紀の煩悩そのものを暗示しているのかもしれん。仏の手にも煩悩ってところだな!」
B : 「言いたい放題だな、全く。」


 さて、今回は「オッパイ星人の力学第四回 - バスト曲線方程式 編- (2001.01.13)」と繋がるところまで話が辿り着かなかった。おっぱいの表面張力、マボロシのような指先の流体力学、そして大仏の煩悩をめぐる大河ドラマは人生そのもののようにまだまだ続くのである。
 



■Powered by yagm.net