2007年へ/ 2008年へ/ 2009年へ/ 2010年へ/ 2011年へ/ 2012年へ/
2011-02-20[n年前へ]
■カメラマントーク「宮嶋茂樹 v.s. 高橋邦典」前編
「同じ道を極めた3人のプロフェッショナルが司会なし台本なしで語り合う」という、「ディープピープル」という番組の「#8 戦場カメラマン」を観る機会がありました。それがとても興味深くて、思わず語られていた内容を(少しマニアックかもしれませんが)メモしてしまいました。…というわけで、そんなメモの「前編」です。
宮嶋茂樹「高橋さんの写真は、私も何度も拝見させて頂いているんですが、どうやって撮ったかわからないですね。(たとえば、リベリアの写真)あのRPG(対戦車兵器)出してる一人だけだったら、俺でも何とか撮れるかもしれないけれど、手前の人をスローシャッターに入れた辺りは、いまだにどうやって撮ったかわからない」
高橋邦典「あれは、手前の人が(ただ)入ってきたんです。橋を隔てて、反政府側と政府側とが撃ち合いしてたんです。僕らは(当然)政府側の方から撮っていたんですが、10〜15人ぐらいの兵士が入れ替わり立ち代わり、隠れたところから走って来て道の真ん中に出て、ボーンと撃ってまた向こうに行くわけです。その人たちに僕らはくっついて出て行って、撃つ瞬間にパパパパッと撮って、また隠れに戻るということを繰り返していたんです。それ、僕は当然RPG撃ってる奴を撮っていたら、(手前の)彼がシュッと(ファインダーの中に)入って来たという・・・だからたまたまのラッキーなんですよ」
宮嶋茂樹「高橋さん、ワイド系がお好きなんですか?」
高橋邦典「はい。最近はもう24mm-105mmのズームレンズが多いんですよね。使い勝手が良くて、これ一台で90パーセント撮りますね」
宮嶋茂樹「私は良く使うのは24mm-70mm、それと70mm-200mmのスームレンズで、すぐ撮れるようにしているんですけど、高橋さんは16mm, 35mm, 24mm-105mmの他に、もうちょっと望遠はないんですか?」
高橋邦典「70mm-200mmを持ってます。それは、必要な時は持って行きますよ」
宮嶋茂樹「高橋さんは、ワイド系中心だと言うけど」
高橋邦典「やっぱり、撮った時に自分が近づいてると、その写真を見た人も同じ距離感になると思うんですよ。そう思いません?ワイドで撮ったら、撮られた写真を見た人もその距離感で写真を見ると、ぼくは思うんですよね。それだけ現実感があるっていうかね、伝えられるんじゃないかっていうのはありますね」
宮嶋茂樹「私から言わせると、他のカメラマンにアングルを譲らない、ってのはありますよね」
高橋邦典「それはありますね。16mmとかでガッと迫るやつとか」
宮嶋茂樹「他に3,4人カメラマンいて、16,35mmで一番いいアングル取って占めちゃったら、譲りたくないですもんね。私ら写真週刊誌出身だったんで、16mmっていうのは、犯人送る車を撮る時に一番撮りやすいんで(笑)」
高橋邦典「(窓ガラスにカメラ押し付けて)ガシーンとやるやつですね(笑)」
宮嶋茂樹「どうしてもあのイメージしかないんですよね、16mmって(笑)」
高橋邦典「あと、そういう時はちょっと(他のカメラマンの)首根っこを引っ張ったりして(笑)」
高橋邦典「被写体の感情が強ければ強いほど、構図とか光とか関係無しに、そのままストレートに撮っても強力な写真になると思うんですよね。自分の中では、一番大事なのは感情。感情が第一で、その後、光と構図が三本の柱なんですよ、僕の中では。その三つが揃った時パーフェクトな写真になるんですけど、滅多にそういうことはないじゃないですか。ただ、構図は100パーセント、カメラマンがコントロールできるんですよね。だから、実力が一番出るのは構図だと思うんですよ。そういう意味で、構図は大切だと思います」さらに、続きます(カメラマントーク「宮嶋茂樹 v.s. 高橋邦典 v.s. 渡辺陽一」中編)。