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2011-10-20[n年前へ]
■「銀色チューブ」には「油で練り込んだ化学式」が詰まってる
短編連作小説集である、加納朋子の「掌の中の小鳥 」の冒頭「掌の中の小鳥」の前半に書かれている、雲雀(ヒバリ)の油絵に関するエピソードから。
あのとき君が描き出した色は、本当にきれいだったね。曖昧で、微妙な色彩だった。今まで見たどんな絵にも、あんな色はなかった。だけど、それも当然だった。君は絶対に混ぜ合わせちゃいけないとされる色ばかり選んで、あの絵を描いたんだ。
ウルトラ・マリーン(ケイ酸アルミナ・ナトリウム)とエメラルド・グリーン(酢酸亜ヒ酸銅)、クローム・グリーン(クローム酸鉛とフェロシアン化第二鉄)とカドミウム・イエロー(硫化カドミウム)なんて具合にね。
僕は考えたこともなかったよ。あの銀色のチューブの中身が、化学式を油で練り込んだものだなんてね。