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2009-11-25[n年前へ]

馬鹿で人に騙されるか、疑い深くて人を容れることができないか 

 夏目漱石 「硝子戸の中 」から。

 今の私は、馬鹿で人に騙されるか、あるいは疑い深くて人を容れることができないか、この両方だけしかないような気がする。

 この文章の後に続くのは、「不安で、不透明で、不愉快で…」といったものだ。しかし、後者はともかくも、前者の互いに「馬鹿で騙されあう」の世の中は、意外に幸せなものではないだろうか。

 互いに、「自分が得をする」と思わなければ、物の売り買いだって成り立ちそうにないし、ワイワイガヤガヤの賭けごとなんていうものも、あり得ない世界になってしまうだろう。それは味気なく、実につまらない世界に違いない。

 そして何より、互いに馬鹿で騙されあう毎日・世界だなんて、言葉にしただけで、とても楽しそうではないか。