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2010-02-10[n年前へ]

何の意味もなく、誰にでも可能だけれど、酔狂な奴でなくてはしそうにないことを… 

 沢木耕太郎「深夜特急〈1〉香港・マカオ 」から。

 ほんのちょっぴり本音を吐けば、人のためにもならず、学問の進歩に役立つわけでもなく、真実をきわめることもなく、記録を作るためのものでもなく、血涌(わ)き肉躍(おど)る冒険活劇でもなく、まるで何の意味もなく、誰にでも可能で、しかし、およそ酔狂な奴(やつ)でなくてはしそうにないことを、やりたかったのだ。

 インドのデリーからイギリスのロンドンを目指し、2万キロメートルを超える道のりを、一年以上の時間をかけ乗合いバスに乗って行く。その旅は、確かに酔狂な奴でなくてはしそうにない。だからこそ、その旅を小説を通して追体験することができるのは、とても楽しい。