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2009-10-26[n年前へ]
■続「手作りスーパーコンピュータへの挑戦」
重力多体問題専用計算機から始まったGRPAEに関する本は、それが本屋に並ぶようなものであれば、すべて読んでいると思う。「完全主義へのこだわりを捨てると、新しい道が見えてくる」の「スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書)」もそうであるし、あるいは、「手作りスーパーコンピュータへの挑戦―テラ・フロップス・マシンをめざして (ブルーバックス) 」もそうである。あるいは、「専用計算機によるシミュレーション―デスクトップ・スーパーコンピュータ入門 」もそうだ。論文は…それほど多くないが、読んでいるつもりだ。
たぶん、この手の本で一番最初に読んだのは杉本 大一郎「手作りスーパーコンピュータへの挑戦―テラ・フロップス・マシンをめざして (ブルーバックス) 」」だ。この本は、とても惹かれる本だが、自分で本屋で見つけ出し買ったのか、それとも帰省した時に「この人の本は面白い」と肉親に渡されて読んだのかは、思いだせない。けれど、とにかく、この本は面白かった。
1988年の秋、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の近田義廣さんから一通の手紙が届いた。(中略)彼は天体相互の間に作用する重力を計算する重力を計算する「重力マシン」としての計算機を作ろうと、提案したのである。この本に登場する人物・場所が、聞いたことのある名前であったり、暮らしことがある馴染み深い場所であったこともあるし、何よりもその内容が面白かった。
20年あまり前、アメリカのNASAで研究生活をしていたときのことである。ワシントン・ポストという新聞の一面を買い取って、ワインが半分だけ入ったグラスを描き、「あなたはこれをハーフ・フル」だと思いますか、ハーフ・エンプティーだと思いますか」と問いかけた公告が載せられた。何のための広告だったか忘れてしまったが、私にはこの言葉が永い間こびりついて離れなかった。
こうして私の人生訓は、「完全主義は捨てて、楽をしよう。ハーフ・フルと思う方が幸せ」ということにしている。
この本は、1992年2月に出版されたものである。けれど、今でもときたま読み直す。そして、その一頁々、一行々に感銘を受け、興奮させられる。そして、時間・発想というものの歩み・進みというものは実に意外なほどに遅々として遅いのだ、ということに今さらながらに気づかされる。…それは、決して悪いことではない。