hirax.net::inside out::2010年03月28日

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2010-03-28[n年前へ]

「文書を作ることができない症候群」 (初出:2006年09月15日) 

 奥村先生のブログで「少なくともこのページは読むべき」と紹介されていた「Ask E.T.: PowerPoint Does Rocket Science--and Better Techniques for Technical Reports」という記事を読みました。

 スペースシャトル・コロンビア号は、打ち上げ時に剥落した液体燃料タンクの断熱材により翼部分が破損したために、帰還中に空中分解してしまいました。この「PowerPoint Does Rocket Science--and Better Techniques for Technical Reports」という記事では、(断熱材による破損の危険性を評価した)ボーイング社の報告書から正当な判断がされなかった理由として、報告書がPower Point のプレゼンテーション・スライドの形式で作られていたことを指摘しています。Power Point のプレゼンテーション・スライドの中で、たとえば、重要な情報が箇条書きの中に埋もれてしまったり…、といったことが遠因となり、断熱材剥落の影響が軽視されることにつながった、というようなことです。

 そして、そのような「 Power Point の弊害」を避けるためには、文書スタイルをNature や Science に掲載される論文のようなものとし、そして、Power Point でなく Word などを使って書くべき、というわけです。 

 その指摘・解説を読み進めながら、「なるほど。勉強になるなぁ」と思いつつ、「判断を要求されることが多い日常業務中、判断材料をNature や Science に掲載される論文のような文書として渡されても困るよなぁ…」とも感じました。そして、さらに「ここで指摘されている問題より、もっと大きな問題が、実は他にあるのではないか」とも感じたのです。

 その「問題」をひとことで書いてしまえば、「プレゼン・スタイルや論文スタイル…どんな種類の文書であれ、適切な情報を適切な順序・量・構成で文章にできる人なんて非常に少ないのではないか」ということです。「Nature や Science に掲載され論文のような文書」を書けるような人はほとんどいないように思います。あるいは、そういった文章を書くことができる人がいたとしても、その文章の内容(形式ではありません)がそれほど新しいものでなかったり(つまり、単に以前書いた文書の焼き直しだったり)するのではないか、とも思うのです。フォーマット・道具の違いを気にする以前の、実に低レベルな悩みを抱えている段階だったりするように思ったのです。

 というわけで、Edward Tufte の周りはいざしらず、道具の違いを気にする以前に、「論理的に話を組み立て、適度な量・構成としてまとめる」ことをまずできるようになりたい!と切望している今日この頃なのです。