2011-01-10[n年前へ]
■「高く空へ駆け上がる人たち」と「地面に這いつくばる自分」
長野オリンピックの舞台、白馬の八方尾根の麓で、白馬ジャンプ台を眺めれば、ノーマルヒルでも十分すぎるほど高く、ラージヒルはさらにその上まで伸びています。古代の時代から、人はあまりに高い場所に行ってはイケナイと伝えられていたように思います。たとえば、それは空高く飛ぼうとしたイカロスや、上へ伸びすぎたバベルの塔のごとく、人は高すぎるところに登ってはいけない、と神さまが人にいつも語りかけていたような気がします。少なくとも、絵本の中の人間たちは、いつもそんな風に描かれていたように思います。
白馬ジャンプ台のコース上に立つと、あまりの高さに体が思うように動かなくなり、ただただ、雪面と一体化したいと願います。しかし、そんな中、コースに入った雪をかき・溝を奇麗に整えようとしている人がいます。そんな人に「スキーのジャンプをされたことはありますか?」と訊ねれば、空から下を眺めるような笑顔で、「私もノルディック複合の全日本代表でしたから」とその人は笑うのです。
こんなところから、空へ飛び出して行く人たちは、「限界に挑み続ける人」をまさに具現化する人たちに違いない、とジャンプ台の雪上で這いつくばりながら確信したのです。そして、空へ高く飛び、雪降る林の中を駆ける人たちには、どうやっても近づくことはできないに違いない、と悲しく感じると同時に、そういう人を眺めることができることを心から嬉しく感じたのです。