2012-03-02[n年前へ]
■赤外線で「千円札」を眺めてみると…あぁビックリ!?
私たちが目に見ることができる光は「可視光」と呼ばれます。 可視光以外の「光」で世界を眺めれば、普段眺めている世界とはずいぶん違うものが見えてきたりするものです。
右の画像は、千円札の表面を顕微鏡で撮影した写真です。 碧(あお)や朱(あか)そして黒い線を、拡大撮影した写真です。 この写真は可視光で撮影しているので、私たちがふだん眺めている千円札の色ということになります。
それでは、私たちが目にすることができない赤外線で、この千円札を眺めたら、一体どんな風に見えるのでしょうか? そんな「赤外線で眺めた千円札の顕微鏡拡大写真」が、次に示した右の画像です。 意外に思われるかもしれませんが、赤外線で眺めると、碧・朱・黒…いずれの線も、姿を消し・真っ白けの透明な紙になってしまうのです。
ほとんどの色材は、赤外線(可視光より少し波長が長い光)の領域では透明になります。 色材が吸収することができる「光」の波長は限られていますから、特定の色以外の光に対しては、おのずと透明になってしまうのです。 だから、上の千円札では、撮影部分の(可視光では)碧・朱・黒だったはずの印刷線が、赤外線で眺めると透明になり「消えてしまった」というわけです。
ところで、「色材が吸収することができる光の波長は限られている」と書きましたが、そういうものばかりではありません。 たとえば、印刷などで黒の色材として使われることが多いカーボンブラック(炭素微粒子)は、可視光も赤外線も、そのどちらも吸収してしまいます。 だから、カラー印刷された本を赤外線だけが見える目で眺めれば、カラーインクはすべて透明になり消え失せて、黒インクだけが「見える」ことになります。
実際に、カラー印刷を顕微鏡で眺める時、可視光で眺めれば左下のように見える領域を赤外線で眺めてみれば、右下の写真のごとく見えるのです。 まさに、黒インクだけが白い紙の上に浮かび上がって見えるのです。信じられないかもしれませんが、左下の写真と右下の写真は、可視光で眺めるか赤外線で眺めるかという違いだけで、完全に同じ場所を撮影した顕微鏡写真です。(おもしろ実験サイトオールガイドという本の表紙を撮影してみました)
もしも、紙幣を(カーボンブラックを黒インクの色材として使う)印刷機でプリントしたりしたなら、可視光だけで見る人には本物そのものに見えたとしても、赤外線で眺めれば、タヌキやキツネが手に持つ葉っぱのお札のような、お札とは全く違う全く違う真っ白けの模様が浮かび上がってきたりするかもしれません。
眺める光の波長次第で、丸っきり違う模様が見えてきたりする…まるで、手品の世界のようですね。