2008-12-21[n年前へ]
■「すいかの匂い」の「解説文」
本の最後に付いている「解説」を読むと、その本を読んで感じたことが的確な言葉で書き表されていて、自分の思いを再確認することができたりする。あるいは、その本を読んだのに感じられなかったこと、読解力・想像力が足りなくて、自分で読んだだけでは気づかなかったことを教えられたり、する。
江國香織「すいかの匂い (新潮文庫)」の解説文は、川上弘美が書いている。江國香織と川上弘美、どちらも魅力的な文章を書く。だから、江國香織の文章を、川上弘美の文章が解説する「すいかの匂い」はポケットの常連だ。
江國さんにおいていちばんすばらしいのは、「どんな言葉をここにあてはめるか」ということに関する選択眼だと思う。江國香織の「すいかの匂い」を読んでみる。しばらくしてから、川上弘美が解説する「江國さんのひみつ」を読む。自分が感じたこと、けれど言葉になかなかできないことが、当たり前のように表現されていると、何だか少し気持ち良い。
工芸品をつくる職人さんのような技だと思う。完成した作品はとてもなめらかなので、どんな技を使ったか、すぐにはわからない。わからないけれど、確かに技は使われている。わからないということが、何より、技を使ったしるしなのだ。
すいかの匂いに出会うと、いつも江國香織を思い出す。そして、顔を上げてその匂いの先を眺めてしまう。